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試乗・解説

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4月に開催された発表会で“真打ちの登場”と紹介したハーレーダビッドソンの新型車「ナイトスター」のデリバリーが、いよいよ開始された。それに先立ち、報道機関向けに試乗会が行われた。ここでは、その「ナイトスター」の試乗レポートをお届けする。
■試乗・文:河野正士 ■写真:Harley-Davidson Japan ■協力:Harley-Davidson Japan






 これぞスポーツスターである。いや正確には、スポーツスターのスタイリングやパフォーマンス、そして初心者からベテランまでをハーレーダビッドソン(以下HD)の世界へと導き、また欧州および日本の車両メーカーが造るスポーツバイクとは異なる、アメリカンスポーツバイクの世界を楽しむことができる、スポーツスターDNAの継承者である。
 

サイドスタンドから車体を起こしたときに感じた車体の軽さは、走り出しても変わらない。いや軽いハンドリングや、トルクフルで伸びやかなエンジンのフィーリングを感じることで、ナイトスターの軽快さはさらに際立った。

 
 そう感じた一番の理由は、軽快なハンドリングだ。旧スポーツスターはステアリングヘッド位置が高く、それを左右に倒すことで自然にフロントタイヤに舵角がつき車体の向きが変わっていく独特の軽快感があった。対してナイトスターはそれよりもずっと低い位置にステアリングヘッド位置があるが、同様の、いや、それ以上の軽快感を感じることができる。
 

 
 左右への車体の切り返しの軽さはスポーツスターSにもあったが、車体の傾きに対して自然にフロントタイヤがコーナーに向かっていくハンドリングは、ナイトスターの方が明快で自然だ。これはフロントに19インチホイールを装着したこと、またトップブリッジとアンダーブラケットのオフセット量を変更してスポーツスターSよりもトレール量を減らしたこと、そして燃料タンクをシート下に移動したことによるマスの集中化と低重心化が大きく効いている。

 もちろん車重も軽い。車両重量はスポーツスターSと同じ221kg。現在HDがラインナップする排気量1200ccの旧スポーツスター系モデル「フォーティエイト」は247kg。21年モデルとしてラインナップされた排気量883ccの「アイアン883」が256kgであったことを考えると、ナイトスターは圧倒的に軽い。その軽い車体に対し、燃料タンクをシート下のライダーに近く、そして低い位置に搭載することで、サイドスタンドから車体を起こした瞬間にその軽さを感じることができる。なおかつスポーツスターSよりも60mm低い、705mmというシート高によって身長170cmのライダーの両足がべったりと地面に付く安心感とが相まって、車体はさらに軽く感じるのである。
 

ハンドル位置がやや遠く、またシートも後シリンダーのさらに後方に配置されている。せり上がったシートエンドに腰を当てる着座位置ではなく、シートの先端に座ると遠いハンドル位置はやや改善されるが、加減速を繰り返すと、シート後ろに腰がずれてしまう。

 
 またスポーツスターSが、リアにリンク式モノショックと鋼管を組み合わせたスイングアームを採用していたのに対し、ナイトスターはそのリンクがあった場所に燃料タンクを配置し、かわりにシンプルな角形鋼材を使用したスイングアームと2本サスを採用した。それによりホイールベースは、スポーツスターSからは25mm/フォーティエイトからは55mm/アイアン883からは35mm伸びている。しかし今回の試乗で、長くなったホイールベースのネガを感じることはなかった。それはフロント周りのディメンション、さらにはスイングアーム長が長くなったことでフロント荷重が増えていることなどが影響しているだろう。
 

 
 もうひとつ大きな要因は、エンジンだ。個人的には、スポーツスターSに採用されていたレボリューションマックス1250Tよりも、排気量が小さくなったにもかかわらず、ナイトスターが搭載したレボリューションマックス975Tの方が好みだった。全域にわたって軽いふけ上がりと強力なトルクによってワープするかのように加速していく1250Tエンジンに比べ、旧スポーツスターの4カムエンジンとは違うが、Vツインらしさが増しているように感じた。しかしそれは、HDの全モデルが共通して持っている、シリンダー内爆発と、それによって回転する重いクランクによって発生する重々しいトルク感とは違い、トトットトッ、と軽やかな爆発感とともにグイグイ車体が前に押し出されていく、ナイトスター独自の軽い鼓動感に好感が持てたからだ。

 そしてエンジン回転が上昇し、可変バルブタイミング(以下VVT)が高回転側に切り替わる感覚も分かりやすい。それまでグイグイと車体を前に押し出していたトルクに溢れた低回転域から、ある領域を越えるとエンジン回転が軽く伸びやかになり、さらに車体まで軽くなったような感覚で加速するのである。バルブタイミングが変わるタイミングは、エンジン回転だけに依ることなく、車速やエンジンへの負荷などによって総合的に判断される。排気量や車体が変更されたナイトスターは、専用のエンジンコントロールユニットがそれを制御しているという。同様の感覚は1250Tエンジン、さらにはパンアメリカが搭載した1250エンジンにも存在していたはずだが、私自身はこの975Tエンジンの方が明快に感じられたことでテクノロジーを感じることができたことも、好感を持った理由のひとつだ。

 これは、ナイトスターが搭載したレボリューションマックス975Tエンジンが、吸気側しかVVT機構を搭載していないこと、シングルスパークであること、それらの変更に合わせて3つのバランサーすべてのバランスを変更していることも、影響しているだろう。
 

 
 なぜ可変バルブタイミング機構を吸気側のみとしたのかについては正式見解が出ていない。しかしHDジャパンのテクニカルディレクターからは、機構そのものは1250Tと同じで、その制御を変更していると説明を受けた。またそのときに得たさまざまな情報を総合すると、ナイトスターの場合は排気量や吸排気系の変更によって、排気側のVVT機構は、吸気側ほどエンジン性能に影響を与えなかったのではないか。そして環境性能についてもVVT機構を必要とせずとも、各国の規制をクリアできると確証が得られたのではないか。そうなれば排気側のVVT機構を廃止しシンプルなカムシャフトにすることで部品点数を減らすことができる。それによって故障のリスクを下げるとともに、シリンダー上部で高速で回転するパーツを減らすことで慣性マスを減らし、とエンジンレスポンスへの影響力も減らすことができると考えたのではないだろうか。

 いずれにせよナイトスターは軽量な車体と軽快なハンドリング、そしてトルクと高回転の伸びを手に入れた新しいエンジンによって、スポーツスターのDNAを受け継ぎながら、アメリカンスポーツバイクの世界を広げたと言える。先に発売したスポーツスターSが、デリバリーが始まった今年1月からたった4ヵ月で1000台を超える国内登録台数を記録したことを考えると、ナイトスターも、瞬く間に入荷待ちの張り紙が張り出されるかもしれない。
(試乗・文:河野正士)
 

フロントフレームは、ブラケット類の変更以外、スポーツスターSと共通。ステアリングヘッドアングルも共通だ。しかし三つ叉周りの変更でトレール量を減らし、長くなったホイールベースや19インチフロントホイール装着に対応している。

 

ライダーの身長は170cm、体重は70kg。両足のカカトがしっかり地面に着き、それでもなお、両ヒザに余裕がある。真横からの写真を見ると後シリンダーのさらに後方にシートがあるのがよく分かる。もう少し前に座ってハンドルを近づけたいのと、ミッドコントロールの恩恵を享受したい。

 

前後足周りを変更した新型「ナイトスター」。スイングアームが長くなり、それによって車体全体も長くなっているが、フロント周りのホイールベースに対するフロントアクスルとクランク軸の距離が縮まり、フロント荷重が増えている。
フレームは、スポーツスタートS同じく、エンジンをメインメンバーとして使用し、シリンダーからフロントフレームが前に伸びるような形状を採用している。

 

排気量975ccのレボリューションマックス975Tエンジン。エンジンの大きさそのものはスポーツスターSやパンアメリカ1250とほとんど同じ。
低回転域と高回転域でバルブが開閉するタイミングを変化する可変バルブタイミング機構を、吸気側にのみ採用。排気側は一般的なカムシャフトを使用。

 

フロント19インチホイールにくわえ、41mm径のデュアルベンディングバルブを採用したSHOWA製正立フォークを新たに装着した。
2本タイプのリアサスペンションと、それに合わせたスイングアームを採用。リアタイヤはスポーツスターSと同じ16インチながら幅の狭い150サイズのタイヤをチョイス。

 
 

灯火類はすべてLED。ヘッドライト周りには低く構えたビキニカウルを装着する。ヘッドアングルは同じながら、トレール量はスポーツスターSから11mm短い。
バーエンドミラーを採用。それによってハンドルよりも高い位置に何も無いライダービューを造り上げている。

 

チェンジペダルのストローク量は小さく、試乗した車両は走行距離が少なくミッションが硬い印象があったが、ギアの入りは良好だった。
ペダル位置は“ミッドコントロール”と呼ばれる位置にある。しかしシート位置が後ろに下がっているため、それほどミッドと言えるバランスではない。

 

●Nightster
■エンジン種類:可変バルブタイミング機構付き水冷4ストロークV型2気筒DOHC REVOLUTIONMax975T ■総排気量:975cc ■ボア×ストローク:97×66mm ■圧縮比:12.0 ■最高出力:89HP(66kW)/ 7,500rpm ■最大トルク:95Nm/5,750rpm ■全長×全幅×全高:2,250×──×──mm ■軸距離:1,545mm ■シート高:705mm ■車両重量:221kg ■燃料タンク容量:約11.7L ■変速機形式: 6段リターン■タイヤ(前・後):100/90-19 57TH・150/80B16 77H ■ブレーキ(前/後):シングルディスク+4ポットキャリパー/シングルディスク+2ポットキャリパー ■懸架方式(前・後):正立型テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,888,700円~

 



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2022/05/25掲載