●YAMAHA NIKEN GT 車両解説
2017年の東京モーターショーで世界初公開され多大な注目を集めた“Leaning Multi Wheel”テクノロジーを採用した大型スポーツモデル「NIKEN」。ヤマハは翌2018年9月から予約形式をとって販売を開始した。
「TRICITY」シリーズで普及させたLMWテクノロジーに、さらに専用に開発した“新ステアリング機構”(LMWアッカーマン・ジオメトリ:車体をリーンさせながら、なおかつ内外輪差が生まれるフロント2輪が、常に旋回方向を向く設計を成立させ、同心円を描く滑らかな旋回を可能とするヤマハ独自の構造)も搭載することでLMWの安定性のみならず、スポーティで滑らかな回転性やより自然な操縦性も実現していた。
倒立式の片持ちフロントサスペンションをホイールの外側に配したことにより410mmの前輪トレッドと、45度のバンク角を実現。また、2軸ステアリング機構を採用したことで後輪荷重を確保できるライダーの乗車位置が設定可能となり、約50対50という理想的な重量配分も実現している。
フレームはアルミとスチールを使い分ける“ハイブリッド・フレーム”を採用。リアアームは優れた剛性と強度のバランスを実現するため、アルミ鋳造+パネル溶接という手法を取り入れている。フロントタイヤも「NIKEN」専用で開発された15インチのVレンジタイヤ(120/70 R15)を採用。
搭載されるエンジンは、MT-09用をベースに開発された水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ、排気量845cm3、YCC-T・FIエンジンで、クランク慣性モーメントの最適化(MT-09比で18%増)およびFIセッティングの最適化などによりスポーティかつマイルドな操作性としていた。
2019年3月には、このNIKENのツーリング性能を向上させた「NIKEN GT」を発売する。このNIKEN GTは、NIKENをベースに高いウインドプロテクション効果を発揮する大型ハイスクリーンを採用、寒い日も快適な走行を楽しめるグリップウォーマー、厚みを増し、ツーリング時の疲労度を低減する専用シート、別売アクセサリーのトップケースの取り付けに配慮したグラブバー、メーター横とシート下に12VのDCジャック、そしてセンタースタンドを標準装備するなど、ツーリング時の快適性に一層磨きをかけたモデルとした。ちなみに販売はNIKEN同様受注生産方式で、3月13日から全国のNIKEN取扱店で予約を受け付けを開始した。
2019年11月には、NIKEN、NIKEN GTともにマット調のベースカラーにアクセントを加えてより個性を強調した、というもので、NIKENでは「先進性を表現」、NIKEN GTでは「上品さや落ち着いた印象を与える」新色を採用している。シリーズのテーマカラーといえるNIKEN GTの“マットダークパープリッシュブルーメタリックは継続とされていた。
今回は、これまでの845cm3から888cm3への排気量アップをはじめ、クランクマス増加によりドライバビリティを向上した新型CP3エンジン、の採用、スポーティな操縦性を支える新設計ハイブリッドフレーム、セッティングを見直し、路面追従性を向上したリアサスペンション、シフトダウンにも対応するクイックシフターなどの各種電子制御、スマートフォンとの接続でツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター(ナビ機能対応)、可動式スクリーンや別売純正アクセサリーのサイドケース取り付けに配慮したステー、足付き性を高めた新作シートなど、ツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める装備の充実などの変更が行われている。
★YAMAHA ニュースリリースより (2023年7月7日)
大型スポーツLMW「NIKEN GT」をモデルチェンジして発売
~排気量アップ、新フレーム、ナビ機能対応TFTメーターなどでツーリング性能を向上~
ヤマハ発動機株式会社は、大型スポーツタイプのLMW※1モデル「NIKEN GT(ナイケン ジーティ)」をモデルチェンジし、受注生産にて発売します。なお、全国の「NIKEN」取扱店※2にて本日より予約受付を開始します。
このたびのモデルチェンジは、”Evolution for high-end touring”をコンセプトに開発。長距離ツアラーとしての快適性と積載性を向上させました。また、LMWならではの自然な操舵性とリーン特性を両立したハンドリングに加え、細部の上質感など、LMWカテゴリーのフラッグシップにふさわしい仕上がりを実現しています。
主な変更点は、1)現行の845cm3から888cm3へ排気量アップ、かつクランクマス増加によりドライバビリティを向上した新型CP3エンジン(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)、2)スポーティな操縦性を支える新設計ハイブリッドフレーム、3)セッティングを見直し、路面追従性を向上したリアサスペンション、4)シフトダウンにも対応するクイックシフターなどの各種電子制御、5)スマートフォンとの接続でツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター(ナビ機能対応)※3、6)可動式スクリーンや別売純正アクセサリーのサイドケース取り付けに配慮したステー、足付き性を高めた新作シートなど、ツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める装備の充実、7)新たな機能を調和したスタイリングです。
「NIKEN GT」は進化したLMWテクノロジー※4が生み出す安定感に支えられたコーナリング性能と、快適な長距離ツーリングを可能にする上質なクルージング性能を両立させた大型スポーツタイプのLMWモデルです。
※1 LMW:Leaning Multi Wheel。モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称、商標登録第5646157号。
※2 「NIKEN」取扱店:専用カリキュラムを受講した、「NIKEN」の予約の受付・販売およびアフターサービスを行う販売店。
※3 スマートフォン情報やナビ情報を表示するには専用アプリ2種のインストールが必要。
※4 LMWテクノロジー:パラレログラムリンクを用いたサスペンションと操舵機構で軽快感と安定感の両立に貢献する技術。
【NIKEN GTの新たな特徴】
1)排気量アップ(845cm3→888cm3)し、平成32年排出ガス規制に適合した新エンジン
845cm3から888cm3へと排気量アップしたCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジンを搭載しました。余力のあるパワーと力強いトルクを発揮。スポーツツアラーにふさわしい、スムーズで扱いやすさになっています。
また、排気量アップに伴い、クランクウェブの形状を変更し(クランク慣性モーメント8%増)、各種制御や吸排気系とマッチングを図りながらドライバビリティ(動力性能/乗り味)を向上させました。
さらに、吸気ダクトとエアクリーナーの形状を最適化することで、クリアなサウンドチューニングとし、長距離走行時も快適です。
2)スポーティな操縦性を支える新設計ハイブリッドフレーム
スチール鋳造(ヘッドパイプまわり)・アルミ鋳造(リヤブラケットまわり)・スチールパイプ(メイン部分)を組み合わせたハイブリッド構造は、従来から踏襲しつつも、メイン部分を中心にフレームを刷新しました。パイプ径やその取り回し、エンジン懸架点を見直し、LMWならではの安定感を維持しつつ、スポーティなハンドリングを実現しています。
3)セッティングを見直し、路面追従性を向上したリアサスペンションまわり
安定感に優れたフロントまわりとバランスさせるため、リアサスペンションのセッティングとアームリレイ(リンク)を見直しました。リンクレバーとバネ下重量を最適化することで、1名乗車時はしなやかにストロークし、衝撃吸収性が向上。2名乗車や荷物のフル積載時も余裕のクッション特性を実現、幅広いシーンに対応します。
4)シフトダウンにも対応するクイックシフターなどの各種電子制御
電子制御スロットルにAPSG(Accelerator Position Sensor Grip)を新たに追加し、ナチュラルな操作性を実現しました。またクイックシフターは、従来からのシフトアップに加えシフトダウンにも対応する新タイプを採用しています。
なおアシスト&スリッパークラッチや、3つのエンジン特性を選べるD-MODE(走行モード切替システム)、高速道路走行時の疲労度の低減に貢献するクルーズコントロールも従来から引き継いで搭載しています。
5)ツーリングの楽しさを拡張する7インチ高輝度TFTメーター
大型で見やすい7インチ高輝度TFTメーターを採用。モニター画面はシーンや好みに合わせて3種類から選択できます。
また、ライダー自身のスマートフォン情報を車両のTFTメーターで表示すMるためのアプリ「MyRide – Link」Appをインストールし、Bluetooth(R)経由で車両と接続すると、着信やメール受信、現在地周辺の天気、音楽再生など、スマートフォンの情報を車両のメーターに表示可能です。
さらに当社とGARMIN社が共同開発した二輪ナビアプリ「Garmin Motorize(TM)」(有料)をインストールすれば、メーター画面でナビ機能を使用できます。
※着信と音楽再生はアプリ「MyRide – Link」を利用せず、Bluetooth接続のみでも利用可能です。
6)ツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める装備の充実
・任意の位置に高さ調整可能な可動式スクリーン(スライド量は最大70mm)
・大容量約30L・最大積載量5kg(いずれも片側の数値)のハードタイプサイドケース(別売)を固定するための上部ステー
・内腿が触れる部分のシート形状とシートパッド厚を変更し、足付き性を高めた新作シート
など、ツアラー機能を高める装備を充実しています。
7)新たな機能を調和したスタイリング
”Visible and harmonized function”をキーワードに、新たな機能をより魅力的に視覚化し、既存のデザインと調和させたスタイリングとしました。
例えば、エアロダイナミクスと取り付け強度、可動部分の剛性を高めつつ、スムーズな風の流れが感じられるよう可動式スクリーンの先端形状を最適化。またスポーツLMWが持つ唯一無二の骨格感を活かしつつ、7インチ高輝度TFTメーターや足つき性を改善したシート、新作スプロケットカバーなど、新しい機能・装備をミニマムな意匠変更で調和させています。
さらにカラーリングコンセプトを”Premium sport”とし、ボディカラーにはエレガントかつ洗練された印象を与える漆黒のブラックを採用。フレームやステムまわり、ホイールといったコンポーネントには強靭な骨格を強調するブロンズカラーを合わせています。
【NIKEN GTの従来からの主な特徴】
●快適な乗り味を支えるステアリング機構「LMWアッカーマン・ジオメトリ」
操舵系に加えて傾斜系の軸を設定し、相互を位相配置したヤマハ独自の構造「LMWアッカーマン・ジオメトリ」の採用により、トレッド幅が広いLMWで深くリーンしても、滑らかな旋回性を確保。狙ったラインをトレースしやすく、自然で上質感ある操舵性をもたらしています。
- <名称>
- 「NIKEN GT」
- <カラーリング>
- ・ヤマハブラック(ブラック/新色)
- <メーカー希望小売価格>
- 2,200,000円(本体価格2,000,000円/消費税200,000円)
- <販売計画>
- 100台(年間、国内)
- ※メーカー希望小売価格(リサイクル費用含む)には、保険料、税金(除く消費税)、登録などに伴う諸費用は含まれていません。
主要諸元
車名型式 | 8BL-RN84J | |
---|---|---|
NIKEN GT | ||
受注開始日 | 2023年7月7日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.150×0.875×1.395 | |
軸距(m) | 1.510 | |
最低地上高(m) | 0.150 | |
シート高(m) | 0.825 | |
車両重量(kg) | 270 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 24.5(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
18.4(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | N721E | |
水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 888 | |
内径×行程(mm) | 78.0×62.0 | |
圧縮比 | 11.5 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 85[116]/10,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 91[9.3]/7,000 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | T.C.I.(トランジスタ式)式 | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ | |
潤滑油容量(L) | 3.60 | |
燃料タンク容量(L) | 18 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.571 |
2速 | 1.947 | |
3速 | 1.619 | |
4速 | 1.380 | |
5速 | 1.190 | |
6速 | 1.037 | |
減速比1次/2次 | 1.680/2.937 | |
キャスター(度) | 20°00′ | |
トレール(mm) | 74 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70R15M/C 56V |
後 | 190/55R17M/C 75V | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ディスク左右 |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(リンク式) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。