- ■試乗・文:毛野ブースカ
- ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor//
アームズマガジン編集部までバイク通勤している私が、通勤途中でよく見かけるホンダのバイク・トップ3を挙げるなら「スーパーカブシリーズ」「PCXシリーズ」そして「レブル250」だろう。昼夜、土日を問わずこれらのバイクは本当によく見かける。スーパーカブとPCXは通勤用として不動のテッパンバイクだが、レブル250はどちらかと言えば趣味性の強いツーリング向けバイクであり、ツーリング途中でも必ず1台は見かける。そんなバイクを通勤でも使うということはそれなりの理由があるのだろう。
2024年の二輪車新聞によれば、125cc~250㏄(軽二輪車)クラスの全国販売台数でレブル250/Sエディションは1位(9,015台)となっている。ちなみに2位はホンダPCX160(6,133台)、3位は前々回実走検証したホンダADV160(4,402台)がラインクインしている。スクーター以外の車種では、4位に今回実走検証することとなったCL250(2,906台)、5位にホンダCRF250/CRF250L(2,866台)、6位に昨年実走検証したスズキVストローム250SX(2,655台)となっている。レブル250がこれだけ売れていれば、ツーリング途中はもちろん通勤途中でも見かけることが多いだろう。
そんな軽二輪車の王者であるレブル250の兄弟機種として2023年の登場したのがCL250である。つまり兄弟で12,000台近く売っていることになる。CL250は販売台数ではお兄さんのレブル250に大きく差を付けられているが、レブル250は2017年の販売開始後、8年近く経っていることから市場での浸透度は高く、その意味ではCL250はかなり善戦しているといっても過言ではない。兄弟の血筋が成せる業だろうか。
レブル250はアメリカンなドラッガースタイルをモチーフに、249ccのDOHC単気筒エンジン、特徴的な燃料タンク、ナロースタイルのフレームボディ、690mmの低シート高、ミドルポジションのステップ、ワイド&ファットな前後タイヤ、ブラックアウトされたエンジンや足周りなど、個性的なフォルムと扱いやすさを実現している。一方、CL250はレブル250をベースとしつつ、いわゆるスクランブラースタイルとしたモデルだ。スクランブラーと聞いてもあまり馴染みのない方もいるだろう。スクランブラーとはロードバイクにオフロード走行を意識した装備を持たせたバイクのこと。もともとオフロード走行向けに設計されたオフロードバイクや、長距離走行を意識したアドベンチャーバイクとは異なる。現在、新車で入手できるスクランブラースタイルの国産車はCL250と471㏄直列2気筒エンジンを搭載したCL500、そしてカスタムパーツでスクランブラー化が出来るヤマハXSR125くらいだろう。
実は車名の「CL」とはホンダにおけるスクランブラースタイルの呼称である。1990年代に登場したCL400や、名前にCLは付かないものの現在も見かけることがあるFTR223、大人気のCT125・ハンターカブもスクランブラータイプに相当するという。CL250の外観を見ると、スクランブラースタイルであることがひと目でわかる。一見するとシート高が低いレブル250との共通点がなさそうに見えるが、先ほど述べたようにレブル250と共通のフレームを用いつつメインフレーム後部とシートサブフレームはCL専用に開発。スクランブラースタイルを象徴するアップマフラー、専用タンクとシート、ストロークが延長されたフロントフォークとリアのアクスルトラベル、セミブロックパターンタイヤ、低/中速トルクに重点を置いてセッティングされたエンジンが採用されている。
実車を目の前にすると、スクランブラースタイルを象徴するアップマフラーが醸し出すレトロモダンなスタイルは、ブラックで統一されたエンジンや足周り、ビビットなキャンディーエナジーオレンジ色の燃料タンクと相まって非常にカッコいい。燃料タンクの色は試乗車のキャンディーエナジーオレンジの他にパールカデットグレー、パールヒマラヤズホワイトが用意されている。先に申し上げると、今回実走検証した途中でCL250を2台見かけたが、いずれもキャンディーエナジーオレンジだった。
レブル250に比べて前後長が長く感じるが、全長はレブル250が2,205mm、CL250が2,175mm、ホイールベースが1,490mm、1,485mmとCL250のほうが短く、おそらく燃料タンクから高いシート、リア周りまでフラットな形状だからそう見えるのだろう。最低地上高はレブル250の134mmに対してCL250は165mmと30mm以上高くなっており、オフロード走行を意識していることがわかる。車体重量はレブル250が171㎏、CL250が172㎏とほぼ同じ。
車体を真横から見るとCL500をベースにしているせいか、249ccのDOHC単気筒エンジンを載せたエンジン周りはスペースに余裕がある。ぱっと見では空冷式のように見えるが水冷式である。レブル250と同じ水冷4ストロークDOHC 4バルブ単気筒249㏄エンジンを採用。気になる燃料消費率は、定地燃費値が47.0㎞/L、WMTCモードが34.9㎞/Lとクラスの平均値。今までの経験から実走燃料消費率は34~37㎞/Lといったところだろうか。レブル250もカタログ上では同数値なので、レブル250をお持ちの方なら実走燃料消費率の予想がつくだろう。私はレブル250に乗車したことがないので、実走検証のお楽しみとしたい。
レブル250と大きな違いのひとつが燃料タンクの形状だ。レブル250は低いシート高とナロースタイルのフレームにあわせてシートに向かって下降する特徴的な形状に対して、CL250はオーソドックスな形状に変更され、左右にタンクパッドが装備されている。容量は12リットルとレブル250より1リットル増やされている。ということはレブル250より航続距離が延びており、ツーリングだけではなく通勤・通学でもありがたい。
燃料タンクとともに大きな違いはシートの高さと形状だ。レブル250はシート高690mm、ロープロファイルなセパレートタイプのシートに対して、CL250はシート高790mm、ワディング加工を施したダブルシートを採用している。このシートがCL250のスクランブラースタイルを強調していると言ってもよい。ステップの位置も変更されており、レブル250がミドルポジションなのに対して、CL250はレブル250よりやや後方、シート先端真下、車体のほぼセンターに位置している。このCL250のステップのポジションについては追記したいことがあるので、後ほど述べたい。
マフラーやリア周りの違いも両車のキャラクターを特徴付けている。レブル250はリアフェンダーがリアタイヤに近づけることでドラッガースタイルを演出。一方、CL250はリアサスのストロークを確保するためにアップフェンダーを採用。さらにCL250はスクランブラースタイルらしくシート近くまで上げられたアップマフラーが採用されており、見た目のキャラクターの違いがはっきりしている。CL250のアップマフラーにはガードが追加されており、見た目と安全性に配慮されている。
セミブロックタイプのフロントタイヤは110/80R19M/C 59H、リアタイヤは150/70R17M/C 69H、フロント19インチ、リア17インチのキャストホイールを採用。フロント、リアともにABSが標準装備されている。ちなみにレブル250はフロント、リアともに16インチのキャストホイールが採用されている。サスペンションはフロントがφ41mmの正立フォーク、リアが5段階に調整可能なイニシャルプリロード調整機構を持つ2本ショックという組み合わせとなっている。
両車の細かな違いを挙げるならハンドル周りだろう。ハンドルバーは、レブル250はワイド感と高さを抑えたロープロファイルな形状。CL250はライダー側にオフロードバイクのようなワイドかつ高さのある形状。着座位置の関係もあってレブル250のハンドルバーが遠く感じられる方にとってはCL250のほうが握りやすいかもしれない。メーターのポジションは、レブル250はハンドルホルダーにマウントされているのに対して、CL250はハンドルホルダーではなくヘッドライトの真上に専用パーツを用いてマウントされている。シンプルな形状と機能のメーターは両車共通。
ディテールのチェックが済んだところでいよいよ試乗だ。シート高は790mmなので、普段ホンダ400Xに乗っている私なら違和感なく跨げる。シート高の低いレブル250だったら違和感があったかもしれない。燃料タンクがホンダ400Xに比べて前後に長いためかハンドルまでの距離がやや長く感じるが、腕が突っ張ってしまうほどではない。余談だが、400Xの後継機種であるNX400の全長は2,150mm、ホイールベースが1,435mmとCL250のほうがどちらも長く、CL500をベースにしたCL250は意外と大きいのがわかる(言い換えるとNX400がコンパクトなのかもしれない)。
エンジンをかけると乾いた小気味よい排気音がマフラーから聞こえてくる。走り出した瞬間の第一声は「うわっ! 乗りやすい~」。クラッチレバーの操作過重軽減とシフトダウン時の後輪ホッピング軽減に寄与するアシスト&スリッパークラッチが採用されているためか、クラッチ操作がとてもスムーズ。走り出した時のフィーリングは、私が今まで乗車したMTバイクの中でいちばんと言っていい。
スロットルを開けるとグワッとパワーがかかってスピードが出る感じはないので物足りなく感じる方もいるだろうが、間断なく滑らかに加速していく感じは誰でも扱いやすいはず。スクランブラーというワイルドなスタイルとは異なるジェントルな走行フィーリングはいい意味で裏切られる。レブル250とはエンジンや足周りのセッティングが異なるので一概には言えないが、少し走っただけでレブル250兄弟が売れている理由を垣間見たような気がした。サスペンションは柔らかすぎず硬すぎずといったところ。レブル250に比べてストロークは長くなっているもののコシがあってフワフワした感じはしない。
徐々に走り慣れてきたところで気になったのがステップのポジションだ。シート先端の真下、車体のほぼセンターにあるため停車して足を地面に付けようとしたところ、ふくらはぎや脛がステップに当たって一瞬「おっと!」となった。ミドルポジションやバックステップならこのようなことはなく、似たように見えるオフロードバイクともポジションが微妙に異なる。小柄な方だと立ちゴケする危険性がある気がした。慣れの問題だと思うが、停車時にステップの前後どちらかに足を持っていく工夫が必要だろう。
一般道からわずかな距離だが高速道路を走ってみる。低/中速トルクとパワーに重点を置いたエンジンということもあり一気に加速する感じではなく、100㎞/hは充分出るものの90㎞/h前後で巡行するのが理想的と感じた。オフロードバイクに近いアップライトなライディングポジションなので視界は広くリラックスして運転できる。高速走行時の振動は気になるほどではなく、シートも座りやすい。燃料タンク両側のタンクパッドの角が太ももにちょっと干渉するが痛くはない。
試乗車を借りた場所からアームズマガジン編集部まで30㎞ほど走行したが燃料ゲージは減っていなかった。通常ではここで給油するのだが、試乗開始から実走検証をスタートして高速道路、地方の一般道、林道、都内の混雑した一般道を走行し、返却直前に給油するまでの燃費を計測することにした。今回は福島県の奥会津地方まで実走検証してみた。出だしから好印象のCL250で、まさかこんなに実走するとは思っていなかった。果たしてどんな結果になったのか。
(試乗・文・撮影:毛野ブースカ)
■型式:ホンダ・8BK-MC57 ■エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:76.0×55.0mm ■圧縮比:10.7 ■最高出力:18kW(24PS)/8,500rpm ■最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/6,250rpm ■全長×全幅×全高:2,175×830×1,135mm ■ホイールベース:1,485mm ■最低地上高:165mm ■シート高:790mm ■車両重量:172kg ■燃料タンク容量:12L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):110/80R19M/C 59H・150/70R17M/C 69H ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:キャンディーエナジーオレンジ パールカデットグレー パールヒマラヤズホワイト ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):621,500円
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