4気筒か、2気筒か。
その前に。
ミスター・バイクBG 12月号の企画『現行車ニチギチレポート』で紹介されたCBR400R。そのテーマはエンジンの魅力と、400クラスの今後を問うような論点で展開されていた。すでにミスター・バイクBGで紹介したその時の話を下敷きにしたCB400 SUPER FOURのインプレッションで僕は、このバイクを「ワールドクラス」と評価した。( 試乗インプレッション記事はコチラ→ https://mr-bike.jp/mb/archives/17121 )
しかしながら、現実では世界戦略車としてのポジションはCBR400Rに渡されている。それは、多くの若いライダーに向けた回答でもあり、乗り味を見てもなるほど、優しい、と思う部分が多かった。こう書くと「甘口?」と誤解されそうだがそうでない。CBR400Rが持っているリズムはだれもが共感しやすいもので、なるほど! と思う部分が多かった、という意味です。
4気筒の魅力、というより、CB400 SUPER FOUR系ならではのエンジンが持つ魅力はダントツ。ハイパーVTECを得た当時からライバル不在だね、と思っていた。それは最新モデルにも継承され、これぞ世界にない4気筒だという源泉だ。
同時にどの回転からでもトルクを出す2気筒エンジンと、スポーティーだけど鋭すぎないハンドリング、挙動を穏やかで許容量をもって受け止めてくれるフレーム、タイヤもサスペンションもそれに合わせたチューニングがしっかり採られたCBR400Rというパッケージもなるほどオモシロイと素直に思えるものだった。
素直さがウリ。
新型の特徴は外観にも表れている。小ぶりなフロントフェアリングと、カウルサイドを張り出させたことで空力を改善。デザイン的にもCBR一門の名に恥じないスポーティさで、ウイングだって生やしている。また、ライディングポジションも軽く前傾を深めたものとするため、ステップ、シートの位置関係は同様ながら、従来型よりもハンドルバーの位置を前進させなおかつ下げている。
そしてエンジン周りも、吸排気の変更でトルク、パワーともに向上している。特徴的なのは、パワーカーブを見る限り、ほぼ全域でそれを達成しており、扱いやすさの源泉になっているのだ。
エンジンをスタートさせても、特別弾けるような音ではないが、並列2気筒らしい(180度クランクらしい、と言うのが正解だが)サウンドが溢れる。アシストスリッパークラッチを装備したことで、クラッチレバー操作力は軽いの一言。それでいてつながりのポイントなども伝わりやすいから走り出しからフレンドリーなのだ。
ちなみにこのCBR400R、3サイズはCB400 SUPER FOURとほぼ同等。カウルがある分、全高はCBRのほうが高く、車重はCBより9㎏軽いことがカタログスペックから解る。それにも関わらず、市街地でのハンドリングは素直で解りやすいものの、CBよりも少々手応えのあるものだ。これは、CB的カチっとした一体感をだすのではなく、ロール、ピッチ方向の動きを穏やかにライダーに伝える剛性バランスだと感じた。
つまりどんな動きにも切れ込み感がなく穏やか。素直に曲がるし優しい走りに包まれる。外観からくるスポーティさをハンドリングに期待した人には少しだけ肩すかしを食らわすが、バランスが絶妙に取れてちょうど良いことが解る。
パワーとトルクをCBR400R / CB400 SUPER FOURで比較すると、最高出力が34kW・9000rpm / 41kW・11000rpm。最大トルクは38N.m・7500rpm / 39N.m・9500rpmと、スペック的にCBの4気筒エンジンが勝る。しかし、その発生回転数はCBR400Rがともに低く、通常の領域に集中しているのが解る。
スペック表からは読めない実際の走りでも、4000rpm~5000rpmも回していれば充分な印象だ。CBよりも常に1000rpmほど低く満足な加速領域が訪れる印象。とにかく大きな250というイメージで楽しめる気軽さだ。高速道路でもゆとりは充分。いっちょ飛ばすか! と言う気分に追い込まれることもなく、制限速度以下ですら巡航を楽しめるエンジン特性を褒めてあげたい。
ワインディングでは手応えあり。
とにかく市街地、高速道路とツーリング的に走ってもどこにも不満がないCBR400Rは優秀だと思う。CBR250RRや他のRRシリーズのようにコンセントレーションを──今風に言えば全集中し続ける必要がない。CBRパッケージのツーリングモデルとしても高い走りの機能性を持っている。箱根に向かいながら、このまま北海道に向かいたい、という気分になる。いや、高速道路をあえて通らず、東北も満喫して、と長旅を夢想させるタイプだ。
そして箱根でのワインディングセクション。CBと比較するとスポーツ度ではSUPER FOURに軍配が上がる。バンク角もCBのほうが深い。しかし、CBRもリアサスのイニシャルプリロードを1段、もしくは2段上げたらフロントの仕事量を増やしつつ、バンク角も補充ができそうだ。ライダーが感じるフィーリングがよりスポーティなCBに対し、コーナリング速度が遅いというわけではない。タイプの違うバイクで同じ道を走っても楽しさのベクトルが違う印象だ。
フレームの剛性バランスがここでもしなやかさ、優しさに思え、路面のギャップを通過しても過度にビシビシしていない部分は〇。ブレーキの制動力がもう少し欲しいと思うこともあったが、ほどよいチューニングをそうした方向にずらすと、あちこち変えたい部分が出てくるだろうから、これはこれで見事なパッケージだと思う。
CBR650Rもそうだが、CBR的世界観は好きだけど、ツーリングでは肩が凝るポジションや、いよいよサーキットじゃないと性能の一端も見られないほど高次元な乗り物となりつつあるのがCBR-RRファミリーの今だ。CBR400Rは一般道最速などというタイトルは持たないが、「一般道最適なスポーツバイク」として僕はとっても気に入った。
今回のテストで400における4気筒は2気筒に道を譲るのか、という結論は出なかった。CBR400Rからパッと乗り換えると、バックステップに思えるほどCB400 SUPER FOURのポジションはスポーティだし、BIG-1プロジェクトのDNAは全体で魅了する。勝手な妄想だが、CB-Fコンセプトがアリなら、CB400 SUPER FOURの車体、エンジンでRCBコンセプトとか出してみて欲しい。それを世界限定500台とかで放ったら相当話題になるのではないか。余談はともかく、2気筒、4気筒論に話をもどせば、CBR400Rは2気筒エンジンのキャラクターを巧く組み合わせた個体だと確認できた。言うなれば同じ肉料理で、かたや甘しょっぱい豚の角煮ととろける感じは同じだけどビーフシチューを比較するようでやっぱりどちらの存在も必要だ。パッケージベストな作り込みをされたバイクなら、具材や調理法にかかわらず美味しい、と言うことです。
(試乗・文:松井 勉)
■エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒 ■ボア× ストローク:67.0×56,6mm ■最高出力:34kW〔46ps〕/ 9,000rpm ■最大トルク:38N・m〔3,9kg-m〕/ 7,500rpm ■全長× 全幅× 全高:2,080×755×1,145mm ■ホイールベース:1,410mm ■シート高:785mm ■タイヤ(前× 後):120/70ZR17M/C× 160/60ZR17M/C ■車両重量:192 ㎏ ■燃料タンク容量:17L ■車体色:グランプリレッド/パールグレアホワイト/マットアクシスグレーメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):808,500円
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| 2013年 CBR400Rの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |
| 2016年 CBR400Rの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |
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