レトロポップな車体が特徴だったGPXの「POPZ」。その車体はそのままにGPXが熟成を進めてきた、より信頼の高い空冷110ccエンジンを新たに搭載した新型車が「POPZ110」だ。125ccエンジンを搭載していた前モデルと車体の基本構成は同じだが、カラーおよびグラフィックを変更し、ポップ路線強めの前モデルから、レトロ路線強めへとイメージチェンジが図られている。
タイを始めとする東南アジア各国では、アンダーボーンフレーム車両がポピュラーで、あらゆるブランドがアンダーボーンフレーム車両を展開している。そしてポピュラーであるが故に過当競争は熾烈で、そこで生き残るためにそれらの車両は先鋭化され、パフォーマンスを高めてきた。アジア各国で行われているアンダーボーンのロードレース選手権がその最先端となる。
その中において「POPZ」は異色の存在だ。アンダーボーン車両でレーサーレプリカが開発される市場で、レトロなデザインで登場。新型車「POPZ110」になったことで、そのレトロ路線をさらに強めているからだ。その決断の背景には東南アジアの市場の変化と、GPXのチャレンジがある。日本や欧州の車両メーカーがネオレトロモデルを多数ラインナップすると同時に、ヘルメットやウエアといった周辺アイテムもクラシカルなアイテムが増え、世界中のバイクシーンに“ライフスタイル”という言葉が溢れた。当然のように東南アジアのバイク市場もそのトレンドをキャッチ。GPXも、それに応えたのである。それが前モデルの、ポップ路線強めの125だったわけだが、22年モデルはネオレトロに沸くワールドワイドな二輪市場のトレンドを色濃く反映した形となる。
これは日本市場にもフィットするモデルチェンジと言えるだろう。ホンダCT125ハンターカブの好セールスにくわえ、スーパーカブ110やダックス125と、新アンダーボーン車両や新プレスフレーム車両といったレトロ系車両が発表され試乗が活気づいているからだ。
その「POPZ110」を走らせると、なかなか楽しい。今回の試乗はコンパクトなサーキットであり、そのような状況でついつい熱くなって速く走らせようとするとギクシャクしてしまう部分はあるが、街中での走行を想定したライン取りやギア選択を心がけると、「POPZ110」は気持ち良く走る。ロータリー式の4速ミッションはギア比がワイドで、各ギアで目一杯引っぱって走りたくなるが、それよりも比較的早めのシフトアップで、低い回転域を使って走った方が「POPZ110」には合っている。筆者は自動遠心クラッチに慣れていないので、ペダル操作によるクラッチ機構とブリッピングを利用した滑らかな減速を早々に諦め、少々車速が落ちていても高いギアを維持したまま気にせず走っていたが、それでも“おっ、意外にも車体が前に出る”と感じる場面が多かった。このアンダーボーンの車両は、そんなラフな運転にも応えてくる懐の深さが魅力。「POPZ110」にも、その魅力を感じることができた。
前モデルの125ccから110ccへの排気量ダウンは、小排気量車にとってはネガティな要素となりがちだ。しかしGPXジャパンからの説明では、110ccエンジンはGPXが市場投入している期間も長く、熟成が進んだことで信頼性がより高くなったという。レジャービークルとしてはもちろん、日常の足としても活用される「POPZ110」としては、信頼性の向上は大きな価値となるだろう。
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■排気量:109cm3 ■全長×全幅×全高:1,880 ×745 ×1,070mm ■シート高:760mm ■車両重量:100kg ■燃料タンク容量:4リットル ■変速機形式:ロータリー式4段変速 ■タイヤ(前・後):2.25-17-38P・2.50-17-43P ■ブレーキ(前・後):油圧シングルディスク・ドラム ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:グリーン、オレンジ、レッド、シルバー、ブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):264,000円
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