レジェンドライダー・青木三兄弟の三男・青木治親が立ち上げ、代表理事を務める一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が展開している「パラモトライダー体験走行会」は、機能障がいのある元ライダーに「もう一度バイクに乗ること、そして夢をあきらめないこと」を実現するため、その活動を支えていく社会貢献活動である。
2020年6月にスタートしたSSPの「パラモトライダー体験走行会」は、事故などで機能障がいを負ってしまった方々を対象に、バイクに乗る機会を提供してきており、車いすのライダーが続々誕生している。そう聞くと、三輪スクーターみたいなバイクでしょ? というイメージを持たれることも多いが、そうではない。下半身が思うように動かない脊椎損傷者でも、シフトチェンジの操作を手動で行うようにカスタムしたバイクならば操作ができるのである。そして、その法人名にもなっているように、サイドスタンドのように誰かがバイクを支えれば、下半身不随の機能障がいがあっていてもバイクに乗ることができる、ということを実現し、健常者でなければバイクは乗れないという概念を打ち壊すことにも成功している。
多くのボランティアスタッフとともに、これまで脊椎損傷の下半身不随、大腿切断、視覚障がいとさまざまな機能障がいを持つたくさんの方々に、バイクに乗る楽しみを提供してきた。
そのSSPの活動に、今回大きなトピックがあった。国産メーカーのバイクが導入されたのである。これまでは、BMW、MVアグスタ、KTMといった海外メーカーから車両提供を受けて、この体験走行会を行ってきた。もちろん、青木代表も国内メーカーへの協力の依頼はしてきたものの、残念ながらバイクの提供は実現してこなかった。
ここに今回名乗りを上げたのがSDG(この4月に昭和電機から社名を変更している)である。全日本ロードレース選手権でもSDG Honda Racingなど6チーム、8名のライダーをサポートしている、実にバイクに理解のあるこの会社から、ホンダCRF1000L Africa Twin DCT、ヤマハR1、スズキGSXーS1000GT、カワサキNinja 1000SXの4台の提供という太っ腹な申し出があり、今回の場にその車両が並ぶこととなった。
今回、その体験走行会の舞台となったのは袖ヶ浦フォレストレースウェイである。そして参加するパラモトライダーはステップアッププログラムを卒業した、経験者たちである。そのため、これまでは午前中にパドックの広場を利用しての練習時間が設けられていたが、今回はそれを設けず、サーキットでの周回練習だけを行う一日となった。。
今回参加するパラモトライダーの障がいはそれぞれ若干異なるが、脊椎損傷および大腿切断などで義足を装着しているという状況。今回持ち込まれた車両にはSSPのハンドドライブユニットを装着し、アップとダウンのボタンをハンドル左側に用意し、クラッチを握りながらボタンを押すことでシフト操作を行うことができる。足を固定するのは、自転車などでも使われているビンディングを活用。ステップをビンディングペダルのものに交換し、ブーツにもビンディングシューズと同じものを装着している。そして、バイクの発進と停止のバイクが不安定になるタイミングではボランティアスタッフがサポートしてこれをカバーする。義足の参加者の走行ではこのハンドドライブユニットは外しての走行とし、各参加者の状態に合わせて車両を用意。
コースのコンディションのため、当初の予定から時間は変更となったものの、無事に各ライダーが車両を入れ替えつつ、3回ずつの走行を行うことができた。この走行枠では全ライダーが走行を行ったため、3名のアドバイザーを含めると全9台が同時にコースを走行することとなったが、無事に事故もなく大きなトラブルもなく走行を終えることが出来た。
次回のSSP「パラモトライダー体験走行会」は5月28日(火)に埼玉県のファインモータースクール上尾で開催される。
(文・写真:青山義明)
| 『こんな笑顔のためなら』へ |
| 『久し振りの鈴鹿開催』へ |