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レース・イベント

「オートレース場ではなく競輪場?」サイドスタンドプロジェクト、2024年の活動をスタート
■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクトhttps://ssp.ne.jp/




伝説の「青木三兄弟」の三男で、2度のWGP世界チャンピオンを獲得した青木治親が理事を務める一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が、障がい者を対象に開催している「パラモトライダー体験走行会」。障がいを負ったことで夢をあきらめない、もう一度バイクに乗ることを支えていくこの活動は2020年6月の初開催から数多くの参加者を集めて開催を続けている。

 
 SSPが5年目の「パラモトライダー体験走行会」の活動を開始した。SSPは、青木三兄弟の次男・拓磨を再びバイクに乗せるプロジェクト「Takuma Ride Again」を実現させた後、一般の障がい者にも体験してもらいたいと、立ち上げた一般社団法人。障がいがあってもバイクに乗る夢を追い続けるすべての人々を後押しするため、このSSPが展開するボランティアイベントがパラモトライダー体験走行会である。
 バイク事故で機能障がいを負ってしまった元ライダー、そして生まれながらであったり、交通事故に起因しない後天的な障がいでバイクに触れる機会のなかったライダー希望者まで、障がいの内容も問わず、対象を広げて活動を展開している。
 

平塚競輪所属の競輪現役選手がボランティアスタッフとして参加。もちろんバイクを押す担当として、脚力の違いを周囲も実感する機会となった。

 
 2024年初のパラモトライダー体験走行会は、3月12日(火)、神奈川県平塚市にある平塚競輪場(ABEMA湘南バンク)での開催となった。当日は朝から激しい雨が叩きつける、というとてもバイク日和とは言えない一日となったが、会場にある大テント下ステージの広場を利用し、雨に降られることなく、体験走行ができた。
 今回は機能障がいを負った4名が参加した。また今回初めてのSSPの活動に参加するというボランティアスタッフが多く集まり、取材を行うメディアを含めると80名近くが会場に詰めかけることとなった。
 

朝イチのブリーフィングでは、今回参加のパラモトライダーが紹介され、SSP専属理学療法士からそれぞれの身体の症状と注意点がレクチャーされる。

 
 この活動では、参加者それぞれの障がいに合わせてカスタムを施し、転倒を防止するアウトリガーを装着したバイクをSSPが用意し、ヘルメットやプロテクターなどのライディングギアも貸し出される。バイクの発進と停止のタイミングで不安定になるバイクをボランティアスタッフが支えてカバーする。今回は4名の参加者それぞれに50分ほどの走行時間が用意された。最初はエンジンをかけずに人力でバイクを押しながら、ブレーキやバランスの取り方などの走行の感覚を確認し、その後エンジンを掛けて実際の走行を行う。そしてバイクをしっかり扱うことができることが確認できると、今度は3タイプあるアウトリガーを変更していくことになる。

ハンドルでバランスを取ることの練習をすることのできるステップアップサイクルも用意する。実際に乗ってみるとなかなか難しいことを実感できる。下半身不随の参加者には手元だけでシフト操作の出来るシフトユニットを装着するが、写真右は右側にシフトレバーを移植して右側だけでシフト操作もできるように改造して左上肢麻痺の参加者でも体験走行ができるようにしていた。

 
 今回も無事に事故もなく4名のパラモトライダーが誕生した。各参加者は一様に笑顔を絶やさず、この機会についての感謝の言葉を口にし、今後も引き続き走行会参加の意欲を見せていた。「あきらめなければ夢はかなう」を実際に体験することができる機会は今後も続く。次回のSSP「パラモトライダー体験走行会」は4月19日(金)に千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催される。
(文・写真:青山義明)
 

 

脊椎損傷による半身不随の伊藤祐希さんは、昨年の6月以来2度目の走行となった。頸椎の損傷もあって体温調整が難しくこの日も「寒いというよりは痛いという感覚なんです」ということだった。さらに右腕や右足の可動域も狭かったのだが「リハビリを頑張ってきました。ただ、ちょっと前に肺炎で入院していて、体調は万全とは言えませんでした。でもそれのおかげで変に力むことなくうまくバランスをとって走行することができました」というコメントの通り、この日は以前よりも大幅にテクニックが向上していた。「鈴鹿経由の箱根(鈴鹿サーキットでのパラモトライダー体験走行会を経て『やるぜ!箱根ターンパイク』での一般公道での走行)を目指して、これからもリハビリを頑張っていきます」と話してくれた。

 

今回初参加となった田添亘さんはバイクの事故で脊椎を損傷。このSSPの活動は以前から知っていたが今回が33年ぶりのバイクを楽しむ時間となった。「まるっきりバイクから離れてしまっていたので、昨晩はわくわくで眠れていない。興奮して眠れないなんて何十年ぶりだろうって感じです」と。それでもしっかりとバイクを体験。「楽しかったですね。バイクに再び乗れたのはすごく嬉しかったです。皆さんに支えてもらって、このサポートが心強かったです。ただ乗ってみるとイメージと違ってました。昔は意識してバランスを取ってバイクに乗るって感覚はなかったですし、考えることすらなかったのですが、今回はいかにうまくバランスを取って乗るかというところに注力することになって、何か新しい習い事をやっているという感じでした。これはこれで楽しかったですね。まるで幼いころに自転車の補助輪を外した時のような気がします。私もこれからもっと参加して箱根での公道ツーリングを目指したい」と新たな目標を目指して進んでいくようだ。

 

板嶌憲次郎さんは20歳ごろから網膜色素変性症が発症し、現在では明るさがわかる程度という視覚障がいを持つ。バイクは26歳くらいまでは乗っていて、今回のパラモトライダー体験走行会に向け、イメージトレーニングを重ねてきたという。「フルフェイスのヘルメットをかぶること、そして足を大きく上げてバイクにまたがること、太ももで挟んだタンクのひんやりした冷たさ、そんないろんなことを逐一懐かしく、そしてこれだ、これだと思い出すことができました。また、クラッチを切って1速に入れた瞬間にガチャンとギヤが入った振動も、すべてが感動でした。バイクが欲しくなりました」と語った。

 

小山博幸さんは、バイクの事故で頸の神経根引抜き損傷により肩から下の左腕が全く動かすことができず感覚もほとんどない状態。SSPの活動自体は以前から知っていたのだが、奥様の手前、参加するのを控えていたという。その奥様が亡くなられたことから今回の参加を決意。今回はその奥様の遺影をもって、奥様に見てもらいながらの走行となった。左腕はハンドルに置くような形で左手を固定し、右手側にクラッチレバーを移植して右手で変速操作もするカスタムを施した車両で体験走行となった。「最初はバランスがうまく取れずフラフラしていましたが、徐々にまっすぐ走れるようになって、初回にしてはうまく乗れたのではないかと思います。親指でのクラッチ操作に最後は疲れちゃいましたけど、さらにステップアップしていけるよう、次回以降も参加したいと思います」とコメントしてくれた。

 



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2024/03/25掲載