RB150シリーズは、本来ならスプリントレースがメインなのだが、今年は『借り耐』として3時間耐久レースが開催された。一般のライダーに交じり全日本を戦うトップライダーたちが「本気で遊び、熱く走る」レースで、1回目は3月上旬に行われた。
この時は武田と同様に、全日本ロードやアメリカスーパーバイクで活躍し、現在全日本ロードで監督の宗和孝宏率いる『51garage』が参加。2018年度の全日本ST600チャンピオンの岡本裕生、チームメイトの関野海斗、芳賀紀行の次男涼大がチームを組んで優勝を飾った。
2回目は全日本ロード最終戦鈴鹿を1週間後に控えた日曜日に開催された。
『借り耐』は、3人から5人が1チームとしてエントリー。上限タイムが決められ、そのタイムを超えて走ると強制ピットイン、ガソリン量もチームの力量によって変わるので、安定タイムと、緻密な燃費計算も必要だ。
武田競技委員長の独断で、ルールが変わることもあり、一筋縄では勝利に辿り着けない。でもそれがハプニングを生んで、オタオタ、モタモタしてしまうところが、真剣に遊ぶ姿となって、感動的だったりするのだ。
今回は、個性豊かな14チームが参加した。
全日本でチャンピオンを争うJ-GP3の村瀬健琉も助っ人で参加。彼はRB150シリーズの常連で、ここサーキット秋ヶ瀬で、オリジナルポケットバイクの74Daijiroを駆った卒業生。さらに、このマシンを使ったアジアン・チャレンジにもフル参戦していた。サーキットもマシンも知り尽くした村瀬がゼッケン#392『TeamTKR』の助人として予選に登場(監督は高橋純一郎で、ライダーは全日本GP125で5度もチャンピオンに輝いた仲城英幸、ソンプラサート・ナタウット、そして女性ライダーの田原かすみ)。それはもう、絶対にポールポジションを狙っていることは、誰もが分かっていた。
一身に注目を集めて、スーパーポール(コースを独占し、ひとりだけのタイムアタック)に飛び出したのだが、なんと気合が入り過ぎたか最終コーナーで痛恨のミスを犯し、力を発揮出来ずに5番手。決勝は、全日本で初のタイトルを狙うことから、チームの承諾が得られず参戦を断念してサポートに回った。
ポールポジションは、全日本ST600で2度目のチャンピオンを狙う岡本。ゼッケン#51の岡本は、宗和が監督を務める『51garage』から、関野、そしてサプライヤーとしてライダーをサポートしている大羽純平と参加。
2番手には、今季全日本ST1000への参戦を予定していたが、新型コロナウィルスの影響でチーム参戦がなくなり、テストに専念しているロードレース世界選手権(WGP)Moto3のトップライダー尾野弘樹。尾野はゼッケン#76『Team HIRO』から参戦。後輩ライダーの松田基成、市原一優の将来有望な若手ライダーたちとチームを組み、優勝候補の筆頭だった。
3番手には、今季から全日本参戦を開始したゼッケン#41『ニトロ41レーシング』(芳賀紀行監督、長男瑛大、次男涼大、友人小橋一慶)の芳賀涼大。全日本チャンピオン岡本、Moto3ライダーの尾野に次いで僅差の3番手獲得に注目の集まる予選となった。
決勝は3時間耐久。最終的にはノートラブル、ノー転倒で安定して走り切ったゼッケン#3『Teamいずのすけ』が優勝を飾った。
2位は『三ちゃんずft.おむすび』で、全日本ライダーの加賀山就臣のそっくりさんが走っていて、誰かと思ったが、加賀山の兄・悟さんだった。
3位が『Team HIRO』 で、尾野は「優勝目指していたけど、2回タイムを超えてしまいペナルティ。1回転倒もあった。その時々で展開が変わるので、いろいろと頭も使って、3人で協力しなければならないので、やりがいありますね~。楽しかった」と、負けても笑顔なのだ。
4位は『51garage』。岡本は「7回もペナルティがあって、ついつい基準タイムを超えて速く走ってしまう。そのたびにペナルティで、何度もピットに戻って、ものすごく忙しかった。1回目は優勝だったから、2連覇を目指していたので残念」と苦笑い。
『ニトロ41レーシング』は、芳賀紀行の走りを楽しみにしていたのだが「ツナギが用意できなかった」と監督に徹して3時間、ずっとチームのためにサインボードを出していた。表彰台圏内を走っていたのだが、最後の最後に涼大のマシンがトラブルに見舞われストップ。そこから、再び追い上げたが、7位でチェッカーとなった。
村瀬がサポートした『Team TKR』 は6位。全日本ST600の2016年チャンピオンで現在はST1000参戦中の榎戸育弘が応援していた『Team DSG&NTR』は、監督の柏木健作、橋本卓也、田中敬秀、吉島政治で挑み12位。橋本さんは元ライダーで、今は釣りの世界では知らぬ人のいない有名人として紹介されていた。
武田は「ケガなく、楽しく3時間を走り切ってくれて良かった。これからも、参加してくれる人がみんな笑顔になれるようなイベントを考えて行きたい」と語った。またMCは多聞恵美が務め、彼女を始め美しい女性陣がイベントをサポート。気持ちよく晴れた青空が夕焼けとなり、暗闇へと変わるまで続いた「借り耐」は、笑顔で包まれた大会だった。
この1週間後には全日本ロード最終戦鈴鹿が行われ、全クラスチャンピオンが決まった。最高峰JSB1000は野佐根航汰(ヤマハ)が初チャンピオンとなり、今季から新設されたST1000は高橋裕紀(ホンダ)が栄冠に輝いた。ST600は2度も赤旗中断となり、チェッカーのない波乱のレースを走り切った岡本が2度目のチャンピオンとなった。
村瀬も、最終ラップの攻防を、見事勝ち抜き初のJ-GP3タイトルを獲得。今季、最も、成長し注目を集めたライダーだったと思う。武田を始め、監督、チームスタッフの「みんなの支えでのタイトルです」と村瀬は感謝していた。
(レポート:佐藤洋美)
※2021年の『借り耐』開催は未定です。
■問い合わせ:RB150シリーズ rentalbike@office-yu1.com
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