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第120回 「春の菊」

 寒い時期に旬を迎える美味しいモノはいろいろあります。中でも間違いなくナンバーワンになれない食べ物のワースト10に入りそうなのが春菊。西日本では菊菜と呼ばれ、東日本のものと味も微妙に違うとか。春という名にもかかわらず、寒くなるこれからの時期に旬を迎えます。一般的には鍋物で存在感をアピールする春菊ですから、春菊よりも冬菊のほうがイメージぴったりだと思うのですが、春に菊のような花が咲くから春菊だとか。ん? んじゃ西日本の菊菜は? ま、このあたりは諸説ありますということでしょう。誰が最初に言ったのかわかりませんが、「諸説あります」を思いついた人は大詐欺師になれそうな言葉の魔術師です。





 夏の日照りと秋の長雨の影響でしょうか、夏から秋口にかけて一時期葉物の品薄が続いておりました。関東の立喰・ソでは定番の春菊天も、トイレットペーパー、マスクや消毒液、それからうがい薬(覚えてますか……笑)同様、店頭から姿が消えておりました。生活必需品のトイレットペーパーやマスクのようなニュースにはならなかったのですが、シュンギリストにとっては、コロナ禍にさらに追い打ちを掛けるような日々であったことでしょう。秋も深ってラインアップに復帰したようでなによりです。

 鮮やかな緑色の春菊天とは異なり、かつては関東圏ではほんの一握りにしかなかったもう一方の雄が真っ赤な紅生姜天。昨今関東圏でもレギュラーメンバーに昇格してきています。春菊天とダブルで載せれば、彩りも鮮やかでインスタ映えします。シュンギリストでもベニショラーでもない女子の皆さんもいかがですか。でも写真撮ったらちゃんと完食してくださいね。ところでインスタとツイッターってなにがどう違うんでしょう。

 まったく関係ないのですが、調べ物をしていたらあるブログにぶち当たりました。要約すると「これから年末に向け繁忙スイッチが入ってバタバタ。時間がなくてやっとお昼。そんなときはお気に入りのカフェでリセット〜(以下私のランチタイムは充実した時間という記述が延々と続く)」お忙しい中、ブログ書くのも大変でしょうに、おつかれさまです。

 疲れたら春菊天と紅生姜天です。春菊のほのかな苦みと、紅生姜の辛みが相まって食べ合わせ感バツグン。さらにちくわ天も追加すれば天にも昇る勢いですが、天ぷら3つは老体には過負荷、毎日食べたらホントに天に昇ります。また、さいふにもいい影響はなさそうなのでがまんがまん。そんな個人情報はお姉さんのランチブログの1000倍どうでもいいです。天ぷらの3つくらい寝起きでもぺろっと平らげられた若い頃は「こんな苦い葉っぱ誰が喰うんだよ?」と歯牙にも掛けなかった春菊天なのに。今では健康にいい薬草気分で食べています。いい気なもんです。

 春菊はその名のとおりキク科の植物です。ひとくちに春菊といっても品種はさまざま、大きさや味も違うみたいです。春菊天にもいろいろなスタイルがあります。と大風呂敷を広げましたが、思い浮かんだのは、一枚ずつ衣をつけてぱりっと揚げた高級風か、まとめたかき揚げ風や、みっちりと固めて揚げたもの。あとはかき揚げ(立喰・ソでは天ぷらそばに入っているやつ)に彩り程度にちりばめられているくらいでしょうか。1枚タイプの見た目は確かに高級風ですが、揚げ具合によってはパリッとした衣を食べているような気分です。個人的にはみっちりタイプの方が好みです。好みはひとそれぞれ。ご自身にぴったりの春菊天を見つけて、すでに折り返し点(ひょっとしたら第4コーナー……)を回っている立喰・ソライフを愉しみたいものです(折り返しに達していない若者達は、春菊天になどアウトオブ眼中でしょうから)。
 ということで、今では食べることが出来ない幻立喰・ソの春菊天インスタ(でいいのか?)でお楽しみください。一部他のトッピングが紛れ込んでいますがスルーしてください。

都そば
みよし
やぶそば
左から都そば秋葉原店(末広町 2003年4月撮影)、みよし(水道橋 2005年2月撮影)、やぶそば(浜松町 2005年4月撮影)

月下亭
とんがらし
スエヒロ
左から月下亭(川崎 2006年3月撮影)、とんがらし(水道橋 2006年4月撮影)+ちくわ天 ※現在は新店主で営業中、スエヒロ秋葉原店(秋葉原 2006年5月撮影)。

後楽園そば亭
梅もと
もりや
左から後楽園そば(後楽園 2008年2月撮影)、梅もと品川店(品川 2011年1月撮影)、もりや(高島平 2011年4月撮影)。

丸長
東陽そば
いとう
左から丸長(田町 2011年6月撮影)、東陽そば(東陽町 2011年6月撮影)、いとう(浅草橋 2011年7月撮影)※現在はそば千となって営業中。

えちご
そば清
天文
左からえちご(押上 2011年7月撮影)、そば清(東十条 2011年11月撮影)、天文(池袋 2011年11月撮影)。

とんぼ
福寿草
八幡そば
左からとんぼ(豊洲 2011年11月撮影)、福寿草(笹塚 2012年7月撮影)、八幡そば(代々木八幡 2012年12月撮影)。

とんぼ
福寿草
八幡そば
左から本所そば(錦糸町 2013年1月撮影)、ポンヌッフ(新橋 2013年11月撮影)+わかめ、武田永代橋店(永代橋 2013年11月撮影)。

おがわ
スエヒロ
あずみ
左からおがわ(日暮里 2013年12月撮影)※現在はうどん専門店、スエヒロ(宝町 2014年4月撮影)+ピーマン天、あずみ西船橋店(西船橋 2014年4月撮影)。

山田製麺所
○そば
あずみ
左から山田製麺所(瑞江 2014年1月撮影)+ちくわ天、○そば(西新宿 2017年5月撮影)、あずみ国際展示場前駅店(国際展示場前 2017年11月撮影)+ちくわ天。

 多種多様な春菊天の中でも驚いたのは西船橋のあずみです。どういうわけか春菊天が2つ載っていました。しかし純粋に春菊量でいえば、とんがらしの質量は尋常ではありません。とんがらしは新店主の元で再開していますが、恥ずかしながら未だ未訪問です。あの春菊天は健在なのでしょうか? 我らが一由の春菊天は小さそうにみえますが、中味はみっちりな三密状態で食べ応えあります。
 春菊天食べたくなってきませんか? きませんね。春菊ってそういうもんです。勢いが付いたところで現役店のラインアップもご紹介。だいぶ昔の写真も混じっておりますから、今ではラインアップから外れていたり、リニューアルされているかも知れませんからご参考程度に。

六文そば
早川製麺
えきめんや
永坂更級
左から六文そば(中延 2002年7月撮影)、早川製麺(鵜の木 2002年10月撮影)、えきめんや(品川 2003年3月撮影)※リニューアル前、永坂更級(新宿 2004年1月撮影)。

天亀
爽亭
めとろ庵
かしわや級
左から天亀(神田 2005年1月撮影)、爽亭(池袋 2005年5月撮影)、めとろ庵(大手町 2005年8月撮影)※リニューアル前、かしわや(三軒茶屋 2005年12月撮影)。

天亀
爽亭
めとろ庵
かしわや級
左からかしやま(田端 2006年10月撮影)、大和屋(中延 2008年2月撮影)、文珠(浅草 2008年12月撮影)、甲斐そば(大森海岸 2009年9月撮影)。

雪国
ふじ
百万石
鈴や
左から雪国(梅島 2010年1月撮影)※リニューアル前、ふじ(品川 2010年2月撮影)+ソーセージ天、百万石(赤羽 2010年3月撮影)、鈴や(市川 2010年4月撮影)。

花丸
岩本町スタンドそば
やしま
みずえ
左から花丸(大島 2010年4月撮影)+ソーセージ天、岩本町スタンドそば(岩本町 2010年8月撮影)、やしま(西葛西 2011年10月撮影)、みずえ(瑞江 2011年10月撮影)。

のむら
ふじた
八兆
まきおか
左からのむら(秋葉原 2011年10月撮影)、ふじた(浅草橋 2011年11月撮影)、八兆(千歳船橋 2012年1月撮影)、まきおか(西台 2012年7月撮影)+ちくわ天。

こばやし
ミスジ
よつば
田舎
左からこばやし(高田馬場 2012年12月撮影)、ミスジ(蔵前 2013年1月撮影)、よつば(勝どき 2013年5月撮影)、田舎(目黒 2013年7月撮影)。

爽亭
一由
会津
仲屋製麺所
左から爽亭(上野 2013年8月)※スペシャル、一由(日暮里 2013年9月撮影)+紅生姜天、会津(堀切菖蒲園 2013年10月撮影)+ちくわ天、仲屋製麺所(日暮里 2014年3月撮影)。

わんぱく
たちばな
うさぎや
鈴しげ
左からわんぱく(京橋 2014年5月撮影)、たちばな(白金高輪 2014年11月撮影)、うさぎや(新橋 2014年12月撮影)、鈴しげ(亀有 2015年12月撮影)。

和泉
スエヒロ
丸八そば
新八
左から和泉(南花畑 2016年4月撮影)+いんげん天、スエヒロ(八丁堀 2016年7月撮影)、丸八そば(船堀 2016年8月撮影)、新八(川崎 2016年9月撮影)。

芭蕉
丹波屋
たからんちょ
松本
左から芭蕉(森下 2016年10月撮影)、丹波屋(新橋 2016年11月撮影)、たからんちょ(西新井大師 2016年12月撮影)、松本(大泉学園 2017年1月撮影)。

天かめ
まきおか2号店
大江戸そば
亀島
左から天かめ(門前仲町 2017年9月撮影)、まきおか2号店(西台 2018年2月撮影)、大江戸そば(錦糸町 2018年11月撮影)、亀島(茅場町 2020年6月撮影)。

 これだけ多くの春菊天の写真を見たくもないのに見られるのはこのコーナーだけです(おそらく)。
 せっかくですからこれら春菊天の写真を印刷して絵札を作って、「まっくろな〜 おつゆも隠れる のむらの天」とか「天ぷら2を 2つ選べる 品川のふ〜じ〜」とか読み札を作れば、春菊天百人一首が出来上がります。かつて、中国ではお正月に春菊天札という春を呼ぶ祭典があったとかなかったとか。この与太話を信じるも信じないも貴方次第。ちなみに春菊の花言葉は「私を信じてください」です。


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2020/11/26掲載