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エンタメ

バイクと出会って半世紀。子供の頃、バイクのカタログ集めに夢中になった山形の少年は、学校を卒業すると念願だったホンダに入社。1994年からは二輪広報を担当し、2020年定年退職するまで四半世紀、一貫して広報活動に従事した。バイクブームのあの時代からの裏も表も知り尽くした高山さんの視点でふりかえる、バイク温故知新の四方山話。それが「バイク・承前啓後(しょうぜんけいご)」。

第12回 カタログに見る「スクランブラーモデル」の誕生と変遷 -ヤマハ編- 
【トレール】から始まったヤマハのオフロードモデル 

 1962年、日本初のスクランブラーモデル「ホンダ ドリーム CL72」が誕生しました。当時の国内市場は、オフロード走行を楽しむことができるスクランブラーへの注目度がそれほど高いものではなかったようです。先鞭をつけたホンダでさえ、スクランブラー第2弾の「ベンリイ CL125」の発売は、CL72の発売から4年後の1966年でした。
 1960年代の中頃になると、スクランブルレース(現在のモトクロス)が徐々に注目を集めるようになりました。ヤマハが国内市場に初めて投入したオフロード用モデル(公道走行車)は、「ヤマハトレール 100 L2-C」と名付けられ1967年に発売されました。ヤマハは「スクランブラー」という名称ではなく「トレール」という名称で日本の市場に新しい風を吹き込もうとしたのだと思います。
 翌年1968年3月に「ヤマハトレール 250 DT1」が衝撃的デビューを果たします。モトクロスレースで活躍したマシンをベースに新規開発した自信作でした。迫力と流麗さを兼ね備えたスタイリングや、悪路走破性に優れた車体と2ストローク単気筒エンジンなどで、たちまちヒットモデルになりました。
 そして1968年に、ヤマハ初のスクランブラー「ヤマハスクランブラー 125 AS1-C」を投入します。ヤマハにとっては、他社から発売中の「ストリートスクランブラー」に対抗する必要があったのだと思います。では、ヤマハのスクランブラーシリーズを中心にカタログで紹介いたします。

※個人所有のカタログのため、汚れなどがありますがご了承ください。

ヤマハトレール 100L2C
1967年10月発行 ヤマハトレール 100L2-Cのカタログ。トレールシリーズの表題がついていますが、この時点では100 L2-Cのみでした。これから続々投入するぞ。という意気込みは感じられます。

ヤマハトレール 100L2C
90ccのスポーティーモデル「H3」をベースに排気量を96ccにアップ。アップマフラーやエンジンガード、ユニバーサルタイヤなどオフロード走行に欠かせない装備を施しています。
ヤマハトレール 100L2C
100 L2-Cの特徴を紹介しているコピーには、「スクランブル」と「トレール」の両方が使われています。世の中にはトレールという言葉がまだ浸透していなかったことが想像できます。

【1969年 ヤマハスクランブラーシリーズのカタログから】

1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
1969年3月発行。表紙は、大自然の真っ只中というイメージで、冒険心をくすぐります。
1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
さまざまな楽しみ方を紹介したページ。楽しさが広がるスクランブラーです。

1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
ヤマハ初のスクランブラー「ヤマハスクランブラー 125 AS1-C」1968年発売開始。ロードスポーツの125 AS1をベースに、アップマフラーやエンジンガード、ブロックパターンタイヤなどの専用装備を施したストリートスクランブラー。
1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
「ヤマハスクランブラー 250 DS6-C」 1969年発売開始。ロードスポーツの250 DS6をベースに、アップマフラーや幅広のハンドルなどを装備したストリートスクランブラー。ライバルは、ホンダ ドリーム CL250やカワサキ 250A1-SSなどがありました。

1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
「ヤマハスクランブラー 350 R3-C」 1969年発売開始。ロードスポーツ350 R3をベースとしたストリートスクランブラーで、シリーズ中最大排気量車です。ヤマハスクランブラーシリーズは、125、250、350の3車種で、ともに2ストローク2気筒エンジンを搭載して、左右振り分け型のツインマフラーを採用していました。
1969年ヤマハスクランブラーシリーズのカタログ
カタログの裏面では、2ストロークエンジンの特徴と技術的な優位性をPRしています。

1969年6月発行
こちらは、1969年6月に発行されたスクランブラーシリーズの簡易カタログです。表紙は、250 DS6-Cが荒々しさを醸し出しています。

【2年の短命に終わったスクランブラーシリーズ】

1969年6月発行のカタログ
この総合カタログは、1969年6月発行のものです。スクランブラーとトレールのラインアップがあります。
1969年6月発行のカタログ
諸元表には、スクランブラーとトレールシリーズが明確に区分けされています。

1969年6月発行
スクランブラーシリーズが完成。そしてトレールには、250 DT1の弟にある125 AT1が早くも登場しています。

1970年1月発行のカタログ
こちらは、1970年1月発行の総合カタログです
1969年6月発行のカタログ
諸元表からもスクランブラーシリーズが無くなっています。

1970年1月発行
カテゴリーからスクランブラーが無くなっています。トレールシリーズは、90 HT1と360 RT1を加え充実のラインアップを図っています。

 カタログで見るヤマハスクランブラーシリーズの歴史は、1968年に登場した125 AS1-Cから始まりますが、1969年までの2年間というとても短い期間で終了しました。 250 DS6-Cと350R3-Cは1年弱でカタログから消えてしまいましたので、とても希少価値の高いモデルになってしまいました。
 その背景には、トレール 250 DT1の大ヒットが考えられます。市場の声は、ストリートスクランブラーよりも、オフロード走行を本格的に楽しめる高性能なモデルを待ち望んでいたものと思われます。
 ヤマハもその声に応えて、全国に「ヤマハ トレールランド」を設置してオフロード走行の魅力を大いに高めていく活動を展開していきます。1970年代は、各社から本格的なオフロードマシンが続々と登場してファンの期待に応えていくのでした。


高山正之
高山正之(たかやま まさゆき)
1955年山形県庄内地方生まれ。1974年本田技研工業入社。狭山工場で四輪車組立に従事した後、本社のモーターレクリエーション推進本部ではトライアルの普及活動などに携わる。1994年から2020年の退職まで二輪車広報活動に従事。中でもスーパーカブやモータースポーツの歴史をPRする業務は25年間に及ぶ。二輪業界でお世話になった人は数知れず。現在は趣味の高山農園で汗を流し、文筆活動もいそしむ晴耕雨読の日々。愛車はホーネット250とスーパーカブ110、リードのホンダ党。


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2021/09/01掲載