Facebookページ
Twitter
Youtube

試乗・解説

■文・写真:青山義明 ■協力:Honda

3月のモーターサイクルショーで、国内初お披露目となった原付一種(第一種原動機付自転車)の電動二輪パーソナルコミューター「EM1 e:(イーエムワン イー)」が遂に発売される。誰もが気になる、この電動コミューター、法人向けでもなく、リース販売でもなく、破格のプライスタグを掲げて、我々一般人向けとして、市場に投入となる!

 最近のホンダの電動バイクといえば、(現在は販売を終了してしまったが)2018年に登場したPCX ELECTRIC、そしてベンリー及びジャイロ系のe:ビジネスバイクシリーズの3台。いずれもホンダの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック)」を動力源に使用するもの、である。
 今回登場したEM1 e:も同様にモバイルパワーパックを使用する。ただ、EM1 e:は、企画の最初の段階からこのモバイルパワーパックを1本のみ使用。つまり2本を直列でつなぎ、96Vで使用していたこれまでのホンダの電動バイクとは、同じモバイルパワーパックを使用していても、中身は全く異なることになる。
 それよりもなによりも、やはり今回の目玉となるのは、これが法人向けではなく、リースでもなく、きっちりと一般ユーザー向けに市販されるということだろう。ちなみに、ホンダの二輪電動車としては国内で初めてのケースとなる。

EM1 e:
EM1 e:

「ちょうどe:(いい)Scooter」がコンセプトとなるその電動スクーターだが、ホンダは電動二輪パーソナルコミューターというキャッチをつけている。「日々の生活スタイルにマッチする」ということで、手軽、便利、安心といったところに配慮し、開発。
 110ccクラス同等のホイールベースとフロント12インチタイヤを備えた車体は、2021年に中国で発売された五羊本田の電動二輪車「U-GO」と共有しており、U-GOに似たシンプルでスリムな直線基調のデザインとなる。
 後輪にインホイールモーターを搭載し、シート下にはバッテリーを収納する。インホイールモーターを採用したことで、非常にスリムなイメージの車体となった。すこし厚みのあるフロア下には、薄型のPCU (パワーコントロールユニット)、そしていわゆる原付スクーターではおなじみの12VのMFバッテリー(モバイルパワーパックを起動、そして補器類を作動させるためのもの)を入れ込む。灯火類はすべてLEDを採用している。欧州モデルではタンデムステップが備えられているが、シート下のその部分はあえてデザイン処理のブラインド加工が施されている。

EM1 e:
EM1 e:

EM1 e:
EM1 e:

 一充電あたりの走行距離は53km(30km/h定地走行テスト値)となる。ハンドル右手側に備えたモード切替のスイッチで、スロットル操作に対するモーターの出力を抑えるECONモードとスタンダード(STD)モードという2つの走行モードを切り替えられる。省エネ走行のECONモードなら、STDモードに対して約15%航続距離を伸ばすことに寄与するという。
 車体に充電器を搭載していないので、充電は、モバイルパワーパックを車体から取り外し、家庭用コンセントを使って専用充電器「Honda Power Pack Charger e:」で充電することとなる。充電時間はゼロの状態から満充電まで約6時間となる。

EM1 e:
EM1 e:
EM1 e:

 既存のバイクユーザーだけでなく、新規顧客層の取り込みも視野に入れており、そのため、安心という点においてはフロントディスクブレーキの採用であるとか、前・後輪に適切な割合で制動力を配分するコンビブレーキ(前・後輪連動ブレーキ)といった装備を備えている。
 反転液晶表示メーターには、スピードメーターやODD/時計、バッテリー残量表示などをシンプルに表示。快適装備としては、ヘルメットは入らないもののシート下には収納スペース、また、500mlのペットボトルが入るフロントインナーラックも備わる。そして定番のコンビニフックももちろん用意されている。さらにUSB電源ソケット(タイプA)も標準装備だ。

EM1 e:
EM1 e:
EM1 e:

 ボディカラーは2色を設定。パールサンビームホワイトとデジタルシルバーメタリックとなる。2023年8月24日に発売される予定。車両本体価格は「Honda Mobile Power Pack e:」1個と「Honda Power Pack Charger e:(充電器)」1個をセットにしたモデルで税込29万9200円。車両のみの場合は、税込15万6200円となり、バッテリーや充電器もそれぞれ個別に価格設定されており「Honda Mobile Power Pack e:」が8万8000円、「Honda Power Pack Charger e:」は5万5000円となる。スマートキーではなく一般的なキーシリンダーを使用したものとなっているし、シートのオープナーはボディサイドではなくシート下フロント側とちょっと使い勝手的には少し気になる点もあるが、この価格を考えれば、致し方ない? ホンダは販売計画台数(国内・年間)3000台を目指すとしている。

EM1 e:
EM1 e:

 また、この今回の一般ユーザーへの販売については、使用済みリチウムイオン電池引取りシステムが構築できたから、という。それもあって、この「EM1 e:」だけでなく、法人向けのみの販売であったHonda Mobile Power Pack e:2本を使用する既存のHonda e: ビジネスバイク シリーズの3モデルも一般ユーザー向けの市販化がアナウンスされた。ちなみに価格はいずれも税込みで「BENLY e:」が64万9000円(I、IIとも)、「BENLY e:プロ」が66万円(I、IIとも)、「GYRO e:」が83万6000円、「GYRO CANOPY e:」が100万1000円となった。「EM1 e:」がいかにリーズナブルな価格設定か、そしていかにバッテリーが高価であるかを実感できる値付けだということもわかるだろう。
 ちなみに、販売は全国の「Honda二輪EV取扱店」。こちらは、これまであった「二輪EV取扱店」と「二輪ビジネスEV取扱店」を統合し再構築した約560店となる。(文・写真:青山義明)

EM1 e:
EM1 e:
Honda EM1 e: 主要諸元
■動力用バッテリー:Honda Mobile Power Pack e: (1個) ■最高出力:1.7kW(2.3PS)/540rpm ■最大トルク:90N・m(9.2kgf・m)/25rpm ■全長×全幅×全高:1,795×680×1,080mm ■ホイールベース:1,300mm ■シート高:740mm ■車両重量:92kg ■一充電走行距離:53km(30 km/h定地走行テスト値)〈1名乗車時〉 ■タイヤ(前・後):90/90-12 44J・100/90-10 556J ■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・機械式リーディング・トレーリング ■車体色:パールサンビームホワイト、デジタルシルバーメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):299,200円

[]

2023/05/24掲載