HONDA X-ADV 車両解説
並列2気筒のシリンダー前傾角を62度と深くすることでエンジン全高を下げ、車体のレイアウトに自由度が得られる軽量コンパクトな新型700ccエンジンをゼロから開発。それに合わせて、低い位置にメインパイプ配置することが可能となったローフレームの組み合わせにより誕生した“ニューミッドコンセプト”シリーズ。
2012年2月のNC700X、4月のNC700S、インテグラの発売以降多くのファンを獲得してきたが、わずか2年足らずの2014年1月にモデルチェンジが行われ750となった。750となっても、共通のプラットフォームを使い回すことでより多様なニーズに合わせたモデル群を展開する、というNCシリーズの基本戦略は変わらず、“オン・オフ”モデルとして開発されたNC750Xと、“ネイキッド・スポーツ”のNC750Sを一足早く1月24日に発売。700版のデビュー時は海外でトップバッターデビューを飾った“スクーティング・モーターサイクル”のインテグラのみ若干遅れて2月7日発売となった。
750シリーズのエンジンは、ボアを4mm拡大してボア77mm×ストローク80mmとなり、総排気量745cm3から低中回転域での力強い走りを実現。ピストンに樹脂コーティングを施すとともに、摩擦を低減するローラー式ロッカーアームにアルミ材を採用するなどの特徴的なメカニズムは踏襲されたが、それまでの一軸バランサーは、さらなる低振動化の実現を図るため二軸式へと変更された。トランスミッションのハイレシオ化も行われ、デュアル・クラッチ・トランスミッションも新エンジンに合わせて変速特性が見直された。
車体面では基本構造に変化はないのでほぼ同一といえるが、インテグラではリアのスイングアームがアルミ化されたほか、フロントカウルとシート形状も変更。また、スポーティなストライプの採用やゴールドカラーの前後ホイールを装着したインテグラSタイプも追加されるなど新型NCシリーズでは一番変更点の多いモデルとなっていた。
このインテグラの“スポーツ・コミューター”としての性格をさらに突き詰めて、平日は都会で、そして休日は「日常を離れて冒険へといざなう」存在として新たに開発されたのがX-ADVだ。オートマチックトランスミッションの操作性とマニュアルトランスミッションの優れた伝達効率を高次元で融合したDCTに専用セッティングを施し標準装備。アップダウンやコーナーの多い郊外のワインディングでは、低いギアを選択する領域を拡大した変速制御をDモード・Sモードに採用し、スポーティーなライディングフィールを実現するとともに、タイヤサイズやドライブチェーン駆動の最適化を図り、市街地での機敏な走行も可能としている。
足周り面でもフロントには、サスの動き始めの作動性に優れ剛性感のあるインナーチューブ径φ41mmの倒立フォークを採用。リアには、スイングアームのクロス部を中空とし、アーム部をコの字断面として軽量化した新設計アルミスイングアームと作動性に優れたプロリンクサスペンションを組み合わせている。また、ライダーの好みの乗り心地に調整可能な、減衰力調整機能をフロントサスペンションに採用。前後サスにプリロード調整機能も装備している。「GO EVERYWHERE with EXCITEMENT~アクティブな心躍る気持ちで、どこへでも行ける~」をコンセプトに開発された新感覚のアドベンチャー・スポーツだ。
2018年4月には、初のモデルチェンジが行われ、HSTC(Honda セレクタブルトルクコントロール)と、アクセル操作に対応してクラッチ制御を変更する“Gスイッチ”も新たに採用することでオフロード走行時のコントロール性を高めたという。
2019年2月には、このX-ADVのカラーリングを変更。それまでのモデルでもETC車載器は標準で装備されていたが、さらにETC2.0へとアップグレード。カラーリングの面では、金属調で硬質な「マットビュレットシルバー」や、スポーティーなイメージを強調する鮮やかな「グランプリレッド」、そしてアドベンチャーイメージを演出するカムフラージュ柄を採用した「マットアーマードグリーンメタリック」の全3色を新たに設定。
今回、X-ADVのフルモデルチェンジにあたってパワーユニット面では、ピストン裏面の肉抜きやクランクシャフトのカウンターウェイト重量の最適化などによりエンジン単体で1.4kgの軽量化が行われたほか、エアクリーナーのダクト断面積を拡大し出力向上と全回転域でのスロットルリニアリティーの向上などが行われた。
装備面では、スロットルバイワイヤー(TBW)を新たに採用。これにより“Hondaセレクタブルトルクコントロール(HSTC)などの制御を組み合わせるライディングモードも搭載している。車体、足周り面では、スチールパイプの構成を変更した新設計のダイヤモンドフレームを採用。こちらも単体で1㎏の軽量化を実現。ラゲッジスペースも容量を22リットルへと拡大された。
キープコンセプトのスタイリングだが、ボディーパーツ各部を一新、主体色パーツを従来よりも車体上側および前方に寄せることで一層の軽快感とダイナミックさを演出している。独自のデイタイムランニングライトの採用もポイントだ。
★ホンダ ニュースリリースより (2021年3月5日)
大型クロスオーバーモデル「X-ADV」をフルモデルチェンジし発売
Hondaは、走破性に優れ、利便性が高いパッケージングと、力強いトルク特性で燃費性能に優れる直列2気筒745ccエンジンにHonda独自の二輪車用「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」を組み合わせたタフなイメージの大型クロスオーバーモデル「X-ADV(エックスエーディーブイ)」をフルモデルチェンジし、3月25日(木)にHonda Dreamより発売します。
X-ADVは、力強いスポーティーな走りと、各種先進技術、収納性に優れたラゲッジボックスなどの利便性、個性的なデザインにより、発売以来お客様にご好評をいただいております。今回、「スマート&エキサイティング ADVENTURE URBAN TRANSPORTER」を開発コンセプトとし、動力性能と利便性をさらに高めました。
パワーユニットは、ピストンをはじめとする各部の軽量化や吸排気系を最適化することで、最高出力の向上と優れた環境性能を両立。
さらに、ライダーをサポートする電子制御技術として、スロットルバイワイヤシステム(TBW)を新たに採用し、ライダーの好みやさまざまなシーンに応じて走行フィーリングを任意に選択できるライディングモードを搭載しました。
また、ヘッドライトにデイタイムランニングライトを採用し、昼間における存在感と被視認性を高めました。
さらに、Honda Smartphone Voice Control system(HSVCS)※1を採用。車両とスマートフォンをBluetoothで連携※2することで、ハンドルスイッチおよび音声入力により音楽再生や通話などの操作を可能にしました。
※1 Honda Smartphone Voice Control system(HSVCS)のご利用には専用アプリのインストールが必要です。専用アプリはAndroid端末専用のため、iOS端末は非対応となります。また、全てのAndroid端末の動作を保証するものではありません。HSVCSの機能に関する詳細および対応OSのバージョン、対応アプリについては、HSVCS関連ホームページ (英語 https://global.honda/voice-control-system/EN/faq.html)、 (日本語 https://www.honda.co.jp/tech/articles/motor/EngineerTalk_SAB/)をご覧ください
※2 HSVCS使用には市販のバイク対応Bluetoothヘッドセット(別売)との接続が必要です。アプリの利用や通信料金はお客様の負担となります
【商標・登録商標について】
Androidは、Google LLCの商標です
Bluetoothは、米国Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です
iOSは、Ciscoの米国およびその他の国における商標または登録商標であり、ライセンスに基づき使用されています
- ●販売計画台数(国内・年間)
- 700台
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- X-ADV 1,320,000円(消費税抜き本体価格 1,200,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- =主な特長=
- ●パワーユニット
- ・ピストン裏面の肉抜きや、クランクシャフトのカウンターウェイト重量の最適化、バランサー軸径の見直しなどにより、エンジン単体重量で1.4kgの軽量化を実現しました。
- ・エアクリーナーは、ダクト断面積を拡大しダクト内の吸気抵抗を低減させるとともに、クリーンサイドの容積比率を拡大することで、出力向上と全回転域でのスロットルリニアリティーを向上。また、エアクリーナーカバー内部のダクト出口付近にスロープと整流板を配置し、吸入効率を向上するとともに、スロットルボア径を36mmから38mmへ拡大することで最高出力の向上と力強いエンジンフィールを実現しました。
- ・エキゾーストチャンバーは、形状を最適化し排気の整流効果を向上させるとともに、高効率貴金属触媒を採用することでキャタライザーを小型化。平成32年(令和2年)排出ガス規制に対応させながら、出力向上と軽量化を実現しています。
- ・ギアレシオは、4~6速ギアを最適化したことにより、加速フィーリングと燃費の向上に寄与しています。
- ●車体/足回り
- ・スチール製パイプの構成を変更した新設計のダイヤモンド形式のフレームを採用。また、各部の板厚を最適化することにより、フレーム単体で約1kgの軽量化を実現。向上したエンジン出力に対応させつつ、より一層軽快な運動性能を獲得しました。
- ・ラゲッジスペース容量は、フレーム形状を見直すことで22Lに拡大。ラゲッジスペース内には荷物の確認に便利なラゲッジライトとUSBソケット※3を標準装備することで日常での使い勝手をさらに向上させています。
- ・ライディングポジションは、加減速を多用するシチュエーションでの操りやすさからフラットダートでの車体の取り回しやすさを想定し設定。また、シート前部の幅をスリム化することで足着き性の向上を図りました。
- ●制御/電装
- ・ライダーのスロットル操作を電気信号に変換し、スロットルバルブの開度制御を行うスロットルバイワイヤシステム(TBW)を新たに採用。さらに、エンジン出力、Hondaセレクタブル トルク コントロール(HSTC)※4、エンジンブレーキ、ATモード選択時のシフトスケジュールの各制御レベルを組み合わせることで、さまざまなシーンでライダーが好みの走行フィーリングを任意に選択できるライディングモードを搭載しました。
- ・Honda Smartphone Voice Control system(HSVCS)を新たに採用。車両とスマートフォンをBluetoothで接続し、音声入力に対応したヘッドセットからの音声ガイダンスに沿ってハンドル左手のスイッチを操作することで、ハンドルグリップから手を離さずに音楽再生や通話などの操作を可能とし、利便性を向上させました。
- ・ヘッドライトにデイタイムランニングライトを採用。日中は、ハイビームとロービームとの中間にある導光部が強く発光し、車両の存在感を強調。夜間は車両が外部の明るさを検知し自動的にロービームへ切り替えます。
- ・液晶メーターは、視認性の高い5インチTFTフルカラー液晶を採用。速度計、回転計、燃料計はライダーの好みによって4パターンのグラフィックに変更可能とし、豊富な情報を直感的にライダーが把握できるよう配慮しました。
- ・パーキングブレーキは、右手ハンドルグリップ付近にレバーを配置。操作性に配慮しました。
- ・別売りの純正アクセサリーに「トップボックス50L スマートキーシステムタイプ」※5を新たに設定。Honda SMART Key システムと連動させることで、より便利にトップボックスの解錠を可能としています。
- ●スタイリング/カラーバリエーション
- ・スタイリングは、ボディーパーツ構成を一新し、主体色パーツを従来よりも車体上側および前方に寄せることで、凝縮感を保ちながら一層の軽快感とダイナミックさを表現。エッジの効いた面構成のデザインとしました。
- ・カラーバリエーションは、ワイルドさと都会的なイメージを兼ね備えたパールディープマッドグレーと、精悍で力強い印象のグラファイトブラックの計2色を設定しています。
- ※3 表裏問わず挿入可能なTYPE-Cコネクター
- ※4 Honda セレクタブル トルク コントロールはスリップをなくすためのシステムではありません。あくまでもライダーのアクセル操作を補助するシステムです。したがってHonda セレクタブル トルク コントロールを装備していない車両と同様に、無理な運転までは対応できません
- ※5 前モデルのHonda SMART Keyシステムには非対応
主要諸元
車名型式 | 8BL-RH10 | |
---|---|---|
X-ADV | ||
発売日 | 2021年3月25日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.220×0.940×1.340 | |
軸距(m) | 1.580 | |
最低地上高(m)★ | 0.135 | |
シート高(m)★ | 0.790 | |
車両重量(kg) | 236 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※6 | 42.5(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※7 | |
27.7(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)★※8 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 2.8 | |
エンジン型式 | RH10E | |
水冷4ストローク直列2気筒SOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 745 | |
内径×行程(mm) | 77.0×80.0 | |
圧縮比★ | 10.7 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 43[58]/6,750 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 69[7.0]/4,750 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 13 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 電子式6段変速(DCT) | |
変速比 | 1速 | 2.666 |
2速 | 1.904 | |
3速 | 1.454 | |
4速 | 1.178 | |
5速 | 0.967 | |
6速 | 0.815 | |
減速比1次/2次★ | 1.921×2.235 | |
キャスター(度)★ | 27°00′ | |
トレール(mm)★ | 104 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70R17M/C 58H |
後 | 160/60R15M/C 67H | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立サス) |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
※6 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※7 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※8 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます