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試乗・解説

ミレニアル世代が作った デジタルネイティブに向けたモーターサイクルメーカー、GPXに乗る。
タイで2007年に創業した現GPX。ATVから身を興しわずか10年でタイ国内での足場を固める。そんなGPX製のモデルを扱うGPXジャパンから、タイ発信のバイク達に乗りませんか、とお誘いを受け、会場となったミニサーキット(GPライダーの聖地!?桶川スポーツランド)へと出かけたのだ。ところでGPXって? まずはそのあたりからお話を始めよう。
■文・松井 勉 ■写真:GPX JAPAN ■協力:GPX JAPAN https://www.gpxjapan.co.jp/




150平方メートルからスタート。

 GPXは2007年、ATVパンサーというブランド名でタイ国内としては初めてとなるATVサプライヤーとしてスタートを切った。輸入ディーラーから開始し、自社でもATVの生産を開始。ユニークなのは創業者のチャイヨウさんが当時若干21歳だったこと。エンジニアとして、商売人としてきっと素晴らしい仲間もいたのだろう。投資家も必要だったろう。しかし、ここから短期間で後にGPXとなるこのブランドは角度にして30度から45度の勢いで成長を開始するのだ。最初に借りたファクトリーの面積はわずか150平方メートルにすぎなかった。

 2008年、彼らは「今、タイに必要なのはモトクロッサーだ」とのマーケティング結果からの方向性を掴み、小さなオフロードバイクの開発にとりかかる。早速手狭になったファクトリーは800平米に拡大。2009年にパンサー・ジャンパーの名前で最初のバイクをリリースする。同時にタイ国内に10のサービス拠点と、遊び場たるMXコースのサポートにも乗り出した。

 2010年にはタイモーターショーに参加し、順調に販売を伸ばす製品販拡のため、第二工場を稼働させる。また、ここでGPXブランドを立ち上げ、ショールームをオープン。翌年にはボンバーというATVのアッパークラスモデルをリリース。継続的に続けているモトクロスコースへのサポートを増やし、サービス拠点も80箇所まで増やしている。ここまでまだ3年。凄い勢いだ。
 

 

5年目にして創業時の100倍以上のファクトリーを確保。

 2012年には100億バーツ(約346億円)の投資を受け16,000平米の第三工場を設立。タイ工業規格も取得し、この年にはGPXサンダーX125をリリース。
 ショールームを増やし、サポートするモトクロスコースは30を数えた。2013年には水平シリンダー125㏄エンジンを搭載したデュアルパーパスモデルをリリース。その後200㏄クラスを加え、ネイキッド、ダートバイクなどスタイルも多様化したラインナップを構成する。
 2016年のタイモーターショーでは会場でのプレオーダーが1100台を越えた。日本メーカーが圧倒的な強さを持つタイで、ついにシェア上位に躍り出る。

 2017年にはATVパンサーという社名をGPモーターへと改名。それまでのGPXレーシングというブランド名もGPXと今に続くものへと改称された。そして2018年には海外への輸出も視野に入れ、35,000平米の工場を新興工業団地、ゲーターウエイ地区に建造。アジア地区を中心にGPXは輸出を伸ばす計画がスタートする。日本もその例外ではなく、代理店は、大阪のマフラーコンストラクターとして有名な月木レーシングが母体となるGPXジャパンが行うことになった。

 本国ではオートマチック(スクーター)、スポーツ(レーサーレプリカ、ネイキッド)、クラシック(ネオクラ系)、ファミリー(アンダーボーン的モデル)の4カテゴリーがある。その中から、現在日本向けに用意されるのがスポーツカテゴリーからデーモンGR200Rという200㏄単気筒スーパースポーツ、その弟分のデーモン150GR FIが。クラシックカテゴリーからは、レジェンド250ツイン1、レジェンド250ツイン2、そしてレジェンド150FI、レジェンド150 、ジェントルマンレーサー200の計7モデルが入荷している。
 

 
 今回試乗できたモデルはこのうちデーモンGR200R(47万800円)、レジェンド250ツイン1(45万9800円)、レジェンド250ツイン2(48万7300円)、そしてレジェンド150FI(34万9800円)の4台。バイクに興味はあるけど高いバイクには手が出ない、という特に若いライダー予備軍、もちろん既存のユーザーやリターンにも、タイでの成功同様、ローコストで走る楽しさをしっかり提供したい、という願いが込められている。

 また、デーモンGR200Rをベースにしたワンメイクレースも行われていて、そのコンプリートマシンも用意される。ベビーフェイス製バックステップ、月木レーシング製専用マフラー、サブコン、レースレギュレーションに則ったフェアリングアンダーカバーなどを装備したレースレディーな状態で販売価格は55万円。桶川スポーツランド、鈴鹿ツインサーキット、SPA直入にてGPXチャレンジカップが組まれている。

 月木レーシングではレンタル参戦のサポートも行っており、レンタルフィーは5万円のデポジット+2万円以内だというから、これまたリーズナブル。もちろん、転倒などで損傷が無ければ5万円は返金されるし、5万円以上の損傷があれば、その場合は負担額が増えることになる。
 レース参加にはレーシングスーツなどの装具や、レンタルしたバイクをサーキットに運ぶトランスポーターも必要だから、車両さえレンタルすればオーケイ!とはならないが、モータースポーツのスターターとしては身近な存在だと言える。

 さて、タイのGPX、乗ったらどうなのかは、パート2でお届けします。
(文・松井 勉)
 

DEMON GR200R

 

上下に2つ排気口があように見えるデザインのサイレンサーは単気筒らしいサウンドを奏でる。リアブレーキはウエーブタイプφ220mmとなる。リアサスはマルチリンクタイプ、ショックユニットはYSS製を採用。プリロード調整が可能だ。
倒立フォークとボディー同色のホイール、キャリパーがスピード感を演出する足周り。フロントブレーキディスク径はφ276mm。それを2ピストンキャリパーが挟む。

 

カラーモニターがオシャレなデーモンGR200R。回転計、速度計を中心に時計、トリップ、オド、気温、燃料計など見やすく配置。
トップブリッジ下にハンドルバーがあるクリップオンタイプ。幅、絞りにはゆとりがあり、市街地走行でも前傾はきつくなさそう。レーシーなイメージのライダービューがそこにある。

 

燃料タンク容量は11リットル。エアロプレーンキャップスタイルだ。タンク両肩にはハングオンしたときに膝のホールドを高めるような形状になっている。最近の膝スリポジションへも対応している印象だ。
200という排気量から想像する狭さは感じなかったシート。サーキットオンリーだったので長時間での乗り心地は判らなかったが、ポジションは快適に取れた。

 

テールセクションを含め攻めたデザインを採用する。世界のスーパースポーツモデルが持つかっこよさのエッセンスを取り入れた印象。テールランプ、ブレーキランプもLED。
LEDのヘッドライトはカウル左右のこの位置に。アッパー周りに重たいものを搭載しない、というハンドリング重視のセットにも思えた。

DEMON GR200R RACER

タイヤはダンロップ製に交換されている。サスペンション、ブレーキなどはノーマルのまま。オイルキャッチを兼ねた構造のアンダーカウルを取り付ける。

 

ベビーフェイス製バックステップ。キットバイクの価格を考えると、こうしたパーツが着くだけでも驚く。パーツ単体ではこれだけで54,450円。4つのポジションから選択が可能だ。まずこれが着いているだけで相当レーサーの完成度が高い印象があった。

 

コンプリートマシンに装着される月木レーシング製レース用エキゾーストキット。歯切れの良い音とパワー特性も向上させているという。
アッパーカウルはこのようにゼッケンスペースの確保が容易なスタイル。シングルシートカバーにサイドゼッケンが張られている。

 

●DEMON GR200R 主要諸元
■型式:GPGR200A ■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒SOHC ■総排気量:198cm3 ■ボア×ストローク:–×–mm ■圧縮比:11.0 ■最高出力:13kw/8,000rpm ■最大トルク:17.2N・m/6,500 rpm ■全長×全幅×全高:2,020 × 747 × 1,145mm ■ホイールベース:1,350mm ■シート高:815mm ■車両重量:155kg ■燃料タンク容量:11L ■変速機形式: 6段リターン ■タイヤサイズ前・後:100/80 R17・ 140/70 R17 ■ブレーキ(前/後):シングルディスク/シングルディスク■車体色:レッド、ブラック、グレー ■メーカー希望小売価格(消費税込み):470,800円

 

LEGEND150FI

 

空冷149cc 4ストローク単気筒エンジンを搭載。ケース、シリンダー、シリンダーヘッドまでオールブラックで統一。ステップは低い位置でバンク角は意外に浅かった。

 

35万円のバイクにして倒立フォークとフロントフェンダーステーの造り込みなどしっかりカスタムテイストを練り込んでいる。アクスルホルダー、フォークアウターもホイール周りの色に合わせた黒で統一。
リアブレーキはドラム。2本のリアショックはYSS製を採用。ホイール関係はリム、ハブ、スポークもブラックフィニッシュで統一。丸形マフラーはなかなかのサウンド。

 

広めのハンドルバー、丸形のデジタルメーターパネル、シンプルな中にも各部にクオリティー感を持たせたパーツを使いレジェンドの名に恥じないハンドル周りを作る。
シンプルかつ色分けして見やすい表示が特徴的なメーター。色分けして見やすい表示が特徴的。

 

丸形ライトでレトロを演出しつつ上下に分けたレンズの間に導光帯で光らせる手法をつかっているのが新しい。LEDライトを採用する。
テールランプはフェンダーの上に置かれたバレット形状のハウジングを持つもの。ウインカーの配置を含めてレトロをしっかりモチーフとして見る側に伝えてくる。

 

燃料タンク容量は12リットル。遠出にも困らないだろう。
一体型でライダースペースをしっかり採ったシート。タンデム部分はキックアップした形状になっている。

 

●LEGEND 150FI 主要諸元
■型式:GPLG150A ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC ■総排気量:149cm3 ■ボア×ストローク:–×–mm ■圧縮比:9.2 ■最高出力:10.5kw/8,000rpm ■最大トルク:13.5N・m/6,500 rpm ■全長×全幅×全高:2,025 × 785 × 1,100mm ■ホイールベース:1,315mm ■シート高:780mm ■車両重量:143kg ■燃料タンク容量:12L ■変速機形式: 6段リターン ■タイヤサイズ前・後:100/80 R17・ 140/70 R17 ■ブレーキ(前/後):シングルディスク/ドラム ■車体色:ブラック、マットブラック、グレー ■メーカー希望小売価格(消費税込み):349,800円

 

LEGEND 250TWIN 1

 

エンジンは並列2気筒でわずかに前傾角を付け、バーチカルシリンダーにはないモダンさを演出。吸気側と排気側のポートはストレート。空冷360度クランクを採用するエンジンは、快音レベルの排気サウンドも魅力。

 

大きなオイルクーラーを備えるレジェンド250ツイン。250クラスが上級モデルになるタイらしく、フロント周りのどっしりとしたスタイルはなかなか。ダブルディスクを備えるネイキッド250って凄い!
YSS製2本ショックを採用する。リアディスクはシングルピストンキャリパーとの組合せ。前後とも17インチホイールを採用。

 

ツイン1の特徴はクリップオンハンドルをトップブリッジ上に装着しているところ。単眼のメーターはLCDモニターを採用。バーエンドミラーが標準装備。
回転計、速度計、燃料計、インジケーターという構成のシンプルなメーター。昼間でもしっかり確認できるのが特徴だった。

 

フロントフォークの間にネームプレートが入る。80年代前半までのホンダ車などにも見られたディテール。ヘッドライトはLEDを使用。上下に分けたレンズの間を導光帯で作ったH型で仕切るのがレジェンド流。
バレット型ケースのテールランプ。光源は多球のLEDを使ったもの。ウインカーはレジェンドシリーズお決まり、リアフェンダーから生える仕様だ。シートエンドのグラブバー、その上に刺繍入りシートエンドなど細部まで拘りがある。

 

丸みと盛り上がり、長さやニーグリップ部との抑揚。燃料タンクは14.5リットルの容量を持つ。膝とラバーの密着感がある。
細身のライダーエリアは足着き性も考慮。パッセンジャーシート部を短くしているのもデザイン上の特徴だ。

 

●LEGEND 250TWIN 1 主要諸元
■型式:GPLG250A ■エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC ■総排気量:234cm3 ■ボア×ストローク:53.0×53.0mm ■圧縮比:9.2 ■最高出力:12kw/8,000rpm ■最大トルク:15N・m/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,040 × 800 × 1,040mm ■ホイールベース:1,340mm ■シート高:790mm ■車両重量:154kg ■燃料タンク容量:14.5L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤサイズ前・後:110/90 R17・130/90 R17 ■ブレーキ(前/後):ダブルディスク/シングルディスク■車体色:レッド、ブラック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):459,800円

 

LEGEND 250TWIN 2

 

並列2気筒234cc空冷エンジン。スムーズかつ滑らかさが印象的。かつてのホンダRebelの250、2気筒エンジンのような風合いがある。

 

φ38mmのインナーチューブを持つ倒立フォーク。17インチの前後にはファット感を持たせたタイヤを装着。倒立フォークのアクスルホルダー部分からステーで支えるフェンダーがカスタム風味を出す。
丸形のメガフォンタイプサイレンサー。高めのトーンが特徴的な音が印象的。YSS製のリアサスにはサブタンクが装着されている。リアブレーキはシングルピストンキャリパーを装備。

 

レジェンドツイン2はバーハンドルを装着。よりリラックスしたライディングポジションが特徴。ミラーはバーエンドではなくコンベンショナル装着方法。ミラーそのものはカスタムミラー風な丸形のものが採用されている。
メーターはツイン1と同様。速度、回転計、燃料計とインジケーターを備えたシンプルなもの。

 

ヘッドライトは上下に分かれたビームを備える丸形ライト。光源はLED。H型の白いパートは導光帯的なもの。
テールランプはバレット型のケースにレンズを取り付けたもの。シンプルさが印象的。ウインカーもテール相似形サイズのような形状をもつ。シートエンドにはレジェンドの刺繍入り。

 
 

燃料タンク容量は14.5リットル。ブリティッシュビンテージ系を模範としたような美しいカタチが特徴。タンクパッドは標準装備。
シートはレジェンドシリーズ共通のスタイル。タンデムシート部分がややタイトな造りで、シートエンドまでをぐるりと回るグラブバーが備わる。シート高は790mm。

 

●LEGEND 250TWIN2 主要諸元
■型式:GPLG250A ■エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC ■総排気量:234cm3 ■ボア×ストローク:53.0×53.0mm ■圧縮比:9.2 ■最高出力:12kw/8,000rpm ■最大トルク:15N・m/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,040 × 785 × 1,120mm ■ホイールベース:1,340mm ■シート高:790mm ■車両重量:156kg ■燃料タンク容量:14.5L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤサイズ前・後:110/90 R17・130/90 R17 ■ブレーキ(前/後):ダブルディスク/シングルディスク■車体色:グレー ■メーカー希望小売価格(消費税込み):487,300円


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2021/07/02掲載