ホンダ ADV150 車両解説
「ADV」の源流は“ニューミッドコンセプト”に始まっている。並列2気筒のシリンダー前傾角を62度と深くすることでエンジン全高を下げ、車体のレイアウトに自由度が得られる軽量コンパクトな新型700ccエンジンをゼロから開発。それに合わせて、低い位置にメインパイプ配置することが可能となったローフレームの組み合わせにより誕生したのがニューミッドコンセプト。
当初はNC700X、NC700S、そしてインテグラの3兄弟でスタートしたが、わずか2年足らずの2014年1月にモデルチェンジ、排気量アップが行われ750となった。750となっても、共通のプラットフォームを使い回すことでより多様なニーズに合わせたモデル群を展開する、というNCシリーズの基本戦略は変わらず、“オン・オフ”モデルとして開発されたNC750Xと、“ネイキッド・スポーツ”のNC750Sを一足早く1月24日に発売。700版のデビュー時は海外でトップバッターデビューを飾った“スクーティング・モーターサイクル”のインテグラのみ若干遅れて2月7日発売となった。
このインテグラこそX-ADVへと繋がる歴史の始まりだったといえる。
インテグラは“スポーツ・コミューター”としての性格をさらに突き詰めて、平日は都会で、そして休日は「日常を離れて冒険へといざなう」存在として新たに開発されたのがX-ADVだった。オートマチックトランスミッションの操作性とマニュアルトランスミッションの優れた伝達効率を高次元で融合したDCTに専用セッティングを施し標準装備。アップダウンやコーナーの多い郊外のワインディングでは、低いギアを選択する領域を拡大した変速制御をDモード・Sモードに採用し、スポーティーなライディングフィールを実現するとともに、タイヤサイズやドライブチェーン駆動の最適化を図り、市街地での機敏な走行も可能としていた。
足周り面でもフロントには、サスの動き始めの作動性に優れ剛性感のあるインナーチューブ径φ41mmの倒立フォークを採用。リアには、スイングアームのクロス部を中空とし、アーム部をコの字断面として軽量化した新設計アルミスイングアームと作動性に優れたプロリンクサスペンションを組み合わせている。また、ライダーの好みの乗り心地に調整可能な、減衰力調整機能をフロントサスペンションに採用。前後サスにプリロード調整機能も装備している。「GO EVERYWHERE with EXCITEMENT~アクティブな心躍る気持ちで、どこへでも行ける~」をコンセプトに開発された新感覚のアドベンチャー・スポーツだ。
2018年4月には、初のモデルチェンジが行われ、HSTC(Honda セレクタブルトルクコントロール)と、アクセル操作に対応してクラッチ制御を変更する“Gスイッチ”も新たに採用することでオフロード走行時のコントロール性を高めたという。
そして今回、ADVをシリーズ展開するべくX-ADVの弟分が誕生したのだ。2019年の東京モーターショーでアンベールされたADV150だ。『“限界を超えていく都会の冒険者”を開発コンセプトに、スクーターの魅力である快適性や利便性、機動力に加え、個性的で力強い外観と優れた走破性により、通勤から通学から趣味や非日常も楽しめる軽二輪スクーターを目指しました』(ホンダのリリースより)。
スポーツモデルが出自のX-ADVとは若干成り立ちは異なるが、PCXをベースに専用の足周りを開発、未舗装路から高速道路まで様々なシチュエーションを想定したまさに“ADV”シリーズの一員として活躍してくれるだろう。
★ホンダ ニュースリリースより (2019年12月20日)
アドベンチャースタイルの新型軽二輪モデル「ADV150」を発売
Hondaは、アドベンチャーモデルの新たな提案として、タフでアクティブなアドベンチャースタイルに、市街地から高速道路まで走行可能な149cc単気筒エンジンを搭載した新型軽二輪スクーター「ADV150」を2020年2月14日(金)に発売します。
ADV150は、「限界を超えていく都会の冒険者」を開発コンセプトに、スクーターの魅力である快適性や利便性、機動力に加え、個性的で力強い外観と優れた走破性により、通勤や通学から趣味や非日常も楽しめる軽二輪スクーターを目指しました。
高剛性なダブルクレードル構造のフレームに、耐久性と静粛性、燃費性能に優れたスクーター用グローバルエンジン「eSP(イーエスピー)」※1を搭載。また、足まわりを専用設計とすることにより、未舗装路から高速道路までのさまざまなシチュエーションで快適な乗り心地を実現しています。さらに、より便利にエンジン始動ができる「Honda SMART Key システム」や、ハザードランプを高速点滅することで急ブレーキをいち早く後続車に伝える「エマージェンシーストップシグナル」を採用するなど、装備を充実させています。
カラーリングには、タフでありながら高品位なイメージのマットメテオライトブラウンメタリック、精悍で落ち着きのあるマットガンパウダーブラックメタリック、明るく情熱的な色調のゲイエティーレッドの全3色を設定しています。
※1 enhanced(強化された、価値を高める) Smart(洗練された、精密で高感度な) Power(動力、エンジン)の略で、低燃費技術やACGスターターなどの先進技術を採用し、環境性能と動力性能を高めたスクーター用エンジンの総称です
- ●販売計画台数(国内・年間) 3,000台
- ●メーカー希望小売価格 451,000円(消費税抜き本体価格 410,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- ADVの主な特徴
- 足まわり
- ・フロントサスペンションは、クラス最長※2の130mmのストローク量を確保。リアサスペンションは、120mmのストローク量とし、放熱効果の高いリザーバータンク付きを採用することで安定した減衰力を発揮。3段レートのスプリングにより、優れた路面追従性を確保し、二人乗りや荒れた路面などの走行時にも快適な乗り心地を実現しています。
- ・前後ブレーキにウェーブディスクを採用するとともに、フロントのみが作動する1チャンネルABS※3を装備。さまざまな路面での制動時の安心感を高めています。
- ・ホイールとブロックパターンのチューブレスタイヤを新開発。市街地での不意な路面の変化にも安心感を与え、未舗装路や荒れた路面から高速道路まで優れた走破性を実現しています。
- パワーユニット
- ・エンジンは、燃費の良さや扱いやすく力強い出力特性で好評の、軽量・コンパクトな水冷・4ストローク・149cc単気筒エンジン「eSP」を搭載。低速走行時の力強さや、荒れた路面での扱いやすさを重視したセッティングとし、低・中速域での伸び感のある出力特性を実現。アイドリングストップ・システムを採用し、環境性や静粛性にも対応させています。
- スタイリング
- ・タフでアクティブな洗練された外観と、機能的なパーツで構成されたアドベンチャースタイリングを具現化。機能部品を車体センターに集中させることで、凝縮感のあるボディーデザインとし、アクティブなアドベンチャーモデルの印象を追求。マフラーは前後長を抑えたコンパクトなデザインにするとともに、マフラーエンドを高い位置に配置することでさまざまなシチュエーションにマッチしたタフなアドベンチャーテイストを表現しています。
- 電装・装備
- ・スクリーンは、新開発のスライドロック機構により、簡単でスピーディーな操作で2段階の高さ調整を可能としています。
- ・全灯火器にLEDを採用。視認性のみならず、軽量コンパクトかつ省電力化に貢献しています。
- ・スクエア形状の液晶スピードメーターを採用。各種インジケーターを別体のセパレートメーターに集約することで、情報表示量と視認性を両立しています。
- ・ラゲッジボックスの容量は27L、フルフェイスヘルメット1個※4の収納を可能とするなど、日常の使い勝手から長距離のツーリングまで多様な荷物の積載に対応しています。
- ・アクセサリーソケット付きインナーボックスは、2Lの容量を確保しています。
- ・Honda SMART Keyシステムを採用。スマートキーを携帯して車両に接近することで、衣類のポケットなどからスマートキー自体を取り出すことなく、メインスイッチノブの解施錠を可能としています。
- ※2 Honda調べ。2019年12月時点。(150ccスクータークラスにおいて)
- ※3 ABSはライダーのブレーキ操作を補助するシステムです。ABSを装備していない車両と同様に、コーナー等の手前では十分な減速が必要であり、無理な運転までは対応できません。ABS作動時は、キックバック(揺り戻し)によってシステム作動を知らせます
- ※4 ヘルメットのサイズや形状によっては収納できない場合があります
主要諸元
車名型式 | ホンダ・2BK-KF38 | |
---|---|---|
ADV150 | ||
発売日 | 2020年2月14日 | |
全長×全幅×全高(m) | 1.960×0.760×1.150 | |
軸距(m) | 1.325 | |
最低地上高(m)★ | 0.165 | |
シート高(m)★ | 0.795 | |
車両重量(kg) | 134 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※5 | 54.5(国交省届出値 定地燃費値※6 60km/h 2名乗車時) | |
44.1(WMTCモード値 クラス1※7 1名乗車時) | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | 1.9 | |
エンジン型式 | KF38E | |
水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ | ||
総排気量(cm3) | 149 | |
内径×行程(mm) | 57.3×57.9 | |
圧縮比★ | 10.6 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 11[15]/8,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 14[1.4]/6,500 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置(PGM-FI) | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスター式バッテリー点火 | |
潤滑油方式 | – | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 6.0 | |
クラッチ形式 | – | |
変速機形式 | 無段変速式(Vマチック) | |
変速比 | – | |
キャスター(度) | – | |
トレール(mm) | – | |
タイヤサイズ | 前 | 110/80-14M/C 53P |
後 | 130/70-13M/C 57P | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式シングルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | ユニットスイング式 | |
フレーム形式 | ダブルクレードル |
■道路運送車両法による型式認定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/Thai Honda Manufacturing Co., Ltd. 製造国/タイ 輸入事業者/本田技研工業株式会社
※5 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※6 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※7 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます