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昨年に引き続きスズキMotoGPライダー2名のインタビューの機会に恵まれた。昨年は「やんちゃで何でもやってやろう!」という若い勢いを感じさせたルーキー、ジョアン・ミルと、冷静沈着、静かに闘志を燃やすアレックス・リンスというイメージだった二人。2020シーズンも引き続きこの2人でシーズンを戦うスズキである。
セパンテストを終えた感触と、今シーズンへの思いを聞いた。
■インタビュー:ノア セレン  ■撮影:依田 麗  ■写真協力:SUZUKI http://www1.suzuki.co.jp  

 ジョアン・ミル選手は去年の活発なイメージから、なんか仕込んでいこうと筆者地元・水戸の伝統的なお菓子「吉原殿中(よしわらでんちゅう)」を持参。「とりあえず食べてごらん」と差し出した。水あめであられを固め、きな粉をまぶしたこのお菓子、なかなか独特なのだがミル選手は迷わずパクリ。きな粉が喉を直撃し咳き込み「おいしいけど……ゴホッ、インタビューの前に食べるものじゃないよ(笑)」の感想。

ジョアンミル
ジョアンミル

 日本食は好き? と聞かれ「寿司」と答えるのはつまらないからね、そう聞かれたら「YOSHIWARA-DENCHU」って答えるんだよ。水戸から近いツインリンクもてぎあたりの人だったら知ってるから!  と仕込んでおいた。MotoGP日本ラウンドには吉原殿中持参でミル選手に会って欲しい。

Q:セパンでの調子はどうでしたか。

ミル:一日目は肩慣らしというか、フィーリングを掴むようなスケジュールだったけど、二日目は本当に凄くたくさんのことをテストしました。様々なテスト項目があって、ちょっとパンク気味、ヘトヘトになって最後の方は判断が難しくなるほどだった。だけど最終的には何が良いかを探ることができたし、セパンだけではなく他のコースでも良く機能するバランスを見出すことができたと思っています。

Q:聞いたところによるとスズキは様々なものをテストに持ってきて、ライダーは色々試したけれど、どれも好感触だった、というレポートを読みましたが、それは事実だったんですか?

ミル:そうですね。これまでスズキはあまり色んなものを用意していなかったから、比較するものが少ないがゆえテストも比較的簡単だったと言えなくもない。けれど今回はテスト項目がたくさんあり、確かにどれも好感触ではありました。ただ比較するものが増えれば、その中からより良いもの、より良い組み合わせを見つけ出していくことになるわけで、最終的に良いとしたものと見送ったものに分類されていきました。

ジョアンミル
ジョアンミル

ジョアンミル
ジョアンミル

Q:新しいバイクの感触はいかがですか

ミル:キャラクターは去年のモデルと同じですね。メーカーによっては根本的な性格を見直してゼロから作り直すところもあるようですが、スズキは熟成路線をとってくれ、少しずつアップデートしてくれるので違和感なく乗れました。一気に変えるのではなく、エンジン、フレーム、などそれぞれのパートで一歩一歩確実な前進をしてくれ、しかもたいていの場合それは良い方向への変更のため、とても喜んでいます。

―――MotoGPマシンに限らず、市販車でもスズキはそういった「熟成路線」が得意なメーカーです。ミル選手のスタイルにそれがマッチしているということですね!

ミル:そうですね、とてもやりやすく感じています。

Q:昨シーズン前のインタビューでは「ルーキーオブザイヤーを獲る!」と力強く語ってくれましたが、ケガに泣かされたシーズンでしたね。

ジョアンミル
ミル:そうですね、思い通りにはいかないものです(笑)。ライバルも強かったです。シーズン前半はバイクに慣れることに少し時間を要しましたが、中盤にはいいパフォーマンスを発揮できていたと思います。アレックス(・リンス)と遜色ないタイムも出せていたのですが、その後にケガをしてしまいました。そのケガのせいで肺の中に血が溜まってしまい、十分に呼吸ができない状態になってしまい、回復に時間を要しました。全快には6か月が必要との診断だったため、シーズン後半にも影響してしまった形です。ただ徐々に回復していた後半にはアレックスと共にトップ5に入ることもありましたし、再び速さを見せることができていたと思います。勝利やポディウムこそなかったですが、それは後半においてはアレックスも同様でしたね。シーズン後半はライバルに対してバイクの競争力が及んでいない部分が出てきたと思います。今はケガは完全に回復しているので、ライダーとしては来シーズンに向けてベストなコンディションに戻せています。

Q:今、昨シーズン後半はライバルメーカーの進化に対してスズキは開発スピードが及ばなかった部分があったかもしれないと言いましたが、セパンテストを終えた今、バイクのパフォーマンスは再びライバルと肩を並べる所に届いていると感じますか? また昨シーズン後半でライバルに劣っていた部分はどこでしたか?

ミル:いろいろな分野でほんの少しずつ及ばないことがあります。トップスピードももう少し、予選で1周だけの速いラップも思うように刻めなかった……。基本ポテンシャルはちゃんとあるからレース本戦ではそれなりの結果を出すことはできたのですが、上位に進出するための、もう少しの何かが足りない状態でした。ただここまでのテストでの感触は上々で、20年シーズンは再び強く走れると期待しています。

ジョアンミル
ジョアンミル

Q:去年、初めてのMotoGPバイクに乗ったあなたは「ものすごいパワー! Moto2とは全然違う! 凄い! 楽しい!」と興奮していました。1年乗った今、MotoGPマシンの印象はどうですか? またセットアップなどもMoto2と違うと思いますが、慣れましたか?

ミル:一年乗ったからって「慣れた。もう何も怖くない」とはならないですよ(笑)。やっぱりとてつもないバイクです。ただ当然慣れてくる部分もあって、例えばストレートでは、「もっとパワーが欲しい」と思ったりもします。ライダーは常に「もっと」を求めるものですよ! セッティングについてはとても早く学ぶことができ、短いセッティング時間の中でベストな設定を見つけることができています。

ジョアンミル
Q:チームメイトのアレックスとの関係はどうでしたか?

ミル:うーん、大丈夫でしたよ。ただチームメイトってのは不思議な関係ですよね。愛してみたり憎んでみたり(笑)。チームメイトとしての関係は悪くないと思います。住まいが同じアンドラなので、一緒にトレーニングすることもありますよ。

Q:ケガからの回復もあって、今シーズンに向けて特別なトレーニングはしましたか?

ミル:ランニング、サイクリング、スキー、ハイキングなどですね。アンドラはピレネー山脈の中にありますから、雪が降るとサイクリングはできませんから、スキーが多いでしょうか。

Q:ではライダーとしてのパフォーマンスは十分、そしてバイクの感触もこれまでのテストでは上々。今年は勝利も狙えそうですか?

ミル:そう言うにはまだ早いかもしれません。何が何でも勝つ!といった気持ちでいるとそれがプレッシャーになることもありますからね、まずは安定してポディウムに乗れるように整えて、それができるようになれば勝利も意識できるかもしれません。もちろん、勝利は可能だと思っていますよ、ただ冷静に時間をかけていきたいと思っています。

ジョアンミル
Q:去年はGSX-RRの強みはブレーキングとコーナリングスピードだと言っていましたが、逆に最高速がもう少し伸ばしたい部分、とも言っていましたね。今年のマシンはそこの課題はクリアできていますか?

ミル:はい、十分なトップスピードがあると思います。ライバルたちの中で一番だとは言いませんが、ヤマハと同等かそれ以上かと思います。ただグリップに関してはまだ改善の余地がありそうです。シーズンスタートまでにはこの領域を改善させまとめ上げることができればコンペティティブなバイクになると思います。

Q:前向きな話が聞けて嬉しいです。去年、アレックスは始めの4戦のうちに勝利したいと言っていました。ミル選手については今年、始めの4戦のうちにまずはポディウム、期待していますよ!

ミル:そうだね! 頑張ります!

Q:頑張って!

ミル:GAMBATTE? わかったよ、そう言われたら僕はなんて言えばいい?

Q:そうだなぁ、任せろ! だね!

ミル:OK! MAKASERO!!

Q:日本食は好きですか?

ミル:うん! YOSHIWARA-DENCHU!!

ジョアンミル
たぶんMotoGPライダーで初めて吉原殿中を食べた男、ジョアン·ミル。昨シーズンは怪我に泣かされたが、その中でも強さを見せた。今年は開幕が遅れているが、GSX-RRの完成度の高さも含めて表彰台でミルの顔が見れそうである。もてぎラウンドには是非とも吉原殿中持参で応援してあげてほしい。

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今シーズンも事前テストから絶好調、創業100周年を迎えた2020年大いに期待がかかるスズキのMotoGPチーム。今回、お話を伺ったアレックス・リンス(記事はコチラ)とジョアン・ミルお二人のサインが入ったチーム・オフィシャル・キャップを1名にプレゼント。ご希望の方は(読者登録)住所、氏名、WEB Mr.Bikeに対するご意見、ご希望を明記の上、e-mail(dd4@m-bike.sakura.ne.jp)にてご応募を。締切は2020年4月17日(金)。

キャップをプレゼント
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[アレックス・リンスインタビューへ]

2020/04/06掲載