スーパーバイク世界選手権(SBK)で43勝も挙げたスーパースターの芳賀紀行が活動拠点を日本に移し、昨年から「ニトロレーシング41」として全日本ロードレース選手権に参戦を開始した。今年も、カワサキワークスで活躍した宗和孝宏が監督の「bLU cRU ニトロレーシング51 YAMAHA」とコラボして参戦することを発表した。
「ニトロレーシング41」は芳賀の長男の瑛大、次男の涼大をST600に引き続き参戦させる。昨年の全日本ロードレース選手権は、新型コロナウィルスの影響で、後半の4戦開催となり、日本のサーキットを走った経験の少ないふたりは悪戦苦闘し、瑛大はランキング24位、涼大は19位となった。上位へと進出しても転倒してしまうなど、結果に結びつかなかったが、光る走りは関係者の間では一目置かれるものだった。
芳賀は「圧倒的に経験が足りない中で、走る毎に成長を見せてくれたと思う。攻めることは大事だが、走り切ることで学ぶことが出来る。今年は、転倒を恐れずに攻め、チェッカーを受けるレースをしてほしい」と言う。瑛大、涼大に課せられた目標は「トップ5」で、大きな飛躍を狙う。
瑛大は「全日本の経験のなさを言い訳にせず、そんなものがなくても速く走れるのだというところ見せたい」と意気込む。涼大は「コースを知らずに走った昨年とは違う走りが出来るはず」と飛躍を誓った。
「bLU cRU ニトロレーシング51 YAMAHA」から参戦するのは岡本裕生。岡本はチームノリック出身(芳賀に並ぶ天才ライダー、故阿部典史が育成のために立ち上げたチーム)に才能を見出され、宗和監督との出会いで、その才能を開花させた逸材。昨年2度目のST600チャンピオンに輝き、今季はST1000にステップアップする。岡本は「初年度からタイトルを狙う走りが出来なければ、目標の世界には届かない」と語る。
芳賀は「1000に乗る岡本には、これまでの実戦からアドバイス出来ることがたくさんある。やってはいけないこと、やらなければならないこと、それを実行できるかが鍵」と語った。SBKの伝説のライダー芳賀監督と、スーパーバイクで活躍した宗和監督のふたりが岡本をバッグアップする強力体制での活躍に期待がかかる。
監督の宗和は「3人のライダーが、それぞれに個性を発揮し、多くの人に愛されるライダーになってほしい。芳賀はニトロ、俺はタイガーと呼ばれた。3人にもニックネームがつくような活躍を期待したい」と語った。ニトログリセリンのような破壊力を持った走りで欧州ファンを沸かせた芳賀と、虎のような獰猛な走りでファンを魅了した宗和、このふたりのインパクトに負けないライダーとなれるのかにも注目が集まる。芳賀と宗和のコラボで、今年も全日本を盛り上げてくれるに違いない。
そして、このコラボチームが始動、筑波ロードレース選手権に涼大がST600に参戦した。瑛大は練習走行で転倒しケガをしたことで参戦を断念、スタッフとして涼大を支えた。岡本も応援に駆けつけて、チーム全員が揃って涼大(ヤマハ)のレースを見守ることになった。
決勝日の筑波は晴天となりグングンと気温が上昇し温かな陽気となった。地方選ではあるが、全日本参戦ライダーが数多く参戦するレベルの高い戦いが繰り広げられた。ホールショットは、横山尚大(ヤマハ)が奪い、荒川晃大(ホンダ)、涼大、鈴木光来(ホンダ)、阿部真生騎(ヤマハ)らが続く。2周目の1コーナーでは、鈴木がトップに浮上。荒川、横山と続くが、3周目の第2ヘアピンで荒川が痛恨の転倒。その後、阿部も1コーナーで転倒しリタイア。鈴木が首位に立ち、横山、涼大が続く。レース終盤に2台が転倒しオイルが出てしまう。ここでトップの鈴木が転倒、すぐに赤旗が提示され、前の周の順位でレース成立となり、鈴木が優勝、2位横山、3位涼大と全日本ライダーが表彰台を占めた。
涼大は筑波サーキットを走るのは初で、攻略の難しいクイックなコースを、しっかりと走り切り3位に食い込んだ。昨年末、鈴鹿で開催されたNGK杯でも3位表彰台をゲット、連続表彰台となり、全日本への期待が膨らむ。「転倒者もあっての3位なので、素直に喜べない部分もありますが、初めてのコースでの結果としては、少しは自信になりました。全日本でもトップ争いがしたい」と語った。
芳賀は「まずは全日本表彰台が目標」と語っており、そこへ近づく結果となった。天才ライダー芳賀の次男涼大の躍進に大きな注目が集まったレースとなった。
(取材・文:佐藤洋美)