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試乗・解説

なにも足さない なにも引かないスーパーカブ Honda Super Cub110
人気の原付ニ種モデルの中でも
さらに大人気ハンターカブにクロスカブ。
そこにはスタンダードモデルとして
スーパーカブ110というベースモデルがあるのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:増井貴光 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、アルパインスターズ https://www.alpinestars.com/






 2段階右折しなきゃいけなかったりしちゃいけなかったり、通れないアンダーパスやオーバーパスがあったり、なにより時速30km以上出しちゃいけなかったり――。そんな原付一種の不便さがなく、高速道路に乗れなくても、一般道ではまわりの交通の流れとともに走れることで人気の「ゲンニ」または「ワンツー」こと、原付ニ種=125ccモデルが再評価、人気がどんどん高まっている。
 でも実は、原付ニ種モデル人気って「ホンダ」原付二種モデル人気、って表現が正しかったりする。スクーターを除くギアつきモデルは、カワサキがZ125、スズキがGSX-R/S125、ヤマハはラインアップがない中、ホンダは合計9機種もあるのだ。Z125やGSX-R/Sも人気モデルだけれど、こうなるともはや多勢に無勢だもの。
 ギアつきマニュアルミッション車がCB125R、モンキー125にグロム、そして自動遠心クラッチのスーパーカブC125、CT125ハンターカブ、スーパーカブ110/110プロにクロスカブ110、そして新登場したばかりのダックス125。自動遠心クラッチ車は、小型二輪免許の中でもAT限定免許でも乗れる、って人気もあるみたいだ。
 

 
 中でも一番人気は、やっぱりCT125ハンターカブだ。新世代の125cc横型エンジンを積む、自動遠心クラッチの、スーパーカブシリーズのトップバージョン。おそらく、生誕60年を超えるスーパーカブ正統血統の本流はC125なのだろうから、ハンターカブはその派生のゴージャスモデルだ。
 けれど、そのC125とハンターカブのベースとなるスタンダードモデルも、きちんとラインアップされている。それがスーパーカブ110。こちらは、C125ほどゴージャスなバージョンではなく、スーパーカブの伝統に、何も足さない、何も引かないバージョン。このスーパーカブ110の派生モデルに、クロスカブ110があるというわけだ。
 

 
 スーパーカブ110は、1958年に発売された元祖カブこと、スーパーカブC100(とはいえ排気量は50cc)のいわば現代バージョンだ。低床バックボーンフレームにクラッチ操作の要らない自動遠心クラッチ、頑丈なエンジンや車体の、誰にでも乗れるオートバイ。便利で、頑丈で、経済的──。それは、現在の目で乗っても良くわかる。
 22年モデルは、新たに採用した新ロングストローク仕様の空冷エンジン。さらに前後キャストホイールとして、フロントにディスクブレーキ、ABSも装着した。スーパーカブの歴史上、大きな変換期となったモデルだ。

 新世代スーパーカブは、まずはエンジンフィーリングが新しい。ロングストロークの新エンジンは、フリクションが少なく、静かに振動なくコロコロとよく回る。新たにメーター内に増設されたギアポジションインジケーターは、走行中に何速にギアが入っているかひと目でわかるもので、スーパーカブに待望されていた機構。4速ミッションのスーパーカブを「幻の5速」に入れようと空振りしちゃうアクションもずいぶんと減るものだ。
 

 
 メーターには(写真参照)、スピードの目盛りの内側に1/2/3/4の目盛りがあるけれど、これは使用するギアの目安。ローギアで30km/h弱まで、2速で50km/h弱、3速で70km/h強、そして4速で100km/hジャストくらいまで出ることがわかる。
 とはいえ、その目盛りどおりまで回すと、エンジン回転を引っ張る感じになり、ちょっとせわしない。ここはあくまでも目安と考える方がいいもので、実際にはもっとのんびり、ローギアで20km/h、2速で40km/h、3速で60km/h、そして4速で80km/hといったあたりが快適。おっと、80km/hは速度違反になるので、4速60km/hが本当に気持ちいい。低振動、コロコロと回るフィーリングで、そこからアクセルを開けると力強く加速してくれる。きっとホンダは4速60km/hあたりの平和さを狙ってギア比をセットしたのではないだろうか。
 

 
 車体の方は、まずはブレーキが段違い。効きはもちろん、コントロール性が良くなった。旧モデルはドラムブレーキで、お世辞にも効くとは言い難かったし、レバーを少し引いただけでカクンと効いたり、引きしろ一杯まで握っても効かなかったり。
 キャストホイールになったことについては、走りがカッチリしたとか、転がりが軽くなった、的な印象は少なかった。もちろん、これが100km/hとか150km/hで走っている時にならまだしも、一般道の50~60km/hだと変化を感じ取ることは難しいと思う。
 けれど、キャストホイールを装着したことで、とうとうチューブレスタイヤを履くことができるようになった。スーパーカブ乗りたちのロングランで、いつも付きまとうパンク問題についても、チューブレスタイヤ装着はオーナー待望の装備だろう。

 なによりスーパーカブで街乗りをすると、ブーンガチャ、ブーンガチャ、ブーンガチャ、と平和な気分になるもので、なにより飛ばす気がなくなってくるのがいい。スーパーカブでコーナリングとかハンドリングを云々するのは無粋というもので、スーパーカブはやっぱり、街中をブーンガチャ、ブーンガチャ、と流すのが楽しいのだ。
 

 
 気を付けることは、やっぱり「カブの4速発進」あるある。普通に走っていて、4速60km/hで走っていて信号待ち。その時に4速のまま信号待ちをしてしまって、信号が青になってGO!と思ったら4速のままよろよろ──というやつ。信号待ちの時は、停止時にだけ「前踏みでニュートラル」になる機構を生かして、停止したら前踏み2回でローギア発進待ち、を習慣づけるといい。ギアポジションインジケーターがついたとはいえ、ついついやっちゃう4速発進。ただし、このクセが治るようになったら、リッパなスーパーカブ乗りなのだ。

 もうひとつ。スーパーカブ110のスタンダードさは、もちろんおじさんっぽいし、ちょっとイジればおしゃれな乗り物ではある。ブルー、グルーン、ベージュ、イエロー、ホワイトと5色のボディカラーがあるけれど、まだまだ40~50歳台でもスーパーカブ110はちょっと早いんじゃないかな。
 逆に10代~20代の女子が乗るなら可愛いけれど、125ccじゃなく、110ccを選ぶなら、スーパーカブに乗るのは、まだまだ先でいいよ!
(試乗・文:中村浩史)
  

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

新採用となったキャストホイール+ABSつきディスクブレーキ。ホイールデザインはスーパーカブC125と同一で、切削加工やメッキ仕上げが異なるポイント。ABSはフロントブレーキのみの装備だ。

 

新たにロングストロークとした空冷4ストローク横型エンジン。現行のモンキーやGROMと同じ63.1mmストロークで、125cc勢の50mmボアを110cc用に47mmとしている。ロングストロークとなったことで、同じスピードでのエンジン回転数は下がり、耐久性が上がり、燃費も向上する。

 

鉄製ながらスイングアームは角断面パイプを使用。リアブレーキはドラムだが、効きに不安はなし。タンデムステップは標準装備だが、タンデムシートは別売り。

 

チェーンカバーを装備しているのもスーパーカブの伝統。わざわざスチール製としているのは、チェーンが伸びるとケースを叩き、その音が大きくなってわかりやすくするため。ステップ下のラバーキャップがチェーン調整確認用窓。
スーパーカブおなじみのシーソー式ペダル。クラッチ操作なしでシフトアップはつま先方向に踏み、シフトダウンはカカト方向を踏む。停止時のみトップアギア4速からシフトアップ方向に踏んでニュートラルに入る構造だ。ちなみにギアが入ったままのエンジン停止時では、前に押せなくとも後方向には進ませられる。

 

幾度かのモデルチェンジの末、現在のスーパーカブファミリーのヘッドライトはすべて丸に統一。新世代カブらしく、ヘッドライトはLEDを採用。
液晶ディスプレイが追加されたメーターパネル。ギアポジションと燃料計を常時表示し、切り替えで時計/トリップ/オド/平均燃費を表示させられる。メーターは140km/hフルスケールで、最高速度は約100km/h+α。

 

ほぼフラットな形状のハンドルバーは、左右感が短めの設定。ハンドルスイッチは右にセルボタン、左にウィンカーとホーン、ヘッドライトのディマースイッチのみだ。
ハンターカブにもない、クロスカブにもないレッグシールドも健在。レッグシールドとサイドカバーは同色、ボディカラーはブルー/ベージュ/イエロー/ホワイト/グリーンの5色。

 

これもスーパーカブの伝統、サドル型シート。シート開閉はロックがなく、フューエルキャップがロック付き。今回の試乗では、街中で65km/Lほど、郊外に出かけて70km/L弱といったところだった。

 

幅広の純正キャリアを標準装備。別売りアクセサリーとして、タンデムシートやリアのラゲッジボックスが用意されている。テールランプとウィンカーの丸っこさもスーパーカブシリーズ伝統の親しみやすさだ。

 
 

●スーパーカブ110  主要諸元
■エンジン種類:空冷4 ストロークSOHC 単気筒2バルブ ■総排気量:109cm3 ■ボア×ストローク:47.0×63.1mm ■圧縮比:10.0 ■最高出力:5.9kW(8.0PS)/7,500rpm ■最大トルク:8.8N・m(0.90kgf・m)/5,500rpm ■ 全長×全幅×全高:1,860×705×1,040mm ■軸距離:1,205mm ■シート高:738mm ■車両重量:101kg ■燃料タンク容量:4.1L ■変速機形式:常時噛合式4 段リターン ■タイヤ( 前・後):70/90-17M/C・80/90-17M/C ■ブレーキ(前・後):油圧ディスク(ABS)・機械式リーディングトレーリング ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:グリントウェーブメタリック、バージンベージュ、パールフラッシュイエロー、クラシカルホワイト、タスマニアグリーンメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):302,500 円

 



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2022/10/06掲載