「モーターショー」が「モビリティショー」となって2回目。ジャパンモビリティショー2025は前回よりも「ちょっと未来」が見えるショーでした。
- ■文:中村浩史 ■写真:森浩輔
 東京モーターショーがジャパンモビリティショーとなって2回目。初開催だった2023年の開催では、ちょっと面食らった人が多かったように思います。長年慣れ親しんだ、バイクのニューモデルをたくさん見られるモーターショーが、「未来を提案」するモビリティショーになったからか、会場でも「あれ? コンセプト車ばっかり? ニューモデルはどこ?」なんて声が多かったのです。
 バイク界の未来といえば、「バッテリー+モーター」の、非ガソリンエンジンを使う電動バイクがメイン。もちろん、それだって重要なことですから、メーカーが研究開発している「未来」を提案してくれて、それを目にすることは大事なこと。これぞモーターショー、という意見だってありました。
 しかし「未来」という姿は、悲しいかな現実的ではなく、ピンとこないもの。しかも、提案する未来が先であれば先であるほどピンとこない、大事だけれどワクワク感の少ないものになってしまうのです。逆説的に言えば、それほど現在の「ガソリンエンジンのバイク」が魅力的だってことです。
 第1回モビリティショーから2年。この間もバイクを取り巻く環境は大きくは変わりませんでした。それでも「未来への時計の針」は少しだけ動きました。今までスーパーカブ系が走り回っていた郵便配達に電動スクーターが使われたり、ホンダの「e:」シリーズやヤマハのE-Vino、スズキは電動自転車的なe-POを公開し、カワサキはNinja / Z e-1やNinja7 / Z7ハイブリッドの発売を開始、BEV(バッテリーEV)だけでなく、水素バイクであるNinja H2 SX水素プロトタイプも公開しました。未来はすぐそこまで来ているのかもしれませんね。
 それでも、2025年開催のジャパンモビリティショーは、「未来」すぎない、「ちょっと明日」が見えるよう、バランスが取れていたように思います。もちろん、4メーカーとも電動バイクの提案をしつつ、現行のガソリンエンジン車も忘れていませんでした。
 このバランスがいい、と感じたモビリティショーでした。未来へは、少しずつ近づいたほうがいいナ。
ホンダのコンセプトモデルである「アウトライヤーコンセプト」に感心しつつ、隣に展示されているニューモデル、CB1000Fに見入ってしまう筆者は、オールドタイプのバイク乗りなのかもしれません。
(文:中村浩史、撮影:森 浩輔)
■HONDA
Hondaが発表したEVコンセプトモデル。アーバンコンセプト(左)とアウトライヤー。モビリティショーに見える「未来」の形のひとつでした。
 
 
 
アウトライヤーは大型モデル相当のバッテリーEVスポーツ。前後ホイール内蔵のインホイールモーターで、従来のエンジン位置をフリーにすることで、この独特なフォルムを可能にした。クルーザーともまた違う視線の高さで、グライダーのような、無音無振動で滑るように走る感覚を可能にする乗り味を目指したのだと言います。
 
 
こちらは従来のバッテリー+モータースタイルのEVアーバン。2024年のEICMAでも発表したモデルで、前回公開の姿より一歩将来を見据えたのだそうです。スクータースタイルで市街地を走るというカテゴリーは、バッテリーEVの中でも実現に近いのだと言います。両者とも2035年あたりをイメージして開発したそうです。
 
 
 
こちらは11月4日発売予定のCB1000F(ビキニカウル付き1000SEは2026年1月16日発売)。未来のシステムや形だけではなく、ちょっと明日の姿を見せてくれました。左はモリワキエンジニアリング製作の、九州HSRで開催された鉄馬レースに出場したレーシングマシンプロトタイプ。
 
 
旧モーターショーや春のモーターサイクルショーに見られる跨がりOKコーナーも。こういったコーナーこそ、モビリティショーで楽しみにしたいコーナーです。
 
 
 
Dax125とハンターカブの向こうには、Hondaグッズの物販コーナー。僕らが取材にお邪魔したのはプレスデーだったのですが、もう買い物をしている方々も見受けられました。そしてその中央には!↓下に続く
 
 
モンキー125のカラーリングカスタムなんですが、旧モンキー50、通称4Lモンキーのカラーリングを再現しています。モンキーってこういう遊びも続々と楽しめるんです!
 
 
 
■YAMAHA
トライセラプロトと名付けられた、これはクルマ的なEVですね。前二輪/後一輪の三輪ビークルで、三輪操舵で、ヤマハの目指す人機一体を突き詰めたモデルです。三輪はトリシティナイケンがありますが……三輪操舵はバイクでは無理でしょうかね。
 
 
 
2017年に発表されたモトロイドは自立するtype1、2023年はライダーに歩み寄るtype2に進化。今回のtype3といえるΛ(ラムダ)はAI技術で学習し、自ら成長するモビリティです。ヤマハの研究開発は「モビリティ+強化学習による運動制御」エリアに進んでいるのだそうです。
 
 
ヤマハがトヨタにエンジンを供給している事実は有名ですが、このαliveエレクトリックエンジンは、自動車メーカーへの供給を目的としたクルマ用の電動駆動ユニット。モーターとインバータ、さらにミッションを一体化したユニットで、バッテリー系統を設計してシャーシに搭載すればOK。完成車製造だけじゃなく、エンジン供給という事業も進めると面白そうです。
 
 
 
 
電動車椅子シリーズはONE-MAXアーバン(右)とヒストリカル。車椅子に電動化ユニットを取り付ける方式で、移動だけでなく「旅する車椅子」イメージしたと言います。スポーツする車椅子があるんだから、旅する車椅子を望んでいる人も多いのだと思います。
 
 
ヤマハがPASシリーズで世の中に広めたといってもいい電動アシストサイクル。写真のBricolageは、電チャリらしからぬクラシックなスタイルがイイ、とてもイイ! ヤマハの第一号車YA-1イメージでもあるのです。
 
 
 
電動スクーターに見えますが、トヨタ共同開発中の水素エンジン搭載モデル。水素エンジンは巨大な水素タンクが必要なんですが、その小型高圧タンクをトヨタが新規開発、ヤマハが水素エンジンや車体を開発したもので、実走実験で水素満タン100km走行を記録したそう。水素ガスステーションインフラ整備も待ちたい未来技術です。
 
 
プロトPHEVと名付けられたプラグインハイブリッドスポーツ。エンジンとモーターの駆動を切り替えられ、高いスポーツ性と高い環境性能を兼ね備えています。
 
 
 
こちらはプロトHEV名付けられたモーターとエンジンのハイブリッドモデル。ミドルクラススクーターで、エンジンとモーターを切り替えて走行可能。従来エンジン車より燃費は35%以上向上!
 
 
プロトBEVと名付けられたスーパースポーツ電動バイク。バッテリー+モーターの軽量コンパクト化を突き詰めればこういったカテゴリーも可能、という提案ですね。
 
 
 
バッテリー車と並んで展示された、XSR900GP、ヤマハインターカラーバージョン。未来とは正反対の1980年代のオマージュですが、黒山の人だかりでした。
 
 
これも未来とは全く正反対の、化石燃料使用のレーシングマシン、YZF–R1鈴鹿8耐参戦モデル。まだまだレースの世界ではガソリンエンジン(にサステナブル燃料とかで)に頑張って欲しい!
 
 
 
■SUZUKI
実際の目的やボディは使用する側に任せて、駆動ユニットはスズキにまかせろ!なモデル。MITRAコンセプトと呼ばれる電動ユニットで、このボディに箱を乗せればカーゴになるし、自走できないロボットを積めば配送ロボットやモニタリングシステムができる、というもの。これもモビリティメーカーの強みを活かした未来像ですね。
 
 
スズキの名車VanVanをモチーフにしたBEVコンセプトモデル、e -VanVan。バッテリー+モーターの先進性と、レジャーバイクの名車をモチーフにした楽しさは、ぜひ実現して欲しいです!
 
 
 
すでに鈴鹿8耐で本邦初公開されたGSX−8TとGSX−8TTが東京でも実写公開! 発売以来スマッシュヒットを続けるGSX−8S/Rのスタンダードスタイルバージョン。日本発売が待ち遠しい一台です。
 
 
 
スズキが提案するCBG事業は、圧縮バイオメタンガス燃料にエンジンを動かすこと。インドに生産拠点を持つスズキらしく、酪農廃棄物資源化することをカーボンニュートラルの一手にしようというもの。シート下にうんちくんのぬいぐるみがあるのは、牛のうんちも大事な資源だよ、というアピールだそうです。
 
 
走行中にCO2を出さない水素エンジンも研究中のスズキ。実はスズキは15年も前から、世界に先駆けて水素エンジンのバーグマン・フューエルセルの実証実験を、北九州で行っていたのです。水素エンジンは既存のガソリンエンジンから小さい変更で実用化できる注目されています。あとは水素スタンドのインフラなんですねぇ。
 
 
 
 
ハヤブサミーティングやGSX−S/Rミーティングにきちんと顔を出してくれるバイク乗りの鈴木俊宏スズキ代表取締役社長。フルバンクGSX−Rでこんなことやてくれる社長、いませんよね。撮影:舟橋 朗
 
 
ということで、スズキ物販ブースに俊宏社長のアクスタも販売されていました。社長、こういうの作っていいですか?ってお伺いを立てた人すごいし、OKしてくれた俊宏社長すごい!
 
 
 
■KAWASAKI
2024年の鈴鹿8耐でお披露目された、カワサキNinjaH2SXベースの水素エンジンモデル。実は水素エンジンは、バイク4メーカーとトヨタが共同で設立した「HySE」という研究協同組合で研究開発が進んでいて、そのカワサキバージョンがこの車両というわけです。カワサキは水素輸送から運搬まで重工でできるキーカンパニーなんですね。
 
 
 
水素エンジンのNinjaH2SXの隣に展示されていたエンジン単体。水素エンジンは、従来のガソリンエンジンと基本構造がほぼ同じで、大幅な変更なくカーボンニュートラルに近づける技術なのです。ガソリンエンジンを開発してきた歴史をそのまま使用できるところが注目されている原因なんです。
 
 
カワサキブースのメインステージには、新登場のZ1100とベール包まれた2台が展示されていました。ナンダナンダと騒いでいたら……↓下に続く
 
 
 
初のモデルチェンジを受けたニューZ900RSが初公開されました。ニューZ900RSは電子制御スロットルとなってクイックシフター、クルーズコントロール搭載が可能となり、スマホも連結できるライダーサポートが充実しています。ハンドル形状も変更、マフラーデザインにも小変更がありました。詳細は近日掲載!
 
 
ビキニカウルつきの900CAFEは、往年のマッハをイメージさせるレインボーグラフィックも追加されました。赤マッハ、青マッハ、レインボーマッハに、ついにレインボーRS誕生です。
 
 
 
■BMW
BMWはすでに市販されているCE2を展示。BMWのショールームに展示されていることも多く、バイク乗り以外にも、BMW(クルマのね)ユーザーに注目されています。約120万円で買える未来です。
 
 
こちらは2025年のワールドスーパーバイクチャンピオンマシン、M1000RR。BEVとは真逆にいる、化石燃料を使用するスーパースポーツキングです。こちら218psで消費税込み502万2000円。
 
 
 
■The Others
台湾ガイアスが展示する三輪BEV。カーゴに特化したモビリティで、ラストマイルデリバリー、つまり大型車で拠点まで物流あって、そこから家庭や事業所に届ける乗りものというわけ。詳細
 www.gaiusauto.com へ。
 
 
オランダRIJDEN(ライデン)が展示したのは、電動アシスト自転車&カーゴバイク。写真のモデルはいわゆるリヤカーで、これも電動アシストすると、こんなにラクな生活になる!って好例でした。詳細はライデンジャパン
 https://rijden.jp 。
 
 
 
これもバイクっぽいけど特定小型原付モデル。注目したのは、四輪のチャットカート(税込27万8000円)、二輪のチャットバイク(22万2000円)のお求めやすさでした。チャットバイクは前後輪にモーターを搭載しています。詳細はモビリティクリニックエベサー 
 www.ebesah.co 。
 
 
和歌山スタートの国産ブランド、グラフィットの特定小型原付。写真は前二輪、後一輪のNFR−T1で、オフロード路面対応のサスペンション搭載モデルだそう。詳細はグラフィット
 https://glafit.com 。
 
 
 
最後は「わ!トヨタが二輪を?」ってネタですが、これは新しく登場したランドクルーザーFJに積める折りたたみ電動パーソナルモビリティ。実は前回のモビリティショーにも出展されていて、ランクルで踏み入った先のダートも走れるようにフレームも強化しました、ってことでした。発売は未定、まだ開発中だそうです。