今年もEICMA/ミラノショーが開幕しました。そして今年も、僕はミラノに来て取材しています。昨年は感染症の渦中での開催でしたが、欧州ではパンデミックは終わったという認識が強く、したがってその混乱が収束してから、体制を整えての開催、という印象です。現地8日(火)と9日(水)はプレスデイなのですが、昨年とは違う熱気に早くも包まれている感じ。一般公開がスタートする10日(木)以降は、どうなっちゃうんだろうと、ハラハラ、ドキドキです。昨年不参加だったドゥカティが再び会場に大きなブースを構え、また昨年よりも大きなスペースでブースを展開するメーカーも多数あり、気合いが入ってます。とはいえBMWやKTMグループ(KTM、ハスクバーナ、GASGAS)、それにハーレーダビッドソンも不参加であり、パンデミックによってリアルショーのあり方を再考したブランドもあります。そんな悲喜こもごものなか、まずは2日間、速報をお伝えしたいと思います。まずは国産4メーカーのプレスカンファレンスから、どうぞ!
ホンダは昨年同様、会場内ブースとは違う、EICMA会場内のイベントホールでプレスカンファレンスを開催しました。注目はやはり「XL750トランザルプ」でしょうか。先に発表されたホンダの新しいスポーツネイキッドモデル「CB750ホーネット」と同じ、270度クランクを搭載した排気量755cc並列2気筒OHCエンジンを搭載。フロント21インチ/リア18インチという、かなりオフロードよりなアドベンチャースタイル。昔のトランザルプを知っているライダーにとっては、“おっ懐かしいじゃん”と思えるボディデザインも採用しています。
新型ホーネットをデザインしたホンダR&Dヨーロッパのデザイナーに少し話を聞いたら、このトランザルプは彼のチームがデザインを担当。メインデザイナーは彼の上司だといっていました。かつてのトランザルプは、いま見るとポッテリとしている印象ですが、新型はそのポッテリ感も残しつつ、シュッとシャープになった感じでした。
「CB750ホーネット」も登壇しました。こちらもシュッとしていて、コンパクトで、とてもモダンなスタイル。旧ホーネットのようなマッチョ感ではなく、細マッチョな感じでしょうか。合ってるかな、この表現……。
レブル系の「CMX1100T レブル」と「CL500」2台のマシンも、なかなかユニークでした。「CMX1100T レブル」はコウモリが羽を広げたようなバッドウィングカウルとリアバッグを持つ、クラシックスタイルのバガーモデル。ハーレーダビッドソン・ストリートグライドとガチンコ勝負のモデルです。アメリカで圧倒的な人気を誇るバガースタイルを造ってくるあたり、アメリカ市場での存在感を高めようという魂胆です。乗り慣れない&見慣れない人にとっては気後れしそうなほど大柄ボディが特徴のバガースタイルですが、「CMX1100T レブル」は非常にコンパクトでした。
「CL500」は、予想以上にスクランブラーしていました。その噂は聞いていたのですが、レブルのプラットフォームでスクランブラーを造るのは無理でしょ、と思ってましたが、うれしい誤算です。その足長のスタイルは、レブルのプラットフォームの中では個人的に一番好きなスタイル。レブル自慢の足着き性の良さは多少スポイルされるでしょうが、それでも足着き性は良さそうでした。
カワサキは「Ninja H2 SXおよびSX SE」を発表したのですが、プレスカンファレンスのほとんどの時間を使って説明したのが、グリーンテクノロジーを使ったカーボンニュートラル計画と、それを担う電動バイクやハイブリッドバイクのプロトタイプと開発中の水素エンジンでした。そのプロトタイプモデル「エレクトリック Z」と「エレクトリック ニンジャ」(※正式には“エレクトリック”というモデル名ではないのですがガソリン車と区別するために便宜上エレクトリックを使用しました)、そして「HEVモーターサイクル」です。2台の電動バイクは2023年の市販化を予定、ハイブリッドモデルは2024年の市販化を目指すと発表されました。いやー、これは欧州二輪市場に対して、いや世界の二輪市場に対して、カワサキの大いなる覚悟の発表であり、しかも自ら発表期限まで口にする自信を感じました。
スズキは、噂になっていたパラレルツインエンジン搭載の「Vストローム800DE」を発表。同プラットフォームを採用したスポーツネイキッドモデル「GSX-8S」も同時にアンベールしました。「Vストローム800DE」は、昨年発表した「Vストローム1050XT」に次ぐ、往年のスズキのパリダカマシン「DRビッグ」をオマージュしたようなスタイリング。なかなか格好いいです。これでスズキは、活況のアンダー1000のアドベンチャーカテゴリーで、ライバルたちと戦える新プラットフォームを得たというわけですね。
「GSX-8S」は良い意味でスズキらしくない感じがしました。兄貴分のスポーツネイキッド「GSX-S1000」のスタイリングにオマージュしつつ、エッジの尖らせ方と柔らかな面とのバランスが絶妙。デザインを売りにする欧州ブランドのような、そんな雰囲気をまとっていました。こちらもアンダー1000ccのスポーツネイキッドカテゴリーで、暴れちゃいそうな予感がします。
ヤマハはEICMA前日に、SNSやWEBサイトを使ってニューモデルを発表。プレスカンファレンスは行いませんでした。なかでも注目は「トレーサー9GTおよび9GT+」、それに「ナイケンGT」でしょうか。「トレーサーGT+」はヤマハ初のレーダー搭載で、自動的に加速や減速をしながら前車との車間距離を維持するACCを初採用しました。また標準の9GTが二画面カラーディスプレイを採用するのに対して、9GT+は7インチの一画面カラーディスプレイを採用。スマホアプリとの連携も可能です。
「ナイケンGT」は新型エンジンを採用。MT-09ベースの890cc並列3気筒ですが、クランクウェイトを増量するなどして出力特性を進化。フレームも新しくなっているようです。またトレーサー9GT+同様、7インチのカラーディスプレイを搭載。それに合わせるようにコクピット周りのデザインや可変式スクリーンを採用するなどアップグレードされています。撮影したブラックカラーは、フレームや足周りのクランプ類などが、ブラウンゴールドような美しいカラーが採用されていて、その質感も高かったですね。
というわけで、急いで準備して、これから会場に向かいます!ではまた明日に!(レポート:河野正士)
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