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レース・イベント

「2024年はもっと活発に活動していきます」 今年最後のパラモトライダー体験走行会開催
■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクトhttps://ssp.ne.jp/




 レジェンドライダーである青木三兄弟の三男・治親が立ち上げ理事長を務める一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が障がい者を対象に開催している「パラモトライダー体験走行会」。2023年最後となる今回は茨城県にある筑波サーキット内にあるオートレース選手養成所での開催となり、5名のパラモトライダーがバイクを楽しんだ。

 
 青木三兄弟の次男・拓磨は、WGP参戦中の1998年シーズン前のテスト中の事故で脊椎を損傷。それ以後車いす生活を余儀なくされている。しかし、現在はハンドドライブユニットを装着したバイクに乗って実際に自ら主宰している「Let‘s レン耐!」などでバイクでの走行を楽しんでいる。

 彼と同様に、バイクの事故などで機能障がいを有しており、バイクを降りなければならなくなった元ライダーに「再びバイクに乗る機会を」と、パラモトライダー体験走行会が2020年の6月から毎月(厳冬期を除く)定期的に開催されている。当初は脊椎損傷の障がい者を中心に行っていたが、現在ではその内容も半身まひだけでなく、様々な機能障がいにも対応。もちろんバイク経験も問わず、対象をどんどんと広げて活動を展開している。
 

練習用の小型バイクにはアウトリガーの装着が可能。それも3タイプを用意し、参加者の技術に合わせ、その場で付け替えて走行練習を繰り返す。

 
 それぞれの障がいに合わせてSSPがカスタムしたバイクを用意する。低速時と発進や停止のタイミングで不安定になるバイクを支えるボランティアスタッフがカバーすることになる。ライダーの装備もすべてSSP側が用意し、ヘルメットやグローブ、そしてプロテクターを装着してこの体験走行に臨む。参加者はまず転倒を防止できるアウトリガーを装着した車両でまっすぐ走れるかどうかのチェックをし、ステップアップをしていくことになる。
 

参加者はそれぞれ様々な機能障がいを持つが、それでも走行が終わるとボランティアスタッフも含め全員に笑顔があふれる。それが「パラモトライダー体験走行会」である。

 
 今回は視覚障がい、脊椎損傷、右足切断といった6名が参加した。筑波サーキット内のオートレース選手養成所の駐車場で使用するのはアウトリガーを装着し、リモコンで離れた場所からもエンジンを止めることができるデューク250。バランス取りやブレーキの練習を重ねていく。視覚障がい者には、サインハウスのバイク用インカム「B+com」でスタッフが指示を出し、参加者がその指示に従いながら走行をしていく。
 

パラモトライダーとして参加したメンバーでも、その後ボランティアスタッフとしてこの活動にかかわっていく面々もいる。また新しくボランティア初参加するメンバーもおり、活動は徐々に大きくなっている。

 
 若干寒い風が吹いていたものの、好天に恵まれちょうどよいバイクの練習日和となった。日の短くなった師走の開催で、5人のパラモトライダーがそれぞれ少しずつ走行時間を延長していることもあって、最後の走行枠は夕焼けの中での走行にもなったが、全員の走行を事故なく終えることができた。
(文・写真:青山義明)
 

また、今回は久しぶりに大型バイクでオートレース選手養成所のオーバルコースでの周回路走行も行なわれた。

 

網膜色素変性症による視覚障がいの竹村雄一さんは5回目の参加。9か月ぶりのバイクだったが補助輪をつくことなく2輪だけでちゃんと走行することを目標にこの日に臨んでいたが「今日はイケてました。自分に点数をつけるとしたら100点ですね。でも、まだ次があります。次はステップアップして周回コースに行きたいです」とコメントしてくれた。

 

網膜色素変性症による視覚障害で2回目の参加の渡辺美知子さん。10月の走行会以来のバイクだったが「身体で実際に覚えたバランスの感覚が残っていて、イメージしていたよりもずっと走れました。今回は以前よりも傾けることができるアウトリガーで走行しましたが、実際に傾きを感じながら走ることができました。すごく楽しかった。うまく教えてくださった方々を始め、皆さんに応援してもらって、うれしく楽しくいい気持で走れました」

 

2019年にエリミネーター125に乗車中の右直事故で右下腿切断。知人を介して青木代表理事とつながったことをきっかけに今回の参加につながった。基礎練習も難なくクリアし、ステップアップし、青木代表がマンツーマンで引っ張りながらのオーバルコースの走行を楽しんだ。「人生初の大型バイクで、乗り始めはすごく緊張したんですが、風を感じて気持ち良く走ることができました。いい経験になりました。初めてこの体験会に参加したんですが、こんなにあったかいイベントがあるなんてびっくりです。次回も絶対に参加します」

 

九州の宮崎から参加した竹下清一さんは、先月の熊本での体験走行会に続いての連続参加となった。2007年のバイク事故でTh6-7圧迫骨折の脊椎損傷で半身不随となっている。実際にバイクに乗ってみて「最新のバイクは乗りやすくなっていて技術の進化を感じている」という。今回は補助輪を外して走れるように、という目標を持っていたものの、うまく乗りこなすことができず「悔しかった」と残念がることしきり。次回のステップアップに期待したい」

 

今年6月に初参加し、今回2回目となる金子 聡さんも視覚障がいである。「前回はアクセル操作もシフトアップもできなかったのでステップアップしたい」という目標をもって参加。指示通り右へ左へとうまくバランスを取ってまっすぐ走ることができ補助輪を一つ外すことに成功した。

 

初開催から4年、これまでに参加したパラモトライダーは延べ180名を超え、ボランティアスタッフ1500名弱にも上る「パラモトライダー体験走行会」。次回は2024年2月に関東で開催予定だ。

 



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2024/01/09掲載