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レース・イベント






2025年12月22日(月)、神奈川県座間市にある都南自動車教習所にて、公益社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)による『パラモトライダー体験走行会』が開催された。12月の第4週の月曜日という師走真っただ中の一日だったが、約55名ものボランティアスタッフが集結し、4名のパラモトライダーの走行をサポートした。
■文・写真:青山義明
■協力:公益社団法人サイドスタンドプロジェクト https://ssp.ne.jp/

 2度のWGP世界チャンピオン(GP125)を獲得した経験を持ち、現在はオートレーサーとして活躍する青木治親が理事を務める公益社団法人SSPによる『パラモトライダー体験走行会』が神奈川県座間市にある都南自動車教習所で開催された。
 朝は雨が残っており、路面もウエットだったものの、参加者の心掛けが良いのか集合時間には雨は上がっており、走行がスタートする頃には陽が射してくるほどまで天候は回復。寒さは厳しくはなっていたものの、それでも陽射しがあれば暖かく走行会日和となった。
 この12月の2回目の開催となった今回、パラモトライダー体験走行会初開催となる都南自動車教習所は最寄りの小田急線・相武台前駅から徒歩3分とアクセスも良く、多くのボランティアが集結。ボランティアスタッフには何度も参加しているベテランが多く、いつも以上にスムーズに走行スケジュールは進行した。

#SSP-ZAMA
盲目ライダーには、まずまっすぐ走れるように進行方向を指示しながら練習を行っていく。
#SSP-ZAMA
クリスマスも近いということで、2頭のトナカイにソリならぬ台車を引かせて治親サンタがやってきた。

 今回の参加パラモトライダーは、脊髄損傷、小児麻痺、そして初参加の視覚障がいを持つ2名の計4名。SSPオリジナルのハンドドライブユニット、身体各部のプロテクターや乗車をサポートするシートベルト、そしてヘルメットにはバイク用インカム「B+com」などを各体験者に合わせて装備。そしてカスタムした補助輪をつけた小型バイクで、会場となった教習所のコースを使用して体験走行を行なっていく。最初はボランティアスタッフが手押しで走行をし、ライダーはバイクのバランスを取り、ブレーキの制動具合を確かめながら、実際に思った通りのラインをトレースできるかを確認する。

#SSP-ZAMA
SSPオリジナルの手押し自転車はバランス取りができるかを確認できるようになっている。実際に乗ってみると、補助輪を使わずに走行するのはなかなか難しいことがわかる。
#SSP-ZAMA
補助輪の付け替えなどもボランティアスタッフが担当するが、この日は6名の整備士資格所持者が集まっていて、言うまでもないが手際は非常に良い。

 その後エンジンを始動し、実際にクラッチとアクセルを操作して走行。うまく走行ができるようならば、より車輪が浮いた状態の補助輪に組み替えながら、ステップアップをしていく。冬至ということで、一年で一番日が短い中、各ライダーは時間いっぱい使いながら全員が無事に走行プログラムを終えることができた。この日のパラモトライダー体験走行会でSSPの年内の活動は終了。

#SSP-ZAMA
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交通事故による脊髄損傷の機能障がいを負った伊藤祐希さんは今回で4回目の走行となる。「1年ぶりの走行だったんですが、力が入ってしまいました。最初に走行した路面の傾きがきつくて、バイクを抑えきれなくてあらぬ方向にバイクが進んでしまって最初はびっくりしました。でも走行の感覚は戻ってきたので、これからもリハビリをしっかりやって体力を落とさないようにして、箱根を目指します」と語る。

#SSP-ZAMA
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脳性小児麻痺による下半身不随の松崎 勇さん。身体が固まって膝を広げることができず、最初はタンクを挟めなくなっていて、最初はどうなることかと思われたが「皆さんにサポートしてもらって乗れました。前回にも増して緊張で身体がガチガチだったけれど…。あと、補助輪が接地した状態からバイクを起こして走り出すのがうまくできないという課題も見つかったので、次回はそれができるように頑張っていきたいです」と。

#SSP-ZAMA
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児玉茜音さんは17年前から左目に霧がかかったような違和感を感じはじめ、手術を繰り返したものの現在は両目ともに明るさがわかる程度のほぼ全盲という。乗り物に乗れるという感覚がないのでぜひ乗ってみたいとパラモトライダー体験走行会初参加。バイクはスクーターの経験があるのみ。「ギア付きは初めてで、クラッチを操作するのがすごく大変で、その感覚を掴むのにも時間かかって。そこで力が入ってしまったのか、もういっぱいいっぱいになってしまって。でも、皆さんにたくさん教えていただいて、楽しむことができました。ありがとうございました」と笑顔を見せてくれた。

#SSP-ZAMA
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植村 要さんは7歳の時にSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)が発症し、現在は明暗がわかる程度の視覚障がいを持つ。メーリングリストでこのSSPの活動を知り、WEBを見に行って、参加を決めたという。「クラッチが効いてるところから動力が伝わるところの微妙なところの感覚に慣れるまで時間がかかりましたが、なんか自分で動かしてるって感じがします」と。実際に走行をしてみると「もっと楽勝でまっすぐ走れると思っていましたが、腕が突っ張っちゃって、気が付かないうちに曲がっちゃうみたいです。難しかった。でも楽しかったです」と走行をしっかり楽しめた様子だった。

SSPが『内閣府特命担当大臣表彰優良賞』を受賞

 2019年に設立、2025年には公益社団法人となったSSPだが、この度、バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進について顕著な功績のあった者を顕彰し、優れた取り組みを広く普及させることを目的とした『令和7年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰』で『内閣府特命担当大臣表彰優良賞』を受賞することとなった。

#SSP-ZAMA
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「高齢者、障害者、妊婦や子ども連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送れるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する」ことについて顕著な功績のあった者を顕彰し、優れた取組を広く普及させることを目的とした『バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰』。受賞したSSPを代表して出席した3人。スーツ姿の兄弟の姿を見ることはあまりないので、非常に新鮮な3ショットだ。

 そしてこの体験走行会の翌々日となる2025年12月24日(水)、内閣総理大臣官邸2階大ホールで行われた『令和7年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式(第24回)』に青木治親代表理事と青木宣篤SSPテクニカルアドバイザー、青木拓磨SSP専属パラモトライダーの青木3兄弟がそろって出席。
 青木治親代表は今回の受賞について「いつも支えてくださるボランティアの皆さん、ご協力いただいている企業の皆さま、そして個人サポーターの皆さま一人ひとりと一緒にいただいた賞です。心から、ありがとうございます。これからもSSPは、オートバイで“楽しみ”と“可能性”を広げる活動を続けていきます。引き続き、応援よろしくお願いします!」とコメントを残している。

#SSP-ZAMA
3件の『内閣総理大臣表彰』、そしてSSPを含む5件の『内閣府特命担当大臣表彰優良賞』、7件の『内閣府特命担当大臣奨励賞』の表彰式出席者による集合写真。

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2025/12/29掲載