ミスター・バイク アーカイブス 第1回 創刊までを考察してみた
1976年(昭和51年)4月(月号では5月号)に創刊し、2010年(平成22年)7月号で休刊(書籍コード=ミスター・バイクの場合は08489が生きている限り廃刊とはいわないらしいので)して、現在はWEBでなんとか生き延びているミスター・バイク。長いようで短いのか、短いようで長いのか、35年間で420冊(増刊号は含まず)を発行しました。これも多いのか少ないのよく分かりません。創刊号から最終号まで、おもしろそうな内容をピックアップして、一部ではございますがご紹介させていただきます。しかし改めて420冊となると量が多い……不定期更新になりそうですが、気長にお付き合いください。
まずはミスター・バイクの創刊と「週刊 ザ・モータ−」について
ミスター・バイク創刊号の発売日は1976年(昭和51年)4月6日(火曜日)。現在49〜50歳になる方が誕生した年です。沖縄海洋博開催、「およげたいやきくん」の大ヒット、ロッキード事件発覚、ソ連からミグ25戦闘機が函館に亡命などが起きた年です。4月にはあのアップルコンピューターが設立されました。同期生? なのに月とすっぽん以上の差です。バイクを取り巻く環境は、ホンダロードパルが大ヒット、おばちゃんたちの間でソフトバイクがブームになる一方、暴走族が全国で大きな社会問題になり、前年には東大合格よりも困難と言われたナナハン免許が出来ましたが、国内出荷台数は増加を続けており、130万台を越え絶好調でした。
定価は180円。初代編集長は弊社・東京エディターズの初代社長の渡辺靖彰(せいしょう)氏。BOSSと呼ばれていた、四輪業界では結構名の知れた怖くて偉い人です。編集部員は石井昭博氏(元モーターサイクリスト誌編集部員、後にレディースバイク編集長など歴任、故人)、山崎憲治氏(現在も船舶関係で執筆)、近藤健二氏(後に長年ミスタ−・バイク編集長を担当、知っている人も多いでしょう)。他にもバイト的な大竹修氏(後のミスター・バイク編集長)、中尾省吾氏(「てっぺーさん」といえばご存じの方も多いでしょう。現在も活躍中)、そして中尾祥司氏(現東京エディターズ代表取締役社長)など錚々たるメンバーが揃っていました。
当時のバイク雑誌といえば、業界の2大巨頭のオートバイ誌、モーターサイクリスト誌のような平綴じで、実用性の高い真面目な記事をきっちり掲載するスタイルでした。ミスター・バイクはページ半分(170ページ)、価格半分以下(180円)の中綴じ週刊誌スタイルで、内容も「読み捨てられる雑誌のように〜」な記事がメインという、異色のバイク雑誌としてスタートしました。
ミスター・バイク創刊以前の1971年5月から弊社の礎となったモータープランニングは、週刊 ザ・モーターという雑誌スタイルの四輪メインの週刊誌を編集していました。版元(日刊自動車新聞社)の都合で1974年に休刊。検索してもほとんど情報が出てこない不思議な雑誌です。当時の四輪誌もお堅い内容が主流のなかで、読み物やニュースなどがメインで、好き嫌いが分かれる異色の存在だったようです。今では当たり前の編集後記も「編集後記はよお、オレが最初にザ・モーターで作ったんだよ」とBOSSから聞いたことがあります。真偽のほどは定かではありません。編集部は芝の増上寺に隣接した古い由緒ありげな一軒家でした。後のミスター・バイク編集部は、大田区南雪谷にあった庭や池のある大邸宅で、BOSSはビルの一室ではなく、大きなお屋敷が好きだったのですね、たぶん。この大邸宅はミスター・バイク編集部にもなりましたから、訪問された読者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
関連して編集部員が製作出演するザ・モーターウイークリーという深夜番組を(毎週土曜日1時〜5時)ラジオ関東(現アール・エフ・ラジオ日本)で放送していました。大晦日には二輪四輪の著名人を招いた紅白歌合戦なんかもやっていました。この番組はその後、BOSSがまじめに四輪について語る番組になって他局(青森放送だったかな?)に受け継がれました。今もどこかでやっているようですが、弊社とはまったく関係ありません。
ザ・モーターの主要メンバーがミスター・バイク編集部員となり、判型も中綴じの雑誌スタイル、独特の環境やBOSSを頂点とした自由闊達かつBOSSを頂点とした絶対専制君主的な独特の東京エディターズの社風も含め、ミスター・バイクの起源は週刊 ザ・モーターなのです。古本市場にもまず出てこないレアな雑誌ですが、巡り会えたらご一読ください。
最後にミスター・バイクの180円という価格ですが、「雑誌なんてものはよぉ、器だけ作ればあとは読者が育ててくれるもんなんだよ。本屋で100円玉2枚出せば20円おつりが来るんだよ。それで郵便局に寄ってハガキ(当時は一枚20円)を買って投稿してもらえるだろ」とBOSSが決めたとか。まあ、一応商業誌ですからそんな理由で価格が決まるとは思えない都市伝説のようなものかもしれません。BOSSを知っている人なら、BOSSがそう言ったと聞けば、充分あり得ると納得してもらえるでしょう。
長々と思いつくままに書いてしまいましたが,記憶違いもありそうです。あったらすみません。次回は創刊号の内容を紹介いたします。