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試乗・解説

速くはないし、凄すぎもしない
性能ばっかりを求めずに、バイクの乗ることを楽しみたい
そんなオトナ向けのカフェレーサーだ。
けれどホーク11は、ただ穏やかなだけのバイクではない
好ましいハンドリングバイクだったりもするのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔、HMJ ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン ■ウエア協力:アライヘルメット、クシタニ

アフリカもNTも「ちょっと違う」と思う人へ

 眺めて美しく、見られても誇らしい──。これが、ホンダがホーク11に込めた想い。
 古くはGB400/500Mk2を思わせるロケットカウルに、セパレートハンドル、さらにバーエンドならぬバーアンダーミラーを装着したたたずまいは、いわゆるカフェレーサーだ。かつて50~60年代に、イギリス・ロンドンのエースカフェに集まっていた、走り自慢のライダーたちの愛車からスタートしたカテゴリーと言われているけれど、最近ちょっと聞かなくなっていた言葉かも。これ、ホンダのひとつのチャレンジなのだろうと思う。
 発表の場では、ホンダ社内でも賛否両論があったのだと明らかにされていた。オッと思わせるデザインは、好き嫌いを生むものだから、このデザインのバイクを見て「おぉ、カッコイイねぇ」って人がいれば、「ヤダこれカッコ悪い」って意見もあるものだ。もちろん、それもホンダ想定の範囲内。ホンダはいま見なくなったカテゴリーに陽の目を当ててみたのだろう。

HAWK11

 エンジン/フレームはNT1100をベースとしたもの。レブル1100も同型エンジンを使用しているから兄弟モデルと言える。エンジンはアフリカツイン系ユニカムヘッドの並列ツインで、倒立フロントフォーク、セミダブルクレードルフレームにモノショックを組み合わせる。言ってみればツーリングバイクNT1100の、スポーティなバリエーションモデルといったところ。
 ただし、NT1100はノークラッチのDCTのみの設定で、ホーク11はマニュアルミッションのみ。この違いは大きいね。イージーこの上ないNT1100と、バイク本来の「操る」楽しさを残すホーク11という違いなのだ。これ、両モデルともにDCT/マニュアルミッションなんて両グレードが用意されたら、もっと両モデルの棲み分けが理解できなくなっちゃうもの。

HAWK11

 そうやってNTのスポーツバージョンだと思って乗り始めると、まずは軽い! NTに比べて34kgも軽いと、これはもう両モデルの関連性はかなり薄くなる。NTも、大柄なボディにしては重さを感じなかったけれど、ホーク11の車重はCB1000Rと同じ。水冷4気筒のCBとは、重心もサスペンションの動きも違うから、ホークの方が軽く感じる。
 走り出しも軽快。低回転からトルクのある並列ツインは、270°クランクを採用しているから、不等間隔爆発らしいパルスある力感が路面を蹴っ飛ばす。ドン!と大トルクで押し出すというより、軽快にスムーズに前に出る感じだ。

HAWK11

 アイドリングすぐ上から4000rpmくらいまでがスタタタタッという力が感じられて、それ以上の回転域では、ビートが連続するパワーフィーリング。一番力があるのが6500rpmくらいで、レブルやNT1100ではなかなか踏み込まない、こんな回転域がいちばん力がある。
 それでも最高出力は102psと、こわごわと使うような大パワーではない。1100ccという大排気量でありながら、思い切ってスロットルを開けるのを楽しめるモデルともいえるのだ。決して速いバイクじゃないけれど、スロットルひとつで車体を動かすのが楽しい。思ったより力の出方がシャープすぎないから、高回転に踏み込むのに躊躇がいらないパワーフィーリングといえるだろう。
 それより、ちょっと驚いたのが、ホークのハンドリング。基本的にはNTと共通な車体のはずなのに、キャスターを少し立てたことでフロントに荷重が乗って、バイクの姿勢もNTに比べて前下がり、後ろ上がりになっている。これが、低速域ではしっとりとしたハンドリングになって、ペースを上げていくと、どんどん回頭性がイイというか、ワインディングに入ると、フロントに自然に舵角が入って、きれいに向きを変えてくれる。
 ライダー側は、いつも以上にハンドルに入力をしないでいると、面白いようにクルクル曲がってくれるホーク。このボディサイズ、このホイールベースの大柄な車体が、シャープすぎずに、フロントタイヤの接地感をきちんと持ったままよく動いてくれるのだ。
 ちょっと意外な運動性だけれど、ホンダはこのホークを、オトナ向けに作っただけあって、こういう「こわごわとライディングする必要のない、それでいてビギナー向けではない」バイクにしたかったんだろう。

HAWK11

“距離ガバ”の舗装路以外も走りたくなっちゃう人にはアフリカツインがいいし、ロングツーリングにはNTのDCTがラク。つまりホークは、ちょいと日帰りで200~300km走ろうかな、なんて用途がいちばん似合う。街乗りして、高速道路に乗って、ワインディングを流して美味いソバ屋に行くような、そんな余裕のあるオトナに乗って欲しいバイクにしたかったんだろう。
 NT1100に乗った時、あぁアフリカツインのスポーツバイクができたのだなぁ、と思ったけれど、このホーク11はもうひとつ上を行くスポーツバイクだ。もちろん、速くはない、俊敏すぎはしないけれど、のんびりよりももう少し攻めるような走りで、すごく意のままに扱えるバイク。たとえばタイヤでいえばフルバンクのエッジグリップなんか使わない、接地面積8割あたりで流すような、そんな余裕のあるバイクライフを送るオトナ向けのバイク。
 ウチから200km先なんかに、行きつけのカフェなんか作っちゃったりしてね。そこでコーヒーでも飲みながら、ウィンドウ越しにホークを眺める──これぞカフェレーサーだね!
(試乗・文:中村浩史、撮影:森 浩輔、HMJ)

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HAWK11
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ショーワ製SFF-BPフロントフォークに、Φ310mmローター+ニッシン製4ピストンキャリパーをラジアルマウント。SFF-BPとは、セパレート・ファンクション・フォーク-ビッグ・ピストンの略で、左右のフォークに別々の調整機能を持たせた、大径ダンピングピストンを備えたフロントフォーク。

HAWK11
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エンジンはアフリカツインがルーツで、レブル→NT1100にも使用されたユニカム式SOHC4バルブ並列ツイン。マニュアルミッションのみで、ライディングモードをスポーツ/スタンダード/レイン、そしてユーザー独自の設定ができるユーザーという4種類から選択できる。

HAWK11
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リアブレーキはΦ265mmローターに1ピストンキャリパーを組み合わせる。前後タイヤサイズはNT1100と同じだが、二次減速比はホークが2.470、NT1100が2.500と、NTの方が加速寄り仕様。アルミスイングアームに組み合わされるリアサスは、ダイヤル式でプリロード調整が可能だ。

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マフラーはNT1100と同タイプ。しかしレイアウトが変わり、マフラー後端を持ち上げているため、マフラーエンドがライダーの耳に近く、気持ちのいいサウンドを聞かせてくれる。
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ホーク最大の特徴であるロケットカウル。ミラーも取り付けられていないスタイリッシュなシェイプだが、裏面は「ワイルドさを狙った仕上げ」というFRP地肌のまま。これも好き嫌いが分かれる。

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NT1100はバーハンドルを採用、ホークはセパレートハンドルがトップブリッジ下にセットされるが、ステアリングヘッドが高いため、さほど前傾姿勢はキツくない。丸ミラーはカウルステーにマウントされ、ライディング中にはちょうどひじ下から後方視界を確認することになる。

HAWK11
メーターはレブルと共通の丸形一眼。時計、ギアポジション表示つきで、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、走行中のライディングモードと、トラクションコントロール、エンジンブレーキモードを表示。
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NTよりもやや後方にシットポイントを取る形状のフューエルタンク。NT1100が容量20Lに対し、ホークは14L。取材時の実測燃費は23km/Lほどで、満タン航続距離は約320kmオーバーだった。

HAWK11
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前後方向の移動自由度が高いダブルシート。サイドカバー下のキーホールで取り外し可能で、シート下にはバッテリーアクセスと、標準装備のETC車載器が収納されている。

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●HAWK 11 主要諸元
■型式: 8BL-SC85 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブ ■総排気量:1,082cm3 ■ボア×ストローク:92.0×81.4mm ■圧縮比:10.1■最高出力:75kW(102PS)/7,500rpm ■最大トルク:104N・m(10.6kgf・m)/6,250rpm ■全長×全幅×全高:2,190×710×1,160mm ■軸間距離:1,510mm ■最低地上高:200mm ■シート高:820mm ■車両重量:214kg ■燃料タンク容量:14L ■変速機形式: 6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR 17M/C・180/55ZR 17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:パールホークスアイブルー、グラファイトブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,397,000円

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2023/02/06掲載