2段階右折しなきゃいけなかったりしちゃいけなかったり、通れないアンダーパスやオーバーパスがあったり、なにより時速30km以上出しちゃいけなかったり――。そんな原付一種の不便さがなく、高速道路に乗れなくても、一般道ではまわりの交通の流れとともに走れることで人気の「ゲンニ」または「ワンツー」こと、原付ニ種=125ccモデルが再評価、人気がどんどん高まっている。
でも実は、原付ニ種モデル人気って「ホンダ」原付二種モデル人気、って表現が正しかったりする。スクーターを除くギアつきモデルは、カワサキがZ125、スズキがGSX-R/S125、ヤマハはラインアップがない中、ホンダは合計9機種もあるのだ。Z125やGSX-R/Sも人気モデルだけれど、こうなるともはや多勢に無勢だもの。
ギアつきマニュアルミッション車がCB125R、モンキー125にグロム、そして自動遠心クラッチのスーパーカブC125、CT125ハンターカブ、スーパーカブ110/110プロにクロスカブ110、そして新登場したばかりのダックス125。自動遠心クラッチ車は、小型二輪免許の中でもAT限定免許でも乗れる、って人気もあるみたいだ。
中でも一番人気は、やっぱりCT125ハンターカブだ。新世代の125cc横型エンジンを積む、自動遠心クラッチの、スーパーカブシリーズのトップバージョン。おそらく、生誕60年を超えるスーパーカブ正統血統の本流はC125なのだろうから、ハンターカブはその派生のゴージャスモデルだ。
けれど、そのC125とハンターカブのベースとなるスタンダードモデルも、きちんとラインアップされている。それがスーパーカブ110。こちらは、C125ほどゴージャスなバージョンではなく、スーパーカブの伝統に、何も足さない、何も引かないバージョン。このスーパーカブ110の派生モデルに、クロスカブ110があるというわけだ。
スーパーカブ110は、1958年に発売された元祖カブこと、スーパーカブC100(とはいえ排気量は50cc)のいわば現代バージョンだ。低床バックボーンフレームにクラッチ操作の要らない自動遠心クラッチ、頑丈なエンジンや車体の、誰にでも乗れるオートバイ。便利で、頑丈で、経済的──。それは、現在の目で乗っても良くわかる。
22年モデルは、新たに採用した新ロングストローク仕様の空冷エンジン。さらに前後キャストホイールとして、フロントにディスクブレーキ、ABSも装着した。スーパーカブの歴史上、大きな変換期となったモデルだ。
新世代スーパーカブは、まずはエンジンフィーリングが新しい。ロングストロークの新エンジンは、フリクションが少なく、静かに振動なくコロコロとよく回る。新たにメーター内に増設されたギアポジションインジケーターは、走行中に何速にギアが入っているかひと目でわかるもので、スーパーカブに待望されていた機構。4速ミッションのスーパーカブを「幻の5速」に入れようと空振りしちゃうアクションもずいぶんと減るものだ。
メーターには(写真参照)、スピードの目盛りの内側に1/2/3/4の目盛りがあるけれど、これは使用するギアの目安。ローギアで30km/h弱まで、2速で50km/h弱、3速で70km/h強、そして4速で100km/hジャストくらいまで出ることがわかる。
とはいえ、その目盛りどおりまで回すと、エンジン回転を引っ張る感じになり、ちょっとせわしない。ここはあくまでも目安と考える方がいいもので、実際にはもっとのんびり、ローギアで20km/h、2速で40km/h、3速で60km/h、そして4速で80km/hといったあたりが快適。おっと、80km/hは速度違反になるので、4速60km/hが本当に気持ちいい。低振動、コロコロと回るフィーリングで、そこからアクセルを開けると力強く加速してくれる。きっとホンダは4速60km/hあたりの平和さを狙ってギア比をセットしたのではないだろうか。
車体の方は、まずはブレーキが段違い。効きはもちろん、コントロール性が良くなった。旧モデルはドラムブレーキで、お世辞にも効くとは言い難かったし、レバーを少し引いただけでカクンと効いたり、引きしろ一杯まで握っても効かなかったり。
キャストホイールになったことについては、走りがカッチリしたとか、転がりが軽くなった、的な印象は少なかった。もちろん、これが100km/hとか150km/hで走っている時にならまだしも、一般道の50~60km/hだと変化を感じ取ることは難しいと思う。
けれど、キャストホイールを装着したことで、とうとうチューブレスタイヤを履くことができるようになった。スーパーカブ乗りたちのロングランで、いつも付きまとうパンク問題についても、チューブレスタイヤ装着はオーナー待望の装備だろう。
なによりスーパーカブで街乗りをすると、ブーンガチャ、ブーンガチャ、ブーンガチャ、と平和な気分になるもので、なにより飛ばす気がなくなってくるのがいい。スーパーカブでコーナリングとかハンドリングを云々するのは無粋というもので、スーパーカブはやっぱり、街中をブーンガチャ、ブーンガチャ、と流すのが楽しいのだ。
気を付けることは、やっぱり「カブの4速発進」あるある。普通に走っていて、4速60km/hで走っていて信号待ち。その時に4速のまま信号待ちをしてしまって、信号が青になってGO!と思ったら4速のままよろよろ──というやつ。信号待ちの時は、停止時にだけ「前踏みでニュートラル」になる機構を生かして、停止したら前踏み2回でローギア発進待ち、を習慣づけるといい。ギアポジションインジケーターがついたとはいえ、ついついやっちゃう4速発進。ただし、このクセが治るようになったら、リッパなスーパーカブ乗りなのだ。
もうひとつ。スーパーカブ110のスタンダードさは、もちろんおじさんっぽいし、ちょっとイジればおしゃれな乗り物ではある。ブルー、グルーン、ベージュ、イエロー、ホワイトと5色のボディカラーがあるけれど、まだまだ40~50歳台でもスーパーカブ110はちょっと早いんじゃないかな。
逆に10代~20代の女子が乗るなら可愛いけれど、125ccじゃなく、110ccを選ぶなら、スーパーカブに乗るのは、まだまだ先でいいよ!
(試乗・文:中村浩史)
■エンジン種類:空冷4 ストロークSOHC 単気筒2バルブ ■総排気量:109cm3 ■ボア×ストローク:47.0×63.1mm ■圧縮比:10.0 ■最高出力:5.9kW(8.0PS)/7,500rpm ■最大トルク:8.8N・m(0.90kgf・m)/5,500rpm ■ 全長×全幅×全高:1,860×705×1,040mm ■軸距離:1,205mm ■シート高:738mm ■車両重量:101kg ■燃料タンク容量:4.1L ■変速機形式:常時噛合式4 段リターン ■タイヤ( 前・後):70/90-17M/C・80/90-17M/C ■ブレーキ(前・後):油圧ディスク(ABS)・機械式リーディングトレーリング ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:グリントウェーブメタリック、バージンベージュ、パールフラッシュイエロー、クラシカルホワイト、タスマニアグリーンメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):302,500 円
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