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試乗・解説

METEZELER for Big Adventure Tire Test KAR004 & TOURANCE NEXT 2  Part1: TOURANCE NEXT 2 PART 1
世界中で堅調にその販売台数を伸ばしているアドベンチャーバイク。このセグメントにメッツラータイヤは強いプレゼンスを持っている。そのラインナップの中でも定番タイヤであるツアランス・ネクスト、カルー3の2種が、ツアランスネクスト2、カルー4へと進化し登場。デリバリーが開始された。その進化はどのようにライダーに伝わるのか。早速テストをしてきた。
■試乗・文:松井 勉 ■写真:METEZELER ■協力:METEZELER https://www.metzeler.com/ja-jp/home ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI・56design https://www.56-design.com/






 メッツラーはモーターサイクル専門のタイヤブランドだ。多様な路面コンディションを想定した徹底した実走テストを行い、そこで得られたフィードバックを製品に投入することで知られ、そうした製品哲学はメッツラーが販売する公道用タイヤからレース用タイヤまで貫かれている。

 今回紹介するツアランスネクスト2とカルー4は、ミドルクラスからプレミアムクラスのアドベンチャーバイクに向けた製品だ。
 メッツラーによれば、排気量300㏄以上のモーターサイクルの販売台数中、アドベンチャーバイクセグメントは、2017年から2021年まで5年間、堅調に登録販売台数を伸ばし続け、ヨーロッパでは登録台数の半数を占めるほどの人気だ。
 その中身としては、フロント21インチ装着したモデルが2017年の全体の22%から2021年には33%に。フロント19インチを履くモデルが同じく2017年の52%から47%に。フロント17インチを履くクロスオーバータイプ系モデルが2017年の26%から2021年には20%へとそれぞれ移行。前輪21インチを履くモデルの伸びが目立つ。これはアフリカツインやTenere700、KTMのアドベンチャーやアプリリアのトアレグなど、魅力的なモデルが多いしドゥカティもデザートXでこのセグメントについに参戦するなど話題のクラスでもある。
 

 
 アドベンチャーバイクのキモは、舗装路、未舗装路を問わず楽しめること。舗装路でのツーリング、峠道はもちろん、パッセンジャーや荷物を載せて遠出も得意。快適装備も目白押しだ。そして、あの大きな体躯にして林道のような道もスキル次第で相当な走りを堪能できる。今のアドベンチャーバイクは走る場面を問わず楽しめるパッケージになっているのが凄いのだ。
 そんなバイク達が履くタイヤにっとても必須項目が多い。まずはパート1としてツアランスネクスト2からリポートしていこう。
 

 

高い要求をするゾーン。
そこを満たすツアランスネクスト2

 今、メッツラーはアドベンチャーバイク向けタイヤとして次のようなラインナップをもっている
●サーキットも走りたい。そんな層にはロード用スーパースポーツタイヤ、スポルテックM9RR。
●ツーリングは舗装路中心。ワインディングもスポーティーに楽しみたい、というライダーに向けたスポーツツーリングタイヤ、ロードテック01SE。
●そして舗装路、ダートも少々、走れる季節は寒くても走りたい。そんな総合性能を求めるライダーに向けた基準タイヤとも言えるのが個々に紹介するツアランスネクスト2。
●ツアランスネクスト2よりもオフロードに親和性を持たせたトレッドデザインを持つタイヤ、カルーストリートがある。このタイヤはカルー3のブロックパターンをローライズして舗装路での走行フィールを高めたタイヤ、とも表現できる。
●パート2で紹介するが、高いオフロード性能を持ち、それでいてアスファルトセクションにも対応するタイヤとしてカルー4。
●フロント21インチのモデルでよりオフロード性能を追求したい、砂漠も走りたいという向きにはカルーエクストリーム。

 ツアランスネクスト2のポジショニングもお解りいただけたろう。
 

 

ツアランスネクスト2は、先代が持つ特徴を、
最新技術でさらに拡大進化させた

 ツアランスネクスト2は前作ツアランスネクストの後継モデルで、すでに評価が高く、総合性能に優れた前作を越えるのタイヤ作りをするのは容易ではなかったという。モデルチェンジにあたり次のポイントに力点が置かれている。
1 どんな路面でもパフォーマンスを高めること。
2 ウエットグリップとウエットブレーキング性能のさらなる向上
3 耐摩耗性の向上

 前作ツアランスネクストがデビューした2013年は、アドベンチャーバイクの進化にとって大きな転換点だった。サスペンションをはじめ電子制御技術がバイクのキャラクターをさらに拡げ始めたタイミングだ。その代表格、BMW R1200GSのモデルチェンジに歩調を合わせて開発されたのがツアランスネクストだった。

 ツアランスネクスト2は、そうした電子デバイスの進化に合わせ、さらにアップグレードして最新の技術を注いで開発したタイヤ、ということになる。例えば、6軸IMU(加速度センサー)の装備で制御の精度が向上。しかも制御のセッティングまで幅広くライダーの好みを投影できるようになった。そのぶん、タイヤに必要となる要素も全方位で性能アップが必須となる。
 そうした部分はもちろん、一人で、タンデムで、あるいは積載をしても快適で走り、安定した走り、楽しい走りというこのジャンルに求められるライディングに求める基礎は変わらない。
 

 
 そこで、ツアランスネクスト2は次のようなポイントをさらに伸ばす開発がされている。
●ハンドリング性能総合
●タンデム、積載時など高荷重時のスタビリティ
●ブレーキング性能
●ウエット時の総合性能
●コントロールフィーリング

 その性能を向上させた手法は次のとおり。
●ハンドリング面においては、蓄積されたラジアル技術と軽量でタイヤの強度を高めるのに寄与するスチールベルトでカーカスを覆う手法。これによりタイヤ接地面がしなやかな形状変化をしつつ、接地性を確保するタイヤ構造を最適化させている。これによりあらゆるリーンアングルで正確なコントロール性を実現すると同時に、また、ブレーキング時のスタビリティーをさらに向上させている。
●コンパウンドの性能も強化された。ウエットグリップ、ウエットブレーキング性能の向上に大きく寄与したのは液体ポリマーを含むハイシリカコンパウンドにより、ウエット性能をさらに向上させている。BMW R1250GSを使ったウエットテスト路での比較テストでは、気温25度、速度85km/hからのブレーキングで、制動距離を先代よりも10%(1.5メートル)短縮したという。

 リアのセンターにもフロント用コンパウンドと同じものを使っているのもウエットパフォーマンスの高さに貢献。ショルダー部分にはフルシリカコンパウンド(ソフト)を採用し、グリップを確保。このセンターとサイドで異なるコンパウンドを使いながらも、センター部分のトレッドゴムがサイド部分の下に潜り込むような構造としたほか、トレッドの下層にフルカーボンブラック配合のゴムを使ったベースでささえることで、直進時に生まれる発熱をサイドにも分配するような仕組みになっている。これも寒い日、雨の日にタイヤ全体を温める手法でもある。そのセンターと両サイドのトレッドゴムの融合にもメッツラーならではの技術を用いたという。
 

 

暖まりの速さに驚く。

 今回、ツアランスネクスト2をテストしたのは、シドニーから車で1時間ほど移動した場所にある街、ウインザーを起点に市街地、郊外の道、そしてワインディングを織り交ぜたツーリング型式で行った。そして、フロント120・70ZR19、リア170/60ZR17というサイズを履く、R1250GS、R1250GSアドベンチャー、KTM1290スーパーアドベンチャーS、ドゥカティムルティストラーダV4S、ハーレーダビッドソン パンアメリカ スペシャルでテストをした。

 会場から最初に乗ったのはR1250GSアドベンチャー。試乗車の中でもヘビーなバイクだ。駐車場からの転がりだしは軽く、低速でのハンドリングに重さがない。それでいてタイヤの接地面が小さな印象はなく、しっかりと接地している感触がある。朝のウインザー市街は通勤時間帯とも重なり、渋滞気味。走行するペースは50km/h程度。交差点、ランナバウトでも待ち時間があった。新品を履いて出てきたハズなのに、タイヤに不安はない。南半球のこちらの季節は晩秋。それでも数㎞走ったところのガソリンスタンドで給油した際、リアタイヤに触れてみた。せいぜい、トレッドセンターが少し暖かいかな、と思ったら、タイヤ全体がすでに暖まっている。これが新たな構造の恩恵なのだろう。
 

 
 市街地を抜けるとペースが上がり始める。制限速度も100km/hへ。ルートを案内してくれる先導ライダーは、当たり前のようにペースを上げた。緩やかなカーブとアップダウンが続く。丘陵地にそのまま道路を敷設したようなダイナミックさ。丘を越えるところにCRESTという標識。これは丘の向こうが直線なのかカーブなのか解らないから注意せよ、というもの。
 
 そんな場面を100km/hで駆け抜ける。バイクのハンドリングが鋭すぎては逆に恐い。でも意のまま感がないと、片側一車線の道で容易に反対車線にはみ出してしまう。ツアランスネクスト2は、こんな場面で軽すぎず、重すぎずというほど良い手応えと、微少なアンダーステアという安心感の高いハンドリングを提供している。そもそもGSはこうしたセクションが得意だから、マッチングもいい。
 そしてグリップ感を表現すると、接地面が横長というより幅も適正な縦長に掴んでいるフロント、そしてリアも同様な印象で道路にコンタクトしている。回転しながらそれがつねに的確なカタチとなっているかのようだ。

 ライディングモードの変更で受ける印象はどうか。BMWでは舗装路でのデフォルト的なモードがROAD、スポーツライディングを楽しむにはDYNAMICというモードを選択することになる。ロードよりダイナミックはアクセルレスポンス、サスペンションの減衰圧などがきっちり変更される。今回のテスト車の中ではパワースペック的には大人しいほうだが、ハンドリングや脱出加速でアクセルを大きく開ければ、一般道で遅れを取るようなこともない。そんな場面でタイヤとバイクのマッチングになんら不満がなかった。
 

 
 ハーレーに乗り換えた。パンアメリカのエンジンは回転数を上げるほどにパワーとトルクが出てくるような印象で、可変バルブタイミングも装備するスポーティーなエンジンだ。車体のセットアップにある電位制御サスペンションと、その回すほどにパワフルなエンジンレスポンスの付きがカーブの曲率、ギア選択によってアクセルのピックアップがきつめに出来る場面がある。それでも容易に旋回ラインが膨らむことを最小限にしながら走る感じはツアランスネクストの頼もしいところ。
 

 
 途中、ムルティストラーダに乗り換えたころ、ルートはさらにワインディングへと入ってきた。日本にもあるようなタイトターンの連続する道で、片側が山肌、片方はガードレールという場面。オーストラリアは日本と同じ左側通行だからライン取りも慣れたものだが、制限速度が下がることもないため危険のない範囲でツアランスネクスト2のエッジグリップも体験でした。

 ムルティストラーダのライディングモードをスポーツにしてリズムを取る。ツアランスネクスト2との組合せたハンドリング面で鋭さ主張するコトはないが、コントロールへの追従性にミスマッチがなく、走りやすい。パワフルでフレキシブルなV4エンジンを存分に楽しめる。カーブ前半まではフロントにあるグリップ感に信頼を寄せ、後半ではリーンアングルが深くても接地面がしっかりグリップしつつフルパワーによってフロントの旋回性を高めてくれているのが解る。
 

 

ウエットは少々体験。

 大雨の中を走る場面はなかったが、雨は降ったが、半分は乾き始めているというような場面だ。そんな場面でも安心感がたかくペースのはやいテストを終えることができた。ツアランスネクストとツアランスネクスト2はキャラクターがよく似ている。が、性能はどのパートも拡充されている。なるほど、出来た初代を越えるのは難しかっただろう。新旧比較こそテスト項目には無かったが、テストルートで一切不満な部分がなかったことから考えて、メッツラーらしい全方位高性能というキャラクターや、騒音のことまで考慮して作り出されたトレッドパタンなど、多くの技術的バックグラウンドをもちつつ、ただただ、ライダーは最高の時間を過ごすことに没頭することができた。
 これぞ、素晴らしいタイヤの真骨頂ではないだろうか。
(試乗・文:松井 勉)
 

 



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2022/08/30掲載