サイドスタンドプロジェクト(SSP)がその主たる活動である『パラモトライダー体験走行会』を初めて開催してからわずか1年半となる2022年9月、その最終目標として掲げていた“パラモトライダーによる箱根ツーリング”『やるぜ!! 箱根ターンパイク』の実施にこぎつけた。その箱根ツーリングが3年連続で開催された。当初は例年通りの9月の開催を予定していたものの台風接近の影響でキャンセルし、この11月末の開催となったが、今までとは違う紅葉シーズン真っ盛りの箱根はパラモトライダーたちを温かく迎えていた。
■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)
伝説の青木三兄弟の次男・拓磨を再びバイクに乗せるプロジェクト『Takuma Ride Again』の実現をきっかけに、その対象を一般の障がい者にも拡大した活動を展開していこうと、青木兄弟の三男である青木治親が立ち上げた一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)は障がい者にバイクに乗る機会を設ける『パラモトライダー体験走行会』を頻繁に行っている。
『パラモトライダー体験走行会』では、参加ライダーのそれぞれの機能障がいに合わせてカスタムしたバイクをSSPが用意。機能障がいが下半身不随なら、変速ユニットを装着し手元でシフト操作ができるようにし、多くのボランティアスタッフがバイクへの移乗から発進・停止時にバイクを支えることで走行ができるようにサポートする、といった具合に、だ。
その最終的な目標というのが、一般公道のツーリングである。『パラモトライダー体験走行会』を2020年6月に開始し、わずか2年という2022年の9月にこの箱根での一般公道ツーリングを開催することができた。箱根ターンパイクは一般公道でありながらも貸し切りで占有できることから、このパラモトライダーたちのツーリングを実現できる国内でも唯一の場所といってよい環境である。
この箱根のツーリングイベント『やるぜ!! 箱根ターンパイク』は、『パラモトライダー体験走行会』でその走行のレベルが確認できたライダーをSSPが招待する形で参加を募って走行をするというもので、2023年9月には早くも2回目が開催された。そして2024年も9月に開催される予定であったが、悪天候の予報でこれをキャンセルし、11月の開催に変更となったのだ。
今回14名のパラモトライダーが集結した。『パラモトライダー体験走行会』の初回から参加している古参メンバーをはじめ、箱根のツーリングは3回目という面々が多いが、ちょうど1年前に『パラモトライダー体験走行会』へ参加したばかりの若者も初の箱根を堪能することとなった。
さすがに初冬という時期でもあり、冠雪した富士山をすそのまでしっかり見ることができる冬晴れの1日となった。ただ朝の冷え込みはあったものの、日中は過ごしやすい気温まで上昇し、ちょうどよいツーリング日和といえる1日であった。午前11時から走行はスタート。使用するバイクは自動補助輪を装着した2台(ホンダ・アフリカツイン、カワサキ・ニンジャ)を含むSSPの5台。いずれも電動アクチュエーターのシフト操作ユニットを装着している。この5台で走行グループを編成し、それを3回繰り返す形で各パラモトライダーが走行することとなった。
走行ルートは、箱根ターンパイクの箱根小田原本線を、箱根大観山口からスタートし、小田原料金所をUターンし片道約14kmの道のりを往復する(標高差は約1000m)コースとなる。パラモトライダーのヘルメットには「B+COM(インカム)」を装着してサポ-トライダーと会話ができるようにし、先導と追走の車両がパラモトライダーの車両の前後に寄り添い緊急時に対応する、という仕組みとなる。
この「やるぜ!! 箱根ターンパイク」の特徴は仲間と一緒にツーリングできるということ。各パラモトライダーが友人を誘って一緒に箱根を走ることができるのだ。事故をする前に一緒に走っていた昔のバイク仲間など、それぞれが友人・知人を最大8名まで誘って一緒に走行した。中にはこのSSPの活動で知り合ったパラモトライダー同士で一緒に走りたいという希望もあって、それも叶えることができた。
予定通り、午後2時にはターンパイクの占有時間が終了したが、それまでに全パラモトライダーが無事に事故なく走行を終えることができた。終了時に青木治親SSP代表理事は「多くの皆さんの協力を得て、3回目の箱根を無事に終えることができました。これでSSPはまた一歩大きく前進したと思っています。この箱根のイベントを来年以降も、続けられる限りやっていきたいと思っています。よろしくお願いします」とコメントした。
今回、『パラモトライダー体験走行会』に参加したメンバーもライダーとしてではなくボランティアスタッフとして多く来場し参加していたのも印象的だった。中には「まだ合格はもらえていないけど、来年こそは箱根をツーリングしたい」という箱根ツーリング参加希望者もいる。これからもこの箱根が、多くのパラモトライダーの目標としてあり続けるのだろう。
次回の「パラモトライダー体験走行会」は、12月23日(月・祝)、埼玉県上尾市にある自動車教習所のファインモータースクール上尾校での開催となる。箱根を目指す者、あのバイクの素晴らしさをもう一度自分のモノにしたいと思っている者、さらに「夢をあきらめない」という気持ちを持ち続けるためにやってくる者、参加する意味はさまざまかもしれないが、バイクを通じて幸せになれる場所であることは間違いない。ボランティアスタッフも常時募集しているので一度この場に身を置いてみることをオススメする。
(文・写真:青山義明)