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試乗・解説

パラツインエンジンにコンパクトな車体のスポーツモデルとして話題になっているaprilia RS660に試乗。その魅力は最新の技術と高いレベルの仕様でやっているけど、やりすぎていない程良さ。そこのところを体感できたのでシンプルに説明しよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:aprilia JAPAN https://aprilia-japan.com/ 、JAIA 日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、KADOYAhttps://ekadoya.com/






 2018年のEICMA (ミラノショー)でコンセプトモデルが発表されたときから「乗ってみたい!」と楽しみでしょうがなかった。市販されたモデルに積まれた水冷並列2気筒エンジンはこのレイアウトのトレンドともいえる270°クランクで、apriliaのトップスポーツモデルであるRSV4よりホイールベースが短くコンパクト。そして乾燥重量169kg、装備重量183kgと軽い。最高出力は100psで、最大トルクは67.0 Nm。これは近い排気量で同じ並列2気筒のニンジャ650と比べると、出力と最大トルクは勝り約10kg軽いことになる。ニンジャ650はスポーティーでありながら幅広い運転レベルのライダーが汎用的に使えるふところの深さが魅力で、これはもっと踏み込んだ本格派スポーツモデルだから比べるのは間違いかもしれが、こうした数字だけでもapriliaのねらいが見えてくる。
 

 
 90年代にDUCATIのミドルスーパーバイクとして登場した748のゴキゲンさを思い出したけれど、1370mmのホイールベースはそれよりもっとショートで、現代の1000ccスーパースポーツと同じレベルの電子制御技術が使われているところに注目。ミソは659ccという大きすぎない排気量で、いたずらに出力を追求せずトルクとのバランスをとりながら、車体やサスペンションやライダーアシスト技術をスーパースポーツ相当にしているところだろう。ストリートで使い切れるパワーで、250万円オーバーのプライスタグが当たり前になった1000ccスーパースポーツの半額ほどになる139万7千円。ミドルクラスのサーキットで戦える4気筒とも違い、ツーリングも無理なくこなせる乗りやすい2気筒よりやんちゃ。なんとも絶妙な設定ではないか。
 

 
 無理なく腕が届く位置にあるハンドルグリップは一般的なスーパースポーツより低くないけれど、近年主流の楽に乗れるフルカウルスポーツに慣れた体にはそこそこな前傾姿勢。ステップ位置がそれほど後退していなく、身長170cmで膝の曲がりがだいたい90°と窮屈にならない。これで、ちょっと腕を伸ばして状態を起こせば楽な姿勢がとれるし、気合を入れて走りたいときは上体を前に倒したスポーティーな姿勢も無理なくできる。高さ820mmシートに腰を下ろして両足先の力が入れられるところまで届くのもポイントが高い。

 走り出すとコンパクトさと軽さを如実に感じることができる。ステップワークに対する反応が機敏で、ヒラヒラとした動きが気持ちいい。ブレーキから、コーナリング、加速といろんなところで軽さのメリットを感じられる。高い速度で旋回していく場合の高荷重でも足周りにへこたれた様子はまったくなく、でも段差やうねりを通過してもアタリの柔らかさもあって、しっかりしているけれど、ガチガチまではいかない感じ。乗り心地も悪くない。フロントタイヤがどうグリップしているか手に取るようにわかる。リアは標準のままでも十分ながら、走った場所の速度域と私の体重と好みとしてはもう少ししなるように動かしたい。メリハリがあって、スパッとリーンして素早く向きが変わるハンドリングはスポーツライディング好きを終始笑顔させる実力。クイックシフトも付いているから減速しながらコーナーへ飛び込んでいくのも楽だし、積極的に飛び込んでいきたくなる走りだ。
 

 
 5種類あるライディングモードの内訳は、ストリート用に3モード、サーキット用に2モード。ストリート用はコミュート、ダイナミックとユーザー設定ができるインディビデュアル。6軸IMUを使ったAPRC(Aprilia Peformance Ride Control)を装備してあって、ライディングモードによって、エンジンモードだけでなく、トラコンやABSも変わってくる。このストリートに近い試乗会場で使ったのはコミュートとダイナミックのみだった。コミュートモードでは低回転域からビート感とともに押し出すようなトルクを、それもギクシャクさせることなく使えるのがいい。スロットル操作に対する反応に角がなくて使いやすい。高回転域まで回しても怖さはない。ロックさせることを意識してブレーキを使うとABSは早めに介入。それはトラコンもしかり。このモードだとビギナーやそれに近い人でも問題なくRS660の切れ味を感じながら楽しめると思う。

 ダイナミックモードにすると、明らかにシャキシャキとしたレスポンスで元気になって、高回転での加速の伸びが気持ちいい。それでも100psというパワーがやっぱり絶妙で、速いのは速いのだが、スロットルを大きく開けて使うことを躊躇させないもの。うまく扱いきれなくて困ることが多くないパワー。コンセプトモデルを知って、これはきっとおもしろいと踏んだ予想は間違いじゃなかった。この手の内に収まる感じ、コントロールしている痛快さがたまらない。もっと長時間付き合って深く掘り下げたくなる。まだまだ走り好きの心を掴むポテンシャルを試してみたい。
(試乗・文:濱矢文夫)
 

 

ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

270度クランクの水冷並列2気筒DOHC 4バルブ659 ccエンジンは前後長が短くコンパクト。φ48 mm ツインスロットルボディをライドバイワイヤで制御する。エアクリーナーはエンジンヘンドの上に位置する。湿式多板クラッチには機械式スリッパ―システムがついている。
6速のトランスミッションをクラッチレバー操作いらずにアップ・ダウンできるAQS(aprilia Quick System)を採用。スイングアームをエンジンの後端に取り付けてあるピボットレス。これで見るとかなりのバックステップに見えるけれど、実際はそれほどでもない。シフトペダルの先は偏心カム構造で位置変更が可能。

 

アップサイドダウンのフロントフォークはインナーチューブ径41mmのKYB製。リバウンド減衰とプリロードの調整が可能だ。ホイールトラベルは120mm。フロントブレーキは320mmのローターを2枚使ったダブルディスク。4ポッドブレンボキャリパー(ピストン径32mm)をラジアルマウントしている。アルミのキャストホイールは3.5J-17。コーナーリングABSを装備する。
リアホイールは5.5J-17。マフラー出口を避けるようへの字になったスイングアームはアルミ製。ホイールトラベルは130mm。リアサスペンションはモノショックをレイダウン装着したリンクレス。リバウンド減衰、プリロード調整ができる。

 

トップブリッジとハンドルマウントが一体になっている構造。燃料タンク容量は15L。クラッチは油圧ではなくワイヤー式。ラジアルポンプ式ブレーキマスターはブレンボ製。メーターにはフルカラー液晶ディスプレーを採用。オートクルーズもついている(左側スイッチのトップに出ているツマミで設定)。

 

●aprilia RS660 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:659cm3 ■ボア×ストローク:81.0×63.93mm ■圧縮比:13.5 ■最高出力:73.5kw(100PS)/10,500rpm ■最大トルク:67.0N・m(6.83kgm)/8,500rpm ■全長×全幅×全高:1,995×745×–mm ■ホイールベース:1,370mm ■シート高:820mm ■車両重量:183kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR 17・180/55ZR 17 ■ブレーキ(前/後):ダブルディスク・320mm/シングルディスク・220mm■懸架方式(前・後):テレスコピック式(倒立)・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,397,000円

 



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2021/07/23掲載