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試乗・解説

『大きいことが 大きなメリットだ。』KYMCO Downtown 125i ABS
スクーター大国である台湾のKYMCOから発売されている、異色の原付二種スクーター、Downtown 125i ABSに乗った。ライバル不在と思われる特徴と、その走りをお伝えしよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:KYMCO JAPAN http://www.kymcojp.com/ 、JAIA 日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html




魅力は125ccスクーターらしからぬところ。

 他にはない特徴を持って似たものがない、ということは大きな魅力となる。KYMCOのDowntown 125i ABSに乗ってそう強く思った。125ccクラスとは思えないほど車体が大きいことが武器だ。125ccスクーターに対して持っている概念をくつがえすボリューム。ホンダの250ccスクーター、フォルツァの全長は2,145mmでホイールベースが1,510mm。このDowntown 125i ABSは全長2,250mm、ホイールベース1,553mmとフォルツァを上回っている。とにかく堂々としていて立派。

 それが生み出すいくつかのメリット。まずは居住性。フラットフロアではなくセンタートンネルがあるタイプで、傾斜したフットレストに足裏を載せると、膝は90°以上開いて窮屈な印象にならない楽ちん姿勢。それだけでなく段付きシート形状によりお尻が下がらず、膝が開いても力を入れて踏み込め、ライダーは体を安定させることもできる。街中でだらりと力を抜いて乗るのも、ワインディングでホールド感を高め車体と一体になって走るのも可能。いわゆるビッグスクーターと呼ばれるのと同じ乗車感覚。
 

 
 タンデムシートの面積も広くて前後の余裕もあるから、後席もひろびろとしており窮屈さはない。スクーターを選ぶ理由はいろいろあるけれど、またがって乗る一般的なオートバイに勝るのが高い利便性だろう。この余裕のある大きなシート下には大容量のトランクスペースが用意されている。それは前後に長くてヘルメット2個を余裕で収納する広さ。前側ヒンジでシートは開くのだが、そこにガスダンパーを使っていて、中には外光センサーで光るLEDランプも付く。シート下スペースを最大限に活かしたこととトレードオフでシート高が810mmとやや高めで身長170cmの私では両足のカカトまで接地しない足着き。これをどうとらえるかによって評価は変わる。前側の左右にグローブボックスがあって左側にはUSBソケットが備わるから、スマホをグローブボックスに入れて充電しながら走れて便利。

 走り出すとホイールベースが長いことが味方して前後にゆすられるピッチングモーションがおだやかでフラットな乗り心地。フレームと前後のサスペンションの剛性もしっかりとしていて、安っぽいブレや頼りなさはなく、適度にいなして進む。こういうところも、250クラスと比べても見劣りはしない。120/80-14 58S、150/70-13 64Sサイズのタイヤを前後に履いたハンドリングはクセがなく、危なげな動きもなく、躊躇なくリーンさせてコーナーリングできる。そこに不穏当だと感じるシーンはない。ABS付のブレーキも効くから、なかなかどうして意外なほどスポーティーに走れてしまう。直進安定性も良く、フロントに大きなスクリーンもあるから高速道路にのれないのが口惜しいくらいだ。
 

 
 たぶん、みんなが気になるのは、じゃあ装備が充実したこの大きなボディが水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒124.8ccエンジンでちゃんと動くのかどうかだろう。私も最初に乗る前はそこを疑っていた。ちなみに装備重量は178kgと決して軽いとは言えない。結論を先にいうと、これが拍子抜けするほど普通に走るのである。最大出力= 10.5kw(14.3PS)/9,000rpm、最大トルク=10.8Nm/7,000rpmのスペックは、トップクラスの出力だけど、大きな車体を加速させるキモとなる最大トルクは飛び抜けたものではない。それでもCVTの変速設定が巧みなのか、街でのストップ&ゴーなど日常的な使い方において不足だと思わせない。タコメーターが付いているので確認するとさすがに9千回転近くの高回転まで使って速度が伸びていく。巡航走行からスロットルを大きく開けて追い越し加速をしてみても、レスポンスよくパワフルな高回転まで回るから、鋭さはないがもどかしくもない。個人的には“しょーがない”と諦める感想にはならなかった。これだけ走れたら十分でしょう。

 

 
 装備だけでなく、各部ディテールの作り込みも125ccスクーターらしからぬものでより大きな排気量の機種に見劣りしない。友人や彼女とタンデムする機会が多いから250ccスクーターが欲しいが、保険や維持費の安さなど様々な理由で原付二種しか持てないという人にとって、これに勝る機種はなかなかない。この市場はニッチながら確実に存在して選択時の対抗馬がいない。その中で気になるようなマイナス要素が見当たらない完成度に仕上げていることを大いに評価したい。目のつけどころがおもしろい。コストと効率にシビアな日本メーカーはまずやらない。
(試乗・文:濱矢文夫)
 

ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

フロント足周りはDowntown 350と共通で、テレスコピックフォークのインナーチューブ径はφ37mm。14インチのアルミキャストホイールを履いて、φ260mmローターのシングルディスクブレーキ。標準で装備されたABSの制御ユニットはBOSCH製で、このフロントだけでなくリアにも付く2チャンネル。フォークアウターを覆う尖った形状でスポーティーなフェンダーがスタイリッシュ。デザイナーはイタリア人という。
剛性の高いダブルスイング式ユニット。リアブレーキはφ240mmローターを採用。リアホイールは13インチ。タイヤは150/70-13 64Sと太め。奥に隠れた4ストロークOHC4バルブ単気筒エンジンは水冷。

 

左側のグローブボックス内にはUSBアクセサリーソケットが備わる。グローブボックスは左右の2箇所。両方とも下側のヒンジで開く。
シャッター付キーシリンダーは中央のハンドル下。シート開閉もここでやる。左右のブレーキレバーが調節可能なのがうれしい。メーターはアナログ表示のスピード&タコの間に液晶画面をレイアウトした構成。液晶にはオド、トリップ、時計、水温計、燃料計、外気温計、瞬間燃費計などをデジタルで表示する。バックライトはブルー。

 

ヘッドライトはH7規格のバルブ式で、リングのポジションランプ部分がLED。シュラウドのような形状をした部分にビルトインされたLEDウインカー。スタイルとディテールは125クラスらしからぬもの。

 

●Downtown 125i ABS 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ ■総排気量:124.8cm3 ■ボア×ストローク:–×–mm ■圧縮比:– ■最高出力:10.5kw(14.3PS)/9, 000rpm ■最大トルク:10.8N・m/7,000rpm ■全長×全幅×全高:2,250×780×1,345mm ■ホイールベース:1,553mm ■シート高:810mm ■車両重量:164kg(乾燥) ■燃料タンク容量:12.5L ■変速機形式:CVT ■タイヤ(前・後):120/80-14 58S・150/70-132 64S ■ブレーキ(前/後):シングルディスク/シングルディスク■懸架方式(前・後):テレスコピック式・ダブルスイング式 ■車体色:パールブラック、マットホワイト、マットグレイメタリック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):528,000円

 



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2021/06/30掲載