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試乗・解説

250ccナンバーワンのアドベンチャーバイク Versysがあるだけで、 どこかに出かけたくなるんです Kawasaki VERSYS-X 250 TOURER
ベースモデルがあって、旅仕様にマイチェン
それが250ccアドベンチャーの標準スペック。
それが、VERSYSではマイチェン具合が大きいんです。
Ninjaべースで、どこまでも走りたくなる旅バイク!
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:赤松 孝 ■協力:カワサキモータースジャパンhttps://www.kawasaki-motors.com/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




250ccとは思えないボリュームのアドベンチャー

「九州までツーリングするならどれで行く?」
 それがぼくのツーリングバイクの評価基準。東京から遠くまで、なら北海道でもいいんだけれど、ぼく九州人ですから(笑)。しかも九州には北海道にはない「行った先のワインディング」がたくさんある、ってのが好きな理由でもあります。
 これまで、ツーリング、イベント、取材と、九州までいろんなバイクで自走していきました。九州まで自走も、大阪まで走ってフェリーで、ってのもあって、最低でも1500km~2000kmくらい走る、言ってみればツーリングバイク評価にうってつけのテストなんです。
 ネイキッドでも、フルカウルでも、ミドルクラスでもビッグバイクでも走りました。なかでも、いちばん快適なカテゴリーといえば、それはもうアドベンチャーです。
 かつてはZZ-R1100からのカワサキや1300ハヤブサといったフルカウルビッグバイクこそ長距離ツアラー、って時代もありましたけど、今はアドベンチャーですね。快適性、積載性、乗り心地、走る場所を選ばないユーティリティも併せて、長距離走るならアドベンチャー、って人は多いと思います。
 

 
 そのアドベンチャーカテゴリーも、ひと回りした感があります。近年、日本でアドベンチャーを早くから標榜していたのは、スズキVストローム650かな。そのうち兄弟車の1000も発売になって、ホンダのアフリカツインが追撃。今は1000ccクラス、650~750ccクラス、400ccクラスにまじって、250ccクラスにもアドベンチャーカテゴリーがラインアップされているほどです。

 その中で、いちばん身近なのは250ccカテゴリーでしょう。きっとアドベンチャーの王様はBMWのR1250GSなんだろうし、もしくはKTMの、その名もずばりアドベンチャー1290。けれど、そんなビッグバイクどころか重戦車クラスのバイクをみんなが持てるわけじゃない。一台で、街乗りもチョイ乗りもツーリングもしたい──そんな、日本中にいるたくさんのバイク乗りは、250/400ccのアドベンチャーで旅の夢を見るはずなんです。
 

 
 このクラスでのアドベンチャーといえば、ホンダCRF250 RALLY、スズキVストローム250、KTM250アドベンチャー、そしてカワサキVERSYS-X 250がある。
 もちろん、どのバイクにもキャラクターの違いがあります。CRF250 RALLYはCRF250Lからの派生ということもあって、オフロードモデル寄りのアドベンチャー、Vストローム250はGSX250Rがベースだけに、オンロードモデル寄り。これは250DUKEから生まれた250アドベンチャーも同じくオンロード寄り。ベースとなるモデルの性格が色濃く残っている印象ですね。
 そしてVERSYS-X 250は、Ninja250がベースなんだけれど、Ninjaから確実に性格を変えてきているのが印象的です。これはCRF250Lから250 RALLY、GSX250RからVストへの変化っぷりよりもかなり大きい。ここまでやると、ベースモデルの印象はかなり薄くなるんです。
 

 
 まずはNinjaの前後ホイールを、キャストホイールからワイヤースポークとして、サイズも前後17インチから前19/後17インチに変更。さらにホイールべースを伸ばして、ボディもひとまわり大きくなって、車重は10kg近く重く、シート高だって上がっています。これが効果デカい!
 走り出してみると、やっぱり250ccとは思えないボリュームがある。これは、Ninjaよりも長距離ランの快適性を上げるための変更で、シート高を上げるのは乗車時にステップとの距離を作ることで、下半身のゆったり感を狙っているんです。
 

 

 エンジンのパワー感はNinjaよりも抑えめです。回転の上下はシャープで、発進トルクから徐々に力があって、高回転の回り方はNinjaの方が上。Ninjaだと7500rpmあたりから高回転へもうひと伸びあるんだけれど、VERSYSは低~中回転域のトルク重視にしている感じです。エンジンの基本設計は同じまま、Ninjaよりもファイナルをショートに振って(ドリブンスプロケットを大きくして)あるのも、低回転での力強さを感じるのかもしれません。
 ハンドリングもかなりVERSYS専用。フロントホイールが17から19インチとなって、キャスターが寝かされてトレール量を増やしていることで、直進安定性をピシッと出しています。もちろん、ワインディングなんかを走ると、Ninjaの方がシャープなハンドリングになるんでしょうけれど、VERSYSのハンドリングは、ゆったりのんびり、ハンドリングだってダルさを感じないくらいに安定性が増している印象。これは、アップライトなハンドルとスクリーンのおかげで、そう感じることもあるんでしょう。
 

 

 フロント19インチに変更したことよりも、ワイヤースポーク化したことも大きいと思います。このおかげで、乗り心地も心なしかソフトに感じます。高速道路で、トップ6速120km/hで9400rpmで走るのもいいけれど、一般道で早め早めにシフトアップして行って、トップ6速60km/hくらいがのんびり、ちょうどいい。トバさずに気持ちよく走れるのも、アドベンチャーのいいところだと思います。
 現行のVERSYS-X 250は、パニアケースとボディガードパイプつきの250ツアラーのみのラインアップ。これもロングランに特化した仕様で、パニアケースが最初から標準装備されているのがありがたい、と思う人も多いはず。撮影用にキャンプツーリングに持って行くテント/シュラフ/マットの「長尺もの3点セット」を積んでみたけれど、左右に張り出したパニアケースのおかげで安定して積みやすかった。キャンツー用のシートバッグを安定して積載できるのも、市販モデルではナンバー1でしょう。「これからキャンツー始めてみたい」って人にはうってつけの標準装備なんだと思います。
 決して速すぎない、スゴすぎない旅バイク。けれどVERSYSが自宅にあるだけで、どっか行きたくてワクワクしちゃう──これがアドベンチャーの良さなんだと思います。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

Ninja250の前後17インチキャストホイールから一転、ワイヤースポークの前19/後17インチに変更。キャスターも寝かされてトレール量も増えているため、ハンドリングは激変している。

 

2017年型までのNinja250をベースとした水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジン。クラッチ操作が軽く、バックトルクリミッター付きのアシスト&スリッパークラッチを標準装備している。

 

マフラーもベースとなったNinjaとほぼ共通。リンク付きモノサスはリアホイールトラベル148mm(=14.8cm)と大きく、ストロークのよさはもちろん、乗り心地が良かった。

 

17L容量のフューエルタンクは、ラジエターシュラウド一体型のボディパネルを採用し、ラジエターを通過する走行風をエンジンに当てない工夫が施されている。参考燃費は約26km/L。
発売当時はスタンダードとX250ツアラーが選べたが、現行はX250ツアラーのみ。ボディガードパイプが標準装備なのも、ちょっとした転倒には心強い。センタースタンドも標準装備。

 

前後一体式のダブルシートはキー開閉で取り外しでき、シート下にはバッテリーやヒューズ類が配置され、リアシート下あたりにETC車載器(別売)の搭載スペースも設けられている。ヘルメットホルダーはシート下のフックにDリングを懸けるタイプ。

 

アルミキャリアとパニアケース、ケースステーも標準装備なのがXツアラー。ボルト固定式でつけ外しがワンタッチでないのが残念だが、ノーマル状態のままでも積載能力は高い。

 
 

リアシート幅よりも広い長尺ものの積載能力も高いXツアラー。パニアケース左右幅は実測で870mmほど。ハンドル左右幅が940mmなので、ハンドルが通る間隔ならばパニアケースもOK。

 

ナックルガードも標準装備。スクリーンは固定式で、走行風の整流は効果が高すぎない、つまり適度に走行風を感じられるもの好感だった。純正オプションでフォグランプもあり。

 

ギアポジション表示つきアナログメーターを中央に、液晶表示を追加。速度計の上にオド&ツイントリップ、下に平均&瞬間燃費、残ガス走行可能距離を表示する。シガーソケット付(※注:写真は、USBAアタッチメントを装着しています)。

 
 

●VERSYS-X 250 TORER 主要諸元
■型式: 2BK-LE250D ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:248cm3 ■ボア×ストローク:62.0×41.2mm ■圧縮比:11.3 ■最高出力:24kW(33PS)/11,500rpm ■最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/10,000rpm ■全長×全幅×全高:2,170×940×1,390mm ■ホイールベース:1,450mm ■最低地上高:180mm ■シート高:815mm ■車両重量:183kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機形式: 6段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-19M/C・130/80-17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:キャンディライムグリーン、メタリックオーシャンブルー ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):726,000円

 



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2022/07/11掲載