SUZUKI V-STROM 800 車両解説
V-STROMシリーズは、2003年に発表されたV-STROM 650が始まりとなっている。VツインスポーツのSV650をベースに開発された水冷90度Vツイン、645ccエンジンを新開発のツインスパーアルミフレームに搭載する“スポーツ・エンデューロ・ツアラー”モデルとして海外市場を手始めに投入された。
それが街乗りから長距離ツーリングまで楽しめる万能モデルとして、欧州・北米を中心に人気を呼び、高速走行に適した高い防風性能、座り心地の良いシートや直立した乗車姿勢、扱いやすいV型2気筒エンジンを採用するなど、スズキの“アドベンチャースタイルモデル”の顔となった。
2代目に発展したのは2011年7月。新型となったV-STROM 650 ABSは、ABSを標準で装備し(ABS自体は初代モデルでも2007年からオプションで装備できた)、引き締まったスポーティーなデザインへと一新され、フロントカウルとスクリーン形状も変更、ツーリング時の快適性を高めている。メーターパネルにはギヤポジションインジケーターなどの機能を追加。またエンジンはより熟成度を高め、特に低中速域を扱いやすい特性に改良している。
このV-STROM 650 ABSが国内発売開始されたのは2013年の1月から。「快適アドベンチャーツアラー」をコンセプトに、軽快感と力強さを表現した車体デザインに加え、高い防風性能を発揮する大型風防や大容量の燃料タンク、座り心地の良いシート、多機能メーターなど、ツーリング時の快適性を高める装備などにより国内でも人気を呼ぶこととなる。
力強く扱いやすいV型2気筒エンジン、路面追従性の良いサスペンションや直立した乗車姿勢によって、街乗りからワインディング、高速走行まで多彩なバイクライフに対応が可能なモデルだ。国内仕様でも電子制御式ABSが標準装備されている。
2013年11月のマイナーチェンジでは、「キャンディダーリングレッド」と「パールブレーシングホワイト」という新色2色を設定、継続色の「サンダーグレーメタリック」1色と合わせて計3色の設定としたのみで、主要諸元、価格に変更は無かった。
V-STROM 650 ABSからよりアドベンチャーツアラーイメージを強調したバリエーションモデルといえるV-STROM 650XT ABSが登場したのは2014年10月。街乗りから長距離ツーリングまで、快適にライディングが楽しめるミドルクラススポーツアドベンチャーツアラーとして人気を獲得したV-STROM 650 ABSをベースに、兄貴分のV-STROM 1000 ABSと共通の鳥類の嘴をイメージさせるフロントカウルに変更されたのが特徴的だった。
このV-STROM 650XT ABSは、2014年10月1日から5日まで、ドイツ・ケルンで開催されたインターモトの会場で発表され、同じ10月の10日には早くも日本国内でも発売というスケジュールだった。ちなみに、従来の“おとなしい顔つき”のV-STROM 650 ABSの方も10月10日発売でニューカラーラインナップへとマイナーチェンジされている。
最大の特徴である嘴フェイスは、1988年に発売されたスズキのビッグオフローダー、DR750Sをルーツとするといわれ、フロントカウルを前輪の上まで延ばした(フロントフェンダーも装備)独特のデザインとなっている。その他、V-STROM 650 ABSとの違いとしては、チューブレスタイヤ対応のワイヤースポークホイールの採用がある。
2015年9月には、車体色の変更がメインのマイナーチェンジが行われ、V-STROM 650 ABS、V-STROM 650XT ABSともに、新色に、黒色の「グラススパークルブラック」、赤色の「キャンディダーリングレッド」、既存色のつや消し灰色の「マットフィブロイングレーメタリック」の全3色の設定とされた。また、マフラーカバーもマットチタニウムシルバーに変更、さらにV-STROM 650XT ABSでは、カウリングアッパーもマットチタニウムシルバーに変更されていた。
2017年5月に発売開始された新型V-STROM 650シリーズは、2016年秋のインターモトで発表されたスズキのニューモデル群の1車種で、国内ファンにとっては待望の発売開始だった。650、1000とラインナップを構成する新型V-STROMシリーズ(2017年6月には250もラインナップ)の特徴は、V-STROM一族の血統をより鮮明としたイメージデザインの統一と、平成28年国内排出ガス規制に対応する新エンジンがメインだ。スポークホイール仕様の「XT」も引き続きモデル設定されている。
国内での販売の中心となるV-STROM 650 ABSでは、出力の向上、トラクションコントロールの新採用が最大のポイントだ。Vツイン、645㏄エンジンの基本スペックは変わらないが、SV650で培われた数々のテクノロジーをフィードバックすることにより、よりクリーンでありながら出力とトルクの向上が図られている。排気側カムシャフトなどはまさにSV650と全く同一のものが使われているという。
前輪、後輪の各速度センサーに、スロットルポジションセンサー、クランクポジションセンサー、そしてギアポジションセンサーという5つのTCセンサーの情報により、リアタイヤのスピンを検出、速やかにエンジン出力を調整する“トラクションコントロール”は、2つのモード+オフが選択可能だ。ワンプッシュでエンジンを始動できる“スズキイージースタートシステム”、発進時のエンジンの落ち込みを感じくくし安心感を与えてくれる“ローRPMアシスト”なども採用された。
2018年の3月発売で登場した2018年モデルは、カラーリング&デカールの変更のみで、車体色は「チャンピオンイエローNo.2」(YU1)、「グラススパークルブラック」(YVB)、「パールグレッシャーホワイト」(YWW)、3色のラインナップと変わらず。
2019年3月にも兄貴分のV-STROM 1000シリーズと同様、カラー&デカールの変更のみで2019年モデルとしている。V-STROM 650 ABSが赤「キャンディダーリングレッド」(YYG)、黒「グラススパークルブラック」(YVB)、白「パールグレッシャーホワイト」(YWW))の3色。V-STROM 650XT ABSが黄「チャンピオンイエローNo.2」(YU1)、赤「キャンディダーリングレッド」(YYG)、白「パールグレッシャーホワイト」(YWW)の3色を設定。
2020年3月のモデルチェンジもカラー設定の変更のみでV-STROM 650 ABSが白「パールグレッシャーホワイト」(YWW)、グレー「ソリッドアイアングレー」(YUD)、黒「グラススパークルブラック」(YVB)、V-STROM650XT ABSが黄「チャンピオンイエローNo.2」(YU1)、青「パールビガーブルー」(YKY))、黒「グラススパークルブラック」(YVB)という設定だった。
2021年3月のモデルチェンジでは、価格及び諸元に変更は無く、カラーリングの変更のみが行われている。V‐STROM 650 ABSが車体色2色で、白の「ブリリアントホワイト」(YUH)にグレーの「オールトグレーメタリックNo.3」(QEB)。V‐STROM 650XT ABSが、黄の「チャンピオンイエローNo.2」(YU1)、白の 「ブリリアントホワイト」(YUH)、黒×赤の「グラススパークルブラック/キャンディダーリングレッド」(AV4)、グレーの「オールトグレーメタリックNo.3」(QEB)の4色の設定となった。
そして今回のV-STROM 800の国内発売へと続く。エンジンこそ並列2気筒を採用したが、V-STROMシリーズ共通の特長的な口ばしデザインをイメージしたスタイリングはキッチリ引き継ぎ、足周りでは、舗装路での走行性能に適した19インチフロントホイールとチューブレスタイヤを採用。キャストホイールの断面を”V”の字にデザインし、遊び心を持たせせるなど排気量アップにとどまらない発展を遂げたマシンとなっている。装備も、様々な走行シーンに対応する電子制御システムS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)、疲労軽減に貢献する高さ3段階調整可能なウインドスクリーン、長距離ツーリングに適した20Lの大型タンクなどを採用。ミドルクラス・スポーツアドベンチャーマシンとしての更なる熟成が図られている。
★スズキ ニュースリリースより (2023年10月20日)
●大型二輪車 新型「V-STROM(ブイストローム)800」を国内で発売
スズキ株式会社は、大型二輪車 新型「V-STROM(ブイストローム)800」を10月25日より国内で発売します。
新型「V-STROM 800」は、舗装路や長距離ツーリングでの高い快適性と走行性能を目指して開発しました。様々な走行シーンに対応する電子制御システムS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)に加え、フロントタイヤには19インチホイールとラジアルマウントブレーキキャリパーを装着、前後タイヤにチューブレスタイヤを採用するなど、舗装路での走行性能に適した設定としました。また、長距離走行時の疲労軽減に貢献する高さ調整式のウインドスクリーンのほか、長距離ツーリングに適した20Lの大型タンクやライディングポジションにより、快適性の向上を図りました。
- 年間目標販売台数
- V-STROM 800 230台
- メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- 1,232,000円
- エンジン
- 4サイクル 775cm3
- 価格(リサイクル費用を含む)には、保険料、税金(消費税を除く)、登録等に伴う費用は含まれません。
- ●「V‐STROM 800」の主な特長
- デザイン、車体
- ・V-STROMシリーズ共通の特長的な口ばしデザインを採用したスタイリング。
- ・舗装路での走行性能に適した19インチフロントホイールとチューブレスタイヤを採用。
- ・キャストホイールの断面を”V”の字にデザインし、遊び心を持たせました。
- 装備
- ・様々な走行シーンに対応する電子制御システムS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)。
- ・疲労軽減に貢献する高さ3段階調整可能なウインドスクリーン。
- ・長距離ツーリングに適した20Lの大型タンク。
- 車体色
- YKY : パールビガーブルー
QVP : マットスティールグリーンメタリック
YVB : グラススパークルブラック
主要諸元
車名型式 | 8BL-EM1BA | |
---|---|---|
V-STROM 800 | ||
発売日 | 2023年10月25日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.255×0.905×1.355 | |
軸距(m) | 1.515 | |
最低地上高(m) | 0.185 | |
シート高(m) | 0.825 | |
車両重量(kg) | 223 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 32.4(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
22.6(WMTCモード値 クラス3-3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | 2.6 | |
エンジン型式 | FRA1 | |
水冷4ストローク2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 775 | |
内径×行程(mm) | 84.0×70.0 | |
圧縮比 | 12.8 | |
最高出力(kW[PS]/rpm)※4 | 60[82]/8.500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm)※4 | 76[7.7]/6,800 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | フルトランジスタ式 | |
潤滑油方式 | 圧送式 | |
潤滑油容量(L) | 3.9 | |
燃料タンク容量(L) | 20 | |
クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 3.071 |
2速 | 2.200 | |
3速 | 1.700 | |
4速 | 1.416 | |
5速 | 1.230 | |
6速 | 1.107 | |
減速比1次/2次 | 1.675/2.941 | |
キャスター(度) | 26° | |
トレール(mm) | 124 | |
タイヤサイズ | 前 | 110/80R19M/C 59V |
後 | 150/70R17M/C 69V | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク ABS |
後 | 油圧式シングルディスク ABS | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム式 | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応
※1:装備重量は、燃料・潤滑油・冷却水・バッテリー液を含む総重量となります
※2:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。実際の燃費は、使用環境(気象、渋滞等)や 運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※3:定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※4:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
※5:エンジン出力表示は、「ps/rpm」から「kW/rpm」へ、トルク表示は「kgf・m/rpm」から「N・m/rpm」へ切り替わりました。( )内は、旧単位での参考値です。