この排気量クラスのクルーザーはグローバルで売れている
伝統的なロイヤルエンフィールドらしさを醸しだすCLASSICやBULLETのシリーズ。前傾姿勢でスポーティーなContinental GTとスクランブラーテイストが入ったINT650の648cc空冷並列2気筒エンジンシリーズ。アドベンチャーカテゴリーのHimalayan。その次に同社が日本のマーケットへ持ってきたのが、Meteor350と名付けられた単気筒エンジンを積むミドルクルーザーだ。
ご存知のとおり同じミドルクルーザーのレブル250が国内では大ヒットしており、北米でもその排気量アップ版のレブル300もヒットしている。昔からこのサイズのクルーザーは大型バイクばかりのイメージがある先進国でも安価で楽に日常的に使える移動手段ということから需要があって、オートバイ市場が拡大し根付いてきた新興国ではスポーツモデルカテゴリーの主力商品のひとつとして存在を強めてきた。そこにロイヤルエンフィールドが参入してきたのだからおもしろい。
ただし、これはロイヤルエンフィールドとしてまったく新しい冒険ではない。以前も同排気量帯でクルーザーを販売してきた歴史がある。90年代後半に、北米市場向けとしてBULLET 500より排気量が少し大きな右側ギアシフトでクラシカルな535cc単気筒のLightning535を作った。これはクルーザーの文化がほとんどなかったインドでも新しいジャンルの機種として売られた。2002年からは346cc、499ccのクルーザー、Thunderbirdシリーズを展開。そこから進化していったモダンクルーザー、Thunderbird Xが今回のMeteor 350の前身になる。今や648ccの並列2気筒エンジンも持ちながら、あえて単気筒349ccを継続したところが、価格と大きさのバランスによってこのサイズが幅広い地域で売りやすいことを裏付けている。
伝統と現代的な要素を融合したアイコニックなスタイルを目指した
まったく新しいより洗練されたロングストロークの空冷単気筒エンジンに注目
ネットを使った記者発表で、ロイヤルエンフィールド プロダクト戦略・デザイン責任者、マーク・ウェルズ(Mark Wells)は「エンジン開発時に求められたのは楽しく走るためのパフォーマンスと、快適性に重要な振動の低減、ロイヤルエンフィールドらしい“ドスン”という音です」と話した。
ロイヤルエンフィールドの特徴であるロングストロークエンジン(72mmのボアに対しストロークは85.8mm)。同じ“350″と数字が入るClassic 350のエンジンはOHVでこれとは排気量が若干異なる(Classic 350は346ccでMeteor 350は349cc)。だからClassic350とは同じロングストロークでもボアストローク比は同じではない。この新たな空冷4ストロークエンジンはチェーン駆動のシングルオーバーヘッドカムを採用して吸排気バルブは2つ。振動低減のために、クランクシャフトの前方にバランサーシャフトが設けられた。これによってどういうフィールになったのかが気になる。
エンジンオイルがクランケース内に収まるウェットサンプ方式。湿式多板クラッチのプレートは7枚で力の伝わりを確実に制御してシフトチェンジをスムーズなものにしたという。最高出力は20.2bhp、最大トルク は27Nm/4,000rpm。クルーザーらしく出力よりトルクにこだわったことがわかる。現代に誕生しただけあって、吸気側にはキャブレターではなく電子制御式フューエルインジェクションを装着。トランスミッションは5段で5速がオーバードライブになっているので、バイパスや高速道路などの定速に近い巡航時にエンジン回転数をおさえ燃費を伸ばしやすい。始動はセルのみ。
低重心で足着きがよく、距離でも疲れにくい姿勢といったクルーザーの必須項目をおさえながら、コンパクトな車体
角断面シングルバックボーンに、丸断面のダウンチューブを2本組み合わせたツインダウンチューブスプラインフレーム。ネックから真っ直ぐ伸びた1本の背骨がリアメンバーにつながり、単気筒エンジンに合わせて車体を細身にしやすく、低いシート座面(765mm)にも貢献している。安定した走りと乗り心地の良さを実現するために、剛性のバランスを考えて設計された。
ホイールサイズはフロントが19インチでリアが17インチ。クラシカルなワイヤースポーク仕様ではなく、すべてのグレードでキャストホイールを履く。よって100/90-19、140/70-17サイズのタイヤはチューブレス。それもこの機種に合わせて開発された専用のタイヤになっており、開発陣の力の入れようが伝わってくる。ディスクブレーキはフロントに300mm、リアに270mmのローターを採用。デュアルチャンネルのABSを標準装備している。
リアサスペンションはコンベンショナルなツインショックでプリロードを6段階調整ができる。フロントフォークのインナーチューブ径はφ41mmだから剛性的にも問題なさそうだ。ホイールトラベルは130mmと標準的。※写真は、最上級グレードのスーパーノヴァ。
ペグの位置がエンジンの前付近になる、いわゆるフォワードコントロールだけど、ホイールベースが1400mmとクルーザーとしては短く車体が前後にコンパクトなので、平均的な日本人体型ならフォワードコントロールと椅子に座るような下半身になるミッドコントロールの中間位置になりそうだ。チェンジペダルには前に足を伸ばして乗っても楽に足操作できるシーソー式を採用。つま先とかかとのソールで踏み込んで制御するので楽なだけでなく靴のダメージが小さい。
簡単に使えるナビゲーションシステムは大きな目玉だ
今やオートバイでも道案内、ナビゲーション機能は必要不可欠な時代になった。ハンドルバーやフロントメンバーなどに設置したホルダーにスマートフォンを取り付けてナビゲーションアプリを使っているのを街やツーリング先で多く見かける。ただ、この使い方だと決して安価ではないスマートフォンを落としたり、転倒などによる破損のリスクが高くなってしまう。そういえば先日、アップル社がiPhoneにおいてバイクに取り付けると固有の振動によりカメラの手ブレ防止とオートフォーカスに支障をきたす可能性があるとアナウンスしたばかり。Meteor 350にはその問題を解決できる機能が備わっている。ロイヤルエンフィールドトリッパ―という名のターンバイターンナビゲーションシステムを標準で搭載した。
アナデジの大きなメインメーターの隣にある丸型の小さいウインドウがそれだ。スマートフォンにロイヤルエンフィールドのアプリをインストールしてバイクとペアリング。アプリに目的地を入力すると、Google Mapをベースにして、あとどのくらいの距離でどちらに進むかを矢印と数値でナビゲート。案内はとてもシンプルで簡素だけど、これがあるとないとでは大きい。大切なスマートフォンはポケットかバッグにしまっておける。Meteor 350はハンドルの左側スイッチの下面あたりにUSBチャージングポートがあるので、スマートフォンを充電しながら使うことも可能だ。かゆいところに手が届いている。
3種類のグレードと気になる車両価格
日本のモーターサイクルマーケットはロイヤルエンフィールドにとって重要だと話す
25年ほど前の90年代に中間排気量クルーザーブームがあった。ホンダのスティードが起爆剤となって400ccだけでなく250ccまで波及した。当時は各メーカーから同じ排気量に複数の機種が存在することも珍しくなかった。しかし、現代はどうだろう。モダンクルーザーとして乗りやすくスタイリッシュなホンダのレブル250が大ヒットしているけれど、事実としてそれ一強だけでお世辞にも盛り上がっているジャンルとは言えない。そこにロイヤルエンフィールドがレブルとは違うクラシカルなスタイルであえて参入してくるところが興味深い。国内の区分は、同じ普通二輪免許で乗れても、250cc以下と、251ccから400cc以下で車検が必要、不必要で別れ、維持費などに違いが出てくる。Meteor 350は当然ながら車検のある400ccクラスになってしまう。商品の魅力を横に置いて考えてみてこれをどうユーザーがとらえるか。Meteor 350の大きなポイントはその大ヒット中のレブル250とほぼ同じ価格に設定してきたこと。市場が、どう反応してどう動くかが楽しみである。
■エンジン種類:空油冷4ストローク単気筒SOHC ■総排気量:349cm3 ■ボア×ストローク:–×–mm ■圧縮比:– ■最高出力:20.2ps/–rpm ■最大トルク:27N・m/4,000rpm ■全長×全幅×全高:2,140×845×1400mm ■ホイールベース:1,400mm ■シート高:765mm ■車両重量:191kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式: 常時噛合式5段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-19・140/70-17 ■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):596,200円~622,600円