■試乗・文:毛野ブースカ
■撮影協力:玉井久義
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor//
皆さんお久しぶりでございます。コロナ禍で湯巡りがなかなかできなかったことから「湯巡りみ○ゅ〜らん」の更新が滞っておりますが、そろそろ復活しようと思っていた矢先、ホンダからあるバイクの新車発表が今年の初めに行われた。それは我が愛車400Xの後継機種となる「NX400」の発表だ。初代400X乗りとしては仕様変更などがあるたびに気になってはいたが、今回は名称に「N」がついてNX400になり、顔つきが別人のように変わっており、もの凄く気になっていた。現車は今年3月に開催された第51回東京モーターサイクルショーの会場で確認できたのだが、短い時間、しかも走行できないことから400Xとの違いを詳しく確認することができなかった。そんな経緯があり、どうしても気になることからNX400と我が400Xを乗り比べてみることにした。今回の記事は、新車でNX400の購入を考えている方はもちろん、400Xを中古で購入を考えている方に向けて、初代400X乗りの立場から作成してみた。参考になれば幸いだ。
私が乗っている400Xは2014年式で、クロスオーバーモデルとして2013年に誕生した初代である。初代については2015年に当Webでインプレし、あまりの良さに感動して、その半月後に今所有している400Xを中古で購入してしまった。購入してからちょうど9年、約7万キロ走っているが、今でも気に入っている。誕生から10年が経過している400Xは、今まで仕様変更が何度が行われており、NX400と初代400Xでは見た目だけではない違いが多い。そこで、NX400の特徴を確認する前に400Xの仕様変更の歴史をおさらいしておきたい。
●2013年(NC47)
水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒400ccエンジンやフレームを共有するフルカウルスポーツのCBR400RとネイキッドスタイルのCB400Fの兄弟機種として誕生した。「クロスオーバーコンセプト」に基づき、デザインキーワードは「Modern & Stylish」として海外モデルCB500Xの「Crosstourer」のDNAを受け継ぐことで他機種との差別化が図られている。専用17リットルの燃料タンク、専用ダブルシート、ウインドスクリーンの採用、アップライトなライディングポジションなど長距離ツーリングに適した特徴を有している。
●2016年(NC47)
●2017年(NC47)
●2019年(NC56)
●2022年(NC56)
こうしてみると、型式がNC47からNC56に変わり、フロントタイヤが19インチになった2019年式が最も大きく変わっているのがわかる。そこまでは細部パーツやグラフィック、ボディカラーの変更に留まっている。先ほど仕様変更は気になっていたとは書いたものの、ここまで詳しくは確認していなかった。あらためて確認すると、エンジンの共有とクロスオーバー的な外観は継承していても年を追うごとに着実に進化しているのがわかる。ターニングポイントとなった2019年式からフロントフォークが変更された400Xという名称では最終型となる2022年式まで大きな変更はない。そして、この2022年式を発展させたのがNX400なのである。
2022年式からNX400への変更点を要約すると以下の通りだ。
・開発コンセプトは「Modern Street Adventure」
・型式がNC56からNC65へ変更
・モデル名称を400XからNX400に変更
・外観を一新
・Hondaセレクタブルトルクコントロール(HSTC)を新搭載
・5インチフルカラーTFT液晶メーター採用
・車輛とスマートフォンを連携させられるHonda RoadSyncを標準装備
名称の変更もさることながら「顔つき」の変化が、400X乗りから見て最もインパクトがある。私はよく自分自身と400Xを「ライダーはブサイク、バイクはイケメン」と例えることがある。クロスオーバーらしい都会的なシャープで力強い顔つきは、パールサンビームホワイトのボディカラーと相まって乗り始めから現在までずっとカッコいいと思っている。乗り手との400Xとのギャップが激しく、たまに恥ずかしくなってしまうことがある。
それに対してNX400は、さらにシュッと、目がキリっとして小顔になった。今回乗車したモデルのボディカラーがマットバリスティックブラックメタリックということもあり、逞しく日焼けしたワイルド感も加わっている。2017年式以降アンダーカバーが廃止されたことから下回りがスッキリした。フロントタイヤが19インチになったことも、パッと見のシャープで、よりアドベンチャーっぽい印象を与えている。10年の時を経て美形の都会的な、イケメンというよりハンサム顔から、ちょっとワイルドで日焼けした、ちょっとオラオラ系の要素が加わったイケメンに変わったとでも言ったらわかりやすいだろうか。
その印象をさらに強めるのが排気音だ。試乗車を受け取ってエンジンをかけた際、歯切れがよくて野太い排気音に思わず「おっ!」と驚きの声を出したしまった。2019年式以降、マフラーのテールパイプが2本になったことの影響だろう。排気音が大人しい400Xと比べると段違い。見た目の違い以上にインパクトを受けた。排気音からしてよりアドベンチャー系、オフ系を意識しているのが分かる。
シートに跨った感じや足着きは400Xとそれほど違いは感じなかったものの、2019年式以降、シート前部がシェイプされており、特に小柄な方は跨りやすくなったかもしれない。アップライトなライディングポジションは400Xから継承。肩ひじ張らない楽なポジションはロングツーリングだけでなく街中で乗車する時にも最適。リアブレーキペダルやシフトチェンジペダルの位置は同じ。実際、400Xから乗り換えても違和感は感じなかった。タンクは容量、形状ともに初代から継承されており、側面のカバーの形状は変わっているもののニーグリップした感じに変化はない。
メーターとウインドスクリーンの位置が前に移動したことで前方視界が広く感じ、メーターの視認性も格段にアップしている。テーパー形状のハンドルバーを採用したことでハンドル周りがスッキリした。ハンドル周りで何より感動したのがメーター上部のアクセサリーバーだ。2019年以前の400Xはアップライトなライディングポジションにあわせるようにアップハンドルを採用しており、私のように一体型のETCを装着していると、スマホを装着するのに工夫が必要になる。現在のツーリングシーンにスマホは欠かせないことから、このアクセサリーバーは大歓迎だ。メーター上部にあるのでスマホをナビ代わりに使う際に最適。さらにカウル左側にオプションのアクセサリーソケットを装着すれば充電もしやすい。
メーターは5インチフルカラーTFT液晶メーターになり視認性が高くなっただけでなく表示できる情報量が増え、表示レイアウトが3タイプから変更できる。背景色はホワイト/ブラック/自動/から設定できる。表示情報で特にありがたいのがギアポジションインジケーター。初代400Xには設けられていない。時折ギアポジションがわからなくなるので、これがあるとありがたい。初代400Xではメーター左右に設けられたボタンを押して表示を替えるのだが、NX400はハンドル左側にあるマルチファンクションスイッチで操作する。これは私だけかもしれないが、説明書を読んでもこのスイッチの操作方法がなかなか理解できず難儀してしまった。スイッチそのものが操作しにくいわけではなく説明書がわかりにくいだけだと思うのだが、使いこなすには慣れが必要だ。見やすいメーターだけに説明書は改善したほうがいいと思った。
シートからリア周りにかけて細かいパーツの変更はあるものの、見た目とパーツ構成はほぼ同じ。リアキャリアはオプション扱いで、日帰りツーリング程度ならばタンクバッグとリアシートバッグを併用すれば問題ないが、ロングツーリングやキャンプツーリングとなるとこれだけでは少々厳しい。標準状態では荷物を積載するのにかなり工夫が必要だ。リアキャリアは初代からずっとオプション扱いで、クロスオーバーモデルならばNX400になったのを契機にリアキャリアを標準装備してほしかった。もしNX400に限らず400Xの中古の購入を考えている方も、自分がどのような用途でこのバイクを使うかを熟考の上、オプションの装着もしくはオプションが装着された中古車を選択してほしい。
足周りは400Xではフロント、リアともに17インチだが、2019年以降の400XやNX400はフロントが19インチ、リアが17インチというコンビネーションになっている。400Xがロードバイク寄りに対してNX400はオフ車っぽくなっている。400Xの特徴である水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒400ccのエンジンは初代から継承。6段式ミッションと併せて中低速から高速域までコントロールしやすい。変速比や最高出力は400Xや兄弟機種のCBR400Rと同様。ただしトルクと燃費(定地燃費値)がNX400を含めた2019年式以降わずかながら向上している。これらの違いが実際にはどうなのかはロングツーリングを行なって実証してみたい。
ここまで私が乗っている2014年式の初代400Xからシリーズ最後となる2022年式、そしてNX400を通してみてきた。400Xがクロスオーバーモデルというコンセプトをキープしつつ年式を重ねるごとに各部がモダナイズされ、さらに2019年式以降フロントタイヤが19インチになったことで、当初は三兄弟のひとつとしてオンロード寄りだったキャラクターから、アドベンチャー/オフ系のキャラクターを強調するスタイルになった。それは見た目だけでなく乗り味にも影響を与えているのだろうか。それを検証すべく今回は「400」という数字にちなんで往復400㎞の日帰りツーリングに出かけてみた。
(試乗・文:毛野ブースカ、撮影協力:玉井久義 後編に続く)