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試乗・解説





■試乗・文・撮影:毛野ブースカ
■■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor//

 ついにこのバイクに乗る時が来た。ツーリング先だけではなく通勤時にも必ず1台は見かけるこのバイクは、スーパーカブシリーズ、PCXシリーズに次ぐホンダのバイクラインアップの3本柱であり、軽二輪車(125㏄~250㏄)クラスでダントツの売り上げを誇る。このバイクの名前はホンダのRebel(レブル)250である。この記事をお読みの方なら「あ~、あのバイクね」と反応するだろう。もしかしたらレブル250のオーナーの方もお読みになっているかもしれない。2017年の販売開始から8年が経った今でも人気が衰えるどころか、ますます人気が高まっている。今や国民的バイクになりつつある。

 試乗するモデルは、レブル250の中でも売れているSエディションのEクラッチ仕様である。SエディションとEクラッチの説明は後述するとして、今回の実走検証は実燃費の計測や走行時の印象もさることながら「Eクラッチの実力」と「レブル250が売れている理由を探る」ことも重要な課題である。以前、実走検証で兄弟機種のCL250に試乗した際の印象があまりにも良かったので、その印象を持ちつつレブル250に試乗してみたい。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
アメリカンクルーザーらしさを持たせつつ、そのイメージに固執しない独特なスタイルを確立したレブル250。発売以来、多くのヤングライダーや女性ライダーを惹きつけている。今回の試乗車の色はパールカデットグレー。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
後から見るとシート高とリア周りが低く、フラットなハンドルに加えて高い位置に燃料タンクが設けられている。このアンバランス感がレブル250らしさを引き出している。

「もっと気軽に、手軽にバイクを楽しんでほしい」という観点から「SIMPLE」「RAW(未加工の素材)」をデザインコンセプトに2017年に登場したレブル250。今まで数度のマイナーチェンジは行なわれているものの基本的なデザインは変わらない。長めのホイールベースやワイド&ファットサイズの前後タイヤなど一見するとアメリカンクルーザーのように見える。しかし、やや立ち気味のフロントフォークやフラットなハンドル、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒250ccエンジン、車体の中央付近に設けられたステップ、やや高めの位置にある涙的状の燃料タンクとナロースタイルのフレームボディによる高低差のあるデザイン、足着き性を追求したシート高など、アメリカンクルーザーにはない要素が盛り込まれている。このクルーザーっぽく見えてクルーザーではない独特なスタイルは「レブルスタイル」と呼んでも過言ではない。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
アメリカンクルーザーとは違って車体の中央付近にペダルが配置されており、アップライトなライディングポジションが得られる。フロントフォークは一般的なアメリカンクルーザーほど寝かされていない。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
リアからフロントにかけて盛り上がるようなスタイルは他社のアメリカンクルーザーにも影響を与えており、250㏄クラスとは思えないボリューム感を演出している。ホイールベース長は1,490mmでCL250のより5mm長い。

 街中やツーリング先でレブル250は何度も見かけてはいるが、実車を改めて見ると独特なスタイルが際立っている。一言で表すなら「カッコいい!」。ブラックアウトされた足周りに加えて、太めのタイヤや押し出し感のあるハンドルや燃料タンク、ロープロファイルなシートやリア周りなど、250㏄クラスとは思えない存在感を放っている。レブル250はヤングライダーや女性ライダーから支持されており、パリッとしたライディングジャケットからカジュアルなスタイル、ビルが立ち並ぶ都会から大自然が広がるシチュエーションまで幅広くフィットする。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
フロントタイヤは130/90-16M/C 67H。正立フロントフォークはφ41mmで、Sエディションにはフォークカバー、フォークブーツが装着されている。今回試乗したSエディションのEクラッチ仕様のみキャストホイールがブロンズ色となっている。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
ヘッドライトはCL250と共通のφ175mmのアウターレンズ内に4眼LEDライトが配置されている。上2灯がロービーム、下2灯がハイビームとなっている。Sエディションはボディと同色のヘッドライトカウルが装着されている。

 試乗車のSエディションは、レブル250の純正アクセサリーの中でも人気のあるヘッドライトカウル、フォークカバー、フォークブーツ、スペシャルシートがあらかじめ装着されている。それらのアクセサリーが装着されていることも存在感を高めている一因かもしれない。ボディカラーはイマドキの色っぽいパールカデットグレーで、他にアメリカンクルーザーっぽいパールシャイニングブラックが用意されている。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
Eクラッチ仕様の追加に合わせてフラットなハンドルは従来モデルに比べて幅が狭くなり、6.5mm手前に、5mm上にポジションが変更されている。写真では見えていないがEクラッチは手動によるクラッチ操作ができるので、ハンドル左側にクラッチレバーが装着されている。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
メーターはハンドルホルダーにマウントされているφ100mmの小型反転液晶メーターはCL250と共通。速度計、ギアポジションインジケーターやオドメーター/トリップメーター、燃費、燃料計、時計が表示される。Nの上にあるマークがクラッチ自動制御インジケーターだ。

 そして、今回試乗するモデルの最大の特徴は「Eクラッチ(Honda E-Clutch)」が標準装備されていることだ。EクラッチはCBR650RとCB650Rに搭載されており、250㏄クラスではレブル250が初搭載となる。Eクラッチとはクラッチコントロールを自動制御化することでクラッチ操作をせずに発進、変速、停止できるシステム。電子制御中でもクラッチレバーを操作すれば手動でクラッチコントロールできる。スクーターに搭載されている無段変速機やDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)とは異なる。変速ボタンやパドルシフトを押せば変速するいわゆるセミオートマチックではない。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
CL250と同様メインキーは燃料タンク下左側、ハンドルロックはハンドル基部右側に設けられている。ハンドルロックを解除しないままイグニッションをオンにしないように注意しよう。

 シフト操作そのものは足で操作するが、クラッチを切ったり繋げたり、半クラッチする動作を自動で行ってくれるのだ。エンジンにユニットをポン付けしたではなく、エンジン制御ECUと、Eクラッチのモーター制御を行うMCU(モーター・コントロール・ユニット)がCAN通信で繋がっており、車体の制御が総合的に行われている。エンジン右側に装着されているコンパクトなユニットの中にホンダのテクノロジーが凝縮されている。

 Eクラッチの特徴を頭の中に思い浮かべつつ跨ってみて即感じるのがシート高の低さ。私が今まで試乗したバイクの中で最も低い。それゆえに足着き性はバツグン。車体の中央付近にあるステップは、クセのあったCL250よりも前寄りで足が載せやすく足も地面に着きやすい。低めのシートと合わせて無理がなく跨りやすい。燃料タンクは見た目以上に高い位置にあり、その先にあるフラットなハンドルは想像よりも握りやすい位置にあり、腕が突っ張るような感じはしない。アメリカンクルーザーのような上体がやや寝そべるようなポジションではなくアップライトな、やや前傾したライディングポジションとなる。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
燃料タンクからシート、タンデムシート、リアフェンダーまでなだらかに続くナロースタイルのフレームとループ状のリア周りへと繋がるデザイン。シートとその周辺の形状は軍用仕様のハーレーを彷彿とさせる。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
レブル250らしさを演出している燃料タンク。コンパクトに見えるが容量は11リットルを確保している。ニーグリップしやすいように左右がえぐられている。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
Sエディションに標準装備されているダイヤモンドステッチ風ワディング加工が施されたスペシャルメインシート。シートクッション材が変更されており座り心地が向上している。タンデムシートは独立しており、タンデムグリップなどは備わっていない。

 エンジンはCL250と共通の水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒250ccエンジン。レブル250のほうが1馬力高く、最大トルクが1kgf・m低い。低回転域からトルクフルで扱いやすく、高回転域までスムーズに吹き上がる。燃料消費率は定地燃費値が47.0㎞/L、WMTCモードが34.9㎞/LとCL250と同様。CL250がWMTCモードを超える数値を叩き出しており、Eクラッチが燃費にどのような影響を及ぼすのか楽しみだ。

 エンジンを掛けるとCL250よりも鼓動感があって排気量や気筒数以上の印象を受ける。ハンドルにマウントされているメーターはCL250と共通なのでメーターの画面は肉眼だと視認できるが日中の撮影はしにくそうだ。走り出そうとした瞬間、クラッチを切りそうになったが、Eクラッチ搭載なのでクラッチ操作は不要。恐る恐るスロットルを開けるとエンストせずにクラッチが繋がって車体が前に進み始めた。なんてことはなさそうに思えるが、半クラッチ動作を自動で行っているのは凄いことだ。

 乗り始めのライダーにとって難関のひとつがクラッチ操作であることはみなさん経験済みのはず。特に低速走行時の半クラッチは慣れないとエンストして立ちゴケを引き起こしてしまう。Eクラッチはそんな心配を軽減するシステムである。試乗前にある程度Eクラッチの特徴を理解していたものの、Eクラッチの凄さを実感したのは、発進時や低速走行時の半クラッチ動作の実現である。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
レブル500と同様のフレームに収まる水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒250ccエンジン。最高出力は19kw(26PS)/9,500rpm、最大トルクは22N・m(2.2kgf・m)/6,500rpm。CL250と同じくアシスト&スリッパークラッチが採用されている。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
エンジン右側のクラッチカバーに装着されているのがEクラッチだ。2つの小型モーターとギア類で構成された駆動部分と、MCU(モーター・コントロール・ユニット)、クラッチのリフターピースを作動させる三分割式のクラッチレバーシャフトを中心として、MCUと協調して制御を行うエンジン制御ECU(電子制御コントロールユニット)から成り立っている。

 車速が出てきたところでクラッチ操作せずに2速、3速、4速にシフトアップしていく。シフト操作はスーパーカブの自動遠心クラッチを操っているような感覚に似ている。自動遠心クラッチは機械制御だが、Eクラッチは電子制御という違いはあるものの、Eクラッチも1速に入れた状態では進まない。逆に言うと6速に入れたままでも進まないし、その状態でスロットルを開けると進んでしまう(もちろんスピードは出ないが……)。

 シフトアップする時に気になったのがスロットルの操作方法。通常、スロットルを戻しつつクラッチを握り、シフトチェンジ後にスロットルを少し開けるのが一般的だ。ホンダのEクラッチクイックスタートガイドには「スロットルを開けたままシフトアップがおすすめ!」と記されている。今回、このホンダ流を含めて複数のパターンでシフトアップしてみたが、スロットルを少し戻しつつシフトアップするとクラッチが徐々に繋がっていくようにズルズル加速する時があり、かと言ってそのような現象が起きずスパッと繋がって加速する時もある。細かな制御を行っている証拠ではあるだろう。一方、ホンダ流は確かにスムーズに加速していくものの、スロットルを戻さずにシフトアップするのに抵抗を感じる方もいるだろう。最終的にはあまり意識せずにシフトアップするようになったが、オーナーになった方は自分が操作しやすい方法を選んで走ってほしい。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
Eクラッチを上方から見たところ。クラッチレバーから伸びているクラッチケーブルが確認できる。クラッチレバーシャフトをクラッチ側、手動操作側、モーター制御側の3分割構造にすることで手動によるクラッチ操作を可能にしている。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
ステップは足を投げ出すような位置にあるアメリカンクルーザーとは異なり車体の中央付近に設けられている。シート形状とあいまって足が載せやすく停車時も足が伸ばしやすい。ワイドタイプのステップには着脱できるラバーが装着されている。

 減速時はクラッチ操作せずにそのままシフトダウンするのだが、速度域に適したギアにするように(下げるように)ダウンシフトマークとクラッチ自動制御インジケーターが点滅する。特に低速域(10~30㎞/h、2~3速)は点滅を繰り返す。渋滞中のノロノロ運転(10~20㎞/h)だと半クラッチ制御が頻繁に行なわれており、エンストする心配はないが普段マニュアル車に乗っている者としてはクラッチを手動で操作して速度制御したくなってしまう。とはいうものの低速走行時にエンストしないことは実に素晴らしい。Eクラッチの実力を目の当たりにすることができた。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
今回気になったのがステップとEクラッチの位置関係。足を開き気味にして乗車すれば問題ないのだが、足を閉じてニーグリップしようとした場合、熱くなったEクラッチに脛が触れて「あちっ!」となることがしばしばあった。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
CL250と同様、スタンドはサイドスタンドのみとなっており、センタースタンドはオプションでも用意されていない。

 シート高が低いおかげで足着き性はいいが、燃料タンクが高い位置(重心が上のほう)にあるせいか、停車時に片足で着いているとフッと倒れそうな時がある。停車時は両足を着いたほうが良さそうだ。車体は174㎏と軽いが、押して歩く際はシートが低くリアキャリアやタンデムグリップが備わっていないためハンドルを両腕だけで支えながら押して歩かなくてはならず、腰にシートを当てながらの転回操作がしにくいと感じた。小柄な方や筋力に自信がない方は跨った状態で移動することをお薦めする。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
リアフレーム左側にヘルメットホルダーが標準装備されている。意外と装備されている機種が少ないので、これはありがたい。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
CL250と同じφ45mmパイプスイングアームを採用。ループ状のフレームにマウントされたツインショックはCL250に比べて前方に寝かされている。リアタイヤは150/80-16M/C 71H。

 Eクラッチの特性や気になった箇所はあったものの見た目がカッコ良く、CL250と同様シンプルで扱いやすくて非常に乗りやすい。乗車姿勢に無理がないアップライトなライディングポジションで、足着き性は申し分ない。トルク感があってエンジンはスムーズに回転するものの速度が上がっていく感じはジェントルで、渋滞が頻繁に発生する都内の一般道であってもEクラッチのおかげでエンストの心配せずに走行に集中できる。これだけも充分に魅力的だが、他にもライダーを引き寄せる魅力や特徴があるはずだ。「レブル250が売れている理由を探る」については後編でじっくり考えてみたい。

 今回の実走検証では、通勤からツーリングまで使われることが多いレブル250のキャラクターに合わせて通勤とツーリングを含めた総合燃費とした。ツーリングの行き先は新潟県の上越・中越地方だ。目標実走距離は950㎞。果たしてどのような結果になるのか。(試乗・文・撮影:毛野ブースカ)

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
ロープロファイルなスタイルに適したブラック仕上げのシンプルなマフラー。排気音は徹底的にチューニングされており、エンジンのメカニカル音と合わさって250㏄の単気筒エンジンとは思えない排気音が体感できる。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
アルミダイキャスト製リアフレームに装着されたメタルフェンダーには薄型楕円形状のユニットにLEDを採用したテールランプがローマウントされている。

#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
筆者の身長は168cm、体重77㎏。サスの沈み込みは少なくシート高が690mmのおかげで膝が曲がるほど余裕があり、足がぺったり着く。CL250に比べてステップの位置が前にあるので足が自然に着地できる。
#Honda Rebel 250 S Edition E-Clutch
ステップに足を載せてライディングポジションをイメージしたところ。足の角度はほぼ直角で上体はやや前傾姿勢となる。ハンドルを曲げない状態だと肘が曲がるほどゆとりはあるものの、どちらかと言えば手が長い私でも切り込んだ際にハンドルがやや遠く感じた。

●Rebel 250 / E-Clutch / S Edition E-Clutch 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ■総排気量:249cm3■ 最高出力:19kw(26PS)/9,500rpm ■最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6,5000rpm ■全長×全幅×全高:2,205×810×1,090 ■ホイールベース:1,490mm ■最低地上高:134mm ■シート高:690mm ■車両重量:171[174]<175>kg ■燃料タンク容量:11L ■変速機形式:常時噛合式6速リターン ■フレーム形式:ダイヤモンド ■懸架方式(前・後):テレスコピック・スイングアーム ■ブレーキ(前×後):油圧式ディスク × 油圧式ディスク■タイヤ(前×後):130/90-16M/C 67H × 150/80-16M/C 71H ■車体色:マットディムグレーメタリック [マットガンパウダーブラックメタリック、マットフレスコブラウン] <パールシャイニングブラック、パールカデットグレー> ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):638,000円[693,000円] <731,500円> ※[ ]はE-Clutch、< >はS-Edition E-Clutch


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2025/09/19掲載