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試乗・解説

Ninja ZX-6Rを一般道で走らせた(高速道路を含む)。一般的なペースでフツーに流し、少しだけワインディングでその片鱗を味わった。そんな1日がとてもよく似合う。本来は超絶なアスリートなのだが裾野が広い、乗りやすい。あー、楽しかった。そんな記憶が残る。ペースを上げたら途端にサーキットが恋しくなることもなく、それでいて雲の上に隠れた頂の高さもしっかりと連想させてくれる。そのバランスがまさしく絶妙。4気筒エンジンが持つフレキシビリティにより幅の狭いマニアックな世界だけにとどまらない走りを見せるNinja ZX-6R。それだけに幅広い道にフィットするパッケージこそ最大の魅力だったのだ。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:富樫秀明 ■協力:カワサキモータースジャパン ■ウエア協力:アライヘルメット、56design:SPIDI

なんだろう、このカジュアルさ。

 そんな見出しを付けるとまるでNinja ZX-6Rが軟派に思われてはいけないのだが、あくまでNinja ZX-6Rの軸足はスーパースポーツ。サーキットを攻めてこその性能でパッケージされている。その点はまず確認をしておきたい。でだ。カワサキのこのバイク、乗りやすさでまず魅了する。そこに感じるのがカジュアルさなのだ。
 
 カテゴリー種別で見渡せば、ホンダのCBR600RRがその比較級となる。あちらはCBR1000RR-Rと同様に、最新の電子制御を用いた最新サーキットファッションを纏っている。その分、価格も高い。ではスポーツバイクとしての排気量で見渡せば前述のCBR600RRを含め、同門である並列2気筒のNinja 650、CBR650R、そしてYZF-R7あたりが比べる対象となるのではないだろうか。

Ninja ZX-6R

 サーキットには行かない、という割り切りがあったとする。同時に、でもシャープなハンドリングやワインディングを楽しむのが好き、というライダーなら次第にこのNinjaZX-6Rの存在が浮かび上がってくるに違いない。もちろん、4気筒に拘りがない、というライダーなら、YZF-R7が今猛烈に気になっているタイミングだろう。軽さ、価格面どれを取っても4気筒勢を打ち負かし、そして新しいという記号性が放つ魅力は何物にも代えがたい。

 しかし、Ninja ZX-6Rの持つ魅力は侮れない。まず4気筒エンジン。それこそ市街地オンリーでも扱いやすくフレキシブルなトルク特性により超絶なアスリートであることすら忘れさせてくれる。日本記録をもつ陸上競技のスプリンターと軽妙なおしゃべりをしつつ散歩しているような気分。というより、散歩の相手がそんなスゴイ経歴の持ち主であることをちらつかせないジェントルさもある。
 それはライディングポジションからも伝わってくる。スポーツライディングには最適だが、不思議と前傾度を強く感じない。ステップの位置が高すぎず、足が後傾しすぎずという部分が大きいように思う。そしてストリートも意識したサスペンション設定とイニシャルプリロード設定もあるのではないか。上質な足であることは間違いないが、パンと張って高荷重を受けないと「私、仕事しませんから」というツンとしたところがない。
 エンジン、サスペンション、そしてポジション──この三位一体によりこのバイクは見事に日常領域へもアクセスしているのだ。

Ninja ZX-6R

やっぱり4気筒。

 多様性の元となるのは間違いなく4気筒エンジンだ。ギクシャクすることなく低い回転から発進を可能にし、50km/hでは6速が常用できる。そこがホメポイントではないバイクだが、Ninja ZX-6Rの並列4気筒の魅力はこの幅広い領域での扱いやすさにある。そこを利して装備されるクイックシフターを市街地ペースで使うこともできる。これが意外に走りのアクティビティになる。

 バイワイヤースロットルではないため、シフトダウンは通常通りの手順を踏むことになるが、これはこれ。低中回転からスムーズで充分なトルクを持つだけに、加速感は充分。そして低めに設定されたファイナルレシオにより加速を鋭く引き出すことも簡単。でもギクシャクしないドライバビリティのバランスが魅力だ。
 高速道路やワインディングでもこのエンジンとファイナルの組合せで右手を少し開くだけで追い越しは瞬殺でこなすし、エンジンブレーキも引き出しやすい。まあ、その分、燃費は目をつむることになるだろうが、期待通りの加速、バイクとの一体感という良質な時間を過ごすにはもってこい。オーナーになれば納得の設定だろう。

Ninja ZX-6R

サスペンションも上々。

 そしてツーリングペースでは前後のサスペンションの動きの良さに助けられ、ソフトではないのに乗り心地がフラットでスムーズ。バトラックスS22が持つグリップ性能やハンドリング性能をスポーツライディングにフォーカスしすぎない車体設定もあり適度な手応えを持つ。このハンドリングキャラクターも一般道で走る充実感に実はつながっている。
 例えばワインディングを流すような時。アルミフレームが持つガッシリ感と重量物がしっかりまとまった車体設定によりブレーキングやスロットルであまり姿勢変化を造ったりしなくてもリーン方向への動きと、それに対するフロント周りのレスポンスはさすがスーパースポーツ、という反応なのだ。ミドルペースに上げてブレーキング、シフトダウンでリズムを取り、ラインを奥めにとって一気に旋回をするような場面からはNinja ZX-6Rの本来の性能がにじみ出す。

 深くなったバンク角から立ち上がる時の加速力。次のカーブへのアプローチを短い時間で考え、実行するときのバイクの反応。それら数秒の中にある課題がゆったりこなせるような気分、それがスーパースポーツとの対話の醍醐味だろう。それが余すことなくある。
 面白いのは、左右に90度のカーブが連続する峠道を走っている時の充足感が高く、あえてサーキットにある長い時間バイクをフルバンクするような場面が恋しくならない。きっとレザースーツを着てサーキットを攻めたらまた別の一面に魅了されるに違いないのだが、日常の道で楽しめる成分が濃厚なのだ。

Ninja ZX-6R

カリカリ過ぎない、でも香ばしさを存分に味わえる。
それがNinjaの魅力。

 例えばタイヤをもっとハイグリップ、もっと軽快なハンドリングによせ、ブレーキパッドも指一本で制動力をフルに引き出せるものに整えることも出来るだろう。そんなカスタマイズもしっかり受け入れる余地がふんだんにあるNinja ZX-6Rだ。ただ、様々な場面で走った結果、このバイクが持つパッケージの魅力が見えてきた。

 ストリートにまずは照準を合わせたサスペンション、エンジン特性というパッケージをライディングポジションにまで注意深く拘ったところ、だからこそ一体感を休日の楽しみとしてツーリングで味わえる。そんなキャラを持ち合わせるから、このバイクはサーキットへ行け、限界を試せ、と声高に語りかけてこない。良くできたスポーツバイクだ。
 もちろん、レース、タイムというモノサシではなく、楽しむためのサーキット走行会的なイベントであればストックのまま充分に楽しめるだろう。636㏄という排気量が参加するレースカテゴリーを絞ることは確かだが、そこがこのバイクの力点ではないことがここまでのリポートからもお解りいただけたのではないだろうか。間口が広い。そして性能という魅力もそこから発せられるオーラのようなものもしっかりと備わったバイク。これこそNinja ZX-6Rが持つ魅力なのだ。

 不思議だが、かつて体験したGPZ400Rのようなスポーツとスーパースポーツが持つ双方の魅力を内包するバイクを思い出していた。ボリューミーで存在感があって、速さは乗り手のスキルが存分に活かせるようにしておきました、と言わんばかりのバイク。カワサキって、この辺の味付け、旨いことやるよね、と。
(試乗・文:松井 勉)

Ninja ZX-6R

Ninja ZX-6R
Ninja ZX-6R
ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

Ninja ZX-6R
Ninja ZX-6R

ZX-6R KRT EDITION Specification主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:636㎤ ■ボア×ストローク:67×45.1mm ■圧縮比:12.9 ■最高出力:92kW(126PS)【ラムエア加圧時97kW(132PS)】/13500rpm ■最大トルク:70N・m(7.1kgf・m)/11000rpm ■全長×全幅×全高:2025×710×1100mm ■軸間距離:1400mm ■シート高:830mm ■車両重量:197kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■車体色:ライムグリーン×エボニー ■メーカー希望小売価格:140万8000円

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2022/12/19掲載