かつては春のモーターサイクルショー=カスタムバイクの祭典で、メーカー系新車は秋のモーターショー、なんて棲み分けができていた時期がありました。いまではメーカー系新車に押されがちではありますが、どっこい元気だカスタムバイク界!
■取材・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔
トレンドはミニと旧車と……
カスタムバイクの祭典と言えど、やはり人気カテゴリーのカスタムバイクがたくさん出展されるモーターサイクルショー。その意味で、今のカスタム&チューニングバイクのトレンドは、ニューモデル、ミニ、空冷4発、旧車といったところかな、と思わされる出展車群でした。
近年のカスタムバイクの流れとしては、ノーマルの持っている雰囲気を崩さずにパーツ装着でイメージを変えていくこと。その意味で強烈に印象に残ったのは、一本取られた! のダートフリーク製作のCL250と、相変わらずの完成度を見せるドレミコレクション製作のZ900RS改とCB400SF改CBX、それについに市販前提までこぎつけたヨシムラ製作の油冷初期型GSX-R750コンプリートでした! もちろん、みーんなスゴいんです、ってのが前提です!
FRPやカーボン、アルミ削りといったパーツ製作を手掛けるワンオアエイトは、ヨシムラの世界耐久マシンのカウル関連をサポートしているクラフトマン。写真のモンキー用タンクカバーはFRPやカーボン、スズキのCNチャレンジ号でも知られることになった亜麻繊維製のものをラインアップ。
スーパースポーツはもちろん、遊び心たくさんのミニバイクも手掛けてくれるヨシムラはハンターカブとモンキーRを出展。マフラーはもちろん、エンジンパーツやドレスアップ、小物類をラインアップしてくれています。125ccクラスで言えば、DAX125、モンキー125、ハンターカブにクロスカブ、XSR125用パーツがどんどんバリエーションを増やしています。
ミニから旧車までのパーツだけでなく、トラック用パーツを手掛けるマッドマックスは、ホンダ125ccシリーズ用パーツを大量展示。ハンターカブ、クロスカブ、DAX125にモンキー125と、マフラーからステップ、外装パーツやリアボックスまで、ありとあらゆるドレスアップ&カスタムパーツをラインアップしています。Webショップも充実しているのでポチポチ購入できます!
カワサキ絶版車系のリプロダクションパーツやオリジナル補修パーツで世界的に有名ブランドとなっているPMCが、なんとミニバイクもやってくれました! ブースに展示されていた「あ、モトラだ」と近づいて行ったら、エンジンやホイールは現行クロスカブのもの! 3Dプリンターで作られたパーツによるデモ車なんだそうです。モンキー125を含め、ミニバイクを「古き良き時代」の再現を狙っていくそうです。モトラは出来たて、モンキー125用はハンドルやヘッドライト、ショートマフラーなどを発売中!
パフォーマンスミニバイク 大阪の雄3連発
パフォーマンスミニバイク、大阪の雄・シフトアップはDAX125を出展。前後ディスクローターに、開発中のアルミ削り出しのオリジナル4ピストンキャリパーを展示していました。車体パーツ、ドレスアップパーツや電装系パーツなどを装着したデモバイク。マフラーはこれ、モリワキですね。現行125ccモデルではモンキー/DAX/GROM系パーツで、これからどんどんアイテムを増やしていくそうです。
パフォーマンスミニバイク、大阪もうひとつの雄・キタコはクロスカブ110を出展。ノーマルシリンダーヘッドをそのまま使える145cc「ライト」ボアアップキット装着車で、マフラー、リアサス、ベトキャリことフロントキャリアなどが装着されています。クロスカブだけでなく、スーパーカブ系、ハンターカブ、モンキー125、GROM、DAX125用パーツも、エンジンパーツからマフラー、ドレスアップパーツまでフルラインアップ!
パフォーマンスミニバイク、大阪シリーズのトリを飾るはSP武川。モンキー125を出展し、これで大阪から人気爆発ミニバイクを3車種展示したことになりました。武川もパフォーマンス系ミニバイクを得意としますが、これは前後キャリア&ツーリングバッグ、フォグランプキット付きレッグバンパーを装着したツーリング仕様ですね。快速モンキーも楽しいけれど、旅するモンキーって、作り上げたくなる人が多いんです。
かなり力を入れたブースを展開していたモリワキのGROMは、GROMカップなどのミニバイクレース出場用のコンプリートモデル。ハンドル、ステップ、マフラー、サスペンションをはじめ、レース出場用のレギュレーションに合わせたアンダーカウルやキャッチタンクもすべて装備。ミニバイクレースを始めるには、こんなコンプリートモデルを購入してのスタートが安全確実なのです。写真のカラーは参考までに、未塗装モデルで44万円から発売されています。
カワサキブースでも注目の高かったW230、メグロS1用とGB350C用の「タイムレスレトロ」シリーズ。何と言っても目を引くのは販売予定品のレッグシールド(ステー込み予価6万500円)で、レッグシールド、スクリーン、フロントフェンダー上の風切り板などがスタイリングにベストフィット。このレッグシールド、実は真冬のライディングにものすごくありがたいのです。そう大きな変更点があるわけじゃないのに、こんなにイメージが激変するのがカスタム上手な技なのです。
上のキジマ車と同じW230とは思えない方向に舵を切った、クラシックカフェレーサー風カスタム。セパハンやスクリーン、シングルシートが大きな変更点で、純正フェンダーをメッキして取り付けてある。これも大きな変更点なしで、グッとスポーティなテイストが強調されているのが、デイトナのカスタムセンスであり、W230がもつベースモデルとしてのポテンシャルなのです。
本文にもあるように、シンプルな展示なのに強烈な個性を放っていたCL250カスタム。イメージはもちろんダートトラックで、前後にブリヂストン製ブロックタイヤを装着し、ダートラ車の主流とされるダウンマフラーはモリワキ製をチョイス。ヘッドライトやハンドガードはスクランブラー風イメージとしてシェイキンスピードグラフィックスのスペシャルペイントで決めています。リアにはフェンダーレスキットを組んでグラブバーを装着し、シートと面一にすることで、実はツーリング荷物も積みやすくしているそうです。カッコいいだけでなく、乗りたくなる1台!
125ccでもロングツーリングに出かけよう、をコンセプトに仕上げられたXSR125。リアの積載機キットは、ヘプコ&ベッカー製のサイドバッグとプロトオリジナルのIGAYAシートバッグの組み合わせ。マフラーはアクラポビッチ製チタンで、スクリーン装着ぐらいがメインメニューだ。
異彩を放っていた展示車は、サクマエンジニアリング製のRFサイドカーを装着したCL250。直線基調の面構成のカーで、主に250cc以下用の小型サイドカーだ。乗り降りには上面のガラスルーフが開閉する仕組みだ。サイドカー、取り付け調整、書類記載変更などの総額で約90万円。サイドカーのある生活、味わってみませんか? 未知の楽しみ、ワクワクしますよー。
始めの一歩はマフラー
カスタムバイクの初歩と言っていいマフラーも、ニューモデル用に多数展示されていました。GB350C用はアールズギア(https://www.rsgear.co.jp)製で、スポーツバイク系マフラーが目立つワイバンシリーズでも「ワイバンクラシック」というラインがあるのです。エリミネーター400用は日本ビート工業(https://www.beet.co.jp)製で、真円マフラーが新鮮な発売予定品。ハイパーバンクステップも装着されていますね。XSR900GP用はディグイット(https://super-bike.jp)製で、写真のモデルはXSR-GPにイメージピッタリの、かつてヤマハのキットパーツを発売していたRC-SUGOキットの形状にそっくり!
現行モデルをベースにクラシックな名車を再現するネオクラシックスシリーズ。2022年の東京モーターサイクルショーで初公開して3年、いまだに話題沸騰中なのが、このCB400スーパーフォア改CBX400Fスタイルだ。NC39またはNC42をベースにCBXスタイルを再現するもので、何度見ても、見れば見るほどよくできています! あまりにも自然なフィット具合のため「CBXをベースに400SFの足周りを入れている」と誤解するひと多数!
モリワキカラーにペイントされているため、パッと見ではなにがベースなのかわからないけれど、これはXSR900GP。注目はサイレンサーで、この冷却フィンが設けられたデザインは、なつかしの「フォーサイト」マフラー! XSR900GPだからこそ似合うサイレンサー、ホンダブースに展示されていたCB1000Fにもきっと似合う! オールドCBファンに響いてます!
数ある展示車の中でいちばん注目度が高かったように思ったのが、この油冷初期型GSX-R750。ゼッケン604と赤黒カラーは、デイトナ200マイルの辻本聡車だと思いきや、バックミラーもウィンカーも装着されている公道走行モデルです! これはヨシムラのヘリテイジシリーズで、絶版パーツのリプロダクション、ヨシムラパーツ、そしてコンプリートマシンの3本柱。そのコンプリートマシンの第一弾が、このGSX-Rで、1号車の販売価格は入札制、最低価格は604万円スタート!
輸入パーツ、オリジナルパーツのサプライヤーにして、カスタムビルダーとしてはZRX-DAEG系のトップチューナーとして知られるアクティブ。写真のダエグは、懐かしのZ400GP風カラーをまとって、ノスタルジックな姿に仕上げたモデル。スイングアームやホイールなどは、あえて「最新」を外してパーツチョイス。80年代チューニングバイクのイメージと最新の安全走行性能を合わせた仕様となっているそうです。
Z900RSカスタムと同時に、空冷Zカスタムにもあらためて取り組んでいるという奈良・アメリカンドリーム。写真の車両は空冷Zの最新形で、エンジン、車体、サスペンション、外装パーツともフルに手を入れたフルチューンバイクだ。目を引くのはちょっとウィングレット要素を取り入れたカフェレーサーカウルtype2で、スタンダードなロケットカウルが最新の雰囲気を漂わせている。ちなみに写真のNeoショートチタンマフラーは価格16万5000円と超お買い得!
モータースポーツ発祥でのパーツ開発を続けるベビーフェイスのZ900RS。ベビーフェイスといえばゴールドのバックステップ、なイメージを車体全体に広げ、マウントプレートやキャップボルト、車体カラーをブラック×ゴールドで統一。凄みや迫力がありシブいカッコいい900RSです。
ナイトロンジャパン(https://www.nitron.jp)のブースに展示されていたのは、ブルドック製作のZ1000MK2……というか、もはやブルドックのコンプリートバイク。GT-MとはGenuine Tuning Machineの略で、ホンモノのチューニングバイク、の意味。ベースモデルを全バラとして、パーツ単体からのチェック、パーツ新作、すべてハンドメイドでの組み立てで、一貫した自社内製作のため、製品のバラつきがなく、新車以上のコンディションで乗り続けられるというものだ。
上でミニバイクシリーズ「フィルネス」を紹介したピーエムシーの、もっとメジャーなカワサキZシリーズ。PMCはカワサキZを本来の形でキープするシリーズ、ドラフトZシリーズはZ系用のパフォーマンスシリーズ、そして写真のZ900RSはARCHI(アーキ)シリーズ。サイクルショーで発表されたのは、このアーキシリーズのオールブラックバージョン「ジェットブラック」で、漆黒の存在感が、また凄みを倍増させていました。アーキシリーズのジェットブラックカラーのパーツも発売予定。
BSリチウムバッテリー(https://www.marunakayoko.net)ブースに展示されていたACサンクチュアリーの1100カタナ。とはいえ、前後17インチホイールに倒立フォークが組まれたフルチューンで、もちろんオーナーのオーダーメイドで1台ずつ製作されるフルレストア&フルチューン&フルオーダーの車両。グレーメタリック系に統一された外装パーツ、シャーシ&エンジンはブラックと、日本カスタムカタナ史上最高峰の1台であることは間違いナシ!
マグネシウム鍛造ホイール「マグタン」やケーヒンFCRキャブレターのビルダーでもあるBITO R&Dは6気筒CBXと、初公開のVFR400R(NC30)を出展。ホイール、キャブレター、フルエキ、キャリパーなどがオリジナルに換装されているが、BITOの考えはチューニング=性能アップではなく完全性能に近づけること。ちなみにBITOさんが手がけたモデルはことごとく名車にリストアップされるから、NC30もその仲間入りということか。
アエラと言えばドゥカティ用ハイクオリティパーツと思ったら、Z900RSに続いて、アエラで初めてのスズキ車、HAYABUSAカスタムもスタート。アエラらしいハイクオリティな削り出しパーツを使用したバーハンドルキット、ステップキットやカーボンスクリーンを発表。使用しているマフラーはアールズギアとアエラの共同開発品。今後も続くHAYABUSAシリーズは「京翠」(きょうすい)と呼ばれる。
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