三重県の鈴鹿サーキットで「ホンダレーシングサンクスデー2021-2022」が行われた。今回で13回目の開催となるホンダレーシングサンクスデーは二輪、四輪を問わず国内外のレースで活躍するホンダが、モータースポーツファンに感謝を込めて贈るファン感謝祭だ。2020年は新型コロナウイルス感染拡大のためオンラインで開催されていたが、2021年は残念ながら中止となり、今年は2年3か月ぶりにファンを迎えての開催となった。国内外のレースで活躍中のドライバー、ライダーたちと監督を含め33名が参加した。新シーズンへと繋がる「2021-2022」と題され、カテゴリーを越えてコラボレーションするホンダならではのコンテンツでファンを楽しませた。
ホームストレートで行われたオープニングセレモニーでは、ホンダの三部敏宏社長が登場、コース入口で、全ドライバーとライダーを迎える演出。三部社長を真ん中に整列し、今年から二輪・四輪体制を変更してモータースポーツ活動は「HRC」の名の下で行うことを改めて宣言した。三部社長は「昨シーズンは二輪、四輪あわせてチャンピオン獲得ならびに好成績を挙げることができました。今シーズンは二輪と四輪をあわせた新生HRCのもと、二輪・四輪、参加するすべてのカテゴリーにおいてチャンピオン獲得を目指していきたいと思います」と挨拶した。
四輪では今年発売予定のCIVIC TYPE Rプロトタイプが鈴鹿サーキットで世界初走行のサプライズがあり、今季仕様のNSX-GTが登場。グランドスタンド裏のGPスクエア会場では、2021年F1トルコGP仕様のレッドブル・ホンダ日の丸カラーと、角田裕毅がドライブしたアルファタウリ・ホンダが展示。二輪ではHRCワークスマシン展示、なりきりMotoGP、なりきりトライアルライダーなどのコーナーやオリジナルポケットバイク74ダイジロウの試乗などが行われた。
二輪のロード、モトクロス、トライアルライダーがペアを組みキッズバイクで競争する「Honda Racing MOTO FIGHTERCUP」では、全日本ロードの作本輝介とモトクロスの大倉由揮組が優勝。カートでは二輪、四輪のライダー、ドライバーチームが戦う「Honda Racing KART ATTACKER CUP」が行われ、ポールポジションはブリティシュスーパーバイク(BSB)の高橋巧が獲得し、スーパーGTのドライバー大津弘樹と組んで高橋/大津組がポールトゥウィン。
「HRC-MOTO Cup」では、作本、水野涼(BSB)、長島哲太(ホンダテストライダー)、名越哲平(全日本ロード)と目まぐるしくトップが変わる熱戦を見せ長島が優勝。「e:Bike Cup」ではトライアルやモトクロスライダーもロード用のツナギに着替えて参戦、ル・マン式スタートで挑んだ。スタート直前まで、ライダーは榎戸育寛(全日本ロード)の周りに集まりスタートを遅らせようとじゃれ合うなど、普段見ることの出来ないライダーたちの姿があった。スタートから数台がコースアウトしてダートを走ったり、ショートカットしたりと、ハチャメチャなレースを制したのは作本だった。実況解説は作本の監督である伊藤真一で「本番でも勝ってもらいたい」と激励を受けた。
作本は「参加出来たことが嬉しいですね。バイクでは大倉選手と組んで勝てましたし、そんなふうにジャンルの違うライダーや、ドライバーと交流出来たことが楽しく嬉しかったです。ふたつのイベントで優勝しましたが、本番の全日本で勝てるようにと思います」と語った。
名越は「呼んでもらえたのが、初めてなので参加出来たことが嬉しいですね。e:Bikeでは、エンジン音がないので、隣を走っている人の声が聞こえるんです。初めての経験で面白かったです。全日本ロードを走るライダーたちとは、普段はピリピリしているけど、こんなふうにリラックスしていられるのは、イベントならではだなと思いました。自分たちも楽しんでいる雰囲気がファンの人にも伝わったら嬉しいです」と語った。
榎戸は「全部が楽しい。普段は交流することのない人達と一緒に楽しむことが出来た。こんなふうにバイクを楽しむエンジョイ系のイベントが、多く出来るようになれたらと思います」と語った。
「Honda Rider’s Show Run」では、今季からJSB1000に挑戦を開始する作本、榎戸、2年目となる名越、ST1000の渡辺一馬が登場。BSBの高橋巧、水野涼に加えて、MotoGPマシン開発ライダーの長島哲太がコースイン。ファンの前を独特のサウンドを響かせ疾走した。
水野は「昨年は海外にいたので、日本のファンの人達の前で走ることが出来たのが嬉しいです。二輪四輪が揃うのはホンダならでは、ホンダしか出来ないことなので、そこに参加出来ていることが最高です」と言えば、高橋は「2年ぶりのイベントなので、開催出来たことが嬉しいです。カートでは勝てましたし、参加出来た全てが楽しかった。ファンの人と盛り上がることが出来たと思います」と語った。
長島は「世界最高峰のMotoGPマシンのRC213Vの開発に関わらせて頂いていること、それをライディングしてファンの前に出られたことを光栄に思う。ライダーとして、また、皆の前に帰って来たい」と熱く語った。
ホンダはモータースポーツ文化を創造する企業として、多くの人の夢を叶え、育て、伝承してくれていることを感じるイベントでもあった。三部社長を中心に一列にドライバー、ライダーが並ぶ姿は壮観で、このパンデミックがなければ、海外勢も参加していただろうことを思うと、その壮大さが増す。多くのファンが、感染対策をし、鈴鹿に駆けつけ、粉雪が舞う寒さの中で、ホンダの赤い旗を振っていた。何より、三部敏宏社長の「全てのカテゴリーにおいてチャンピオンを目指す」という言葉に、新生HRCによって、強いホンダの復活を感じたことがファンの喜びだったに違いない。
(レポート:佐藤洋美)