■文:中村浩史 ■撮影:富樫秀明
かつて秋には「東京モーターショー」が晴海の国際展示場で行なわれ、春には「モーターサイクルショー」が平和島(大田区)の流通センターで行なわれていた時期がありました。
秋のモーターショーは2年に1回、これはメーカーのニューモデルを中心に展示されているもので、春のモーターサイクルショーは、パーツメーカーやカスタムショップの祭典。
こういう棲み分けができていたんですが、この20年ほどはモーターサイクルショーにもメーカーのニューモデルが出展されるようになって、秋のモーターショーは23年から「ジャパンモビリティショー」に代わっています。これも時代の流れなのかなぁ。
ちなみに筆者は、初めてのモーターサイクルショーが、たしか1986年の平和島での開催。3月下旬の開催だったんですが、大雪が降った覚えがあります。
でもモーターサイクルショーでメーカーの新車がガッチリみられるようになった代わりに、カスタムバイク部門が隅っこに押しやられてしまって、ちょっと寂しいな、って気持ちのひとも少なくないと思います。ちなみに今年の出展社種別は①ガソリン車両 ②電動車両 ③車両パーツ&アクセサリー ④車両非装着パーツ&アクセサリー ⑤関連団体&施設 ⑥メディア ⑦学校 ⑧そのほか と言ったところです。カスタムバイクは、このうち車両パーツ&アクセサリーが当てはまるんですね。
そんな視点で24年の東京モーターサイクルショーを見て回ってみました。メーカーの大ブースに比べて規模こそ小さいですが、今でもパーツメーカーの出展や、カスタムバイクの展示は少なくありません。
歩き回って、カスタムバイクを観ていて気付いたのは、やっぱりカスタムの流れがわかるというか、あぁこのへんのテイストが主流なんだな、と。今はやはり、旧車をベースにノーマルルック、それも完全ノーマルにこだわるというより、古いところをさりげなく最新パーツにして、って流れです。たとえば、ホンダ・ナナハン(は今年どこも出展していなかったと思いますが)をベースに、キャブレター&マフラーはもちろん、ブレーキを現代レベルにして「ちゃんと走る」旧車を目指すというかね。SDGsじゃないけれど「古いものを大事にしよう」って心も働いているのかもしれませんね。一時期の旧車価格超高騰、も徐々に落ち着いてきましたし。
写真は、旧車ばかりに偏るのではなく、集めてみました。2025年、もう少しカスタムバイク、増えてくれたら嬉しいぁなぁ。
■ドレミコレクション■
岡山を本拠に、カスタムバイクや絶版部品製作を手がけているドレミコレクション。今のイチ押しは、Z900RSをベースとしたカワサキ名車スタイルシリーズ。今回展示のメインはZ1000MK2とGPZ900R Ninjaで、インジェクションの水冷エンジンという制約がありながら、MK2の角タンク+シート+シートカウルがびたびたにフィットしています! Ninjaもこれ、Z900RSベースですよ! シンジラレナーイ! CB400SFをベースにしたCBX400FスタイルやZ900RSをベースとしたZ1スタイルも超人気持続中です! 大好きな、憧れの旧車を現在の性能でこの先20年30年乗って行けるって、幸せだよなぁ。
■PMC / ARCHI■
カワサキの絶版部品製作をメインに、カスタムバイクをリリースするPMC。さらにPMCの別ブランドARCHI(=アーキ)の作品。Z1カフェがPMC作、Z650RSがARCHI作と棲み分けもあります。PMCは空冷Zなどの旧車、ARCHIはZ900RSや650RS、Ninja ZX25Rなどの現行モデルとカテゴリー分けをしているかんじですね。Z1カフェはCRキャブ、エンジンフルチューンだけれど、フォークはKYB製正立だったり、ごっついアルミ角スイングを使わないあたりが今風です。ARCHIブランドのZ650RSは、センスのいいビレット小物とかカーボン小物をどんどんラインアップしています。Z650RSオーナーさん、注目ですね。
■ブライトロジック■
いつもオーリンズ=カロッツェリアジャパンのブースにカスタムモデルを出展しているブライトロジックは、GSX-R1000Rと、ブラックカタナを出展! このブラックカタナ、詳しい人はピンとくるでしょうが、チュートリアルの福田充徳さんのカタナ!……と思ったらさにあらず、いわば福田カタナレプリカな1台なんです。オーリンズの倒立フォークにブレンボの(たぶんこれニッケルメッキ仕様)4ピストンをラジアルマウント。BITO R&Dのマグタンを使って前後17インチにして、リアはモノサス化してますね。福田さんのカタナはツインショックでしたから、ここが違うんですね。コレのどこがノーマルルックやねん!ってツッコミが聞こえますが、カタナはこのカウルを生かすだけで、どうやってもノーマルルックに見えるんですよ!
■ヨシムラ■
創立70周年を迎え、加藤陽平さんの新社長就任も発表されたヨシムラ。待望の現行ハヤブサのチタンサイクロン2エンドが発売開始で、ヨシムラの世界耐久マシン風味のカラーリングがイケてますね。これもノーマルルック残しのままイメージ激変の手法ですね。ゼッケン604の油冷GSX-R750は、ご存知辻本聡さんがデイトナをAMAを走った時代のレプリカで、よく見てください、ミラーもナノウィンカーもついている公道走行バージョンです。この油冷GSX-Rも85年生まれですからもう発売40年! もう一回、油冷GSX-Rが注目されそう!
■m-tech■
京都エムテックは、油冷GSX-Rの整備&カスタムを行なうショップで、やはり旧車の宿命か、絶版になってしまった純正部品の再生産なんかをしてくれているショップです。写真の油冷初期型白青R750は、販売可能なフルレストア車。フルレストアとはいえ、走ることに関しては、ブレンボ4ピストンと、リアサスもハイパープロを使っています。もう手に入らない、と諦めている油冷GSX-Rのパーツなら、m-techへどうぞ。
■TTRモータース■
F系のCBシリーズが得意なTTRモータースは、現行モンキー125をベースに、一体かぶせ式Fスタイリングキットを製作! モンキーサイズだっていうのに、あまりの出来の良さ! 価格はまだ未定ですが、Fオーナー注目のモンキー125です。このFB赤ボディを選ぶのもニクいね。
■コミネオートセンター■
カスタムバイクじゃないんですが、若いライダーに人気のアパレルブランド「KOMINE」が、昔がバイクメーカーだって知ってました? というコーナー。いずれも1950年代、つまり戦後すぐ、バイクメーカーが200社とかあった時代ですね。小峰バイク工業って名前で、左が1953年モデルKOMINE50巨人号、右が1956年モデル125ccのKB-1。右のKB-1なんて、今でも通用するスタイリングに見えますね。
■ブルドック■
締めはYouTubeでも話題騒然、タレントのユージさんがブルドックに発注したフルカスタムZ、GT-M。レストアベースモデルのZ1000をベースに、車体もエンジンも足回りもすべてフルチューン&フルレストア。フルオーダーのカスタムですから、お値段も、モノスゴイ! 欲しいもののためにはコストを惜しまないユージさんの希望がごっそりつまった仕様なんだそーです。ショーの直前に完成! これから最終整備、車検取得を経て、公道に乗り出します! 「ユージさん、ナンバー取れたら取材させてね!」って予約してきました!
[国内メーカー編へ]
[海外メーカー編へ]