メーカー不明のボアアップキットを組み付けた80ccエンジンが、無事に始動したことを前回レポートいたしました。昨今の新車のエンジンなら、高負荷を掛けたりするような走り方をしなければ、特に慣らし運転なぞ要らないなんて話もありますが、社外のボアアップキット、さらに言えばメーカー不明ともなれば、今でも慣らし運転はやった方がいいはずです。というわけで今回は自分がやった慣らし運転について書いてみたいと思います。
エンジンについていろいろ教えていただいている、いうなれば師匠のような方がおりまして、その方から「このボアアップキットはクリアランスが狭い部分があるから、慣らし中はマメにオイル交換した方がいいぞ。特に1回目は100kmぐらいで交換してやれよ」というアドバイスをエンジンを組む前にいただいておりました。
ちなみに100kmでオイル交換すべき理由は、慣らし運転は距離が伸びれば伸びるほど馴染んでくる→逆に言えば距離が短い時は馴染んでいないので摺動部の摩耗が多い→摩耗が多いということは金属粉がたくさん出る→鉄粉がたくさん出る時期にこそオイル交換すべき、というものでした。
言われてみればそのとおりで、金属粉をたっぷり含んだオイルをいつまでも交換せずにいたら、エンジンにとっていいわけがありません。特に今回はピストンクリアランスが少ないわけですから、まともな部品を使って組んだエンジンよりもさらに多い金属粉がピストンとシリンダーの両方から発生すると思われます。そんなワケで今回の慣らし運転は、オイル交換をより重視して行っています。
ちなみに今回は500kmの慣らし運転をおこないました。その500kmの中で、3回オイル交換をしまして、その内訳は以下の通りとなります。アイドリング1時間しただけ、走行距離0kmでまず1回目。次に約100km走って2回目。最後に500km走った後に3回目のオイル交換をしています。ちなみに師匠に慣らし運転終了後、この内訳を話したところ、「空冷でアイドリングを1時間もさせるのはそもそも良くないし、アイドリングと走行時では負荷の掛かり方が違うから1回目は無駄だったな」とのこと。クルマのエンジンだと、水冷で温度管理が安定しているからなのか、組み上がったエンジンを走行させる前に半日ぐらいアイドリングさせて初期アタリを付けるなんてことをするので、XLRもアイドリングでの慣らしをやってみたのですが、結果的にはあまりよろしくなかったようです(汗)。
そんな無駄もありましたが、その後の2回はやっておいて良かったと実感させられることとなります。というのもオイルを抜いた直後は、金属粉がほとんど目立たず、異常を感じることもなかったのです。しかし抜いたオイルを廃棄するまでの間、白い樹脂ボトルに入れて放置していたのですが、廃油を捨てると底に多量の細かな金属粉が沈殿していたのです! こんなに多量の異物(金属粉)混ざったオイルで、例えば慣らし運転時のオイル交換タイミングとしてかなり一般的な距離となる1000kmまでオイル無交換のままだったら、エンジンにとっていいことあるわけがありません。「早めにオイル交換せよ」という師匠のアドバイスは、本当に的確なものでした。
慣らし運転といえば、オイル交換の時期と共に、その運転方法にもやる方それぞれのこだわりがあると思います。自分の場合は、とにかくエンジンに負荷を掛けずエンジンが回りたいように回すことを心掛けます。高いギアで回転を抑えて慣らし運転をする方もいますが、無理に高いギアを使って走らせるとエンジンには結構な負荷が掛かるので、慣らし運転として本末転倒となってしまうと自分は思うんですよね〜。そんなわけで、エンジンが回りやすい回転数でスーっと走らせてやるのが、自分なりのならし運転となります。だから「3000回転以下で100km走ったら1000回転ずつ回転を上げていく」といった、几帳面な回転括りの慣らし運転を神経質にやられている方からすればかなり大雑把な慣らし運転かもしれません。
一応、回転制限は設定してましたが、よく言われる慣らし運転の回転数と比べるとかなり高めです。これは所詮80ccエンジンですから、交通の流れに乗って走るには、そこそこ回転を上げる必要があるからです。具体的には6000回転ぐらいから始めまして、100km距離を増すごとに7000回転ぐらい、8000回転ぐらい……というように目安の回転数を上げていきました。とはいえ必ずその回転まで引っ張って変速するという回転制限ではなく、6000回転ぐらいを制限にしている時なら、そこまで回すのは2速か3速ぐらいまで。それ以上のギアなら6000回転も回さずとも交通の流れに乗れるので、負荷が掛からない、エンジンが回りやすい回転で巡航させてやりました。ちなみにその調子で走行距離が400kmを越えると回転制限は10000回転ぐらいとなりますが、慣らし運転用に50カムを組んでいたので、そこまで回りませんでした(笑)。
そんな方法での慣らし運転を終えたエンジンは、前述の通り50カムを組んでいるので、ノーマルの50ccのまま100カムを組んでいた時のように、高回転が気持ちいいといった特性ではなく、低回転から回転が頭打ちになる9000回転弱までの全域で、ひとまわりトルクが太くなって扱いやすいエンジンとなってます。とはいえ幹線道路で周囲を走る他車と比較すると、50ccに100カム + 100キャブを組み合わせスプロケをショートにしたのと同じぐらいの速さ。速くなったかと聞かれたら、「まぁ、そこそこ……」としかお答えできないような感じではありますが、トルクフルになったかと聞かれれば「超なってくれました!」と自信を持ってお答えできます。