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試乗・解説

痛快! フルサイズ! CB125R
グロムやモンキーも良いけれど、フルサイズのワンツーファイブだって良い! レジャーバイクではなく本物の(?)オートバイ。公道だってサーキットだって一人前に走るのだ!
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン

趣味性追求の究極はココだ!

 125ccクラスが盛り上がっていると言われて久しい。事実、かなり盛り上がっているだろう。50ccはすぐ捕まっちゃうし、二人乗りもできない。そして2ストの90ccクラスが絶滅し、それに代わるように125ccの4ストローク車がかつてのように「もう一つパンチに欠ける」という所から、「本気でスポーツできるものに」とエンジンが進化した。利便性重視のスクーターから火が付いたこの125人気だと思うけれど、スポーツモデルも今では国産メーカーでもラインナップしている。もっとも、ホンダはCBX125Fといった4ストスポーツ125を以前にも持っていたが……。
 しかしこの125スポーツのクラスはちょっとニッチにも思う。だってグロムやモンキーのような可愛さや「イジッてやろうか」というワクワク感は少なめだし、逆に車格は250とほぼ変わらないのにエンジンは半分。誰が欲しがる分野なんだろう? と考えると、まずは維持費の観点やパワーのちょうどよさなどから最初に125ccにしようと決めている人、僕みたいに長身で12インチ系が窮屈な人、あとはサーキットも楽しみたい人なんじゃないかと思う。というのも、もちろん12インチのミニバイクもサーキットは楽しめるけれど、17インチで車格があると運動性にさらなる上のクラスとの共通性が出てくるから。特にステップアップを考えている人には良いと思う。
 そう考えるとやっぱりニッチだろう。「モンキー125、いいなぁ! かわいいナァ! 自慢できるなぁ!」と思う人はたくさんいそうなのに対して、あえてCB125Rを選択するとなるとなかなか渋い。イメージとしては、125ccクラスの中では比較的年齢層の高い人がセカンドバイクとして購入するのが自然な立ち位置じゃないだろうか。
 

容赦なく回してこそ楽しい特性

 13馬力を発生する水冷、OHCエンジンは良く回り高回転域でパワーが出てくる味付け。6速もあるミッションのおかげで各ギアを目いっぱい使って回し切って走るのが楽しい。特に今回の試乗ではミニコースではあるもののサーキット走行も取り入れたため、高回転域でのパンチやフレキシビリティを堪能することができた。ちゃんとパワーが出てくるのは8000回転を越えてからという高回転設定。そこからレッドまでは伸びやかに回り切り、軽量な車体をキビキビと走らせてくれる。大柄で安定している車体特性とのマッチングも良く感じ、バイクが寝ている状態でアクセルを全開にしてあとはライダー側で何とかタイムを削っていく作業に没頭する、という、とても楽しい体験だった。
 

 
 一方で公道でツーリングもしたが、こちらでは回転数を高めに保つことを意識した方が楽しいと実感。車格が大きいだけに、またこの季節は紅葉がきれいでついついよそ見してしまうこともあり、いつの間にか回転数が落ち込んでいてアクセルを開けても進まない、ということがあった。そんな時は1速といわず、2速ぐらい落として初めて元気を取り戻すという感じ。街中では他の交通との兼ね合いもあって無意識にパワーのある回転域を使っているため気にならないものの、こういったツーリング場面では低回転域のトルクは排気量なり、というか、むしろグロムやモンキーのカブ系エンジンに譲るパートであり、あくまで高回転志向なのだな、と実感した。
 一つ驚いたのは、サーキット走行含めてほぼずっとパワーバンドを駆使しての走行だったにもかかわらず、メーター上の燃費計はリッター34kmを示していたことだ。普通に流して走っていれば40km/lは越えてくるだろうから、ここでも125の経済性を見せつけられた。

大きな車格はやっぱり良い

 原付二種クラスはホイール径が12インチのいわゆるミニバイク系も多いが、こういった17インチホイールのフルサイズに乗ると、やっぱりこっちの方が現実的かな、という気になる。もちろん12インチ径も良いのだけれど、あちらは遊び感が強いというか、良い意味でのオモチャというイメージが割と強いのに対し、こちらはその大きさ故、一目置かれるような、大人の感じがある。
 これは体格の大きいライダーにとってまずありがたいのはもちろんだが、取り回しなどでもちゃんと車格があるのに軽いから扱いやすく、また走っていても他の交通にちゃんと認識されやすく安全に感じる。ブレーキをかけた時にもちゃんと踏ん張り感があり、17インチのホイールがしっかりと路面を捉えて減速してくれ、全体的に安心感が高い。
 ただ車体の設定自体はわりにハードな方向にも感じた。250cc版と共通イメージの立派な倒立フォークがその感じを演出している気もするが、特にフロント周りは剛性感が高く、ゆえに特に路面の冷たいサーキットで深いバンク角に持ち込もうとすると、フロントタイヤからのフィードバックがもう少し欲しいような気になってしまう。ブレーキング時の高い安心感から、一番深いバンク角に到達する時、フッとハンドルから力を抜いて自然操舵を引き出したいのに、何だか最後の最後で体を預け切ることが難しいようなハードさがあるのだ。純正でラジアルタイヤが装着されていることは公道ワインディングでは大きな安心感だが、もしかしたらサーキットに限定すると、さらにハイグリップタイヤを履かせるか、もしくは逆にワンサイズ細めのバイアスタイヤを履かせた方がフィーリングが良くなるかもしれない。
 対してリア周りはとてもしなやかに動き、サーキットでも公道でも路面をよく捉えてくれていた。長いホイールベースと長いスイングアームはリアタイヤの様子をお尻によく伝えてくれ、常に豊かなフィードバックがあって開けていくのが楽しい。

高級感を楽しむ

 よく「クラスを越えた」などという表現がなされることが多いけれど、最近はどのクラスも高級志向であり同時により大きな排気量の兄弟車両と共通性を持たせるなどされているため、昔の感覚の「クラスなりの~(場合によってはチープな~)」といったことはほぼなく、もうそんな感覚は捨てて良い。
 CB125Rもしかりで、ナンバーを見ない限り初見で125ccだとはなかなかわからない立派ないでたちと細部にわたる高級なフィニッシュが奢られている。
 特にフロント周りの倒立フォークや新世代CBシリーズで共通する、クラシックなのに新しい丸ライトとシンプルなフルデジタルメーター等は高級感がある。テールライトやウインカーも125版だけ電球などとせずちゃんとLED。塗装の仕上げもとても良く、新世代CBシリーズの末弟として全く恥ずかしくない存在感を放っている。またIMU付きABSシステムを備えるなど装備面でも妥協がないのが素晴らしい。

大人ライダーの良いオモチャ

 グロムやモンキーを「いい意味でもオモチャ」と書いたけれど、あちらがライフスタイルを含めた遊び方をするオモチャだったとしたら、CB125Rはもう少しバイクそのものに意識を集中させたというか、もしくはスポーツライディングに情熱を注いだような、そんな遊び方をしたい人にとって最高のオモチャだと言えるだろう。ラフな格好でストリートを散策するグロム/モンキーに対して、ちゃんとライディングウェアを着てツーリングに行くCB125Rといったところか。そして一般道では(というか125は高速は乗れないから自動的に一般道だけれど)より大きな排気量といっしょに出かけても十分に楽しめるパッケージだと思う。常識的なペースは十分に維持できる動力性能を持っているし、長距離も無理なく走り続けられる車格や包容力を持っているからだ。
 この特性と、高回転型のエンジンなどを考えると、やっぱり冒頭に書いたように、ある程度バイクの経験を積んでいるライダーがツーリングや、たまのスポーツ走行などを楽しむためのセカンドバイクとして購入するのが最もフィットしているだろう。125は実用志向というイメージもあったのだが、このCB125Rについては趣味性が高く感じ、バイクというホビーを最大限楽しむのに理想的なツールに思えた。
 
(試乗・文:ノア セレン)
 

 

 

OHCの水冷エンジンは以前のフルカウル125、CB125Rから受け継いでリファイン。最高出力は13馬力を確保し、6速ミッションを駆使しながら高回転を維持するのが楽しい特性だ。
長いスイングアームには兄弟車種と共通イメージのモダンなホイールが。リアタイヤは150/60R17という、125ccクラスとしては極太なラジアルタイヤを標準装備。ルタタッと小気味の良い排気音を発するマフラーは腹下のショートタイプ。
φ41mmのインナーチューブを持つ倒立フロントフォークが存在感を示すフロント周り。シングルディスクには対向4ポッドキャリパーがラジアルマウントされ、ブレーキ性能はとても優秀。車体姿勢を感知するIMU付きABSも備える。
テールライトやウインカーはLED。ピョンと伸びたナンバープレートホルダーはテールにボルトオンされている。リアサスは分離加圧式を採用して軽量化。リアからのフィードバックはとても優秀だ。
新世代CBシリーズに共通する、クラシカルでありながら最先端な丸ヘッドライトはもちろんのこと、その周りの処理や、シリーズで追求している台形フォルムを生むシュラウドなど、高級感に溢れている。
フルデジタルのメーターは明るい昼間でもよく見えて過不足なし。高回転型エンジンなだけにタコメーターは注視してスポーツライディングに臨みたい。
しっかりと広く、前後に自由度もあるシートは窮屈さがなく、また常に快適、そしてサーキットを走ってハングオンポジションをとってもホールド性がとても高かった。
大きく見えるが、タンク容量は10リットル。しかし燃費がリッター40キロぐらい走ることを思えばワンタンク400キロである。走っている時に目に入る景色も、兄弟モデルとの共通性が感じられて高級感がある。
125ccだからって小さくなければいけないということはない。前後17インチのホイール/タイヤを履く、通称「フルサイズ」はライダーの体格を選ばず、より大きな排気量モデルと共通する運動性を楽しめるという意味で有効だ。とはいえ、このCB125Rは793mmとシートが高く感じる人もいそうだ。ステップの位置は自然で、サーキットでも極端に低くてコーナリングの邪魔をするという感もなかった。テーパーされているハンドルは垂れ角が少なく、近年流行りのストリートファイター感をもったもの。(ライダー身長185cm)(※写真の上でクリックすると、両足着き時の状態が見られます)

 
●CB125R  主要諸元
 
■型式:2BJ-JC79 ■全長×全幅×全高:2,040 ×820 ×1,055mm■ホイールベース:1,345mm■最低地上高:141mm■シート高:815mm■車両重量:127kg■燃料消費率:53.0km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)47.2km/L(WMTCモード値 クラス1 1名乗車時 )■最小回転半径:2.3m■エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒■総排気量:124cm3■ボア×ストローク:58.0×47.2mm■圧縮比:11.0■最高出力:9.8 kw(13 PS)/10,000rpm■最大トルク:10 N・m(1.0 kgf・m)/8,000rpm■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火■燃料タンク容量:10L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前/後):110/70R17M/C 54H/150/60R17M/C 66H■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク■懸架方式(前/後):テレスコピック式(倒立サス)/スイングアーム式■フレーム形式:ダイヤモンド■車体色:ブラック、キャンディークロモスフィアレッド、パールメタロイドホワイト■メーカー希望小売価格:456,500円



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2019/12/09掲載