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試乗・解説

Royal Enfield SHOTGUN650 過去と未来を融合したスタイリングに スポーティなハンドリング 「SHOTGUN650」とは何ものだ!?
■試乗・文:河野正士 ■撮影:ロイヤルエンフィールド ■協力:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム




EICMA直後であるにもかかわらず、ロイヤルエンフィールドは2023年12月に米国ロサンジェルスで新型車「SHOTGUN650」を発表。国際試乗会を開催した。日本では2023年春から販売がスタートしたクルーザーモデル「SUPER METEOR650」とプラットフォームを共有しながら、自らの歴史はもちろん、カスタムカルチャーからもインスピレーションを得て開発された「SHOTGUN650」とはいかなるモデルなのか。その詳細を紹介する。

 
 クルーザーとかロードスターとか、明確に定義したものを作ると、ユーザーのイマジネーションの可能性を狭めてしまう。だから「SHOTGUN650」はカテゴリーに縛られない、そんなバイクにしたかった。そう語るのは、ロイヤルエンフィールド(以下RE)のデザイナーであり、新型車「SHOTGUN650(ショットガン・ロクゴーマル)」のデザインを担当したエイドリアン・セラーズだ。そして、その話を聞いたときには、すこし驚いた。なぜなら多くの二輪車は、ある一定の販売台数を見込んで、その台数を確保できるカテゴリーにターゲットを絞って開発されるからだ。しかし「SHOTGUN650」は、それをあえて否定したところから、開発がスタートしているというのだから、じつにユニークだ。
 

 
 プロモーション戦略も手が込んでいだ。REは2021年のEICMAでコンセプトモデルSG650 Concept(エスジー・ロクゴーマル・コンセプト)を発表した。Continental GT650(コンチネンタル・ジーティー・ロクゴーマル)やINT650(アイエヌティ・ロクゴーマル)に搭載されているREの直列2気筒エンジンを、見慣れないフレームに搭載し、カスタムバイクのスタイルである“ボバー”的スタイリングで構成されていた。いま考えると、そのSGはSHOTGUNの頭文字であり、外装類は「SHOTGUN650」に酷似していることから、「SG650 Concept」=「SHOTGUN650」なのだが、“見慣れないフレーム”を採用したREの最初のモデルは、クルーザーモデルとして2023年春に日本上陸を果たしたSUPER METEOR 650(スーパーメテオ・ロクゴーマル) だった。そのときは「SHOTGUN650」の存在を知らされていなかったので、「SG650 Concept」の市販モデルは「SUPER METEOR 650 」だと、当時のインプレ記事に書きまくったのに……すっかり惑わされてしまった(https://mr-bike.jp/mb/archives/35833)。
 

 
 そして発表された「SHOTGUN650」はボバー・スタイルではなかったが、ハンドリングに留まらずモデルキャラクターも兄弟モデルのSUPER METEOR 650 とは異なり、スポーティなモノだった。1930年代台のレーサーレプリカ的なスタイルが“ボバー”の語源であることから、「SHOTGUN650」のスポーティなキャラクターを発展させ、SG650 Conceptのボバースタイルが生まれたのではないか、と想像するくらい別物だった。

「SHOTGUN650」をサイドスタンドから起こすと、すでにやや高めの重心を感じる。「SHOTGUN650」もSUPER METEOR650も採用するREのクルーザーフレームは、エンジンを低く積んで低重心化を実現するためにフレームのダウンチューブを廃止。シリンダーヘッド前側に、強固なフレームマウントを追加している。しかし「SHOTGUN650」をサイドスタンドから起こしただけで、その重心位置が変化していることが感じ取れるのだ。そしてシートに跨がると、ステアリングヘッド位置が低く、やや腰高なシートとミッドコントロールとなったステップ位置と相まって、ライディングポジションはネイキッドバイクのよう。燃料タンクのデザインも一新され、やや小振りになっていることもあり、ライディングポジションはグッとコンパクトだ。
 

 
 クラッチを繋いで走り出すと、ネイキッドバイク感がグッと増してくる。交差点をいくつかクリアし、高速道路を走り、身体が馴染んでいくにつれてスポーツ感も増してくる。そしてワインディングに入ると、そのスポーツ感は決定的なものとなる。ハンドリングは非常に素直で、ハンドルをこじったりしなくても車体の傾きに合わせてフロントタイヤはドンドン向きを変えていくし、コーナー出口でアクセルを開けてもフロントタイヤが大回りするようなこともない。そのときには「SHOTGUN650」がクルーザーとプラットフォームを共有していることや、車重が240kgほどあることなどスッカリ忘れてしまうほど軽快で、うねりのあるコーナーでは車体がバンクしている最中に前後サスペンションが大きく動くこともあったが、そのときも車体の挙動が大きく乱れることなく、安心感を持ってワインディングでのスポーツ走行を楽しむことが出来た。
 試乗会場は米国カリフォルニア州ロサンゼルスで、LAにもこんなにワインディングがあるんだと感心するほどバリエーション豊かなコーナーが連続する試乗コースだったが、REがここを試乗会場に選んだ理由も納得できた。
 

 
 そのハンドリングを造り上げたのは、徹底的に造り込んだ足周りにある。前後ホイールサイズは、フロント18インチ/リア17インチ。フロント19インチ/リア16インチというSUPER METEOR650から大きく変わっている。またフロントフォークはSUPER METEOR650と同じSHOWA製SFF-BPだが、フロントフォークそのものを30mm短くし、フォーク内にセットするスプリングや減衰力特性を「SHOTGUN650」の車体特性に合わせて変更。それらの変更によってステアリングヘッドアングルは27.6度から25.3度となり、フォークオフセットも4mm短い42mmとし、それによってトレールも17.1mm短い101.4mmとなっている。

 リアショックは、SUPER METEOR650から30mm長くなり、ストローク量は7mm増えている。もちろん、その変更に合わせてスプリングレートや減衰圧特性も変更されている。そしてフレームやスイングアームはSUPER METEOR650から変更はないものの、スイングアームのアクスルスライダー部分の切り欠きを車体前側に移動。フロント周りのアライメント変更に加え、リアタイヤを車体前側にセット出来るようにすることでショートホイールベース化も実現している。
 

 
 不思議だったのは、エンジンのピックアップが軽く感じたことだ。感覚としては、フライホイールが軽くなった感じ。しかしエンジンは、FIのセッティングもギアレシオもSUPER METEOR650と同じ。サイレンサーこそピーシュータータイプに変更になっているが、その手前まではキャタライザー内蔵のエキゾーストパイプも共通だという。車体姿勢が変わり軽快なハンドリングが与えられたことで、アクセル操作に対する車体の反応が変わると、エンジンのフィーリングまで変えてしまうのかと驚いた。

 そのスポーツライディングをたっぷり堪能したあと、「SHOTGUN650」はロードスターじゃないのかという質問に対して、冒頭のREデザイナー/エイドリアン・セラーズの答えが返ってきたわけだ。

 またセラーズ氏が、カテゴリーに縛られない、とする理由はほかにもあった。それがカスタムバイクシーンとの融合だ。それによって、REのヘリテイジと未来をも融合しているという。
 

 
 たとえばヘッドライトナセル。REがラインナップするCLASSIC350(クラシック・サンゴーマル)や日本導入を控えているBULLET350(ブリット・サンゴーマル)は、ヘッドライトナセルを採用している。ヘッドライトと“タイガーアイ”と呼ばれるポジションライト、メーターのホルダーを兼ね、REモデルの伝統的なディテールとなっている。「SHOTGUN650」は、そのヘッドライトナセルを現代的に解釈し、アルミキャスティングという製造手法を引き継ぎながら、トップブリッジやアンダーブラケットにスラッシュカットデザインを加え、ヘッドライトナセルと一体化したようなボディラインを造り上げている。そのスケッチ上では容易なデザインも、量産化するとなると非常に難しかったという。そのデザインそのものはカスタムバイク的であり、そういったチャレンジがREの未来を表現しているのだという。
 

 
 また、これまでREの歴史的モデルやJプラットフォームと呼ばれる現行350モデル、SUPER METEOR650が採用してきた、丸みを帯びたティアドロップ型の燃料タンクとは異なり、タンクサイド面がストンと落ちた「SHOTGUN650」の燃料タンクのデザインは、REが1930年代後半にリリースした、排気量1140ccのVツインエンジンを搭載したKXがモチーフだという。
 

 

 
 映画「ブレードランナー」や「AKIRA」、「スターウォーズ」などに出てくる未来的な乗り物は、どこかに“古めかしさ”があり、それらと新しいディテールとが交わることで新しさが生まれる。「SHOTGUN650」にも、そんな過去と未来の融合が生み出す新しいデザインを構築したと、セラーズ氏は語った。そんな複雑な文化が絡み合った「SHOTGUN650」は、既存の何かのカテゴリーに押し込めるのは、困難だと。

 REはこれまで、ラインナップするほとんどのモデルを、自身の歴史的モデルの発展型としてきた。しかし「SHOTGUN650」は、過去にトレースするモデルが存在しない、まったく新しいカテゴリーを形成するモデルだ。それゆえに、スタイリングもパフォーマンスも、新しいユーザーの興味をREに引き寄せるだろう。そして実際に走らせてもその興味を維持し、ときにはその期待を大きく超える。「SHOTGUN650」は、そんなモデルだった。
 

 

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ライダーの身長は170cm、体重65kg。

 

エンジンやフレームは、兄弟モデルであるSUPER METEOR650と共通。その先入観からクルーザーの派生モデルのように感じてしまうが、前後足周りの変更でやや背が高くなった車体は、その佇まいからしてクルーザーとは異なる
ステアリングヘッド下側から燃料タンクのボトムライン、そしてリアフェンダーの後端を一直線に配置。それによって「SHOTGUN650」は水平基調のボディラインが特徴だ。リアアクスルシャフトからステアリングヘッドにかけて伸び上がるSUPER METEOR650のそれとは異なる

 

幅広のバーハンドルを採用。フロントフォークが短くなったこと。燃料タンクが低くなったこと。シートが高くなったこと。ミッドコントロールになったことなどで、ステアリングヘッド位置が低く、そして近くなったと感じる
メーターは速度計とインジケーター類、距離や燃料計などを表示するデジタルディスプレイが収まった一眼タイプ。右側の小さなメーターは、ナビシステム/トリッパーの画面だ

 

排気量648ccの空冷4ストロークSOHC4バルブ直列2気筒エンジンは、FIのセッティングやギア比、エキゾーストパイプやそれに収まるキャタライザーまでSUPER METEOR650と同じだという。しかし車体のディメンションの変更によって、アクセル操作に対する車体の反応が異なり、異なるセッティングが施されているのではないかと感じてしまう

 

フロント18インチホイールを採用。フロントフォークは、SUPER METEOR650と同じφ43mmSHOWA製SFF-BPだが、フォーク長は30mm短く、「SHOTGUN650」の特性に合わせその中身も変更している。フォークオフセットも46mmから42mmに変更
サイレンサーは、ピーシュータースタイル。やや後ろ上がりにセットされている。このサイレンサーが装着される手前にキャライザーがセットされており、そこまではエキゾーストパイプもSUPER METEOR650と共通

 

燃料タンクやリアフェンダーとともに、このサイドカバーも「SHOTGUN650」専用にデザインされている。燃料タンクとシンクロするように、やや角張ったデザインとなったが、足着きを邪魔することはなかった

 

サイド面がストレートに落ちた燃料タンク。タンクの長さ自体はSUPER METEOR650とほぼ同じながら、容量が約1.9リットル少なくなったことや、デザイン変更とライディングポジション変更などによって、タンクの長さも短くなったように感じる
REにとってチャレンジとなったヘッドライトナセルと上下三つ叉のコラボレーション。ハンドルマウントなど複数の機能を持つトップブリッジやアンダーブラケットのフォーククランプ部分を斜めにデザインし、それによってアルミキャスティングで成型されるヘッドライトナセルとデザイン的に連携している

 

リアフェンダーのデザインも「SHOTGUN650」専用。ボブフェンダーと呼ばれる、ショートタイプを採用している
フローティングシートと呼ばれるシングルシート。前後サスペンションの変更や、シート形状によって、シート高は55mmアップの795mm。このシート下のボルト4本を使って、タンデム用の脱着可能なシートレールを装着することが出来る

 

リア17インチホイールを採用。リアショックも、SUPER METEOR650と同じSHOWA製だが、サスペンション長を23mm延長。ストローク量も109mmにアップしている
SUPER METEOR650と同じ、丸型のLEDテールライトを採用。リアフェンダーの両サイドにエッジが立ち、それが燃料タンクやサイドカバーのエッジとシンクロしていることが分かる

 

車体色は全4色。左から「Sheetmetal Grey/シートメタル・グレイ」「Green Drill /グリーン・ドリル」「Stencil White/ステンシル・ホワイト」「Plasma Blue/プラズマ・ブルー」

 

●Royal Enfield SHOTGUN650 主要諸元
■エンジン種類:空油冷4ストローク直列2気筒SOHC4バルブ ■総排気量:648cc■ボア×ストローク:78.0mm×67.8mm ■圧縮比:9.5:1■最高出力:34.6kW(47PS)/7250rpm ■最大トルク:52.3Nm/5650rpm ■燃料供給方式:FI■全長×全幅×全高:2170×820×1105mm ■ホイールベース:1465mm ■シート高:795mm ■車両重量:240㎏ ■燃料タンク容量:13.8L ■レイク角:25.3度 ■トレール:101.4mm ■フレーム:スティールチューブラースパインフレーム ■サスペンション(前・後):SHOWA製SFF-BP43mm倒立タイプ/120mmストローク・SHOWA製ツインショック/プリロード5段階調整&109mmストローク ■変速機:6段リターン ■ブレーキ形式(前・後):320mmシングルディスク×ツインピストンキャリパー・300mmシングルディスク×ツインピストンキャリパー ■タイヤサイズ(前・後):100/90-18M/C56H・150/70B17M/C69H ■価格:未定

 



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2024/01/22掲載