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試乗・解説

変わらないことが信頼 変わらないことがスーパーカブ Honda Super Cub C125
GROM、モンキー125と同様に
スーパーカブC125も新ロングストロークンジンを搭載
ミッションは自動遠心4速のまま
「変わらない」良さをキープしてくれたのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:赤松 孝 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




ミスタージャイアンツとスーパーカブ

「昭和30年代から40年代にかけて、高度経済成長期に爆発的に普及したテレビの中で躍動した国民的スーパースター」と、作家・中溝康隆に評された(現役引退~プロ野球名選手「最後の1年」 新潮新書より)のは、ミスタージャイアンツ長嶋茂雄。そのミスターが22歳で読売巨人軍に入団したのが1958年──昭和33年。この年の夏、「初代」スーパーカブC100が誕生しました。
 東京タワーの完工、日清チキンラーメンが発売開始され、月光仮面のTV放送スタートとともに、ミスターのジャイアンツ入団とスーパーカブ誕生は、セットで覚えていた方がいい日本の重要な歴史です。あれから63年、スーパーカブは今でも街のあちこちでその姿を見ることができますね。
 

 
 スーパーカブは、言うまでもなくホンダの「顔」であり「根っこ」。では、なぜ空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載する50ccのスーパーカブが、ホンダを代表するバイクなのかと言えば、それは「ずっと変わらなかった」からだと思うんです。
 もちろん、エンジンもフレームも車体デザインも少しずつ変わってきた60年余。それでもカブはカブ。メイトもバーディも、ああいうプレスバックボーンのスタイリングのバイクは、みんなカブだ──世界中がそう思っている。
 ためしに、バイクのことなんかなーんにも知らないおじちゃん、おばちゃんに「このバイクなーんだ?」って聞いてみても、8割?9割?ひょっとしてすべての人が「ホンダのカブ号でしょ」と答えるでしょうね。
 

 
 そのスーパーカブが大きく様変わりしたのが2018年。初代C100を思わせるデザインで、カブ歴代最大排気量の125ccエンジンを搭載。キー穴もないスマートキーシステムだし、チューブレスタイヤにアルミキャストホイール、液晶パネルも使ったアナログ&デジタルメーターだけれど、自動遠心クラッチを使用する空冷エンジンを搭載し、なにより「あの」形。やっぱりカブはカブだった。いつものカブよりもちょっと豪華でずっとよく走る。タフさとヘビーデューティさがあるんだけれど、どこか可愛い。新世代ハンターカブCT125ともども、人気のホンダ原付2種モデル群をけん引するヒットモデルだ。

 その新世代カブが早くもモデルチェンジ。新型は、ちょうど同時期にモデルチェンジされたGROMやモンキー125と同じ、ロングストローク型の新型エンジンを搭載しました。GROMやモンキー125が4速から5速ミッション化という大変更を受けたのに対し、カブは自動遠心クラッチのリターン/ロータリー併用の4速ミッションのまま。ミッションはカブ専用設計ですからね、エンジン本体を新規搭載してミッションはそのまま、という構図です。
 このロングストロークエンジン搭載の理由は、新規排出ガス「令和2年規制」をパスするためのもの。性能や商品性アップを狙ったものではなく、あくまでも排出ガス規制パスのための新規エンジンです。
 

 
 実際に乗ってみても、旧型との差はゼロではないけれど、ごくわずか。ゼロ発進あたりのトルクの出方がやや滑らかになり、高回転域もややフリクションロス感なく回るようになりました。これ、新旧モデルを乗り比べればわかるって程度のもので、違いを体感できるほどではありません。
 本来、エンジン諸元をスモールボア×ロングストロークとすると、低回転トルク型となるのがセオリーなんですが、この新エンジンは印象が逆。低回転から高回転までフリクションロスなく回るようになった感じがあるので、これはボア×ストローク値のせいでなく、エンジンの基本設計の改良によるフィーリングなんだと思います。
 

 
 それにしても、ミニバイクやスクーターでは感じられない、前後17インチホイール採用によるしっかりした安定感ある走りや力あるエンジン、さらにクラッチワークを必要としないイージーなライディングなど、やっぱりカブに乗るとシンプルなバイクに乗る楽しさに直面することができますね。そうそう、少数派だけれど、小型AT免許で乗れるのもカブのよさなんです。
 どんなに時代が変わっても、やっぱりカブは、イージーに乗れて乗りやすく、静かで力強い、安定して乗れる燃費のいいバイクのままです。現行モデルはABS標準装備で44万円もするけれど、昭和33年の大卒の初任給は9600円、ラーメン一杯45円の時代、スーパーカブは5万5000円だったことを考えると、大卒の初任給が21万200円(厚生労働省発表より)の今は、収入が約22倍。スーパーカブが22倍するとすれば、そのプライスは120万円ほどになっちゃうんですよ!

 「時代は変わる」そんな名前のボブ・ディランのアルバムがありましたよね。「変わらなきゃ」って日産のCMでイチローが言ってたこともありました。
 でも、スーパーカブは変わらない。これからも、ずっとスーパーカブは僕らのそばにいてくれます。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

切削加工も美しい5本Y字デザインのアルミキャストホイールを採用。タイヤは前後チューブレスで、フロントブレーキは片押し1ピストンキャリパー、フロントブレーキのみABSを標準装備。フロントフォークはハンドルからホイール上まで1本、そこから2本のアウターチューブに枝分かれする自転車タイプ。

 

今回のマイナーチェンジの最大の項目はエンジンの変更。GROMやMonkey125と同じ、ロングストロークとして圧縮比を高めたSOHC2バルブ空冷単気筒エンジン。ただし、GROMとMonkeyがマニュアル5速ミッションを採用したのに対し、C125は引き続きノークラッチレバーの自動遠心クラッチの4速ミッション。

 

ロングストローク化か圧縮比アップかの効果で、マフラーは内部構造を変更し、排気音は静かなまま、やや力強くなった。細かいところでは、タンデムステップステーがボディ同色から部材地肌のままに変更されている。
チェーンが露出しない密閉式なのもスーパーカブの流儀。タンデムステップ前方下、ちょうどコーションラベルの下にあるラバーキャップはチェーンの張り調整のチェック用。

 
 

羽ばたく鳥の翼をモチーフにデザインされた、初代C100に倣ったデザインとされたハンドルからヘッドライトまわり。ヘッドライト、ウィンカーはLEDを使用し、クラシックなスタイルに最新装備を組み合わせている。
走行中にわかりにくくなってしまうギアポジションだが、カブファミリーの中で唯一C125のみ、ギアポジションインジケーターを装備。タコメーターはなく、スピードはメーター外周に針が沿うアナログ式。

 

現行モデルはグレーと黒が廃盤になって、赤と写真のブルーの2色。ブルーの車体色は真っ赤なシングルシートを採用。従来のカブはシートがロックなしでシート下のフューエルキャップがキーロックだったが、C125はシートがロック式(シート下にロック解除ボタンあり)でフューエルキャップにキーロックなし。

 

シーソーペダルもスーパーカブの流儀。シフトアップはつま先側を、シフトダウンはカカト側を踏み込むボトムニュートラル式4速リターンミッションで、停止時のみロータリー式となり、つま先側を踏んでも4速→ニュートラルにシフトチェンジすることができる。ステップは振動防止のため、ウェイトが仕込まれている。

 

初代スーパーカブことC100のキャリア形状をもイメージさせるリアキャリア。プレート肉抜きがホンダマーク「H」になっているシャレっ気も注目。純正アクセサリーでタンデムシートも発売されている。
テールランプも初期モデルC100の形状をイメージさせる縦楕円形状。テールランプ、ウィンカーもLEDでスッキリした形状に仕上がっている。これもクラシックな形状に最新のパーツの組み合わせだ。

 

●Super Cub C125 主要諸元
■型式:8BJ-JA58 ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:123cm3 ■ボア×ストローク:50.0×63.1mm ■圧縮比:10.0 ■最高出力:7.2kW(9.8PS)/7,500rpm ■最大トルク:10N・m(1.0kgf・m)/6,250rpm ■全長×全幅×全高:1,915×720×1,000mm ■ホイールベース:1,245mm ■最低地上高:125mm ■シート高:780mm ■車両重量:110kg ■燃料タンク容量:3.7L ■変速機形式:4段リターン ■タイヤ(前・後):70/90-17M/C 38P・80/90-17M/C 50P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク(ABS)/機械式リーディング・トレーリング ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:パールネビュラレッド、パールニルタバブルー、パールネビュラレッド ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み): 440,000円

 



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2021/12/03掲載