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名車図鑑

バイクと出会って半世紀。子供の頃、バイクのカタログ集めに夢中になった山形の少年は、学校を卒業すると念願だったホンダに入社。1994年からは二輪広報を担当し、2020年定年退職するまで四半世紀、一貫して広報活動に従事した。バイクブームのあの時代からの裏も表も知り尽くした高山さんの視点でふりかえる、バイク温故知新の四方山話。それが「バイク・承前啓後(しょうぜんけいご)」。

●第7回 「カタログに描かれた心憎いストーリー」 
-1977年発売ホンダ「エアラ」のカタログから-

 ホンダが初めて大型二輪車にオートマチック機構を採用したモデルは、今から44年も前の1977年4月に「EARA(エアラ)」という聞きなれない車名で登場しました。
 当時の私は21歳で、初めて新車のバイクを注文したばかりで納車を心待ちにしていました。一目ぼれしたのは真紅のカラーの「CB125T-Ⅰ」です。180°クランクで1万回転以上も回る高性能な125ccのスポーツモデルです。カタログ収集癖のせいで、興味のないモデル(大変失礼ですが)のカタログも集めていました。
 その中に、エアラもありました。このエアラのカタログの素晴らしさに気が付くのは、それから30年以上も待たなければなりません。当時の私には、ジェントルな大人のライダーの心理を理解するには明らかに経験不足でした。
 エアラが誕生した1977年は、ロードパルの発売で主婦層をメインに二輪に興味を持つ方が急増しました。大型モデルでは、OHC4気筒 のCB750が最終局面を迎えていました。4本のマフラーの750FOUR-K、4into1マフラーとコムスターホイールを採用したスポーティーな750FOUR-Ⅱ、そしてこのエンジンにホンダマチックを取り入れたエアラの3車種が750ccにラインアップされていました。

 翌年1978年に新登場するDOHCエンジンのCB750K、その後に登場するCB750Fの夜明け前といった時代であったと思います。
 では、エアラの素晴らしきカタログの世界にご案内いたします。

※私物のため汚れはご容赦ください。すべてのページを紹介したものではありません。
 解説は、私の思い入れで書かせていただきました。

タCB750FOUR-K
CB750FOUR-K。
CB]750FOUR-Ⅱ
CB750FOUR-Ⅱ。

エアラ
エアラ。

エアラ
16ページに渡るカタログは、新2輪世紀をメインコピーに、水平線から昇る太陽で新しい時代の幕開けを表しています。

エアラ
夜が明ける前にエアラと訪れたのは、大切な時間を過ごすヨットハーバー。エアラを停めて今日は手漕ぎのボートで海と戯れます。

エアラ
静かな港までストレスなく連れてきたもらったエアラに感謝。オプションのリア・サイドボックスには、思い出を詰めて帰ろう。

エアラ
このページは、各部の解説なのですが、雲間から太陽が見えてきました。いよいよ夜明けです。

エアラ
もう少し、エアラのお話をいたしましょう。ホンダ自慢のオートマチックです。巷の最高出力重視の二輪車とは比較しないでください。ゆったりとした旅を楽しみたい。そんな大人のために用意されたのですから。

エアラ
太陽が昇って新しい今日が始まります。朝日を浴びながら軽快にゆったりと家路につこう。大切な人が待っているところに。

エアラ
いち早く迎えてくれたのは、愛犬の●●。エアラの静粛なエキゾーストサウンドが心地よいらしい。

エアラ
まだ眠りの世界で遊んでいる我が子に気づかれないように、そっと海からのプレゼントを置くとしよう。

 と、エアラとの短い旅が1冊のカタログに凝縮されているのです。
 カタログには、538,000円の価格が記載されていません。まずは、現実的な事よりも、エアラで描く素敵な日々を想像していただくことから始めて欲しい。と言っているような気がします。
 エアラは、ビジネスとしては成功とは言えませんでしたが、オートマチックの利便性はその後のDN-01やDCTのNC700シリーズへとつながっていくことを考えますと、果たした役割はとても大きいと思います。


高山正之
高山正之(たかやま まさゆき)
1955年山形県庄内地方生まれ。1974年本田技研工業入社。狭山工場で四輪車組立に従事した後、本社のモーターレクリエーション推進本部ではトライアルの普及活動などに携わる。1994年から2020年の退職まで二輪車広報活動に従事。中でもスーパーカブやモータースポーツの歴史をPRする業務は25年間に及ぶ。二輪業界でお世話になった人は数知れず。現在は趣味の高山農園で汗を流し、文筆活動もいそしむ晴耕雨読の日々。愛車はホーネット250とスーパーカブ110、リードのホンダ党。


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2021/05/21掲載