真打ちの登場である。日本でハーレーダビッドソン(以下HD)をここまでメジャーにした立役者であるライトウェイトモデル/スポーツスターの次世代モデルが発表された。新型スポーツスターとして、昨年7月に発表され、今年1月から日本でのデリバリーが開始となった「スポーツスターS」は、言ってみれば、この「ナイトスター」の発展型モデルだ。フロント19インチホイール、ピーナッツタンク、リア2本サスペンションという、HDスポーツスターの伝統的なディテールを受け継いだ「ナイトスター」こそ、正統派スポーツスターの継承者というわけだ。
もちろんこの発表の順番も、HD本社が入念に計算したものだろう。
先に登場した「スポーツスターS」は、それよりも先に発売した「パンアメリカ1250」と同じ、低回転域と高回転域でバルブタイミングを変化させ、異なるエンジンキャラクターを共存させる可変バルブタイミング機構を搭載した挟角60度水冷DOHC4バルブエンジンながら、「スポーツスターS」のキャラクターに合わせて開発した“レボリューションマックス1250T”を搭載。その“T”はトルクを意味し、パンアメリカ1250用エンジンから圧縮比を下げると同時に、低中回転域でよりリッチなトルク特性を与えることで、フロント17/リア16インチホイールに極太タイヤを装着した、ボバーと呼ぶスタイルにマッチしたキャラクターを与えていた。
そして、今回発表した「ナイトスター」は、同じレボリューションマックス系エンジンでありながら、ボアもストロークも変更し、排気量を975ccとした専用エンジン“レボリューションマックス975T”エンジンを搭載している。
その排気量のバリエーションからも分かるとおり、これまでの883スポーツスターのようにスポーツライディングからエントリーまで幅広い用途とライダーを包括する、スポーツスターのド定番モデルを「ナイトスター」が、その定番スポーツスターから発展した、世界中のクルーザーカテゴリーに影響を与えたスポーツスター・フォーティエイトのようなファクトリーカスタムモデルを「スポーツスターS」が担ったのだ。
新世代スポーツスターを謳うならば、メカニズム的にもスタイリング的にも、登場時に大きなよりインパクトのある「スポーツスターS」が相応しかった。それは、伝統的なスポーツスター的ディテールを受け継いだ「ナイトスター」が登場して、はじめて理解することができた。それだけ「ナイトスター」の佇む姿は、スポーツスター然としているのである。もし最初に「ナイトスター」が登場してたら、カタチを似せたことに意識が集中してしまい、スポーツスターとしての進化の大きさ、そしてそれを引っ提げて新しい一歩を踏み出そうとするHDの気合いを、過小評価していたかもしれない。
HDジャパンは、いま絶好調である。2022年に入り、1~3月の登録台数は昨年比で約1.7倍。HDジャパンの歴史においても過去2番目に高い登録実績だという。それに後押しされるように、昨年4月から今年3月までの2021年期の販売実績は、HDジャパンとして約6年ぶりにプラスに転じたという。
HDジャパン代表取締役の野田一夫氏は、その好調の要因は、新型車の好評価にあるという。大阪/東京/名古屋で開催されたモーターサイクルショーにも展示した新しい2022年モデルのなかには、4月の段階で既に完売しているモデルもある。
そして新しいレボリューションマックスエンジン搭載した新生HDモデルたちも好セールスを力強く下支えしているという。昨年夏から国内デリバリーを開始した、HDとして初となるアドベンチャーモデル「パンアメリカ1250」はセグメント2位の登録台数を記録するとともに、第4回日本バイクオブザイヤー2021/外車部門で最優秀金賞を獲得。また「スポーツスターS」は、東京モーターサイクルショーのプレスカンファレンスで1~3月で約900台の登録台数を記録していると発表されたが、それから約1ヶ月が経過し、その数字は1000台を超えたという。
そんな追い風の中で登場したのが「ナイトスター」だ。親しみやすいスタイルと車格は、パンチの効いた「スポーツスターS」よりも幅広いキャリアやキャラクターを持つ、多くのライダーにアプローチできるだろう。すでに純正アクセサリーも開発され、ツーリングブームの日本市場にピッタリのアイテムもラインナップされている。
さらには、モデル発表と同時にナイトスター・カスタムプロジェクトを発表。HD本社が北米/欧州/アジア地域から選んだ6人のカスタムビルダーが参加し、順次、完成した車両を発表。カスタムバイクに代表されるライフタイルシーンにもアプローチしている。日本からはヒデモーターサイクルの冨樫秀哉が参加。完成したばかりの車両が、東京での発表会会場に展示され大いに注目を集めていた。
「ナイトスター」はすでに予約受付を開始。日本でのデリバリー開始は5月を予定している。その乗り味を試すことができるのも5月以降になりそうだ。
■エンジン種類:可変バルブタイミング機構付き水冷4ストロークV型2気筒DOHC REVOLUTIONMax975T ■総排気量:975cc ■ボア×ストローク:97×66mm ■圧縮比:12.0 ■最高出力:89HP(66kW)/ 7,500rpm ■最大トルク:95Nm/5,750rpm ■全長×全幅×全高:2,250×──×──mm ■軸距離:1,545mm ■シート高:705mm ■車両重量:221kg ■燃料タンク容量:約11.7L ■変速機形式: 6段リターン■タイヤ(前・後):100/90-19 57TH・150/80B16 77H ■ブレーキ(前/後):シングルディスク+4ピストンキャリパー/シングルディスク+2ピストンキャリパー ■懸架方式(前・後):正立型テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,888,700円~
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