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試乗・解説

VMAXの再来か? 最大排気量レブルは 数値以上のモンスターマシンだ!
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウェア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、KADOYA https://ekadoya.com/、Alpinestars http://www.okada-corp.com/products/?category_name=alpinestars




アフリカツインに搭載される直列2気筒は当初の1000ccから1100ccにスケールアップした際に排気量増大分以上にパンチのあるキャラクターになっていた。そんなエンジンをクルーザースタイルのレブルに積むと……それはもうモンスターである。

クルーザーの概念が変わる

 
 シートが低くてハンドル位置が高めで、足着きベッタリでロー&ロング……というのがクルーザーとか、もしくはアメリカンなどと呼ばれる分野だろう。しかし「アメリカン」と言われると、あまりパフォーマンスは求めていない、のんびりとどこまでも走り続けるモデル、という印象も強いかと思う。
 しかし同じような車体構成で、かつてはドラッグマシン的なものもあった。カワサキならエリミネーターの750や900、ホンダならX4、そしてそういうバイクの代名詞とも言えるのがヤマハVMAXだ。
 今はこういったモデルはノンビリ系でもドラッグ系でもみな「クルーザー」とカテゴライズされているようだが、レブル1100は明らかに後者。レブルの250や500が付き合いやすい等身大モデルだったからこそ1100もそんな「優しいヤツ」かと思いきやとんでもない、1100はかなりプレミアムで、特にこのMTモデルは「スポーツ」という面をしっかり持っていたのだ。DCTモデルはナイスなツーリングマシンとして認識されているかと思うが、今回はあえてMTを取り上げ、「スポーツマシンだぞ!」と訴えたい。
 

 

64kW(87馬力)に騙されるなかれ

 今や大排気量モデルなら100馬力なんて何ら珍しくなく、150馬力だって特別驚く数値ではなくなった。そんな中レブルは87馬力、しかも車重に至ってはこのカウル&サドルバッグがついた「T」モデルでは238kgもある。「スポーツ」という視点で見た場合……見た場合というか、そもそもスポーツという目では見ないだろう。前述した「クルーザー」というカテゴリーに当てはめてしまい、無意識にスポーツという分野から切り離してしまいそうなスペック、及び立ち姿である。
 ところが初めにしっかりと言っておこう。これは速い! しかもかなり! 実際に速いのに加えて「速く感じさせる」のも上手なのだろう。いわゆる「クルーザー」から連想するような牧歌的な感覚ではなく、まさにかつてのエリミやX4、そしてVMAXを連想させてくれるような怒涛の加速を持っているのだ。
 DCTモデルに乗った時にはそのパフォーマンスについてここまでの感動はなかった。どんどんと進化しているDCTによってこのトルクフルなエンジンを燃費も考慮し上手に使って走らせてるな、とは思ったものの、バイクに対するライダーのメンタリティが「ナイスなクルーザーだね」を超えることがない。あくまで「ドッカと腰を下ろして、余裕のトルクでクルージングしましょうか」というアプローチとなって、レブル1100が隠し持っていたスポーティさ、本当の速さ、ヤバさ、楽しさに気付くことはなかったのだ。
 

 
 しかしこのMTモデルに乗り一番元気な「SPORT」モードで走り出すと、あれ、今までの感覚は間違っていたかな? と即座に気付かされた。おいおい、やたら速いじゃないか、と。4000回転ぐらいまでは余裕のトルクで振動も少なくスルスルと進むため怖さを感じることはないものの、MTミッションのダイレクト感は明らかにスポーツバイクのソレ。すぐにライダー側のスイッチが入ってしまい、アクセルを大きく開けて高い回転数まで使いたくなってしまった。
 そして4000回転から先はまさにベツモノだ。荒々しい振動が出てきて、本当にびっくりするような加速をする。甘く見て上半身を曖昧に伏せているとフロントタイヤの接地感が薄くなりハンドルが左右に泳ぐほど。まさにドラックマシンである。猪突猛進、高回転域もギャンッ!と回り切り、アドレナリンがあふれる感覚は完全にスポーツバイク。直線でアクセルをグイ! と開けるだけでコレが楽しめるのだからタマラナイ。
 もちろん、前述したように実際の速度よりも速く「感じる」という部分もあるだろう。シートが低く、ニーグリップはしにくい車体構成で加速Gはほぼ全て尻で受け止めることになるし、車重が重めなのは紛れもない事実。ただだからこそ、この巨体がトルクに引っ張られてドカーン!と加速していく感覚にダイナミズムがあるのだ。まさにドラッグ、まさにVMAXの再来である。いやむしろ、4気筒ではなくツインだからこそさらにそのアクティブさ、瞬発力、そして楽しさが手の届きやすい領域にあるとさえ感じさせてくれた。
 

 

絶妙なバンク角が適度なスポーツを楽しませてくれる

 加速が良いのも魅力だが、意外やコーナーだって楽しいのはドラッグマシンの魅力だっただろう。VMAXは1200の頃だって車体がヨレヨレではあったもののあの低重心さを活かしてコーナーは楽しかったし、1700になってからはサーキットだって元気に走ることが可能だった。エリミシリーズやX4だって、無理は効かないもののワインディングを楽しく駆け抜けることは十分可能で、いわゆる「アメリカン」のようにすぐにステップを擦ってしまいスポーツ心が萎えてしまう、といったようなことはなかった。
 レブルもかつてのドラッグマシンと同じ流れ、しかしコーナリングについてはこれら先輩方よりもワンランク上のものを持っていると思う。足は投げ出しではなくステップへの荷重入力がしやすいミッドコンで、ハンドルもプルバックではなく積極的な入力ができる弱前傾ポジション。シートが低いことを除けばライダーに十分スポーティな姿勢をとらせてくれる設定だ。そして何よりうれしいのはバンク角だ。足を投げ出し系アメリカンモデルでステップがバーではなくプレートタイプのモデル等は本当に交差点の右左折でもステップを擦ってしまうようなことがままあるが、レブルは決してそんなことはない。元気にワインディングも走れてしまう。

「ガンガン攻める」なんていう、公道ではご法度なペースになってしまえばそれは色々擦ってしまうだろうしサーキットなんて言い出したら当然バンク角が深いとは言えないだろうが、しかし車体が持っている自然操舵、ナチュラルに「曲がっていこうという動き」をバンク角が阻害するということがないのが魅力。
 長くバンクしていてどんどんとバンク角が深くなるようなコーナーで、イイ感じに舵角がついて、大きなバイクがグイィーン!と曲がっていく旋回力を楽しんでいると、初めてカリカリッとステップ先端が擦り始めるイメージ。むしろ「無理せずこのぐらいで楽しみましょ!」と言われているようで、そのサジ加減がまさに絶妙で確かな「スポーツ」を楽しめるのだ。
 

 

快適さと汎用性

 
 ルックスに反して意外とスポーティであることを熱弁してきたが、それだけではなく付き合いやすさという意味では250や500と共通するレブルらしさも持っている。
 特にフロント18インチのホイールはあらゆる状況で適度な安心感を提供してくれていると感じる。スポーティに走りたい時には確かな接地感があるのに、淡々と走りたい時には素晴らしい直進安定性を持っている。そして例えば高速道路から降りるランプなどで大きく曲がり込んでいくコーナーでは、意図以上に切れ込んだり膨らんだりすることなく、意図したラインをドッシリとずーっとトレースしていってくれ、絶大な安心感があった。それはタイヤの性能に頼った安心感ではなく、車体そのものが持っている安定性に思えたため、例え寒い季節で路面やタイヤが冷えていても同じように自信をもってバイクを操れることだろう。大型バイクを操ることにおいて「オッカナビックリ」になる場面が少ないというのは大きな魅力だ。

 そしてこのTモデルではカウルとサドルバッグを装備することでツーリング性能も確保。この装備については松井勉さんのインプレに詳しいが(https://mr-bike.jp/mb/archives/37620)、サドルバッグの使い勝手は良かったし、グリップ部まで覆うカウルはグリップヒーターと合わせて快適性は確かに向上していると感じた。またETCやシート下の小物入れといった便利な設定は大歓迎だ。一点注文を付けるとすれば、タンデムシートの面積が少ないことや若干リア下がりとなっていることでタンデムライダーの快適性や荷物の積載性にいくらか不安があることか。これは純正アクセサリーにも設定されているバックレストなどで対応したいところだ。
 

 

楽はしたいが、いざという時は楽しみたいオトナな人に

 
 レブルの1100を選ぶ人はある意味アガリバイクに近い感覚で選ぶのではないかと思う。もう散々色々乗ってきて、のんびり走りたいぞ、という気持ちかもしれない。DCTモデルならばそんな気持ちに100%応えることだろう。エンストの不安もなく、燃費良く走ってくれ、大排気量ツインの低回転域を楽しみながらドタタタッと小気味良いサウンドとバイブレーションを満喫できる。
 しかし「いや、ノンビリも走りたいけど、たまにはアクセルを大きく開けたいし、ワインディングではアクティブな気持ちを忘れたくない」という気持ちがある人は、是非ともMTモデルの方も検討してほしいと思う。安心の足着きや無理のないポジションなどはそのままに、MTのダイレクトな駆動感や意のままに高回転域を楽しめるのはやはり魅力的。たった(?)87馬力ではあるものの、そこにはかつてVMAXなどが持っていた確かなスポーツ性やエキサイティングさがあり、加えて一つまみの凶暴さも隠されているのだ。
(試乗・文:ノア セレン、撮影:赤松 孝)
 
 

 

ライダーの身長は185cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

●Rebel 1100 T 主要諸元
■型式:ホンダ・8BL-SC83 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC4バルブ ■総排気量:1,082cm3 ■ボア×ストローク:92.0×81.4mm ■圧縮比:10.1■最高出力:64kW(87PS)/7,000rpm ■最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/4,750rpm ■全長×全幅×全高:2,240×850[845]×1,180mm ■ホイールベース:1,520mm ■最低地上高:120mm ■シート高:700mm ■車両重量:238[248]kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン[電子式6段変速(DCT)] ■タイヤ(前・後):130/70B 18M/C 63H・180/65B 16M/C 81H ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ガンメタルブラックメタリック、ボルドーレッドメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,314,500円[1,424,500円] ※[ ] はDCT


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2023/06/23掲載