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試乗・解説

原二にちょい足し……それだけじゃない、 PCX160の、あっぱれな!進化っぷり!
ミスター・バイクBG『ニチギチ現行車レポート』との連動企画で展開するホンダ・PCX160×ヤマハ・マジェスティSの2台。ああ、原二の排気量大きくして高速道路、自動車専用道路を通れるようにしたスクーターね……。と思われがちな立ち位置だ。しかし代々PCXに試乗をしてきた身として感じた、今作の違いとは。そもそもPCXはもはや一つのジャンルで、排気量とかサイズではない魅力を持っていると思っていたが、いよいよそれは確信になった。そしてこの新型160に乗って先代の150から増えた数字がたかが10ではなく、数倍にも感じる大きな変化をとげていたのだ。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、56design https://www.56-design.com/






 PCX160に乗って街に出た。すぐに感じたのは走っているPCX目撃率の多さだ。正直、一目で、あれは初代だ、とか二代目だ、とか三代目だ、と当てるのは難しい。それほどPCXのシルエットはキープコンセプトだし、それほど風景に馴染んでいる。逆もまたしかり。今乗っている新型で発売間もない時期に路上に出たことがあるが、他のPCX乗りですら新型に熱い視線を送られることはほぼナシ。もしかすると、PCX乗りのPCXへの注目度は、iPhoneユーザー同士が秋に発表される新型をいち早く使い始める「iPhone意識の高い系」の人をチラ見するようなことはないのかもしれない。
 

 
 それはともかく、新型の進化ぶりはまたもやPCXの世界を際立たせた。まずエンジン。ローラーロッカーやオフセットシリンダー、セルダイナモを搭載し、アイドリングストップを備えることで燃費性能に長けた性能はこれまでもライバルに水をあけていた。今度はそこに回転するときのスムーズな質感とさらに意のままになった力が加わった。

 PCX150の完成度は125のPCXの存在が大きいだけに、原二にちょい足ししたことで自動車専用道路を合法的に走れるようにしたモデル、という印象があった。市街地ではたしかに力はあるが、125との間に決定的なアドバンテージがあるか、と言えば、市街地速度の60km/hを越えた領域、つまり高速道路に入ってからの話、という印象だった。

 それが新型PCX160では、スタートの段階から明確なパワーとトルクの厚みをより感じるようになった。新型のエンジンは、150時代のボア×ストローク57.3mm×57.9 mmから60.0mm×55.5mmとショートストローク化(これは125と同値になる)そして圧縮比は10.6→12.0へ。何より吸排気バルブが2バルブだったのものが新型はいわゆる4バルブ化された。最高出力は11kW→12kWへ。最大トルクは14N.mから15N.mへと数値で見せられると「違いが判るかな?」というレベルだが、実際に乗ると全域で大きく違っている。

 

 
 まずエンジンの回り方が印象的だし、開け始めから車体がスッと前に出る瞬間のさらっと動く力強さはどうだ。しかもアクセル開度は150時代より少ないし、全開にする必要すら感じないほど。排気量で言えば7㏄増えた156ccをもってして160とする新型だが、効率を上げた印象は走りの気持ちよさにつながっている。

 市街地の余裕同様、高速道路も余裕が違った。150だと上り坂になるとアクセルグリップが全開でこれ以上開かない、というところからグリップのゴムだけよじれるのでは、というほど開け続けるような場面が多かった。また、追い越し車線に出ても、ナンのつもりか追い越す車両が無意識に速度を上げると、併走するほかなく、大人しく走行車線に戻るコトが何度もあった。対する160は80km/h巡航が余裕。90km/hも余裕。100km/hでもゆとりがまだある。だから90km/hで走行する前車を追い越し車線に出ても確実に仕留められた。

 合法的に自動車専用道路を走れるPCX、というよりPCX160は高速道路を「通れるではなく、しっかり使える性能」が備わったと言える。これは心強い。だからといって高速を使って遠出をしようというタイプでもない。やっぱりその機動性から一般道が楽しい。125とサイズは一緒だし、そこで見える景色を楽しみつつ走るのが最高だった。
 

 
 今回、PCX160を一般道で8割、自動車専用道路で2割の距離を走ってそう思った。ここ、同じルートでテストライドしたヤマハのマジェスティSは、自動車専用道路での走りが一歩PCX160には届かない。ゼロスタートの加速は鋭いのだが高速域のゆとりが違うのだ(マジェスティSの試乗インプレッション記事は近日公開予定です)。

 この手のコンパクトスクーターに多くを望むのは酷ながら、エンジン、車体のパッケージにこれほど満足度が高いのも嬉しい限り。シャーシだってしっかり感と安定感、旋回力のバランスがよく、結局相当な距離を走ってしまった。ではこれが125だったら同じルートを同じ気持ちで走れたか。それはちょっと判らない。少なくとも帰りは「イザとなったら高速を使おう」という下心があったし、実際テストのために走ろうと決めていた高速道路区間だけは走ったが、一般道を走れば1時間はかかる距離を20分ぐらいに縮めてくれた。
 

 

 保険が安い、維持費が安い……と言われる原付二種。それは正論だが、一般道限定の移動は発見と楽しさに満ちる反面、その移動距離の制約のようなフタが付いてくる。その交換条件を好きな時にブレークできるボタンが付いたのがPCX160だと思った。身軽だし、アイドリングストップをする時のタイミングと再始動の間髪を入れない鋭さは相変わらずグッドポイントだ。125だってそうだけど、いいもの感があるPCX一族らしい所有感も満たしてくれる。凄いのはPCXに乗っている間、マジェスティSのカチっとしたハンドリングや全開にしたときに繰り出す鋭い加速が恋しくならなかった。

 PCX160は全体にマイルドな乗り味だし、ヨーイドンならだいたい同じ加速だったから、俊足だといいうわけでもない。いや、むしろ加速の最初の数メートルでマジェスティSが先行するのだが、それすらまったく気にならない。それぐらい全体の質感があってライトなコミューターだと思えない個性がある。なるほど街でPCXが多いはずだ。(試乗・文:松井 勉)
 

 

ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

エッジを効かせたデザインのホイール。14インチの前輪は110/70-14というサイズ。フロントフォークのアクスルホルダー周辺に強度の最適化とデザインの融合を見る。フロントブレーキキャリパーは2ピストン。

 

PCXをPCXたらしめるエンジン。CVTのクラッチミートの作り込みなどPCXらしい世界を作る。アクセルを開きライバルに比べると低い回転からクラッチをミートし車体を前に転がし始め、エンジンのトルクにより車速を乗せて行くような発進をする。回転計がないPCXが何回転でミートしているかはわからないが、アクセル操作と動き出しの一体感は小排気量というクラスを意識させない動き出しに魅力を感じる。

 

リアタイヤサイズが1インチダウンとなった新型。130/70-13とサイズ的にはマジェスティSと同じサイスを履く。車体のデザインの関係か、マジェスティSはワイド小径という印象があるが、PCXはそれより細身大径に見えるのが不思議。リアブレーキはシングルピストンとなる。
LED光源のテールランプ、ウインカー。実はけっこうデザイン的に新型の特徴でもある部分。

 

シンプルなスイッチ周り。ホンダ流に慣れた人には全く問題無い配置だろう。
PCXの右側スイッチボックス。上からアイドリングストップのオン、オフスイッチ、中央はハザードスイッチ、スタータースイッチは一番下という配置。

 

ハンズフリーキーを採用する。車体側のダイヤルでスタリングロックの施錠と解錠、イグニッションの位置を選択できる。フューエルリッド、シートの開閉は隣のシーソースイッチから操作する。
フューエルリッドを開けると給油口が現れる。タンクキャップを外して置いておく受けがリッド裏に設けられている。ボディ下部にある燃料タンクから伸びた給油口は光が当たりにくいため、満タン時にガチャンとオートストップが機能したあと、ジュワっと少しガソリンが溢れるコトがあった。

 

速度計、燃料計、時計、トリップなどは液晶モニターに。左右のエリアはワーニングランプなどを表示する。左右に伸びたウインカーシグナルのインジケーターランプは夜になるとエキゾティックな光の反射をパネル内に見せる。
ヘッドライトやスモールランプ的に光る左右のランプがPCXフェイスを作り出す。正面から見たときのサイズ感はなかなか。ロー、ハイともLEDヘッドライトを採用。配光、明るさ感は先代よりも向上しているように感じた。

 

シートは前後にサイズが大きくやや上体が寝たスタイルになるポジションにマッチしたもの。足着き性を左右する全部の両肩の切り取り形状もよく足着き感良好。シート下の収納サイズも向上した。ETC2.0車載器はオプション。

 

●PCX160主要諸元
■型式: 2BK-KF47 ■全長×全幅×全高:1,935 ×740 ×1,105mm ■ホイールベース:1,315mm ■最低地上高:135mm ■シート高:764mm ■車両重量:132kg ■燃料消費率: 53.5km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時) 45.2km/L (WMTCモード値クラス2-1 1名乗車時) ■最小回転半径:1.9m ■エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒■総排気量: 156cm3 ■ボア×ストローク: 60.0×55.5mm■圧縮比:12.0 ■最高出力:12kw(15.8 PS)/8,500rpm■最大トルク: 15N・m(1.5 kgf・m)/6,500rpm ■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI) ■始動方式:セルフ式 ■点火装置形式 :フルトランジスタ式バッテリー点火 ■燃料タンク容量:8.1L ■変速機形式:無段変速式(Vマチック) ■タイヤ(前/後):110/70-14M/C 50P /130/70-13M/C 63P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前/後):テレスコピック式/ユニットスイング式 ■フレーム形式 :アンダーボーン ■車体色:マットディムグレーメタリック、キャンディラスターレッド、パールジャスミンホワイト、ポセイドンブラックメタリック ■メーカー希望小売価格(税込): 407,000円

 



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2021/06/16掲載