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冷静沈着リンス、今年も目力健在 好調スズキMotoGPチーム、アレックス・リンス選手インタビュー

2020年のMotoGPシーズンは、新型コロナウイルスの影響で3/8に行われるはずだった開幕戦カタールはMoto3・Moto2のみの開催でMotoGPクラスは見送り。次戦タイGPもアメリカも、さらにはアルゼンチンまで延期になり、開幕戦は今の所(3/13日現在)5/1~3のヘレスになりそうである。
しかし各テストでスズキの調子は上々。アレックス・リンス、ジョアン・ミル両選手共にシーズンインに向けて好感触を得ているようだ。セパンで行われたテスト直後にインタビューが実現した。
■インタビュー:ノア セレン  ■撮影:依田 麗  ■写真協力:SUZUKI http://www1.suzuki.co.jp  

Q:セパンから日本に直行、お疲れ様です。

リンス:信じられないよ、昨日までは35℃もあったのに……日本って寒いね! 今日は何? 4℃ぐらいしかないんじゃない? 気温変化もあってさすがに疲れました(笑)

Q:昨シーズンはリンス選手にとって素晴らしかったでしょう。去年のインタビューhttp://www.mr-bike.jp/?p=156723 の宣言通り、複数回のポディウム、そして勝利を収めましたね。

リンス:有言実行できて良かったです。欲を言えばさらに安定してポディウムを獲得したかったですし、もう数戦勝利もしたかったですが、昨シーズンをトータルで見ればよいシーズンだったといえるでしょう。ただシーズン中でもレースごとにどんどんレベルが上がっていくわけです。それに対応しつつ、常に100%でいなければいけないのです。

Q:アメリカでの初勝利、もちろん嬉しかったかと思いますが、マルケスがリタイアしてしまっての勝利でした。複雑な気持ちもありましたか?

リンス:勝ちは勝ちですからもちろん素直に嬉しいです。マルケスとはMoto3やMoto2で戦ったことはありませんし、今回初めて直接対決して勝利したわけですから、リタイアとは関係なく感激はありました。もちろん、シーズンを通してもっと彼を負かしたいですが、知ってると思いますが彼は上手なんですよ(笑)。ただ昨シーズンで彼と我々のギャップは狭まってきていると感じています。2020シーズンも滑り出しが好調ですから、今シーズンはさらにその差を詰めて、勝てる場面を増やすつもりです。

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Q:アメリカの後、次の勝利までは上手く結果がついてきていないような印象でしたが、何かスランプを感じていましたか?

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リンス:「何かが足りない」ということが続いたのは事実です。例えばパワーがもう一つ足りないとか。ただ、アメリカズGPからイギリスGPの間でもヘレスではポディウムを獲得したし、ムジェロでは4位、直線が長いハイスピードコースでドゥカティやホンダのようなスピードのあるバイクと渡り合っていたわけですから、決して下位に沈んでいたわけではないのです。バイクが十分ではなくても毎回勝ちたいわけですから、その状況の中で可能な限りベストを尽くすだけです。2020シーズンはエンジン領域での進化が得られていますので、これは楽しみですね。

Q:去年、「スズキの強みはブレーキングからのコーナー進入と旋回性」と言っていましたが、今年はそれにパワーも加わったということですか?

リンス:確かにパワーは向上しましたが、今のところホンダやドゥカティほどのレベルには達していないようです。ただパワーだけでなく例えばエアロダイナミクスなども向上していて、これによりフロントの接地感が得られるからコーナー脱出が速くなっています。これからこういった複合的な進化がどう結果に結びつくのか、楽しみですね。

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Q:去年のアラゴンでは接触でウイングを一つ失っていましたが、逆にペースは上がったようでした。

リンス:セパンでもそうでしたね。外から見る分にはあまり差はないように感じるかもしれませんが、乗ってる方はウイングがないとなかなか苦労するものです。絶対的に付いていた方が良いです。

Q:去年はエアロダイナミクスだけで最高速が向上したと言っていましたが、今年はその領域で進歩はありましたか?

リンス:いつも模索する領域でして、今回のテストでもスズキは3種類のカウリングを持ち込んでいました。テストの後、スピードとコーナリングのバランスが最も優れたのを見つけ出し、3つの中からそれに決めました。他にも今回のテスト項目のリストはかなり長く、様々な新しいパーツやアプローチを試しました。これだけたくさんの選択肢があったというのはオフシーズンの間にスズキ開発陣が本当に頑張ってくれた証拠で、たくさんのオプションの中から最良のものを探すことができ、マシンはかなり形になってきていると感じています。

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Q:昨シーズンではレース本番ではコンペティティブなのに、予選順位が振るわないことがあったようです。これの原因は何だったのですか? また今年は予選でも速さを見せられそうですか?

リンス:去年、予選が振るわなかった理由はわからないですね。でも今年はもっと良いグリッドに付ける自信があります。セパンテストでも3位でした。安定した結果を残すにもやっぱりフロントローからのスタートは重要だと思っています。

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Q:フロントローからスタートさえできれば、ポディウム常連にもなれそうですね?

リンス:そのつもりです! そうだといいけれど!

Q:チームメイトとして、ミルはいかがでしたか?

リンス:いい関係だったと思いますよ。ケガをしてしまったのが残念でしたね。僕もMotoGP初年度にハードクラッシュしてしまいましたが、彼も同じ経験をしてしまいましたね。MotoGPのバイクってやっぱり難しいんですよ。

――――じゃないかと予想はついてましたけど!

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(笑)そうそう、いや、見た目は普通のバイク同様にタイヤが2つついてて、さらに電子制御満載で、そんなに難しくないんじゃないかという印象を受けなくもないと思うんですが、やっぱりとても難しいんですよ! 彼はそれを味わってしまい、しかもケガをしてしまった。ただシーズン後半は良いパフォーマンスを見せていたし、テストでも好調でした。2020シーズンが楽しみですね。

Q:今シーズン、目標値や希望値ではなく、これまでのテストからの感触で、現実的なポディウム数や勝利数は、肌感覚としてどのぐらいが見込めそうですか?

リンス:何よりも去年よりも多くの数のポディウム及び勝利を獲得することが目標で、それをするための手ごたえはあります。始まってみなきゃわからないですが、この目標に対してとても前向きな気持ちでいます。

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Q:最後の質問。シルバーストンでマルケスに競り勝ったあの時、その瞬間、ヘルメットの中で何と叫びましたか?

リンス:色んな事、たくさんのことを叫んだし頭を駆け巡りました。あの日は長く大変なレースでした。息もできないぐらい興奮・緊張し続けたレースだったので、最終的に競り勝った時はもう、感極まりました。頭の中で爆発が起きたかのようでした。

―――― 一周前にレースが終わったと勘違いしていたとも聞きましたが?

そう、もう興奮しすぎて残り周回数を確認することもできないでいたのです。だから最終ラップはボーナスみたいなものでした。全てのコーナーで完全に限界で攻め続けました。レースを終えてマルクは祝福してくれましたが、彼にとってこの負けは堪えたようにも見えました。と言うのも、オーストリアで同様にドビツィオーゾに最終コーナーで出し抜かれていますからね。

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日本GPが行われる「ツインリンクもてぎ」がある北関東に親しんでもらおうと、水戸の銘菓「吉原殿中」をプレゼント。迷わず口に放り込んで、きな粉にむせ返ったミルに対して、「これは何?」と慎重な姿勢を見せまずは匂いを嗅ぐリンス。日本GPでのサイン会などでは是非とも吉原殿中をプレゼントしてあげてほしい(笑)。「YOSHIWARA-DENCHU!」と言ってくれるはずだ。

 いくらかお疲れの様子だったリンス選手。ミル選手に対してインタビュー中も常に冷静で、言葉を選んで話しているような印象があった。セパンの後のテストでも好調を維持している様子を見ると、今シーズンの活躍には期待できそうである。開幕戦がどんどんとずれ込んでいる難しい状況の中、テストでの好調を維持できるよう応援したい。

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去年はセパンから日本に直行し、休めばいいもののお目当ての都内の自転車屋さんに出かけていったというリンス。しかし今年は長いテスト項目リストをこなしたせいか、いくらかお疲れの様子だった。しかし答えにくい質問を投げかける筆者(右)の目をじろりと直視し、固い決意を淡々と話す感じは健在。ずいぶん年下のリンスの目力に今年もヤラレました。


2020/03/23掲載