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レース・イベント






公益社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)では、身体に機能障がいのある方々を対象としたバイクの体験会である「パラモトライダー体験走行会」を定期的に開催。さらには、そこで誕生したパラモトライダーを誘って箱根をツーリングする「やるぜ!! 箱根ターンパイク」を4年前から開催もしている。そのSSPが新たな挑戦を目指しある活動を開始している。
■文・写真:青山義明 ■協力:公益社団法人SSP

サイドスタンドプロジェクトの新たなる野望は
視力障がいを持つパラモトライダーの箱根ツーリング!

 先日、神奈川県川崎市にある向ヶ丘自動車学校で、公益社団法人SSPが主催する『パラモトライダー体験走行会』が開催された。SSPは、2度のWGP(GP125)世界チャンピオンを獲得した青木治親が理事を務めている公益社団法人だが、身体に機能障がいを持つ方々を対象にバイクに乗る体験の場として開催している『パラモトライダー体験走行会』はその主たる活動のひとつ。これまで6年にわたる活動で多数のパラモトライダーを輩出している。

 この体験走行会の場に、今回初めてボランティアとして参加したのが静岡大学の『二輪車情報学研究室』の木谷友哉教授以下4名であった。パラモトライダーの走行のサポートを行いながら、実際にパラモトライダーからの話を聞いたりしたという。

 木谷教授の研究室は、二輪に特化してその車体や周辺環境をセンシングする高度交通システム(ITS)の研究を行っている。「ちょっと前に治親さんが研究室まで来てくださって、SSPの活動を教えていただきました」と木谷教授。そこで治親代表から聞かされたのが、視覚障がいを持っている方でも箱根を走行できないだろうか、という相談だったという。この2輪のセンシング技術を用いれば、パラモトライダーのサポートができるのではないか、ということからだったという。

 SSPが毎年秋に開催しているパラモトライダーによる箱根ツーリング『やるぜ!! 箱根ターンパイク』は、パラモトライダー体験走行会で一定のレベルをクリアした障がい者に、一般公道をツーリングすることができる機会を、と箱根ターンパイクを専有する形で2022年からこれまで3回開催。2025年10月12日(日)にも4回目の『やるぜ!! 箱根ターンパイク』を開催予定である。

#木谷友哉教授
#木谷友哉教授
ファインモータースクール上尾校で毎年4月29日に恒例開催となっている「まるごとバイクフェスティバル」に「静岡大学・二輪車情報学研究室」がブース出展(左から2人目が木谷教授)。

 視力障がいの方の『パラモトライダー体験走行会』での走行は実現できているが、まだ箱根のツーリングは実現できていない。SSPではすべての人にバイクに乗る楽しみを、というコンセプトで活動を行っており、そこで盲目のライダーにもツーリングを楽しんでもらいたいと思っており、それを実現させたいという壮大な目標を持っている。

「盲目の方に走ってもらうってすごく高いハードルだなと思ったんです。自動運転に近いような制御とかって難しいんです。位置情報だけによる自動運転となると、早くても1秒間に20回とかの単位でしか位置情報が出てこないので、全然間に合わないんじゃないかな」
 木谷教授は最初にそう思ったという。

#木谷友哉教授
2021年9月、糖尿病の合併症による網膜症で失明していた縫田政広さん(故人)が、千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイを1周した。この記録はまだ誰も塗り替えていない。

「でも、もうすでに盲目のライダーがサーキットで走っているという話を聞かせてもらって、実際に動画を見させていただいたら、サーキットで後ろから伴走車がつきながら、インカムで指示を出してて。人間が後ろから声を出して『右ですよ』、『左ですよ』っていう感じになるなら、すごく精密じゃなくてもいい。意外と現在の位置情報がわかって、バイクをちゃんと自立させるのはそのライダーさんがやってくれて、ただ、道路の上でどっちの方にズレてるかっていうことだけを教えてあげればよいとなると、そんなに難しくないなと思いました。
 今我々が使用しているセンサーですとセンチメーター精度で位置情報が取れます。遅延時間は大体1/10秒も遅れません。あとは、走行をする箱根の道のセンチメーター精度の精密な地図を用意すれば、今、車線のどの辺にいるかっていうのは、これはかなり高い確率でわかります。データの外れ値みたいなものについては、加速度センサーとかをつけたりして時系列の情報を整理すればちゃんと検出できますし。めちゃくちゃべらぼうなスピード出すわけでもないですしね。
 今道路上のどのあたりを走っているというのを判断して、右の方に寄った方がいい、左の方に寄った方がいい、このままでいいというようなものを、機械的に判断して指示を出すというような仕組みを作るだけだったら、半年あればできるとは思います。
 ただ実際に情報を提示するときに、どう伝えた方がいいのか? 『ピーピーピー』とか『ポンポンポーン』とか特徴的な音が良いのか? そういった音は、完全なオンタイムでやるのか、少し手前で出すのか、どういう間隔で出せばいいのか? とか、ステレオ的にどのくらいの強弱で出せば判断できるのか? 騒音がある走行中のバイクでと考えると事前にテストをしなければいけないと思ってます。シミュレーターみたいなものを作って、ゲームのような感じで音だけを頼りにちゃんと操作できるかみたいなことをやって、コンスタントにしっかり走れると確認できてから公道に出る、という段階を踏めば、より危険性を下げたりとかできるじゃないですか?」
と、その実現については問題なさそうだ。

#木谷友哉教授
#木谷友哉教授
静岡大学・木谷教室は「まるごとバイクフェスティバル」でデモンストレーションを行った。『ゆったり体験走行会』の先導車に乗る教官のヘルメット(ライダーの頭の位置を継続)と、車体側(車両の動きを計測)の2つのセンサーを搭載し、試乗コース内をどのように走行したのか、車体とライダーの位置を見ることでどのように乗り出しているのか、スムーズなロールができたのか? ロール角は一定か? といったことも分析が可能となる。

「ただ、色々試してみないとわからないところ結構ありますんで、やっぱりそのあたりの信頼性であるとか、受け入れてもらえるかどうか、そのユーザーさんの受容性みたいなものも含め、テストに結構時間かかるんじゃないかなとは思います。研究室の中でできることと、実車に乗らないとわからないことっていうのもあると思いますんで、実際に試していただくような機会があるのかわかりませんが、ある程度試行錯誤しながら、そこそこ時間がかかりそうな気はしますね」

 ファインモータースクール上尾校で毎年4月29日に恒例開催となっている『まるごとバイクフェスティバル』では、木谷教授の『静岡大学・二輪車情報学研究室』がブースを出展した。『まるごとバイクフェス』の人気メインコンテンツとして多くが参加した『ゆったり体験走行会』の先導車にセンサーを装着し、このブースのPCの地図上にリアルタイムにその先導車の動きを描き出していた。

 この研究の先に、2輪の世界での先進安全技術の研究はもちろん、誰もがバイクを楽しめる世界の実現があるのだが、このSSPのブラインドパラモトライダーの安全な箱根ツーリングの実現にも期待したい。
(文・写真:青山義明)


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2025/06/20掲載