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試乗・解説

モデルチェンジでバージョンアップ 原付ニ種人気、加速してます! Honda CROSS CUB110
警察庁の発表によると、2021年は原付/普通二輪/大型二輪のすべてで
新規免許取得者が前年実績を超えたんだそうです。
中でも「原付ニ種」対象の普通二輪小型限定免許取得者は
12年連続増加で、過去最高を記録!
この小型限定の中で「AT限定」は前年比30%アップなんだって!
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:折原弘之 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■データ協力:二輪車新聞 www.nirin.co.jp ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




小型AT限定で乗れるスーパーカブシリーズ

 発売中の「月刊オートバイ」2022年8月号で、吉本の芸人さん「銀シャリ」の鰻和弘さんのインタビューをさせてもらいました。鰻さん、以前にもお話を伺ったこともあって、ときーどき連絡をくださるんですが、22年の年明けですかね、LINEをいただいたんです。
「免許取りました! バイク買いました!」って。
 実は鰻さん、リトルカブ50のオーナーさん。15年で4万kmも乗り続けてきたヘビーユーザーで、なんと20年近く、クルマの免許どころか原付免許しか持っていない人だったんです。
──お、ついに免許取ったんですね。なに買ったんです?
「それがねー、ハンターカブ買うたんです! YouTube上げたから見といて~」と、巧妙に告知されたんですな(笑)。それで「銀シャリチャンネル【公式】 – YouTube」を見たらなんと、ハンターカブを買ったはいいけど、取った免許は小型免許、それもAT限定!
「ハンターカブ乗りたくて取った免許やからねー。ハンターカブ、小型AT限定で乗れるじゃないですか!」
 インタビューの模様、鰻さんのバイクライフ、詳しくは月刊オートバイ8月号をご覧ください。鰻さんがAT限定小型免許を取って、ハンターカブを買うまでの様子がアップされているYouTube、楽しいですよぉ。
 

 
 鰻さんと必ずしも同じパターンじゃないだろうけれど、2021年に“小型AT限定免許”を取ったユーザーが、過去最高だったんだそうです。小型限定免許は12年連続の増加、前年比22%アップで過去最高を更新、その中でもAT限定は約30%の増加なんだって。つまり、小型限定免許の増加数はほとんどAT免許ってこと! ちなみに小型限定免許の中でのAT限定の割合は約74%なんだそうだ。
 これは、もちろん原付ニ種のAT=つまり125ccスクーターに乗るための小型AT限定免許取得者数増加がメインなんだと思う。けれど、この小型AT限定免許って、クラッチ(操作)のない125ccまでのバイク、つまりスーパーカブファミリーにも乗れちゃうんです! だからハンターカブに乗りたくて小型AT限定免許を取った鰻さん、正解なんです。
 

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://www.youtube.com/channel/UCZmht60DHgMWrQRygE8g7wg

 
 現在のカブファミリー人気ナンバー1といえば、これはハンターカブで間違いないでしょう。けれど、このハンターカブ、大人気がゆえに生産と輸入が追い付かず、さらに22年11月生産分から適用される「令和2年排出ガス規制」対応のため、22年7月現在、受注停止となっています。つまり、買いたくても買えない、乗りたくても乗れない状況が続いているんです。
 さらに、バイク乗りの悪いクセで「街中に増えすぎたら他のバイクに目が行っちゃう」からか、CT125の次、を探している原付二種ファンが少なくない。そんな熱視線の先にいるのが、クロスカブ110です。
 

 
 2013年デビューのクロスカブ110は、18年にフルモデルチェンジを受け、現行モデルのスタイリングに。さらに22年4月にモデルチェンジを受け、新型ロングストロークエンジンを採用し、前後キャストホイールを装着しました。キャストホイールは法規制によってABSを装着しなければならなかったからで、スーパーカブC125と同デザインのホイールをマットブラック仕上げとして装着しています。
 その新型クロスカブ110、走りの印象からガラリと変わっています。新エンジンは現行モンキー125やGROM125と同じ63.1mmストロークで、110ccだけに125cc勢の50mmボアを47.0mmとしています。ミッションは4速から5速になったモンキー&GROMと違って4速のまま。けれど、この新ロングストロークエンジンがスゴくいいんです!
 まずは回転フィーリングが滑らかで、振動がなく、回転フリクションがきれいに取られている印象。旧型からギア比も変更され、ややローギアードに振られているため、ローギアでの発進が力強くなりました。
 ここから4速ミッションを駆使してスピードを乗せていくと、ミッションのつながりがスムーズで、一般道で4速60km/hで走った時の快適性がすこぶるいいんです! 原付ニ種ということで、一般道では周囲の流れと同じ、最高60km/hで流してOKなので、ホンダはこのスピードに合わせてギア比をセットしたんだと思います。
 

 
 1速→2速→3速→4速と、回転を上げてシフトアップしていくのは得意じゃないんですが、カブだもの、ぎんぎんにブン回して走るなんて、似合わないから! 
 その時の車体の安定性も充分で、ハンターカブよりも軽量スリムな車体は、ハンドリングがふらふらしない程度に軽快で、やっぱり60km/hくらいの安定性が気持ちいいんです。
 フロントディスクブレーキは効果充分。確実に制動力がアップして、これは安全性がアップしているし、リアのドラムブレーキもコレで不満に思うことはありませんでした。
 前後キャストホイール採用は、走りがしっかりしたかな、くらいの印象で、街乗りのスピード域では大きな変化とは感じられませんでした。けれど、キャストホイール採用は、チューブレスタイヤを履けるってこと。不意のパンクで修理がカンタンなチューブレスタイヤ装着は、すべてのカブファンの願いでしたからね。
 これで、この取材での実測燃費は、ストップ&ゴーの多い都内で約60km/L、信号の少ない郊外のバイパスで65km/Lといったところ。ガソリン代が200円/Lになったって、カブ乗りのダメージは最小限で済みますね。
 

 
 今回の試乗は、往復300kmほどのショートツーリング。都内から奥多摩を抜けて山梨を回って帰ってくるとき、調子よく走っていたら、道端にネズミ取り(レーダー式速度取り締まり)発見! 気をつけていなかっただけに、あぁぁぁやっちゃったかぁ……と思って進むと「とまれ」旗を持つ警官も、僕とクロスカブをノーケア! あ、見逃したね? ラッキー!と思ったら、実は60km/hくらいで気持ちよく走っていたから、そもそも捕まるスピードじゃなかったんですね。これも原付ニ種の大きな大きなメリットです。

 そしてこの現行クロスカブは、新型エンジン、チューブレスタイヤが履ける前後キャストホイール、フロントディスクブレーキとなって、車両価格は2万円+消費税分のみアップ! 2万円+αのアップに収めるなんて、ホンダってスゴい! クロスカブへの熱視線、ますます強くなりそうです。
(試乗・文:中村浩史)
 
 

 

新たにキャストホイールが採用されたニュークロスカブ110。C125と同デザインで、フロントタイヤはC125よりもワンサイズ太い80/90サイズ。キャリパーはC125の1ピストンに対してクロスカブは2ピストンだ。

 
 

スーパーカブ110と共通のエンジンは、旧モデルよりボアが小さく、ロングストローク化。街乗りスピードでの回転フィーリングが滑らかで振動が少なく、4速ミッションのつながりがスムーズだった。単なるロングストローク化の成果ではなく、ボア×ストローク比=0.74は、CRF250Lの1.38よりもGB350の0.77に近い。参考に、ボアスト比の数字が小さいとロングストローク、つまりドコドコ系テイスティエンジンになる傾向だ。

 

メッキサイレンサーカバーを備える1本出しマフラー。排気音は静かすぎず、110ccなりのちょっと低い重低音を聞かせてくれる。リアブレーキはドラムで、効きに不満は感じなかった。カブなんだからこれでいいのだ。
角型スイングアームにチェーンカバーがカブのスタンダード。チェーンカバーがあるのはチェーン汚れを防止するもので、メンテナンスフリーに近づけられる。タンデムステップ下にチェーン伸び確認窓あり。

 

踏み返し付シーソーペダルは、つま先側で踏んでシフトアップ、カカト側で踏んでシフトダウン。4速まで踏み込んだら、停止しているときのみつま先側(つまりシフトアップ方向)でニュートラルにシフトできる。
旧型に引き続き、小型のLEDヘッドライトを装備。ヘッドライトガードがクロスカブのチャームポイントで、ここにテントやタープのキャンプ道具を積むファンは多い。こんなパイプだけで旅心をかきたてられる。

 

メーターデザインは旧型から大きく変わらず。ただし液晶表示部が加わって、ギアポジションインジケーターが追加された。つい、何速で走っているかわからなくなるカブ系ミッションにはぜひ欲しい機構だ。
積載性の高いリアキャリアも使い勝手よし。タンデムステップ付なので、当然ふたり乗りOKだが、タンデムシートは純正オプションや市販品を購入する必要がある。ラゲッジボックスも純正アクセサリーで用意される。

 

シート高は784mm、軽い車体やスリムなシート幅のため、身長150cm台から苦労はないと思うが、前後17インチのCC110に対し、前後14インチを履くCC50はシート高740mmとさらに低い。シート下は給油口で、シートにロックがないぶん、給油キャップがキーロック式となっている。

 

●CROSS CUB110(8BJ-JA60)主要諸元
■エンジン種類:空冷4 ストロークSOHC 単気筒2バルブ ■総排気量:109cm3 ■ボア×ストローク:47.0×63.1mm ■圧縮比:10.0 ■最高出力:5.9kW(8.0PS)/7,500rpm ■最大トルク:8.8N・m(0.90kgf・m)/5,500rpm ■ 全長×全幅×全高:1,935×795×1,100mm ■軸距離:1,230mm ■シート高:784mm ■車両重量:107kg ■燃料タンク容量:4.1L ■変速機形式:常時噛合式4 段リターン ■タイヤ( 前・後):80/90-17M/C・80/90-17M/C ■ブレーキ(前・後):油圧ディスク(ABS)・機械式リーディングトレーリング ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:マットアーマードグリーンメタリック、パールディープマッドグレー、プコブルー ■メーカー希望小売価格(消費税込み):363,000 円

 



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2022/08/01掲載