HONDA NT1100 車両解説
余裕の超弩級ツアラーは欲しいが、普段の取り扱いを考えると二の足を…だったライダー待望の“大型スポーツツアラー”が誕生したのは2022年3月のことだった。
しかも、ユニカム2気筒、1,082cc+DCTを組み合わせたアフリカツインをベースにするなどしてプライスも極力抑えた“リーズナブル・スポーツツアラー”の登場だった。
1989年のXRV650Rでヒストリーが始まった、ホンダのアドベンチャーモデル“Africa Twin”シリーズ。その“Africa Twin”の名を冠して颯爽と復活したCRF1000L Africa Twin。2016年の2月発売以来、このジャンルのリッターモデルとしては驚異的な人気ぶりを発揮してきた。
ただ意外にも、その知名度の高さからはあまり想像できないのだが、この稀代の名車“Africa Twin”シリーズの歴史自体はわずか10年足らずしか無かった。初代XRV650Rの登場から、2代目XRV750Rを経て、3代目のXRV750R、2000年の最終モデルの製造中止までのわずかな期間に超新星のごとく耀き、そして消えていった。まだ“パリ・ダカールラリー”と呼ばれていた当時の壮大なアドベンチャー・ラリーでの活躍を背景に、その存在を強烈に印象付けたということだろう。
それはともかく、新時代のAfrica Twin、CRF1000L Africa Twinは、2014年11月のEICMA2014(ミラノショー)に出展された「True Adventure プロトタイプ」で示した方向性を実際に製品化したモデルといえ、ホンダの英国現地法人であるホンダモーターヨーロッパ・リミテッドが、2015年5月に「2015年中に発売する」と発表したのが正式デビューとなっている。国内登場は、先にふれたとおり、翌2016年の2月となった。
スタイルは、昨今の“ダカール・マシン”CRF450 RALLYのイメージも取り入れてはいるが、LEDヘッドライトを備えたフェアリングを始め、18リットル入りの大型燃料タンク(初代のAfrica Twinは何と23リットル入り)などにより、まぎれもないAfrica Twin一族のDNAを受け継ぐデザインで、新世代ながらも紛れもないアドベンチャーマシンであることを強烈に主張している。
搭載されるエンジンは、“ユニカムバルブトレイン”や“軽量キャストカムシャフト”などの最新テクノロジーを取り入れた新開発の直列2気筒で、270度位相クランクによる不等間隔爆発及び、ツインプラグの位相点火制御システムなどを採用することで、優れたトラクション性能を発揮するとともに、小気味よい鼓動感も実現している。
また、エンジンの背面にバッテリーなど重量物を集中配置することで、マスの集中化も実現。さらに、軽量でありながら十分な剛性を確保する「セミダブルクレードルフレーム」の採用によってオフロードでの優れた走行性能とオンロードでの安定感のあるハンドリングを両立。荒れた路面でも効率よく動力を伝達する“Honda セレクタブル トルク コントロール”を全車に搭載。Honda独自の“Dual Clutch Transmission”採用モデルでは、オンロードからオフロードまでライダーの感覚に沿ったコントロール性能を発揮するよう3段階のシフトパターンを選択できるようさらに進化している。
このCRF1000L Africa Twinをベースに“オンロード・スポーツツアラー”としたのが、今回カラーバリエーションが変更されたNT1100だ。我が国の環境からすればAfrica Twinがその実力を発揮するシーンはほとんど限られており、アドベンチャーを楽しむより、ツアラーとして活躍しているシーンがほとんどとさえいえてしまう。
ならば“オンロード・スポーツツアラー”としてしまった方が現実的ということだろうか。
それはともかく、新しいカラーバリエーションは重厚感を感じさせる「ガンメタルブラックメタリック」で、これにより継続色の「マットイリジウムグレーメタリック」と合わせて全2色の設定となった。(「パールグレアホワイトは」ラインナップから外れた)
★ホンダ ニュースリリースより (2022年12月16日)
●大型スポーツツアラー「NT1100」のカラーバリエーションを変更し発売
Hondaは、「快適性」「多用途性」を高次元でバランスさせることで、日常の扱いやすさと長距離走行の快適さを両立した大型スポーツツアラー「NT1100」のカラーバリエーションを変更し、2023年3月23日(木)にHonda Dreamより発売します。
●カラーバリエーションとして「ガンメタルブラックメタリック」を新たに設定
今回、大型スポーツツアラーに相応しい重厚感を感じさせる「ガンメタルブラックメタリック」を新たに採用。継続色の「マットイリジウムグレーメタリック」とあわせて全2色の設定としています。また、マフラーの外観仕上げは高級感を感じさせるヘアライン仕上げに変更しております。
NT1100は、低回転域から力強いトルクと高回転域までスムーズに回る特性を併せ持たせた排気量1,082cm3の直列2気筒エンジンを搭載し、一連の変速操作を自動化する「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」を標準装備。また、走行状況に応じた出力特性のモードを選択可能としたライディングモードや、巡航時に便利なクルーズコントロールなど、各種装備を充実させています。さらに、アップライトなライディングポジションや、十分なストローク量を確保したサスペンション、手動で5段階に高さ調整可能な大型のウインドスクリーンや防風性に配慮した形状のフェアリングなどにより、高速ツーリングにおける快適で上質なクルージングを求めるベテランライダーを中心に好評をいただいております。
- ●販売計画台数(国内・年間)
- 300台
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- 1,683,000円(消費税抜き本体価格 1,530,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
主要諸元
車名型式 | 8BL-SC84 | |
---|---|---|
NT1100 | ||
発売日 | 2023年3月23日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.240×0.865×1.360 | |
軸距(m) | 1.535 | |
最低地上高(m) | 0.173 | |
シート高(m)★ | 0.820 | |
車両重量(kg) | 248 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 30.5(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2★ | |
19.3(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 2.8 | |
エンジン型式 | SC84E | |
水冷4ストローク直列2気筒SOHC(ユニカム)4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 1,082 | |
内径×行程(mm) | 92.0×84.1 | |
圧縮比★ | 10.1 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 75[102]/7,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 104[10.6]/6,250 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 20 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 電子式6段変速(DCT) | |
変速比 | 1速 | 2.562 |
2速 | 1.761 | |
3速 | 1.375 | |
4速 | 1.133 | |
5速 | 0.972 | |
6速 | 0.882 | |
★減速比1次/2次 | 1.863×2.500 | |
キャスター★(度) | 26°30′ | |
トレール★(mm) | 108 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 180/55ZR17M/C 73W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立サス |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | セミダブルクレードルフレーム |
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
※1燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※2定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※3WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます