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レース・イベント

1971年にはじまり、2023年に50回目を迎えた東京モーターサイクルショー。「#バイクでつながる」をテーマに、3月24日〜26日に、東京都江東区有明のランドマークでもある東京ビッグサイト(東京国際展示場)の西棟、3万7120平方メートルを舞台に過去最多となる出展社数とその規模を持って開幕した。見て、体験して、感動できるショーを目指した主催者の思い入れの詰まった会場には、会場には未来のライダー、現役ライダーはもちろん2023シーズンを沸かせるバイク達がこれでもか、と集っていたのである。ここではそのバイク編、日本ブランド版を速報でお伝えする。
■レポート:松井 勉 ■撮影:増井貴光

ホンダ──拡大版・青山ウエルカムプラザのような新鮮度。

HONDA

 すでに前週に開催された大阪モーターサイクショーを沸かせたニューモデル達が東京にもやってきた。大きなダイス形のバルーンがアイコンのホンダブースは、エントランスから入るとレギュラーモデルが出迎え、出口に近くなると(そこは通路の角のような場所でもある)オプション装備のDAXなどレジャーバイク達が待ち構え、一段高いステージにXL750トランザルプ、CL250、CL500が置かれるという構成だ。「今年はバイクでなにしよう」「今年はキャンプがしたいからバイクを足に使いたい」──そんな遊びマニアにはグッとくる。順路を進むとホンダが提唱するツーリング×アウトドアアクティビティーの空間に入り込むような展開となっていた。

CL250
タンクのオレンジ色が70年代のバイクを彷彿とさせるCT125にも似たオプションパーツでの拡張性や何所へでも行けそうな頼もしさ。CL250は市街地も遠出も走ることに親しみが湧き出てくるバイクだ。

CL250
スクランブラーらしくマフラーをステップのあたりからキックアップさせてマウントする。
CL250
タックロールのシート、タンクなどの意匠はレブルとは異なる。シート高もそれらしい高さになっている。

XL750 トランザルプ

XL750 トランザルプ
XL750 トランザルプ
トランス・アルプスロード。そんなネーミングの由来を持つトランザルプ。初代は1986年に登場し、欧州を中心に大ヒット。その後、よりオフロード冒険イメージのアフリカツインと2枚看板になり、さらにこのセグメントを力強く牽引してきたファーストジェネレーションに次ぐトランザルプG2とでも呼ぼうか。XL750トランザルプはホーネットと同じエンジンコンポーネントを搭載するが、すでに行われたヨーロッパでのメディア試乗会では「初代のエンジンフィーリングをよくぞ再現してくれた!」とその万能感のあるエンジン特性、最新技術の高いシャーシ性能のパッケージでジャーナリストをメロメロにしたという。208㎏の車重、5インチTFTカラーモニター、5つのライディングモード、スタートは126万5000円という価格。その全てにジャストサイズオールラウンダーを名乗るに相応しい。冒険したい人にはしっかりとオプションパーツも揃う。初代をオマージュしたカラーリングも持続する楽しさを思わせる。

EM1 e
ホンダのEM1 eは原付一種カテゴリーになる電動スクーター。市販予定車。いよいよホンダもB to B主体だった電動モビリティーをB to Cとして動き出す。

ヤマハ──小排気量スポーツ推しの2023年春。
ヤマハ流のシャレシブなカスタムモデルも。

yamaha
yamaha

 2023年、ヤマハの春は、125、155といったミニマム、だけど楽しみ方はマキシム、とでも言いたくなる小排気量スポーツがずらりステージ上に並んでいる。入口、出口で展示スペース内を上流から下流に流れるようにオーディエンスはヤマハの旅をすることに。その縦長のスペースを埋めるレギュラーモデル達が盤石のおもてなしを見せる。そのスペースを歩くと、序盤がTMAX560、トレーサー9GT、サンドベージュのトリシティ155など、オトナかっこいい、あるいはやっぱり気になるヤマハ車達が魅了し、右手にはバイク達のソールメイト、スポーツマシンがずらりと並ぶ。中でもYZF-R7やR25といったハード過ぎないレプリカマシンの色合いとスタイルの重厚さに足を止めない訳にはいかない。そして左奥に並ぶXSR900とそれをベースにしたワイズギアのカスタムマシン達。ヤマハのレガシーをカタチと色で表現したキットで見事に化けたバイクが並ぶ。世代によってその受け止めはそれぞれ。新鮮でありノスタルジーであり青春でありネオレトロでもある。
 そしてメインステージには、まるで居並ぶアイドルグループのごとく均質なコンパクトサイズ=125ccのYZF、XSR、そしてMTと明確な個性をきらめかせたバイク達が並んでいる。どうかご自身の目でコンパクトなエンジン、しかしヤマハワールドの深みをそこに見つけて欲しい。

YZF125
フェアリング、前傾姿勢のライディングポジション、そのすベてにYZFシリーズのスピード感が宿る。YZF-R125(ワンツーファイブ)は水冷単気筒、可変バルブタイミングを搭載。ミニマルな排気量から充実のドライバビリティーを引き出す努力が成されている。スチールデルタボックスフレーム、倒立フォークの採用など海外では人気のセグメントであり、そのまま国内投入されるだけに「世界基準」のバイクである。
MT125
LEDの細身の灯体を持つヘッドライトが醸し出すMTらしいロボットライクなフェイス。ネイキッドスポーツらしいスタイルとの組合せ。今回ステージ上でみたコンパクトなヤマハファミリーのなかでもスポーツ性の主張が色濃いキャラクターであるMT125。カラーリングをふくめアバンギャルドなスポーツネイキッドを探しているなら要注目。

XSR
丸いヘッドライト、丸みをもった11リットル容量の燃料タンク、伸びやかさを演出するシートデザイン。そのどれもがXSRシリーズ一流のレトロモダンな立て付けだ。単眼メーターはLCD。兄貴分と異なるのは排気量だけ? と逆に聞きたくなる充実度のXSR125。。爽やかなスポーツマシン。ヤマハらしい走りの世界をこのクラスでも、ということでカスタムプランも提案されている。

XSR
白ベースに赤いライン、イエローのゼッケンプレートを持つそのスタイルは、70年代、80年代のレースシーンで暴れたヤマハのレーサーからインスパイアされたもの。XSRとの組合せで異なる個性を主張。初期型RZ250風味にも見えるし、これも見る人の心をときめかせる「なにか」をもっている。
XSR
こちらはブルーメタリックのカラーリングが印象的なキット。やはり80年代ヤマハでモチーフとして使われた色調の一つ。ゴロワーズカラーで走っていた世界GPなど引き出しの多さはさすが。

XSR900
ステージの上に置かれた黒基調のXSR900。マットとグロス、ゴールドのピンストライプを絶妙なバランスで使い分けインパクトを持たせた上品なカスタム。アクラポビッチのサイレンサーの色使いにも神経が使われ、ブロックタイヤで足元を引き締める。アンバーのスクリーンもヤマハらしい丁寧なスタイルが魅力的だった。

スズキ──冒険、スポーツ、スクーター。
日常も。日常に足したいものも。
そのすべてを揃えたスズキブース。

suzuki
suzuki

 国際展示場西棟の4Fへと上がる長い長いエスカレーター。スズキブースはそこにあった。展示スペースへのコンクリートの通路を進むと、まずは「歴史遺産車」に認定された刀がお出迎えだ。初代のファイナルエディションが映るボードの前に置かれた現在の刀。深みのあるシルバーに見せる展示車。シートやエンジン周りのブラックが造るコントラストがまことにシブい。刀を通り過ぎ、ブースの奥へと進むと、そこには目が覚めるようなイエローのV-STOROMファミリーが3台そろい踏みで迎えてくれる。インド生産の250SX、そして1050DE、800DEがそれで、250SXも今シーズン中にショールームに届く予定だと言われているから、冒険ツアラー好きにはこの風景は絶景なはず。
 展示スペースの中ほどには800DEとエンジンなどを共用するGSX-8Sの姿も。ブルーとホワイトの2台が揃い、視覚的インパクトを与えてくれる。スズキの最新作を見るとデザインやカラーリングに新しさをストレートに主張する。ネイキッドモデルの新しいスタイル潮流を封入したカタチは多くの人に好まれるだろう。
 また、125クラスのスクーターが3機種展示されていた。中でもバーグマンストリートはインパクト充分。背伸び感をことさら主張しないサイズで取り回しが良さそうなサイズ。アイドリングストップを盛り込んだ新しいエンジンなど見所充分。
 夢と現実を混在させながらしっかりと地に足のついたラインナップが魅力のススキブース。なるほど、伝説はこうした中から生まれるのかもしれない。

刀
看板代わりにさりげなく主張をする刀。その傍らではハヤブサが構えていて、スズキのラグジュアリーかつアルティメットスポーツの世界が繰り広げられている。

V-STROM
V-STROMファミリーの3台。手前から250SX、1050DE、800DEだ。1050DEはこの春リリースされたトップオブV-STROMモデル。21インチの前輪、後輪は17インチのチューブレスホイールを履く。アルミフレームと水冷Vツインを搭載する最もトラッドなV-STROMパッケージを採用するのは従来通り。クルーズコントロール、コネクティビティー機能を持つTFTモニターなどを装備。往年のDR-BIGフェイスをもっている。

250SX
250SXはインド生産のモデルで、キャリパー周りはブレンボのブランドの一つ、バイブレ製を前後に採用。サスペンションなども現地の道路状況に合わせたものを採用している模様。国内仕様としてどのような煮つめを行ってくるのかが楽しみ。KTM、BMWなどインド生産のモデルが世界共通で流通しているのが今の現実で、そのポテンシャルは高いのだ。
250SX
V-STROMブランドを大切に育ててきたスズキ。現在アドベンチャーバイクではアンダーリッタークラスが話題の中心になりつつある。火中に投じられたスズキの新型V-STROM 800DEだ。フロント21インチ、リア17インチのチューブ入りタイヤを履くオフロード推しなモデル。前後とも220mmのストロークをもつサスペンション。新型直列2気筒エンジンを開発して得たパッケージは、オンにもオフにも効果的。スチールフレームの出来映えと合わせて上質な走りを楽しめる。オプションも豊富でラゲッジキャリーのためのケース、LEDフォグ、アンダーガード、センタースタンドなどベースプライスを抑え、好みでビルドアップできる素材としたのもこのクラスのモデルとして魅力である価格アピールが効いてる。

GSX-8S
ボディカラーが綺麗なブルーとホワイトが展示されていたGSX-8S。シートフレームのブルーを外観意匠に活用しつつ、全体としてはシンプルなネイキッドに仕上げている。ヘッドライトユニットと、タンクから延びるシュラウドのようなパネルに描かれた8Sの文字がクール。エンジン、メインフレームはV-STROM 800DEと共用する。マフラー、吸気ボックスの中のファンネルなどを専用化してそれぞれの特性を作ったという。発表された価格は106万7000円。202㎏と軽量な車体と775㏄ツインがどんな加速を、どんなツーリングパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみでならない。
GSX-8S
鮮やかなサブフレーム。ホイールもボディ同色としながらくどさがないのがデザイナーの腕の確かさを物語る。

バーグマンストリート125EX
バーグマンストリート125EX。ボリューミーなフロントエンド、たっぷりとしたシートサイズ。テールエンドの造形やパイプ製のリアキャリアなど使い勝手と所有感の着地点を高いところに合わせ込んだこのスクーター、通勤時間帯の路上シェアを2023年は確実にスズキによせてきそうな予感がするバランス高し! と言えるモデルだった。

カワサキ──明石のフロンティア、またも風を起こす。
注目は400エリミとラム圧過給時に80馬力の4RR。

kawasaki
kawasaki

 かつて性能競争こそが正義、という流れの時代を経て、現在のバイクブーマーたちは足着きの良さ、身近さでバイクを選ぶ層も増えている。同時に、今も使う、使わないではなく、備わっている余力としてパフォーマンスを付加価値と捉えるライダーは少なくない。カワサキはNinja H2シリーズではスーパーチャージャーで、ZX-10Rで世界レベルの闘いを展開することでサーキットパフォーマンスを。さらにZ900RS、Z650RSでは70年代のスタイルを提唱し、W800やメグロK3でもブランドレガシーを提示している。
 カワサキというドリームランドを楽しめるキャストがそこに顔を揃えている。もちろん、グループに迎え入れたビモータ社、その芸術的なパーツ使いが眩しいKB4も独特の世界観を見せる白いスペースに置かれていた。
 2023年のカワサキの大きなトピックは、エリミネーターの復活とZX-4RRの登場だろう。我々は400ccというカテゴリーで、ストリートで初めて80馬力というリッター換算200馬力のマシンを体験できる日が来るのだ。そしてNinja400と同様に直列2気筒を採用する扱いやすさ、パワーのバランス、足着き性、走行性能などそのパッケージ力がどう考えても良好なエリミネーターのデビューだ。おそらく、250クルーザーでバイクデビューしたが、長距離、二人乗りなど使い方の拡張性を期待している人にとって注目だろう。SEにはメーターバイザー、フォークブーツなどが装備される。また、カワサキとしては初となる前後にミツバサンコーワ製のGPS搭載のドラレコを装備する充実ぶり。
 期待が充満したカワサキのグリーン&ブラックブースで気になる部分を是非確認して欲しい。

NinjaH2 SX
ファンの心を照らすようなグリーン。ピクチャーフレームのようにかたどった中にはNinjaH2 SXが。カワサキ、憧れ、ビッグバイク、パフォーマンス。ここで受けるインスピレーションは様々。ここがカワサキワールドの入場ゲートのようだった。

ZX-4RR
目覚めよ、アナタのスーパースポーツ。タイトベンドから立ち上がるZX-4RR。ライダーの加速指示に溜まらずフロントタイヤを浮かす場面を捉えた写真に付いたコピーにゾクっとしたら、このバイクを忘れるのは難しいのかもしれない。

エリミネーター
ホワイトのエリミネーター、アクセサリーを装着したブラックのエリミネーターSE。本体価格はエリミネーターが75万9000円。エリミネーターSEが85万8000円。735mmのシート高、176㎏/178㎏(SE)とロー&ロングスタイルのクルーザーにして軽量な車重も注目。かつてのエリミネーター同様、リアは2本ショックを採用する。

エリミネーター
エリミネーター
ヘッドライトの下側にドライブレコーダーのカメラが備わっている。

ZX-4RR

エリミネーター
Ninja ZX-4RR。カウルの影に隠れた400㏄直列4気筒エンジン。焼けたエキパイが気になる。
エリミネーター
そこまで太いリアタイヤを採用していないが、ZX-25Rのような軽快さを想像するだけでシズル感が沸き立つバイクだ。160/60ZR17を履く。

ビモータ
カワサキのプラザ店が持つもう一つの魅惑。ビモータKB4が持つビッグバイクとは思えない軽さ、美しさに拘ったパーツ使い、それらが醸すプレミアムな存在感。マスプロダクト製品とは異なるプロセスで生まれるバイクだ。

(レポート:松井 勉 撮影:増井貴光)

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2023/03/25掲載