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試乗・解説






環境規制をクリアするため50㏄以下のエジンが上限だった原付一種の世界が変わった。最高出力4kW以下、50㏄〜125㏄以下の排気量のエンジンを搭載した新基準原付が昨年後半から販売が始まった。気になる1台、スーパーカブ110 Liteに乗ってみた。出力制限がされているとはいえ、その走りは50㏄とは異なるゆとりがあった。なんだか走っている間、ニコニコになる自分がいた。これならどこでも行けるね、と。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:渕本智信 
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン
■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI https://store.56-design.com/collections/spidi  、Xpd https://store.56-design.com/collections/xpd

基本は110カブと共用

 新基準原付の車両概要をお復習いすると、排気量は50㏄以上125㏄以下のエンジン。最高出力は4kW以下の車両を従来通りの原付一種(50㏄以下の免許)で運転が可能、というもの。今回試乗したスーパーカブ110 Liteの場合、ベースはスーパーカブ110であり、109㏄の空冷OHC2バルブエンジンを搭載するのも同じ。
 最高出力/最大トルクはスーパーカブ110の5.9kW/7500rpm、8.8N・m/5500rpmのスペックから、スーパーカブ110 Liteでは3.5kW/6000rpm、6.9N・m/3750rpmとなった。スペック的にはより低い回転で最高出力、最大トルクが出ているのが解る。数値よりも新基準原付のそれと既存の原付ライダーが走らせても違和感がないようなマイルドで乗りやすいドライバビリティを付加したとのこと。
 これはスーパーカブ50が2.7kW/7500rpm、3.8N・m/6500rpmだったことを考えると、排気量がもたらすトルク感があるに違いない、という見立てがたった。

 車両のサイズ、重量も含めスーパーカブ110と同等となるスーパーカブ110 Lite。スーパーカブ50と比較するとスーパーカブ110 Liteは重量が96㎏から5㎏増加。全幅が10mm広がり、シート高は3mmアップ、と重量以外は大同小異となる。価格が24万7500円から34万1000円と、大きく上昇した。しかしその中には車体周りの変更もある。エンジン以外にもフロントブレーキに装備されたABS、スポークホイールからキャストホイール+チューブレスタイヤへの変更なども加わっている。これも環境規制以外にも新基準モデルに必須となる要素でもあるため横一線では比較はできない。とはいえ、値段あがったよね、と思うのが自然だし否めない。

 排気量は変更されたが、原付一種免許で運転する50㏄バイクと同様、最高速度は30km/h、必要がある交差点では二段階右折をすることや乗車定員は一人、最大積載量は30㎏まで、ナンバープレートは従来通り白いプレートが踏襲される。

#スーパーカブ110 Lite

余裕の走りが新鮮

 ひと言でいえばスーパーカブ110の最高出力、最大トルクを基準やドライバビリティを求めて抑えたのがスーパーカブ110 Liteの正体だ。目をつぶって跨がったとしてもエンジンのアイドリング音、スタンドを払ったあとにバイクを左右に振った重さなど110との差異を感じることは難しい。Liteのエンブレムやエンジンのケースカバーに張られたステッカーなどから判断する、フロントフェンダー先端の白帯、リアフェンダーのナンバープレートの下に張られた三角マークの有無などから判別するかナンバープレートがピンクか白か、という違いをみるのが一番早い。

 エンジンを始動した瞬間、排気量なりのブルルンという振動がある。これは50とは明確に違った印象で大きな排気量エンジンのそれ。ただし110と110 Liteに明解な違いはないだろう。
 一速に入れてアクセルをあけていく。発進時の排気量なりのトルク感は回転馬力で稼ぎ出すスタイルの50㏄エンジンでは味わえないゆとりがある。右手を捻りエンジンを盛大にブワンと回してもあまり前にさほど進まない(つまりローギアードな)50とは異なり、低い回転域のままうしろから数人の力持ちに押し出されるような感覚で大股で走るような加速感だ。
 エンジン回転を引っ張ることなく2速、3速とシフトすると下り坂?という走りっぷり。あっというまに30km/hに到達。それがちょっとした上り坂でもエンジンが唸る、引っ張るなど頑張る必要がない。この余裕がいいのだ、110 Lite。

#スーパーカブ110 Lite

 パワーのゆとりはスペック的には110>110 Lite>50となるのだが、走った印象は50のようにアクセル全開という場面がほぼない。その点で110>110 Liteではなく常用域ではほぼ110とイコールなのだ。アクセル全開域だけ高回転になるほどマイルドになる出力特性はまさしく馬力の差、トルクの差、となるのが110 Lite。魅力なのは少ないアクセル開度でも余裕の走りを続けるコト。
 もちろん、制限速度では後方から迫る他の車両をミラーで常にウォッチする必要がある。時にスイスイペダルを回すロードバイクや速い電アシ自転車もそれに加わる。二輪も四輪も運転する立場から言えば、路上の実勢速度と原付の制限速度の差異が時に渋滞やムリな追い越しでアブナイ場面に遭遇することもある。

#スーパーカブ110 Lite

 125㏄以下の新基準原付に新色のナンバープレートや原付二種のようなマークをフェンダーに貼り付けるなどして50㏄と違いを明確にして制限速度を50km/h程度まであげても安全性や他の車両が追い越しのために加速することで排出される二酸化炭素などの排出抑制されるのでは、とも思う。ヨーロッパのようにLマークを免許取得後1年は掲示する初心者マーク的な措置も考えられるのではないだろうか。

 車体周りでは前後ホイールが110同様キャストホイールとなりシングルピストンキャリパーのディスクブレーキを採用する。ドラムブレーキとの決定的な制動力やタッチの差のようなものは感じないが、長期間使う中、ドラムブレーキのブレーキシューのクリアランスやブレーキワイヤーの伸びなどでレバーの引きしろに変化が少ないのも美点だろう。メンテナンスを自分で行っている、ショップに任せているという以外の人にはディスクブレーキのほうが日常的な使い勝手は良いのでないだろうか。

#スーパーカブ110 Lite

 市街地での走りは軽快というよりしっかりとした安定感がある。荷物を積むことを前提にしたしっかりした車体やサスペンション、トルク豊かなエンジン。その二つの組合せでスーパーカブ110 Liteが見せるコーナリングやブレーキング性能は質感が高い。安心感があるのだ。50㏄のスクーター、ダンクなどが持つ意のまま感ある動きも魅力だが、片道100kmぐらいのロングツーリングを計画した時、疲れが違うのもカブの魅力だろう。そう、乗っている間、遠出がしたくなる誘惑が嬉しかった。これも110 Liteの才能だろう。

 ちょっとした上り坂でも押し負けることがなく、右折時のダッシュも不安が少ない。1速上のギアで流していてもアクセルをちょっと開けるとスーと速度が乗る、回復するという走りは経験者には有り難く初心者にも馴染みやすいものだと想像する。そもそも50時代から重量が5㎏増えているが、エンジン周りや電装パーツなど車体の中心にあるものの重量が主体だろうから取り回しでの負担は多くないのではないだろうか。それよりも運転時にこのゆとりが魅力だ。

#スーパーカブ110 Lite

セレクトショップで売っている良いもの感、さらにアップ

 スーパーカブは1958年の誕生以来ミニマルだけどライフスタイルを醸すモビリティとして成長してきた。その中でビジネスバイクとして配達、お得意さん回り、公務など様々な仕事でも役割を担ってきたし、それは今も変わりがない。走りの結論的には近所の移動オンリーだけではなく、休日の遠出を共にするバイクとして原付を探すなら、Liteは一つの最適解だ。籠でも荷台にくくりつけ、帰りには地方の道の駅で仕入れた新鮮野菜をのせ、どこかで鍋でも仕込んでアウトドアも楽しむ、なんて相棒に最適。エンジンにゆとりがあるって休日プランにも広がりがでる、そんな楽しさを持った一台だったのだ。(試乗・文:松井 勉、撮影:渕本智信)

#スーパーカブ110 Lite

#スーパーカブ110 Lite
#スーパーカブ110 Lite
空冷OHC2バルブ単気筒エンジン。シリンダー周りを前傾させることでステップスルーを具現化する空間を確保。低重心にも貢献。ロングストロークタイプのエンジンで低回転から力強い特性をもっている。

#スーパーカブ110 Lite
Y字型のスポークが特徴のキャストホイール。走行中ホイールに太陽の光が当たるとスポークホイール同様キラキラ感がある。前輪は油圧ディスクブレーキを採用。ABSも装備する。
#スーパーカブ110 Lite
クロームのヒートガードを持つマフラー。スチール製角型スイングアーム、フルカバーされたリアショックユニットもカブらしいディテール。チューブレスタイプのタイヤとキャストホイールが110 Liteの特徴。

#スーパーカブ110 Lite
スーパーカブと言えばこのフェイス。ヘッドライト、ハンドルカバーが一体化し、ウインカーがその中から生えたスタイル。ヘッドライトの光源はLED。レッグシールドとその中央にあるCUBのエンブレムもトラッドなスタイルでホンダバイクの顔とも言えるもの。
#スーパーカブ110 Lite
座面がしっかりと体重を受け止めるサドル型シートが印象的。ブラックのリアキャリアは面積、前後長とも「ナニを積んでいこうか?」と意欲と闘志? がムラムラと沸いてくるほど夢が広がる装備だ。荷掛フックもありバンジーコードでもヒモでも雰囲気を作り込むにも大切な舞台となる。

#スーパーカブ110 Lite
#スーパーカブ110 Lite
速度計もハンドルカバー内にある独特のスタイル。平均燃費ほかトリップ、時計も表示する。

#スーパーカブ110 Lite
#スーパーカブ110 Lite
ハンドル周りはシンプルなスイッチレイアウトで使いやすい。エンジン始動用スタータースイッチは右スイッチボックスにある。キックスターターも併用するタイプ。

#スーパーカブ110 Lite
ステップスルースタイル。スカートをはいた女性ユーザーにも使ってもらおう、そんな思いからメインフレームを低く配置した設計だ。その上に雨、風、埃の直撃を和らげるレッグシールドを着けた初代から受け継ぐスーパーカブのスタイルの大きな要素の一つ。メカメカしさではないバイクのスタイルを確立させた。コンビニフックの元祖とも言える便利なフックも備える。
#スーパーカブ110 Lite
自動遠心クラッチを備えるセミATの元祖的存在。シフトチェンジはシーソーペダルによりつま先と踵で踏む方向でシフトが可能。4速ローターリー式。4速で停止すると踏めばニュートラルになる便利機能も備える。

#スーパーカブ110 Lite
フルカバーされたドライブチェーン。注油したオイルで車輪周りが汚れることがない。チェーンケースにある黒い丸いカバーはチェーンのメンテナンス用ホール。
#スーパーカブ110 Lite
シートを前に起こすとその下に燃料タンクの給油口がある。施錠ができるタンクキャップを装備。4.1Lの容量。30km/hでの定地走行燃費値は50のカブと同値、105km/Lとなっている。実走でもエンジン回転をあげなくてもスイスイ走るので平均燃費計は市街地だけでも60km/Lを軽く超えていた。ちなみにWMTCクラス1の燃費値が67.5km/Lだからカタログ値を出すことも難しくなさそうだ。

#スーパーカブ110 Lite
#スーパーカブ110 Lite
●スーパーカブ110 Lite主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ ■総排気量:109cm3 ■最高出力:3.5kw(4.8PS)/6,000rpm ■最大トルク:6.9N・m(0.70kgf・m)/3,750rpm ■全長×全幅×全高:1,860×705×1,400 ■ホイールベース:1,205mm ■最低地上高:138mm ■シート高:738mm ■車両重量:101kg ■燃料タンク容量:4.1L ■変速機形式:常時噛合式4段リターン ■フレーム形式:バックボーン ■懸架方式(前・後):テレスコピック・スイングアーム ■ブレーキ(前×後):油圧式ディスク × 機械式リーディング・トレーリング ■タイヤ(前×後):70/90-17・80/90-17 ■車体色:タスマニアグリーンメタリック、バージンベージュ ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):341,000円


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2026/02/13掲載